運がいい人が飛ぶと…… 作:空を飛びたいチキン野郎
「ワルキューレの防衛感謝する。改めて、デルタ小隊隊長アラド・メルダースだ」
「俺は紫電 響鬼、まさかあの名前で俺を呼ぶパイロットがここの辺境の星にまでいるとは思わなかった」
あの後デルタ小隊の機体に誘導され地上へと着陸し機体を降りた俺は先に降りて待っていたであろう人と対面、改めて自己紹介をした後に握手を交わした。
いやぁ~マジであの名前で呼ばれるとは思ってなくて普通にビックリしたよ。
「こっちだって銀河一と名高いアンラッキーと空を共にするだなんて思ってもみなかったぞ」
「あはは…それはお互いさまって事で」
アンラッキー、俺が数々のトラブルに巻き込まれた結果、新統合軍パイロット間で広まった通り名……らしい。自分でもなんでそんな風な名がつく結果になったのかは分からないけど結構有名なんだと。まぁ俺的には偶に新統合軍相手に冤罪から逃げるためにやった逃走劇とかやらかしたから付いたのかな?って考えてる。あと補足的に言っておくと最後にはいつもラッキーな事に冤罪を晴らす証人がいてその人が発言する事によって容疑は無くなってはいるよ――――ん?
昔のことを思い出していると何か嫌な予感が突然過った。このままではいけないと思い俺が握手の為に握った手を放そうとする―――が、それは叶わなかった。
「それにしてもリガード2機にグラージ2機、クァドラン5機にゴースト2機の合計11機なんてやるなぁ」
「た、偶々ですよ、それと手を―――」
「それに加え、暴徒と化していたパイロットたちは機体は大破しているが全くの無傷、怪我一つ負ってないと来た」
「ら、ラッキーだっただけですよ、あと手を―――」
隊長さんは俺を笑顔で俺の今回の戦果を褒めながら手を握る力を強め、まるで俺を逃がすまいとしているように感じる。あ、これは何かしらに巻き込まれましたな。
「そこでだ、少し相談があるんだが―――」
隊長さんが何か言おうとしたその時、俺の後ろで声が聞こえてくる。
「ってぇ、なんだよいきなり!」
「軍用機を無断で乗り回すなんて! 一歩間違えれば作戦に混乱が生じ、被害が拡大していたかも知れない、小さなミスが命取りになるんです!」
「待てよ! 俺の話も……あッ!」
振り返ってみてみると離れた位置で少尉さんとハヤテが口論していた。……少尉、その言葉は俺に効く。って、あの大破した機体にハヤテが乗ってたの!? やべぇな、危うく殺すところだったぞ。隊長さんもそれに気づいて見ているようで俺もそのままの体制で見ていると動きがあった。突然凄く怒った様子で少尉はハヤテの胸倉を掴みかかる。
「戦場を甘く見ないでください……!」
「へっ、あんたもミスってたろ?」
「はぁ?」
少尉も言い返されると思っていなかったみたいで疑問の表情。
「見てたぜ、フォーメーションを組んで飛び上がる時、アンタだけタイミングがズレてた」
「なッ!」
「甘く見てるのはそっちじゃないのか?」
ハヤテの返しにこっちから見ていても分かるぐらいに顔を真っ赤にする少尉。その様子に隊長さんも何かを思ったんだろ、力が抜けて反対側の手をあちゃーって感じで頭へと当てた。俺はその隙を見逃さず手を放すとハヤテの方へと向かった。ラッキー、ハヤテのおかげで逃げれたぜ。
「あ、ちょ」
「また今度会った時に話しましょうね~」
俺を呼び止める声が聞こえるが振り返らずに手をひらひらと俺はやるとそのまま歩みを続ける。
「はぁ…仕方ない、ミラージュ! 何してる、帰るぞ」
その途中隊長さんは少尉を呼びつけ、俺が初めて出会った時も残していった捨て台詞を残して綺麗な敬礼するとこちらへと振り隊長の元へと歩き出す。その途中俺の存在に気付いたらしく少し沈んでいた顔を上げる。
「…やっぱり貴方だったんですね」
「やっぱり?」
「いえ、こちらの話です。この度の鎮圧活動への協力、ありがとうございました!」
そう言って再度ビシッと敬礼した後俺とすれ違う少尉さん、何と言うか真面目な方なのかな? そう思いながらハヤテとの元へと進みだす。おう、無事だったか?
「あぁ、何とかな。あの時は助かったよ」
「いやいや、無事ならそれで何よりだよ」
互いの無事を確認しながらたわいもない事を話す俺達。あはは、あの時出会ったばっかだってのになんか、話しやすい奴だな。
「それにしても本当に飛行機乗りだったとはね、あれってアンタの機体だろ?」
そう言って指さす先には俺の機体、YFー29の姿が。まぁ、普通はバルキリーの個人所有だなんてあんまり考えられないもんね。それに俺のは試作機のうちの一機だし、尚更か。
「おうとも、退職金替わりに知り合いにもらったもんだ」
俺が返すとへ~って感じで感心したような表情で俺の機体を見つめているハヤテ。そんなに羨ましそうにしてもこればっかりはやれんぞ。
「退職金って、そんなに金払いの良い会社だったのかS.M.Sってのは」
「まぁまぁいい値段ではあったけど色々とコネがあってね」
あん時はある意味凄かった。フロンティアで暮らしてた頃、鉄道模型にハマってその結果知り合ったゼントランのお爺さん。その人がかなりの権力者で、前にあげた鑑定書付きのリン・ミンメイ、直筆サインのお礼とか何とか言ってアイツを押し付けて来たからビックリしたよなぁ。それにしてもあのサイン、なんで持ってたんだろ?
「へ~……あ、そういえばあのアイツ、何処行ったんだろ?」
「フレイアちゃん? 確かに見当たらないね」
そういえばフレイアちゃんが見当たらない事に気付いた俺達は辺りを見回し探してみる。しかしその姿は何処にもなく、ちょっと嫌な予感がしてきたぐらいにハヤテが見つけてくれた。
よかったぁ~見つかって、瓦礫に巻き込まれたりとか事故で動けないとかヤバい状況になったかもとって考えちゃったから心配だったぜ。
「ハヤテ、フレイアちゃんは一体どこに?」
「あそこだよ、何やってんだか」
呆れるハヤテの視線の先を見るとそこにはフレイアちゃんがワルキューレのメンバーへと何かを叫んでいて―――って!
「!?」
俺は急いでヘルメットを被り直すとバイザーを降ろして顔を見えなくする。思わず顔隠しちゃったけどアレってマキナじゃん、レイナじゃん、ホントにアイドルになってんじゃん! 夢か幻かと思ってたのに―――
目の前の現実を受け止めきれずにちょっと放心状態になっているとフレイアちゃんが誰かと大声で話しかけている事に気付いた。
「アタシ来週オーディション受けます! 美雲さんの隣で、歌います!」
誰だろっと疑問に思いその人物へと目を向けると―――って。
「あの時の美人さん?」
そこには赤髪のリガードに襲われていた人にあの空港や踏み潰されそうになっていた綺麗な、ちょっと露出し過ぎではないか? っと自分でも謎に心配な気持ちが出るぐらいな衣装に身を包んだ美人さんがいた。
へ~、あの時助けた美人さんってワルキューレのメンバーだったんだ……まぁ、それだけの魅力はあるから当然かな?
「聞こえてたわよ! あなたの歌声!」
「はえぇ!?」
へ~、フレイアちゃん歌ってたんだ……まさかハヤテの乗ってた機体に乗って歌ったりとかはしてないよ……ねぇ?
俺は一概の疑問と過去アルトから聞いたランカとの出会いの話を思い出し、謎の既視感を感じながらその様子を見ているとマキナが笑顔になったのに気付く。ってかマキナ、立派に育ったねぇ~。前に合った時よりも身長とかが大きくなっててお兄さん、髪色でしか判定できなかったぞ。
「きゃわわーな歌声だったよ!」
「チクチクしてて気持ちよかった」
マキナはお母さん譲りの謎の表現でテンションを上げてレイナへと抱き着いた。おぉ!レイナ、お前友達作るのアレだけ下手だったのにマキナと仲がよさそうじゃないかぁ……うぅ、こっちも立派に育って、お兄さん嬉しいぞ。
「ど、どうしたんだ、いきなり泣き出して……」
「いや、ちょっと嬉しくてね」
ヘルメットの中を涙でいっぱいにしながらフレイアちゃんとワルキューレのメンバを見ている俺達。
「まってるわ!」
美人さんの声でメンバー達は手で各々Wの字を表現し―――
「「「「ラグナ星で!」」」」
ワルキューレのメンバーはキメポーズを決めて、輸送機へと乗り込みデルタ小隊のメンバーと共に空へと上がっていった。わぁ~まるで嵐みたいだったな。
「はあぁぁ~…あたし、歌ったんよね」
何かの余韻に浸り、その場に座り込むフレイアちゃんの隣に俺達は立ち同じ様に空を見上げる。
「ワルキューレと、美雲さんと……」
そこには夜空いっぱいの星が俺達の無事を祝ってるかのように無数に輝きを放っていた。
ってかあの美人さん、終始俺とずっと目が合ってたようなぁ~ 合ってなかったような……ただの気のせい、かな? そんな疑問を残しつつもオレのアル・シャハルでの一日が終了した。