運がいい人が飛ぶと……   作:空を飛びたいチキン野郎

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なぁーんか、一気にお気に入り人数が増えてる‥‥何故だ。何故こんな殴り書きのようなものが皆に読まれてるんだ‥‥‥‥分からぬ。




幸運なオーディション3

「ヴァールシンドローム!?」

「きゃぁぁ!!」

 

 俺の後ろから俺達と一緒に偶然乗っていた乗客達の驚いた声やパニックを起こした事による悲鳴が聞こえる。そして俺が相対すのはヴァ―ルシンドロームと呼ばれる奇病を発症した彼。一目見ただけでも分かるぐらいに不自然なまでに膨張した筋肉はその異常さを際立たせ、血管が浮き出て恐ろしい表情をした顔からは冗談でも正気とは言うことが出来ないぐらいに血走っている。

 

「ッチ」

 

 それにしても運が悪い。オーディションに落ちたフレイアちゃんを慰めながら帰っている途中にこんな騒ぎに巻き込まれるなんて──―それに俺は生身での対人格闘戦が死ぬほど苦手なんだよ。

 S.M.Sにいたころも最終的に誰にも勝てなかったぐらいにはよえぇ、だから喧嘩も俺ってば弱いんだよ! 

 

「あなた達何してるの! こっちへ来なさい!」

 

 乗客の1人……多分声色に美雲さんから声がかかるけど俺は動かない。ホントはそうしたいよ、今すぐにでもフレイアちゃんを連れて逃げたい気分だけども今までの経験と勘で分かるだ。多分ヘイトを俺から他の人へと移すと最終的には、皆死ぬってね。

 

「……フレイアちゃんは下がりな、俺が何とかするから」

 

 俺は彼へと目線を外さず何時でも動ける状態となりながら安心させる意味も込めて後ろのフレイアちゃんへと話しかけるけど。

 

「ッ、ッ」

 

「ふ、フレイアちゃん!?」

 

 何だか様子がおかしく、返答がない。アレか? 突然の騒ぎで放心状態って奴になってるのか? 

 ちらりとフレイアちゃんをいるとルンが点滅を繰り返していて呼吸も荒く、正常な状態とは言い難い。

 困ったな……これじゃ身動きが取れないぞ。フレイアちゃんの正気を今すぐにでも取り戻させたかったが、彼はそこまで優しく待ってくれるわけではないみたいで──―

 

「うぉぉおぉぉ──!」

 

「マジか!?」

 

 その大柄となり異常なほど膨張した筋肉を生かすかのようにぶん殴って来た。

 

「ッく!?」

 

 運良くタイミングを合わせれた俺は後ろにフレイアちゃんがいる為に避ける訳にもいかずそれを腕を使って防ぐが──―こりゃ!? 

 

「ッグハ!」

 

 攻撃を受ける。その威力は凄まじく予想以上だった為にその場に踏ん張る事が出来づ体は宙を舞った。体を動かして反撃などをしようにも何故か全身が麻痺し受け身をとれずそのまま吹き飛ばされ壁へと激突、鈍い音と共に背中に痛みが走った。

 

「うッ」

 

 その痛みは凄いもので体は動かず言葉すらも喋れない、正直少しでも気を緩めると気を失いそうだ。

 く、くそ、もっと鍛えておけばよかった。朦朧としてきた意識の中、俺はフレイアちゃんへと近づいて行く彼を見ている事しかできなかった。

 

※※※

 

「うぉぉおおおおおお!」

 

 今回、アル・シャハルで目を付けたフレイア・ヴィオンを見極める為、裏から手を回しヴァール化した人に襲われるというシュチュエーションを装い彼女危機迫る状況を作り出して彼女の因子を活性化させ見極めようとしているのだけど……あれは一体誰? 

 

「うぉぉぉぉ!」

 

「キャ!」

 

 予定では血のりを使用してリアルさを演出した後は脅かすだけで何もしないはずなのに、ヴァール化した役をしている人は予定にない役者のラグナ人にまで手を上げている。

 疑問に思い測定を担当する私と同じように変装したレイナとマキナへと目を向けると彼女らも目を見開いて驚いている様子。

 

「あれって……」

 

「うん……予定にないけど多分追加の演出」

 

 なるほどイレギュラーな演出って事ね。多分シナリオ担当の人が勝手に加えた人物なんだろうけど事前に連絡ぐらいしてほしかったわ。そんな考えとは裏腹にわたしの中では何か‥‥‥‥ラグナ人が吹っ飛ばされてから私の中に知らない感情が浮かび上がってくるばかり。何なの、この何とも言えない感情は……

 私自身、初めての経験に戸惑っていると状況は進んでいたようでフレイアは倒れ、ヴァ―ル化した役を演じている人に襲われそうとなっている。そしてそんな状況の中、彼女が取った行動は──―

 

「のぼせてScreaming、もう止まれないの────」

 

 歌を、歌う事だった。

 

「な!?」

 

 これに関しては私も驚きを隠せなかった。危機的状況の中、ヴァール化した人へ私達の様に歌うだなんて考えもしなかったから。

 彼女の歌は最初かすれ声の様な小さな声だったがどんどんとその声量は大きく、そしてハッキリと歌を紡いでいく。彼女のウィンダミア人特有のルンが淡く、そして優しくピンク色の輝きを放ち始めると彼女は優しげな表情を浮かべ歌い続けた。

 何を考え、何を思って歌い始めたかは私には分からない。けど、彼女には私達同様の何かがある。そう、心で感じられた。

 

「すごい数値……」

 

「ほんと、見た事ないほど活性化してる」

 

 当初の目的であるフォールドレセプターとしての見極めも良好なようで二人の驚く声も聞こえる。そろそろ終わりかしらね。

 吹き飛ばされた彼女の持ち物である機械を手に取り私は歩み寄る。フレイアは息を整えている。今の状況がよくわかっていないように見えた。

 

「これ」

 

「ん? ……あ」

 

「大切な物なんでしょ?」

 

 私が手渡すと大事そうに受け取る。そして多分私の声で若干だけど正体に気付かれたようね。ふふふ、私も有名になったものだわ

 

「ウェルカムトゥ、ワルキューレワールド」

 

そうして私は、私達は正体を隠していたベールを脱いだのだった。

 

「えっ? えぇぇぇぇ!! どういう事かねぇ!!」

 

彼女は私達の正体に驚きを隠せないようで戸惑っているのがまるわかり。

 

「これが最終オーディション!」

 

「さっきの声、チクチクしてて気持ちよかった」

 

「合格よ、フレイア・ヴィオン!」

 

変装を解いたマキナ、レイナ、そしてホログラムとして現れたカナメが結果を告げる。

 

「ご、合格!?」

 

やっと正確な状況を理解できたみたいでフレイアは、出現する舞台衣装に身を包みながら驚いてばかり……彼女、面白いわね。

 

「っは、って事は!」

 

「今日からあなたも」

 

「ワルキューレ」

 

「わ、私が…ワルキューレ…」

 

その後はネタバラシの始まり、変装して乗客を装っていた者も変装を解きお祝いの言葉を贈る。その事に驚きながらもフレイアは嬉しそうにしている。吹き飛ばされた彼も同じく起き上がってくると思ったけれど―――

 

「っは! って事はヒビキさん知って……」

 

「あのぉ…」

 

―――ヴァ―ル化した役として参加したハリーの様子がおかしい。

 

「あの人も演出の一つと思って思いっ切り殴ったたんですけど‥‥大丈夫ですかね?」

 

それを聞きレイナが端末を操作、数秒後青い顔となった。

 

「あ、あの人、追加演出じゃなくて……ただの一般人」

 

「えぇ!?」

 

フレイアはその事を聞くと急いで彼へと駆け寄る。どうやら彼は気を失っているみたい体を左右へと揺らして起こそうと頑張ってるけど一向に起きる気配はない。

 

「ヒビキさん!ヒビキさん!」

「どいて」

「怪我人を揺らしたらダメだよ」

 

それに対してレイナとマキナが割り込むと手慣れたように脈や異常がないかを確認し始める。

 

「あわわ!」

 

「落ち着いて、多分大丈夫と思うから」

 

「あ、あなたも血だらけッ!」

 

「これ血のりだから大丈夫」

 

何だか騒がしくなってきたと思いながら、私に出来る事はないと判断して見守ってるけど今度はマキナ達の様子が―――

 

「ん? この耳付け耳?」

 

「それにサングラスに帽子……診断の邪魔」

 

どうやらラグナ人と思っていた人はただの付け耳を付けた人だったらしくマキナが付け耳をレイアが帽子とサングラスを外す。そして暴かれる素顔を見た瞬間、私の中で何かが走った。

 

「これ、何……!?」

 

胸の高鳴りが止まらず彼の顔から目が離せずに顔がすっごく熱い。

 

「大丈夫、美雲?」

 

「え、えぇ大丈夫よ」

 

心配してカナメが話かけてくるけど本当は大丈夫じゃない‥‥‥‥どこか調子の悪いのかしら、私?

そんな疑問を胸にしながら様子を見ているとマキナとレイナも私と同じように彼の顔を目にした途端、驚きの表情へと変わった。

 

「う、うそ。なんでここに……まさか、ようやく私を……」

 

「……お兄さんようやく、会えた」

 

片や驚きと喜びの表情が入り混じった表情を浮かべ、片やそちらとは違い満面の笑みを浮かべている。あの二人、彼と知り合い……なのかしら?

 

「?……ッ! まさか何処か悪い所があるんかね!」

 

そんな二人の様子を変な風に捉えたのかフレイアはあわあわと驚くばかり……これは大丈夫…なのかしら?

カオスと言って良い雰囲気が車内を包み収集が中々つきそうにないなと、私は思うのだった。

……後でフレイアに彼の名前、聞けないかしら?

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