T.S.けーね (ロリ) は彼なのか? 作:ただし忠誠心は鼻から出る
「うん? あれ? 慧音じゃない。こんなところでどうしたの?」
ここ二十年ほどの間で最も聞き慣れているであろう声。どうしてこんなところにって、こっちが聞きたいくらいだよ。
俺は自分の故郷だった村があるからここにいるけどこいつはどうしてここにいるんだ。
「お前こそ。どうしてこんな場所に? ここには
「まあね~。血の臭いがしたから来てみたんだけど……慧音の言う通り何もないんだよね」
おかしいなー、鼻がおかしくなったのかなー、などとほざいている宵。
確かに鼻はおかしいと思う。血の臭いに釣られてこんな場所まで来る奴は普通いない。血は確かに嫌な臭いがするものだがそんなに遠くまでは臭わないだろう。
それにしてもまさかこんなにも早く再会するとは思ってもみなかった。再会できたとしても幻想郷ができてからだと思っていたが、世界は思いのほか狭いらしい。
俺が完全に人間側に付く前に、というかまともに人間と関わる前にこいつと会うなんて。
でも今はまず宵を村から離すのが先だな。何か間違いが起こっても怖いし。まだ妖怪として成熟していないこいつなら村が見えるような事にはならないだろうけど、そんなのは慰めにもならない。超常現象が日常的に起こるのがこの世界だからだ。
「とにかくここに宵のお腹を満たせるような物は無さそうだ。適当に森で熊でも狩った方が早いんじゃないのか?」
「分かってないのね。人間と熊の味は全然違うのよ? 同じだけ食べるんなら絶対に人間の方が良いわね。でもここにはいなさそうだから村を探しましょうか」
「え? 私もか?」
「うん。折角会えたんだからさ。それにこんな場所にいるってことは慧音もしたかったことは終わったんでしょ? まだ慧音を守れるほど強くはなってないけどさ。ね? いいでしょう?」
ああ。そんなことを言われて断れるはずが無いじゃないか。それに確かにやりたかったことは終わらせたから何も言えないというのもある。
仕方ないとばかりにうなずくと昔よりも幾分か大人びた笑顔で先を歩きだす宵。たった数か月しか離れていないとは思えないほど、彼女は一人での生活の中で成長したようだ。
そりゃ生まれた直後から俺と暮らしていたんだから、その俺がいなくなれば多少変わるのは予想もできる。でもこれは人で言う親離れに近いことなんだろうか。少しだけ寂しさを感じる。
これが慧音の本来持つ母性というやつか。まあこれがないと教育者として子供を指導するのは無理か。俺にもきちんと備わっていて良かったよ。
そんなこんなでたどり着いたのはあの村から少し西にあるこちらはそこそこの規模がある村。宵と会ったのは朝だったが、今ではすっかり日も落ちて月が昇り始めている。
喰いすぎないようにだけ伝えて、俺は村に入らずに外で待っている。規模が中程度であるとはいえ、あまりにもたくさん喰ってしまえば当然村は廃れてしまう。
だから宵には量を考えるように言ってある。なるべくならば人間を喰ってほしくないが、宵も生きるためなので強く言えない。
妖怪向けとしての理由はあまりにも目立ちすぎて退治されることを避けるためとしている。こうでも言っておかないと聞かないかもしれないし。
やがて聞こえてくる悲鳴は女性のものばかり。昨夜の事を思い出して少し気分が悪くなるが何とかして抑える。あの惨状を生み出したのは他でもない俺自身であるとも言える。あの光景を忘れてはならない。
今目の前の村で起こっていることも、俺が直接の原因とは言えないが胸が痛む。
今、宵に殺されている人々にも家族がいるはず。それを失った時の悲しみは俺も昨日経験したばかり。辛く、苦しい思いを今まさに目の前の村人たちにさせている。
何もしようとしないのに胸を痛めている俺は偽善者であろうか。助けられる人を助けない俺は果たして人間であって良いのだろうか。どうして俺はいつも妖怪である宵ばかりを贔屓しているのだろうか。
ふと気づくと空を飛んでいた。
「なあ、どうして空を飛んでいるんだ? もう食事は済んだのか?」
そういうと宵は呆れたような顔をして、はるか前に終わらせたと言った。
「私が食事を終わらせた後、慧音を呼んでも返事が無かったから無理矢理連れてきたのよ。そうでもなければ今頃はあの人間たちに殺されていたかもしれないんだから」
「…………なるほど追いかけられたのか。気づかなくてすまなかったな」
「ほんとほんと。で、ここ何処?」
んなこと知るかい。俺はただ宵に連れて来られただけだし、こいつは何も考えずに飛んでいただろうしなあ。
「ちなみにどの方角へ飛んだんだ?」
「ん-……月が昇ってきた方?」
西か。宵の飛ぶ速さに関してはよくわからないが、薄らと空が白み始めているところから考えても相当長い時間が経っているのではないかと思われる。
…………ん? あそこに綺麗に見えているのはまさか富士山ではないか? え? もうそこまで来てたの? 予想よりもはるかに遠い場所まで飛んできたかもしれない。
「おい、あんたたちちょっと待ちな。あんたたち妖だろう? どこの上空を飛んでいるか分かってるんだろうね?」
うわぉ。宵のやつ本当は飛ぶのめちゃくちゃ速んじゃないか? 流石に一晩でここまで来るとは思わなかったぞ。俺を連れてだし。まあおんぶなんだけど。
「はぁ? いきなり出てきて何よあなた。あ、分かったわ。ここはあなたの縄張りだと言いたいのね。ただの妖怪が縄張りを主張するなんて烏滸がましいんじゃないの?」
「お、おいやめろって。これを怒らせたら…………」
やばい。ビキビキと青筋立ててるし、まさに鬼の形相と言うに相応しい見た目になっている。頭の上に乗っている帽子がなんともひどいギャップを生み出しているが、そのかわいらしさをしてもこの恐ろしさは相殺しきれていない。
むしろ引き立てているような…………。
「ふっふっふ……ふふふふふ。神域に入ったことにすら気づかぬ愚かな妖よ。此は誠に誇れることなるぞ。神遊びで死ぬ人間は数多見てきたが妖では初めてだ。冥府で誇るが良い」
目がガチだ。と言うか起こったら雰囲気どころか口調まで変わったんだが。
流石の宵もそこまでは鈍くなかったらしい。俺に目で助けを求めてくるが、生憎俺にも対処できるだけの力は無いし、種を蒔いたのは他でもない宵自身である。
俺も一緒にとばっちりをくらいそうだけど。
「そこまでよ」
救世主の登場である。畏れ多くもその人の姿を見ようと顔をそちらへ向けると、時代にそぐわぬ金髪の女性が空中に座っていた。
いやまあ目の前の怒っている神様も、俺と旅をしてきた妖怪も金髪なんだけどさ。
現れたのは言うまでもなく八雲紫その人(?)である。空中に座るなんて芸当に驚かず、この妖怪そのものの登場に驚いているのは俺くらいのものだろう。
何にしても美しい。大人の女性ってのはこうじゃないとね。宵はまだちょっと子供っぽいんだよ。目の前の女性を見て○○○なんて言えるのは画面の前でだけだ。
「またお会いしましたね。いえ、初めましてと言った方がよろしいのでしょうか?」
「なんだ? お前さんも遊んでほしいのかい? どこから出てきたのかは知らないが私の遊び相手が務まるのか?」
「冗談がお上手です事。私はね、そこの二人に死なれると困るんですの。いくら相手が神だと言っても殺すというのならお相手いたしますわ」
おおう。まさか今まで散々顔も見れなかった謎の守護者ってゆかりんだったの? 今考えれば確かにインチキ臭い事ばかりされたような気がするけど。
うーむ。それにしても気づけなかったな。別に勘も鋭いわけじゃないし仕方ない仕方ない。
とはいえ、今ここでゆかりんと諏訪子の二人が戦ったらここにいる俺たちだってただじゃすまないと思うぜ紫さんよ。
多分今までの行動からしてゆかりんの言葉は嘘じゃないんだよな。そうでもなけりゃあの時だって助けなかっただろうし。
となると説得して互いに矛を収めてもらうか? いやいや無理無理。どっちも俺の話なんて聞いてくれなさそう。じゃああとは宵に謝らせるしかないか。神様も謝って許さないほど鬼畜じゃあないでしょう。
ってことで宵、謝ってください。
あ、そうっすか。二人の威圧感が凄すぎて話に割り込めないのね。俺も同じだ。
あんなのの中に割って入ったら瞬時に消し炭にされそうだよ。
「そこまでよ」
本日二度目の救世主登場である。今度こそしっかり助けてくれそうな神様だ。でもやっぱり髪は日本人とは思えない色をしている。普通の人間にはどう見えているんだろうな。
「諏訪子、ここが誰の国か分かっているのかい?」
「そりゃ私の……」
「
すげえよ。あんなに敵意むき出しだった諏訪子に命令できるなんてとんでもない神様だね。国譲りによってここが神奈子の国になったと言ってもあそこまで強く出れるか。
それにしても大層仲が悪そうに見えるのに一緒に生活していて不便じゃないのだろうか。
「あの、ありがとうございます。私たちでは彼女に太刀打ちできませんでしたから」
まあゆかりんは知らんがな。既に何処かへ行ったし。
なんだか常に見られているかもと思うとひどく居心地が悪いな。いつ消えたのかは知らないが、どこからも視線を感じない分余計に恐怖である。
「なんだ? お前たちから何かしたわけではなかったと言うのか?」
「いえ、連れが彼女を盛大に煽りましてですね。危うく祟り殺されそうになっていた次第です」
「ほう。祟り……か。まあ良かろう。あいつも悪い奴ではないのだ。よほど気に障る事でも言ってしまったのだろう。怖がらせてしまったようだから詫びに飯でも食っていくと良い。何、諏訪子のやつは素直に神社には帰っていないだろうから気にするな」
悪い奴ではないから許してやってくれ、とは言わないか。
神は全ての頂点にあるべき存在。決して許される側にはいないという事なのだろうか。恐ろしく強い
とまあそんなこんなでお呼ばれした神社なんだが、これが思っていたよりもかなり広い。流石に内部の構造は単純なので迷うような事は無いだろう。
一神社だと高を括っていたが稗田邸を思い起こさせるほど広い。あれもなんだかんだでもう二十年近く前なのか。阿礼様はまだ生きているのだろうか。妹紅は流石に生きているだろう。まだ都に行けば会えるかもしれない。輝夜がいるだろうから行けないけど。
「おや、ここにいたのか。飯の用意ができたからついてきなさい。残念ながら人間の肉は出ないがね」
「お気遣いありがとうございます。ですが私は半妖なので人肉は喰いませんよ」
いらねーよ。とは言えないのでオブラートに包んで問題ない事を伝える。
「はっはっは、そうかそうか。私も昔は人として生きていたはずなんだけどねぇ」
「神霊、ですか」
「ほう、よく知っているな。そう言えば諏訪子の祟りについても何か知っているのか?」
「ええ」
そりゃもちろんですよ奥さん。この世界に来たのにそのことを調べないでどうするよ。阿礼様の屋敷にいるうちに、きちんと神子や屠自古、布都についての文献も読んだ。
青娥に関する文献はいくら探しても見つからなかったけど。やっぱり本物の仙人は人から隠れながらでも為政者に接触できるのかね。
まあ諏訪に関する情報はかなりあったからできるだけ調べておいた。
そのことを神奈子に話すとなかなか面白そうに聞いてくれた。神だから傲慢なのかと思っていたけど意外に聞き上手だった。
ちなみにしばらくすると諏訪子も帰って来た。少しばかり湖を眺めていただけらしい。
神社の中にいる俺と宵を見て一瞬顔をしかめたが、あの時のような威圧感が無くなったことを確認した宵が素直に謝れば許してくれたようだ。同じ食卓を囲んでくれた。
話してみるとなるほど確かに悪い神様ではないことがわかる。あの時、上空を通りかかっただけの俺たちに絡んできたのも、妖怪から人間を守るためだったらしい。
昨晩満足するだけ人を喰ったであろう宵は、肉に近いものが魚しか出なくても文句は言わなかった。文句を言えば消されると思ったのかもしれない。
その後流石に長居はできない様子だったのでさっさと諏訪を出ることになった。また宵と適当な旅が始まる。やりたい事が見つかるまでは本当にあても無く放浪するだけだ。
立場上の関係か、また来なさいとは言われなかったが、また来たいと勝手に思った。周りの山も湖も、俺はまだ何も堪能できていない。
本当の聖地巡礼ができる機会ってのは皆無に等しいんだから出来るうちにしてみたいと思っている。その時は宵を連れていない時だろうが。
私の勝手で誠に申し訳ない事でございますが、自分に限界を感じましたので更新は次回までとさせていただきます。読者様方を裏切るような形にはなってしまいますが、このまま自分でも納得できない低クオリティな文章を投稿し続けるだけのメンタルが私にはありませんでした。
このような決断に至った一番の理由は私の力不足です。TSという設定の下で始めたにもかかわらず、そもそもそれを活かせるようなストーリーを全く入れられない。結局は元から女性でも全然構わなかったであろうほどの死に設定と化してしまいました。(実は妹紅と一緒に温泉に入れ、恥ずかしさによって慧音を気絶させるという話は考えていましたがボツになりました)
次に、これまた設定の甘さではありますが、慧音がロリである必要性もあまり無かったのではないかと思います。そもそもこうしたせいでTSが生きなかったとも言えるかもしれません。精神と身体のギャップが序盤から既にほぼ皆無でしたし。タイトルに入れている設定二つが死んでいるせいで、そもそもそれを期待して読み始めた方を裏切っていると思われます。
そして書き方と物語の展開です。慣れない様式の文章を書いたせいか、文章が非常に読みづらい気がします。展開も何番煎じか分からない程先が予測できるものでしたし、次に出てくるキャラも容易に想像できるものだったと思います。
最後にモチベーションの問題です。現在のモチベーションのまま書いても更なる駄作が生み出されるだけで、私にとっても読者様方にとっても良い事は何もないと判断しました。
この二週間で様々に考えた結果、このような結論に至りました。私の甘い見切り発車と技量不足が招いた結果であり、計画性のなさが響いた結果でもあります。重ね重ね申し訳ございませんが、何卒ご容赦頂ければ幸いです。
そういうわけで半ば無理矢理ルーミアと守矢、ついでに紫を出しました。最後は当然あの娘に締めてもらいます
追加(または再登場)してほしいキャラ
-
メリー(夢違、求聞史紀とは無関係)
-
ルーミア(宵)
-
リグル
-
守矢二柱
-
娘娘
-
その他(感想欄でどうぞ)