T.S.けーね (ロリ) は彼なのか?   作:ただし忠誠心は鼻から出る

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昔友人に見せてもらったモルフォ蝶の標本は息をのむほど美しかった記憶があります


蝶効果

蓬莱の玉の枝(ほうらいのたまのえ)、ですか? いえ、あまり知りませんね。話に聞いた事しかありません」

 蓬莱国にあるという豪華絢爛な木の枝だと聞く。金銀の根茎に七色の真珠がついたものだっただろうか。この名前と言えば竹取物語で聞いた事がある。

 

 もちろんそれに関する文献も存在してはいる。具体的に蓬莱国がどこかを明記していないからかなり胡散臭い書き物なのだが、どうやら蓬莱国があると思っている人は多いみたいだ。

 まあ月に人が住んでいたり妖怪や神がいたりするような世界だからどこかにあってもおかしくはないと思うけど……まあ探しに行くのは無謀なんじゃないかね。

 

 

「そもそも阿礼様が知らないことを私が知っていましょうか」

「慧音は思いもよらないところの話をする時もあるもの。それこそ私の知らないことも」

 

 それってすっごい稀な事案だよな。阿礼様に全く関係の無い農作業とかの話じゃねえのか? 農村育ちの俺とは違って都育ちの阿礼様なら知る由もないことばかりだと思うんだけど。

 

 

「家事もできるし体も動かせる。速記も私とは比べ物にならないでしょう? 慧音は気づいていないだけで、もう私よりも随分優れたところがあるわ」

 

 家事はできるって言っても一般家庭のレベル。体を動かすのはまあ妖怪だから当然得意だ。阿礼様はそもそもあまり身体が強くないしな。

 

 

 速記はまあ能力の都合上必要だったんだよなぁ。満月の一夜だけで膨大な量の歴史を整理しなければならないし、人間にとって都合がよくなるように歴史を創らないといけないし。

 中国の権力者は白澤の力をバンバン使っているようだが、彼らは白澤の事を考えたことは無いんだろう。神獣として崇めてればいいと思ってんだろうなぁ。こっちはしんどいのに気楽なもんだ。

 

 

 

 

 

 

 それにしてもだ、ついに蓬莱の玉の枝の話が振られたという事はかぐや姫の難題が始まったってことだ。不比等の運命が大きく変わる難題。解くことは実質不可能だ。

 

 

 確か内容は龍の頸の五色の珠、仏の御石の鉢、火鼠の皮衣、燕の子安貝、そして蓬莱の玉の枝。全部合わせて五つの難題とも呼ばれる。もちろん誰にも解けないし、世界中を回っても見つからないような物だ。

 

 

 

「確か不比等様以外にもかぐや姫に求婚なさっている御方はいましたよね? その方たちはどうなんです? 人手が多ければ蓬莱の玉の枝も見つかるやもしれませんよ」

 他の人たちが別の課題を与えれれていることも分かっているが、ここはあくまでも知らないふりをする。知っている方が不自然だからな。

「実は不比等様以外にもあと四人ほどいらっしゃるのだけれど…………ええ、もう下層の民は諦めたようね。残った五人の御方にはそれぞれ違ったお題が振り分けられたらしい、というところまでしか分からないのよ。誰が何を所望されたかと言うのは本人だけが知ることみたい」

 

 

 ああそっかそっか。という事は俺が龍の頸の珠やら鉢やらを知っているのは明らかにおかしいってことになるんだ。迂闊に喋らないようにしないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして次の日、藤原邸に行った俺たちだがどうにも今日も不比等がいないらしい。阿礼様も理由が分からず戸惑っているようだ。

 屋敷の人によると「どうやら蓬莱山は筑紫にあるという噂だから不比等様はお一人で探しに行かれた」という事らしい。

 

 多分筑紫に行くというのはただの都への留守の言い訳で、蓬莱山へ行くというのが本題なのだろう。なんか色々ごっちゃになってないか? とは思うが言うのは野暮だろう。

 

 

 と言うか流刑ならまだしも高貴な方を一人で旅に出すんじゃないよ。途中で怪我をしても妖怪に襲われても彼一人じゃ対処できないだろ。この屋敷に仕えている人たちは不比等を妄信しているからそういうところにまで考えが回らないんだよ。

 恋は盲目とはよくいったもんだ。不比等自身も、それに仕える人たちも同じだ。

 

 

 

 まあ俺は不比等がいようがいまいが関係なく妹紅とのお勉強なんだけど。

「あっ慧音、来たのね。今日は何のお勉強をするの?」

 いつも扉のすぐ目の前で待ち構えられるとちょっと怖い。身長が低いおかげで踏みそうになる心配はないんだけど、これが俺じゃなくて大人だったら踏みつけられてもおかしくないぞ。

 

 

「今日は道徳です」

「どーとく? 何それ?」

「妹紅にも分かるように言えば物事の良し悪しを見極める事ですよ。妹紅には少し難しいかもしれませんね」

 

 うがー、と言って突っかかってくる妹紅。貴族っぽくないからこそ弄っても罪悪感が少ないんだ。許してくれたまえよ。

 

「ちょっと年上だからって……そう、生意気よ! 立場は私の方が上なんだから、ほらほらもっと敬いなさいよ」

 

 

 なにこの子可愛い。普段はこんなこと言わないくせに少し弄るとこうだもんな~。こういう時にはやっぱり見た目相応に子供だなあと思うわ。

 まあこういう時には乗っかってやるのが最善策だと思う。変にこだわると拗ねて口きいてくれなくなるかもしれんし。まあ乗っかったら乗っかったで調子に乗られるだけなんだろうけど。

 

 

 

 

「はは~。妹紅様―――――」なんていう茶番を繰り広げて妹紅の機嫌を取ればいよいよ本題だ。これだけで満足するなんてやっぱり子供はよくわからんが単純だな。

「ではまず一つ。人を殺すことは良い事でしょうか? それとも悪い事でしょうか?」

「そんなの決まっているじゃないの。悪い事よ」

「その通りです。ではもし暗殺業に就いている人ならばどうでしょうか。主人から命を下されれば人を殺めなければならない。そうしなければ生きていけない、とすれば?」

 

 一般常識はついているようなので少し意地悪な問題。人だけでなく、あらゆる動物が殺生を糧とする。だったら殺人も自然の摂理の一部なんじゃないの? という質問。

 まあ妹紅には真意は理解できないかな。まだ小学校低学年くらいだしね。

 

 

「んん? 生きるためでも殺すのはいけないんじゃないの?」

「ですがそうしなければ暗殺業者が死んでしまいますよ? おや困りました。これもまた人を殺したことになりますね」

「どうすれば良いのよ。人を殺すのは本当に悪い事であっているの?」

 

 まあそうなるわな。ただでさえ子供って答えを求める性質があるし。大人にも答えられないような質問をぶつけてくる時もあるんだもんな。

 

 

 物事の良し悪しなんざ個人で決められる事ではない。道徳も結局は一般常識を教えているだけのものだろう。屁理屈が通じない、大人たちはどうやっても「そう決まっているから」としか答えてくれない。

 学校で習う道徳なんて人を殺してはならない、だとか悪事を働いてはならない、だとかそんな薄っぺらい事しか教えてくれない。そんなもの言われなくとも、犯罪者でさえ心の底では理解できているんじゃないのかと思ってしまう。

 

 

 そもそも悪事ってなんだ。善行と思って知らず悪事を働いていた場合は誰が悪いんだ。何故人外の殺生与奪権は人間が握っているのに人間の殺生与奪権は誰にも握らせようとしないんだ。つくづく人間とは不思議なものだと思ってしまう。

 人外にも感情があるのに殺しても何も言われない、と言うのはひとまず置いておいて、人を殺めるのは確かに悪い事だ。これは間違いない。

 

「命というものは誰しも一つしか持ちえないものなのです」

 蓬莱人は無制限だけども。

「その命の火を消すというのは誰であってもしてはいけないことなのですよ。つまり殺人は如何なる理由があれ悪い事なのです。『生きるため』と言うのは悪事を働くことへの免罪符にはなり得ません。今はまだこの意味が分からないでしょうが、いつか妹紅にも分かるときが来ますよ」

 

 免罪符という言葉が入ってくるのもまだまだ先だろうがな。それでも不比等がこうなってしまった以上妹紅を止めるのはもはや不可能に近い。

 

 

 

 原作の悲劇を繰り返させないために不老不死を得てしまう事を阻止するべきなのだろうか。それとも原作通りに事を進めた方がいいのだろうか。

 

 仮に妹紅が人間のまま死ねば輝夜の暇を潰す相手がいなくなってしまう。輝夜への怨みによって大怨霊になってしまう可能性も捨てきれないが、それもそれで原作の崩壊を促す要因になるに違いないのだ。

 世界は繊細であるがゆえに些細な違いが重大な違いを生み出す、遠い未来でバタフライエフェクトとも呼ばれるようになる効果。死に戻りや時間遡行ができるフィクション作品で主に使われていたような気がする。

 

 

 この世界における異物として放り込まれた俺がいることで、既にこの世界は原作との乖離が起き始めている。まず慧音の生まれる時期が早すぎるんじゃないかということ。そして最たるものは成長した姿でなく、幼女のまま半妖となってしまっていることだ。

 ただでさえ崩壊し始めている原作を俺がさらに崩壊させる? 何が起こるか分からない。ちっぽけな存在であるはずの俺が大きく世界を変えてしまう可能性があることが怖い。他人の運命を変えてしまう事が途轍もなく恐ろしい……

「…………ぃね、慧音! さっきから私の話聞いてるの?」

「ん? ああ申し訳ありません。つい考え事を……それで、何の話でしょうか?」

 

 

 危ない。思考の沼に嵌ってしまっていたようだ。妹紅が引き上げてくれなければどんどんネガティブシンキングが加速していたかもしれない。

 

 そうだな。考えすぎもよくない。人生なるようになるさ。今はこの笑顔を失わせないようにするのが教育係としての俺の役目だろう。




私は(つばくらめ)で習いましたが、最近は「つばめ」なんですかね? それか分かりやすくするために現代読みに直しているのか……まあどっちでもいいですが、個人的にはつばくらめの方が読みやすくて好き

タグに藤原妹紅も追加しようか迷い中。稗田もどこかで追加するかもしれません
増えるのが必須タグだけとかほざいていたのどこのどいつだよ……
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