美遊兄のカルデア生活   作:taiyaok

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お久しぶりです。
今回少し短めですがナイチンゲールの回です。


クリミアの天使

「…もう朝か…」

 

身体を起こし昨日の事を思い出す士郎。

 

「動いてもないのにここまで疲れるとは…」

 

結局昨日の夕食でルーラーのアルトリアと食事をした後も争いは終わらず夜まで続いた。争いから抜け出せたものの一人に捕まり、そこから全員来るという連鎖が何度も続いたが、最終的には藤丸の令呪というものにより終わった。令呪について聞こうと思ったがそんな気力も無く、部屋に戻りベッドに倒れこんだ。

昨夜の件により部屋から出たくない士郎だが、藤丸から食事には顔を出して欲しいと言われている。しかし昨夜みたいな事がまた起こると考えると部屋で寝ていた方が楽なのではと思い、ベッドに再び横たわる。

 

「寝るか。」

 

しかし、士郎はある事を忘れていた。

 

彼女(ナイチンゲール)に捕まらないように

 

カルデアに来てダ・ヴィンチから言われた事だが、そんな事はもう覚えてない。今は何も考えずに寝よう。

 

 

その頃、食堂では

 

「士郎さん遅いなぁ…」

 

「かなり疲れていましたし、それに昨日の事がありましたから…」

 

立香とマシュは士郎と食べようと待っていたが食堂に来ない事に心配していた。

 

「昼は食べに来るかなぁ…」

 

「どうでしょうか……朝食を食べた後部屋を伺ってみますか?」

 

「迷惑じゃなければ良いんだけど…」

 

どうしようかと考えながらも食べ終えた二人は食器を台所に持っていく。歩きながらも士郎について話し合ったが、昨夜は今にでも倒れそうだったので部屋に送ろうとしたが、大丈夫だと言いふらふらしながらも部屋に戻って行った。その後原因であるアルトリア達を強く叱ったがそれよりも士郎が心配だった。

 

「でも何か士郎さん一線引いてるように感じる…」

 

「先輩もですか?」

 

「マシュも感じた?」

 

「はい…カルデアを一度案内しようとしたのですが『俺にそこまでしなくて良いから』と言われました…」

 

「「はぁ…」」

 

台所で食器を洗いながら溜め息を吐いていると

 

「二人して溜め息とは珍しいな。」

 

「エミヤさん良いところに!」

 

「ちょっと相談があってさ…」

 

良いタイミングでエミヤが来たので二人が話したところ

 

「成程…だが今は彼を休ませたほうが良いだろう。」

 

「やっぱりそうですよね…」

 

「でも心配なんだよ…」

 

「マスターの気持ちも分かるが彼はまだ傷が治っていない。あまり振り回すとかえって彼が倒れてしまうからな。」

 

「振り回すってわけじゃないんだけど…」

 

「すまない、少し強く言ってしまったが彼からすればそう捉えられてもおかしくない。」

 

「お節介だと分かってるけど俺達に何か出来ないかな…」

 

立香はこれまで色んなサーヴァント達がカルデアに召喚された時に皆に紹介したり歓迎会を開いたりしていた。なかにはそれを好まない者も居たがそれでも少人数で何かを催したりして交流を深めていった。だから士郎に何か出来るか考えるも迷惑に思われたくない。

 

「でもやっぱり士郎さんを休ませたほうが良いですよね。」

 

「…そうだよね。よし!暫くは様子を見ることにする!」

 

「そうかね。では私もそろs「マスター少し宜しいですか?」君は…」

 

「あーー婦長!おはよう御座います!」

 

「おはよう御座いますマスター。それで彼は今何処に?」

 

「彼?」

 

「えぇ…確か衛宮士郎でしたか…彼を探しているのですが何処にいるか見当がつきませんのでこうして聞きに来たのです。」

 

「「「………」」」

 

「どうしました?早く彼の居場所を教えて下さい。」

 

「(せ、先輩どうしましょう!?このままでは士郎さんが!)」

 

「(今彼女を行かせたら不味い…)」

 

「(よ、よし!)」

 

「じ、実は士郎さんまだ寝ているから此処には来てないんですよ。」

 

「?マスター私が聞いているのは何処にいるかということなのですが。」

 

「ぅ…」

 

「ナイチンゲール女史彼は今部屋で眠っているがもう時期此処にやって来るので待っていた方が良いと思うのだが。」

 

「自室に居るのですね。」

 

分かりましたと言い食堂を出ようとするも恐らく士郎の部屋に行くつもりだろうが彼の状態を見たら何をするか分からない。此処で止めなくてはと何とか説得に奮闘するもこの婦長人の話を全くと言っていいほどに聞かない。そう全く。

 

「え、エミヤさんの言う通り士郎さんはこちらに来ますから止まってください!」

 

「彼は重症です。」

 

やはり全く聞いてない。その証拠にズンズンと足を進めていく。

 

「婦長!士郎さん今体調が悪く「何故それを早く言わないのですか!?」ぁ…」

 

つい本当の事を言ってしまい、猛スピードで食堂を出たナイチンゲール。

 

「マスター…」

 

「御免なさい…」

 

「せ、先輩多分大丈夫ですよ!多分!」

 

「マシュ嬢それではフォローになってないぞ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、疲れて眠っていた士郎というと

 

「………い」

 

「(?誰かいるのかろ)」

 

「…て…さい」

 

「(まだ寝たい…)」

 

「起きてください。」

 

「(寝たフリをすればその内出ていくだろう)」

 

「仕方ありません。治療します。」

 

「(勝手にしてくれ…)」

 

「では切断します。」

 

「(切断してくれ………は?)」

 

ちょっと待てこの声の主は何て言った?確か治療すると言ってたけど問題はその後

 

 

       切断?

 

治療法に『切断』なんてものがあったかと考えるがメスと一緒かと納得する士郎。恐らく表現が大袈裟で『メス』=『切断』と言うことだろう。決して、そう決して身体をバラバラにするとか物騒なものではない筈だ。しかし

 

「まずは腕、いや首ですね。」

 

「ま、待ってくれ!?それはおかしいだろう!?」

 

「起きましたか。安心してください直ぐ終わります。」

 

と言うと彼女は何処からか取り出したか分からない刃物を士郎に向ける。何故だろう彼女が刃物を持っていると安心感よりも恐怖を感じるのは。

 

「俺はだ「動かない!」…ぇ」

 

動こうとした士郎を彼女は自慢の拳銃で抑える。玉が士郎の頬を掠った。いきなり拳銃を向けられ固まっている士郎に彼女は言い放った。

 

「貴方は病んでいる。」

 

「…………」

 

彼女の行動に文句の一つでも言ってやろうと思ったが彼女の瞳が一切揺るがず自分の事を映していた。何もかも見透かしてるその瞳を見た瞬間言葉が出てこなかった。暫くお互いに黙っていたが士郎が切り出した所彼女も一旦道具を収めベッドに腰を下ろした。そこで士郎は彼女がフローレンス・ナイチンゲールだと知る。

 

「先程も言いましたか貴方は病んでる。貴方は精神的病気、そして身体的病気です。ですが私は貴方がどんな病気なのか初め見たときは分かりませんでした。なので貴方のこれまでを教えて欲しいのです。」

 

「…分かったよ。」

 

士郎はナイチンゲールに自分の経由を話した。

 

「…私に少し時間をください。」

 

「何かするのか?」

 

「私は此処に召喚されてからあらゆる文献を目にし、多くの病名を知りました。しかしどれも貴方に完璧に当てはまるものが無いのです。だからもう少し深く調べる事にします。」

 

「そういうことか…でも俺よりも他のサーヴ「関係ありません」……」

 

「貴方は私の患者、貴方がサーヴァントか人間かなんて関係ありません。貴方が病気である限り私は治療法を探し続きます。話はまた夜にしましょう。それまでにちゃんと食事を摂っておきなさい。」

 

夜に医務室に来なさいと言い残し彼女は部屋を出た。

彼女が部屋を出た後、士郎の頭には先程言われた事が残っていた。

 

「サーヴァントか人間か関係ないか……」

 

『人間のふりをしているロボット』何時しか言われたことがあった。しかし士郎は5年にも及ぶ矛盾と葛藤の歳月を経たことが原因で『ロボットにすらなりきれなかった』その姿は衛宮士郎であって()()()()ではない()()()

 

「俺は……」

 

そんなことを考えながら彼女の言う通り食事を摂る為に食堂に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不思議と夜まで時間が経つのは速かった。

 

夕食を済ませ風呂に入った所で士郎はカルデアの医務室に向かい、入室許可を貰い部屋に踏み入れた。デスクの前に座って医療本らしき物を読んでいた彼女の近くに椅子があり、彼女はそこに座りなさいと士郎に促した。

 

「早速ですが『複雑性PTSD』という言葉をご存知ですか?」

 

「いや…知らない。」

 

「これは暴行、拷問及び戦争の様な長期の対人関係の外傷に起因する病気です。症状としては無力感、絶望、希望のなさ、自己破壊的行動、これまで持ち続けた信念の喪失などといったものがあります。今述べたこれらの症状全て貴方に当てはまるでしょう?」

 

「…そうだ…」

 

「やはり。そしてこれを治す治療は無く、カウセリングもほぼ受ける事が出来ないと言われています。ですが安心してください。私が必ず治療法を見つけ、その為のカウセリングも行います。」

 

「じゃあ俺は?」

 

「もう大丈夫です。」

 

「………」

 

士郎はそうかとは言わなかった。正確には言わないのでは無く言っても無駄だと分かっているから。もう何をしようが()()はどうにもならない。先程も症状には納得したが病名を言われた時何となく違う気がした。自分が医療に対して無知であるせいなのは分かっているが。

 

「………」 

 

「………」

 

「すみません…」

 

「………」

 

士郎は黙って彼女の謝罪を聞いた。彼女は自分の為にここまでしてくれた。文句を言う資格はない。ただ根拠はないが何となくこれでは無いと士郎は思っていた。それ以前に士郎は諦めているだけだった。

 

「私はたとえ全ての命を奪ってでも、患者の命を救う。それなのに…深く刻まれた心の傷は治せない。貴方の場合は()()()すら私にはどうにも出来ない。故に自分の無力さが腹立たしいのです。」

 

「…そこまで気にする必要は無い。悪いけど俺はもう…」

 

「私は『治ろうとしない患者』は嫌いです…患者に治す気力が無ければ治療が出来ないからです。ですが貴方のそれはもう抗うことは不可能なのでしょう?」

 

「…あぁ…」

 

「……話を少し戻しますが先程の言った症状は貴方に該当するものですが病名については「違うんだろう」…気付いていたんですか…」

 

「まぁ何となくだけど…」

 

「そうですか…先程の病名『複合的な心的外傷後ストレス障害』とも言われています。確かに貴方のそれはこの症状に当てはまりはしますが貴方はそれに対して()()()()と感じていますか?」

 

「言われてみれば無かった気がする…」

 

確かに希望は無く、引き継いだ理想、否 信念というべきかどちらにせよ自分で捨てた。

 

「戦場で治療した兵士が傷つきそれをまた治すという事を何度もしてきました。ですが心が壊れては生きることは出来ません。貴方の場合身体と心も壊れ、そして()()()()()()()()()もその力によって塗り潰されようとしている。」

 

しかしあの時士郎は自分を捨てると決めた。妹を助ける為にはそうするしかなかったのだ。何故なら士郎は()()()()()()()のだから。

 

「私はこの世からあらゆる病が根絶するまで死ぬわけにはいきません。そのためならあらゆる傷を受けます。貴方が捨てた理想と私の在り方は似ているかもしれない。しかし今の貴方の在り方は私とは真逆ではありますが、自分の命を保証していないという点では似ているのかもしれません。」

 

「それでも俺は最低の悪だ…」

 

「確かに貴方は悪かもしれません。これは私個人の考え方ですので無理に聞く必要はありません。貴方は人類の為に使うべき力を妹の為に使ったと言っていましたが、私からすれば、()()()()()()()()()()()ともいえる。そして貴方は彼女を助けた。前に私が言ったことを覚えていますか?

サーヴァントか人間かなんて関係ありません。確かに貴方は私達英霊とでは経験も技量も遥かに劣る。酷い言い方をすれば貴方は居ても居なくても変わることはありません。」

 

全て事実だ。分かっていたことだ。偽物が本物に勝てない道理はないという言葉もあるが、士郎の場合あまりにも力の差があり過ぎる。何故なら士郎はその力を借りただけにすぎない。その中身はどうしようもなく空っぽなのだから。

 

「それでも貴方に救われた人はいる。貴方といることで幸せと感じる人もいる。貴方の妹が幸せになる条件に貴方は入っている。それに」

 

 

 

 手段は別としても誰かを助けることは悪いことですか?

 

 

「!…アンタ、カウセリングも出来るのかよ…」

 

「言ったでしょう?私はこの世からあらゆる病を根絶すると。それと暫くは此処で寝なさい。」

 

「此処で!?俺自分の部屋があるけど…」

 

「あのベッドは貴方の身体に合わないので貴方専用のベッドを用意しました。」

 

「…前より少し寝やすいかも…」

 

「これからはこれを使うように。そして今から言うことは必ず守るように。一つ目は朝、昼、夜食事を摂ること。二つ目は私が決めた時間までに起床すること。三つ目は食事は原則私と摂ること。四つ目は毎回身体検査等を行うのでそれを受けること。五つ目貴方が何かをする際必ず私に一言伝えること。最後に何かあれば直ぐに誰かを頼ること。」

 

「わ、分かったけど…その…もし破ってしまった時には…」

 

「?特にありませんが?」

 

「え?」

 

「これは貴方を縛る為に作ったのではなく、貴方の状態を少しでも良くする為に作っただけです。しかしあまりにも自分を蔑ろにする行動をした場合更に増やしますのでそこだけですね。」

 

「そ、そうか…」

 

「あとこれからカウセリング等するので何時までも貴方と呼んでいては対等ではありません。これから貴方を士郎と呼びますが大丈夫ですか?」

 

「出来ればその方が俺も話しやすいかも。

俺は…ナイチンゲール先生とかど「対等ではありません」じゃ、じゃあナイチンゲールさん…とか」

 

「………」

 

「婦長」

 

「……今はそれで良しとしましょう。かなり話し込んでしまいました。士郎はもう寝なさい。私は資料を片付けますので。」

 

「俺も手伝……分かった。先に寝させて貰うよ。お休み婦長。」

 

「お休みなさい士郎。」

 

 

正直士郎に治療を施したとしも侵食を遅らせることだけしか出来ないのは彼女は分かっていた。それでも

 

 

 

 

 

 

    「士郎。貴方の病は私が治します。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久しぶりの投稿。
何話か書き溜めていたのですがそろそろ投稿しようと思いまして一話書き上げました。

このキャラとの絡み見たいというリクエストがありましたら活動報告の所にて募集しておりますのでそこにお願いします。
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