相羽さんまでも亡くなってしまった。
健屋さんの話では睡眠薬と一緒に毒を飲まされた可能性もあるとのことだ。
どうしてこんな酷いことを
大切な仲間が三人も
しかも、わたくしたちの中に犯人がいるの?
黛さんが泣いているのを初めて見たような気がする。
もう誰も失いたくないよ。
わたくしが皆を守らないと。
しっかりしなくちゃ。
4月6日 10時45分 ONMホテル一階 リラクゼーションルーム
泣きながら黛が戻ってきたのは部屋を出て十分程が経った時だった。
震える声の黛から伝えられたのは、ういはの死だった。
10号室に戻ると、ういはがベッドの上で眠るように亡くなっていたという。
最初に黛が部屋に戻った時には部屋の鍵はしっかりと掛かっており、
部屋の様子やういはの衣服などにも乱れや変化は見受けられなかったようだ。
皆が確認に行こうとした時だった。黛が皆を呼び止めた。
アイドルとしてのういはの姿を守ってあげたいから多くの人に
彼女の亡骸を見せたくない。という黛の言葉を尊重して、
黛と健屋だけで死亡確認に向かうことになった。
五人は部屋の中で二人の帰りを待っていた。
ベルモンドは部屋の中を見張るように南側の窓ガラスに寄り掛かっていた。
その窓ガラスの近くにあるソファにはリゼとクレアが隣同士で座っていた。
二人はお互いの手を力なく握り締めていた。
美兎は二人の対面のソファには一人で座っていた。
目の前の丸い木のテーブルをじっと見つめていた。
十五分程経った頃、二人が戻ってきた。
部屋の東側の暖炉の近くのソファに座っていた加賀美が立ち上がり尋ねた。
「ご苦労様です。相羽さんは...。」
健屋が寂しそうに頷いた。
「ええ。亡くなってるわ。でも不明なことが多くて...。外傷はないし、
部屋や衣服に争ったような形跡もないから、毒を飲まされた可能性が
高いとしか言えないわね。」
話し終わると健屋は目頭を押さえた。健屋自身も事切れた仲間を
三人も続けて見ているのだ。毅然とした態度で平静を装ってはいるが、
内心では不安や恐怖を感じているのであろう。
「殺人とは断定できないけど、最悪のケースを常に考えて行動しよう。
今回も何者かに殺されたと思って行動しよう。」
「ベルモンドさんの言う通りね。用心するに越したことはないわ。」
何かを決心したように、テーブルから皆に視線を戻した美兎も同意した。
「委員長もそう言ってくれたことだし、これから朝が来るまで部屋に籠ろう。
あと二日の辛抱だ。食事は時間を決めて、皆で行動する。
どうしても移動したいときは二人以上で行動すること。それと黛。
ういはちゃんの部屋の鍵も今まで通り俺が預かっておこうか?」
不破と葛葉の部屋は施錠された後、二人の鍵は全てベルモンドが管理していた。
どこかに置いておくより、誰か一人が持っていた方が不測の事態が
起きた時などにわかりやすく、万が一にも犯人が鍵を狙った際も矛先が
絞られるという理由で話し合いをして決めていた。
「ありがとう。ベルモンドさん。ういはの鍵は俺がこのまま持っててもいいかな?
形見っていうと変かも知れないんだけど、持っててやりたいんだ。」
黛は手に持っていた10号室の鍵をギュッと握り締めた。
その行為は決意なのか、悔しさなのか、それは誰にもわからなかった。
「ああ。俺は構わないよ。その方がういはちゃんも喜ぶかもな。他のみんなはどうかな? 」
ベルモンドの言葉に反対するものはいなかった。
「ありがとう。」
黛が皆に向かって一礼をした。