虹の向こうに   作:夏野 雪

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4月7日⑴

4月7日 9時10分 ONMホテル一階 ダイニングルーム

前日の話し合いで決めていた朝食の時刻は九時であった。

男性陣二名と女性陣四名が部屋の前の廊下で待ち合わせ、

ダイニングルームで集合する流れとなっていた。

ベルモンドと加賀美がダイニングルームに入ると、

女性陣の姿はそこにはなかった。

「あれ? 遅いですね。」

「ああ。見に行ってみるか。」

二人が部屋から出ようとした時だった。

「あ! 二人とも! 」

偶然にも二人が出るタイミングで外から誰かが入ってきた。

鉢合わせとなってしまった三人は、危うくぶつかりそうになった。

そこに立っていたのは、薄っすらと涙を浮かべる美兎であった。

「どうした!」

「ベルモンドさん...。クレアさんが...。」

 

三人がクレアの使用していた1号室の前に着くと、

ドアが開いたままになっていた。中には三人の人物が見えた。

ベッドの上に仰向けで眠っているように横たわるクレア。

ベッドの横でクレアの体を調べている健屋。

健屋の少し後ろで顔を覆っているリゼの三人だった。

「健屋さん! クレアさんは...。」

加賀美は健屋の元へ駆け寄っていった。

「もう亡くなってるわ。」

「そんな...。」

健屋の無情な一言に美兎は言葉が続かず、膝から崩れ落ちてしまった。

健屋が捲った袖からは真っ白なクレアの腕が顔を覗かせていた。

その白い腕の途中には、確かに赤い点のようなものが確認できた。

「恐らく、寝ている間に注射器で毒物を打たれたんだと思うわ。

腕に注射のあとが残っていたし、これが床に落ちてたわ。」

そう言うと健屋はハンカチに包まれた注射器を皆に見せた。

「私と健屋さんが部屋に入った時に、床に落ちてるのを見ました。」

リゼも零れ落ちる涙を拭いながら、懸命に答えた。

ベルモンドは少し離れた場所で跪き、床に手を付いたままになっている

美兎の肩に優しく手を置き、慰めと励ましの言葉を掛けていた。

「部屋の鍵は最初から? 」

「開いていたわ。時間になってもクレアさんだけが来なくて、

部屋に行ってみたら鍵が開いていて...。」

加賀美の疑問に答えた健屋の言葉には悔しさが滲み出ていた。

「とりあえず、ダイニングへ移動しよう。」

声のする方を見ると、ベルモンドが美兎を支えながら立っていた。

 

部屋の中には1号室の鍵が残されていた。部屋を施錠すると、

鍵をベルモンドへ預け、五人はダイニングルームへ向かった。

ダイニングルームではリゼと美兎の間に健屋が座り、

ドアの前にはベルモンドと加賀美が門番のように二人で立っていた。

「私...。とても何かを食べる気には...。」

リゼが未だに止まらぬ涙を零しながら呟いた。

「私もよ。でも、迎えが来るまであと一日あるわ。

だから、少しでも良いから何か食べよ。自分の身を守るためにも。」

健屋はリゼの手を両手で優しく包み込みながら励ました。

「そうだな。健屋の言う通りだ。食べれるもので良いから食べよう。

社長、ちょっと付き合ってくれ。」

「もちろんです。」

ベルモンドの誘いを加賀美が快諾すると、二人はキッチンへと向かうべく

部屋を出ていった。

一、二分で二人が戻ってくると、その両手には缶詰、固形栄養食品、

おにぎり、パンにお菓子など様々な食品があった。

それをダイニングテーブルの上に広げた。

健屋の献身的な励ましが届いたようで、リゼが食品へと手を伸ばした。

それに続くように美兎も手を伸ばす。

それを見て安心した三人もそれに続いた。

 

 

 




加賀美ハヤト 手記より
4月7日 20時30分
やはり彼女が犯人だろう。彼女を止めなくては。
これ以上犠牲者を増やしてはいけない。
私が一人で彼女と会って、説得してみよう。
このことを手記に残しておけば、最悪の場合で私が殺されても、
これを誰かが読んでくれれば。


犯人は健屋花那だ。
物的な証拠はないが、状況は彼女しか考えられない。
私は彼女に今から会いに行こうと思う。


願わくば、これが遺書にならんことを

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