4月8日 10時50分 有丸島 船着場
そんな馬鹿な。
健屋が死んでいる。
そうなると、今この島に残っているのは二人っきり。
じゃあ犯人は...。
「リゼさん? あなたまさか。」
美兎は無意識に一歩後退した。
リゼは未だに蹲ったまま健屋を見つめていた。
「嘘ですよね。リゼさん。」
リゼは立ち上がると、ゆっくりと美兎の方へ振り返った。
「えっ? 」
美兎は思わず息をのんだ。
振り向いたリゼの手には拳銃が握られていた。
しっかりと銃口は美兎に向けられていた。
持ちなれないものを持つリゼの手は震えており、目には涙を浮かべていた。
「委員長...。信じてたのに。あなただけは...。」
「リゼさん。その銃は...。やっぱりあなたが。」
「違う! 」
リゼの悲鳴にも似た叫び声が誰もいないくなった島に響き渡った。
「この銃は昨日の夜に、誰かが私の部屋の前に置いていったものよ!
てっきり、てっきり委員長が私に護身用として置いてくれたんだと思ってた。」
リゼの頬から大粒の涙が零れ落ちていく。
「落ち着いて。リゼさん。」
美兎がゆっくりとリゼに近づこうとした。
「近づかないで! 」
叫ぶリゼの手はがたがたと震えていた。
このままでは、どのみちリゼに殺されてしまうだろう。
美兎は目を瞑ると、大きく深呼吸をした。
意を決して目を開けると、美兎はリゼに飛び掛かった。
美兎の左の耳元で大きな破裂音が鳴り響いた。
リゼが発砲したのだった。照準の全く定まっていなかった弾は
美兎を躱して大きく逸れていった。
その隙にリゼの手を抑え込んだ。
勢いそのままにリゼの体が後ろに押し倒された。
もちろんリゼも無抵抗ではなかった。
抑え込まれそうな手を必死に振り解こうともがいていた。
美兎は先ほどの銃声で耳をやられていた。
左の耳が全く聞こえない。右耳も耳鳴りがして聞こえづらかった。
音のなくなった世界で美兎は自分の腹部の方から火花が散るのが見えた。
それと同時に服の上からだったのだが、かなりの熱を腹部に感じた。
二人は何が起きたのか分からず静止していた。
美兎がリゼに覆いかぶさるような姿勢で固まったままだ。
美兎は熱を感じた腹部を手で押さえてみた。
少し擦り傷のような痛みを感じるが、それだけだった。
リゼに視線を移してみた。
美兎が先ほどのまで抑え込んでいたリゼの手に握られたままの拳銃の銃口が
リゼの腹部に突き刺さっていた。
拳銃が突き刺さっている腹部からはどくどくと赤い液体が流れ出ていた。
リゼの口が動いている。でも、耳が聞こえない。
ぱくぱくと何度も動いていた。まるで陸に打ち上げられた魚のように
美兎の顔をまっすぐ見つめたまま、ぱくぱくと口を動かしていた。
遂にリゼの口が動くことをやめた。それでもリゼの腹部からは、
赤い液体が流れ続けていた。
美兎には自分の叫び声すらも聞こえることはなかった。