私がこの計画を思いつき、実行してみたいと思ったのは、
本当に小さく、本当につまらないことからでした。
私は確かめたかった。黛さんが本当に私を愛してくれているのかを。
ただそれだけの想いからでした。
まず私と黛さん以外にメンバーを適当にピックアップしました。
ピックアップしたメンバーに一斉連絡をして、返信が早かった順番に
七人を選びました。この七人と最後に選んだ一人には、
何の恨みや怒りはありません。
それから、黛さんを含めた九人に新しい企画が決まったと伝え、
島に呼び出すことにしました。
この有丸島のことは、以前に友人から聞いた事がありました。
説明の際に島へ来ることに難色を示したメンバーもいました。
そういったメンバーには出演料として事前に幾らかを振り込みもしました。
計画のスタートは黛さんと私だけが先に島に着くようにすることからでした。
司会進行と事前打ち合わせのためと言う名目でした。
でも実際は、二人だけ先に来たのには理由がありました。
黛さんにだけ『ある秘密』を打ち明けるためでした。
『私が葛葉さんに脅迫され、多額の現金を支払うように言われている。
おまけに、その秘密が露見してしまうと私のアイドル生命も絶たれてしまう。
だから、この島で葛葉さんを殺そうと思っている。』
というものでした。
もちろん、全て真っ赤な嘘です。
葛葉さんは、そんな方ではないですし、秘密なんて全くありませんでした。
これは私が黛さんを試すためだけの嘘でした。
ここで黛さんが私が望んでいるような答えではなく、全く違う答えを出していたら、
私はきっと殺人を実行してはいなかったと思います。
だけど、黛さんは私が望んでいた答えをくれました。
「俺に任せてくれないか。大丈夫。心配ないよ。その計画を聞かせてくれ。」
途中までは本当の計画を話しました。黛さんは真剣に聞いてくれた。
そして、私のアイドル人生は絶対に守ってやるからとも言ってくれた。
黛さんは私の事を本当に大切に思ってくれていた。
私もそうだった。誰よりも大切な存在で、誰よりも愛していた。
無事に全員が島へ到着した最初の夜に一人目の犠牲者を選ぶことにしました。
最初の一人は誰でも良かったのです。
葛葉さんと黛さん以外なら、誰が犠牲になってもよかったのです。
デザートで出す予定だったシフォンケーキに毒を入れました。
私が切り分けたケーキに黛さんが毒を入れました。
私と黛さんで五枚づつの皿を配りましたが、
毒が入っていたのは黛さんが配った方の皿でした。
私が自分、黛さん、葛葉さんの三人の分を配ることで、
この三人には絶対に毒の皿が回らないようにしました。
罪悪感を少しでも減らすために黛さんの方の皿はシャッフルしました。
これで配っている黛さん自身も誰が毒のケーキを食べるかはわかりません。
結果、ハズレを引いたのは不破さんでした。
皆が不破さんの死体に気を取られている内に私が手紙を皿の下に入れました。
返事をくれたメンバーに健屋さんがいてくれのはラッキーでした。
医学知識がある彼女のお陰で死亡確認などスムーズに行きました。
不破さんの死には、大きく二つの意味がありました。
一つ目は偽りの犯人当て企画を始めるため。葛葉さんに出した手紙も
演出の一部でした。
二つ目は私が倒れるためでした。そう私自身が表舞台から消える下準備です。
二人目は私です。
私はショックを受けて、気を失うふりをしました。
黛さんに介抱してもらい、姿を消すというポジションを作りました。
これは私が今後の犯罪に関与していないと思わせると共に、
自由自在に動ける透明人間になるためのものでした。
それを決定づけるために、毒を飲まされ殺されたことに仕向けました。
私の死体が、正確に言えば偽装の死が発覚するのは葛葉さんの後にしました。
でも、それには健屋さんの協力が不可欠でした。
なので、黛さんに健屋さんを説得してもらうことにしたのです。
『彼女を犯罪に巻き込みたくない。どうしても守りたいんだ。迎えの船が来たら、
俺から皆に謝るから、それまで死んだことにしておいてほしいんだ。』
黛さんは涙を浮かべながら説得してくれました。
優しい健屋さんは無事に了承してくれました。
後は部屋に鍵をかけて黛さんが鍵を管理すれば完了でした。
私はこの島で透明人間になることに成功しました。
三人目は葛葉さんです。
黛さんが葛葉さんを砂浜に呼び出しました。離れたところで私と黛さんは見ていました。
そこで殺そうと思っていましたが、偶然にもベルモンドさん達が現れてしまいました。
予想外の事態でしたが、葛葉さんがその場を離れてくれました。
ベルモンドさんたちも後を追ってくるようなことなかったので、
先回りをして脇道に隠れていました。
ホテルへ向かっていた葛葉さんに黛さんが後ろから声を掛け、止まったところを殴りました。
凶器は私が渡したネメシスの彫像でした。
ホテルに来た時にリラクゼーションルームで見つけて一目惚れしました。
今回の計画にピッタリだと思ったからです。
ネメシス。天罰の女神。私の嘘にピッタリだと思いました、
黛さんは、その彫像で倒れた葛葉さんを何度も殴りました。何度も。何度も。
私はそれを近くで見つめていました。
とても嬉しかった。ネメシスを。天罰の女神を憎むべき相手に怒りの表情で
振り下ろす黛さんの姿、表情。嬉しかった。心の中がどんどん満たされていきました。
頬が紅潮するのを感じました。心臓も高鳴りも抑えれませんでした。
思わず、私は黛さんに後ろから抱きつきました、嬉しくて、愛おしくて。
でも、その想いを抑えました。まだ本当の私の計画は途中だったからです。
私は涙を浮かべながら震えながら話しかけました。
「ごめんなさい。私なんかのために、本当にごめんなさい。もう大丈夫だから。
大丈夫だから。黛さんの手が壊れちゃう...。」
黛さんは私が怯えていると思ったようで、手を止めてくれた。
そして、私を抱き締めてくれた。温かく、優しい手で。
これが黛さんとの最初で最後の抱擁でした。
四人目は黛さんです。
黛さんは私に愛を示してくれました。今度は私が愛を示す番です。
私は黛さんを「相談したいことがあるの」と勝手口へ呼び出しました。
ここなら人も来ないはずと思ったからです。
黛さんを殺すのは簡単でした。完全に油断していた黛さんを背後から
斧で殴りました。苦しんでほしくないから、思いっきりの力で一撃で決めたかったのです。
好きだから。愛しているから。苦しんでほしくないから。
私は全ての想いを振り上げた斧に込めました。
鮮血をまき散らしてながら倒れた黛さんは、しばらくして動かなりました。
黛さんの中では殺人者ではなく、アイドルとして生きていたかった。
だから、黛さんには見せられなかった。私がこの先にすることを。
もしも、黛さんが見てしまえば、嘘がばれてしまう。殺人者だと思われてしまう。
そんなの嫌だよ。黛さんの中で生き続ける私は可愛いアイドルで生き続けるの。
そのために黛さんとは、ここでお別れなの。
それから黛さんのポケットから二本の鍵を回収して、10号室に戻りました。
私には、まだやらなくてはいけないことがあった。
残りのメンバーを全員殺さなくちゃいけない。
私と黛さんの愛を本物のまま終わらせるために、偽物にしないために。
五人目はクレアさんです。
皆がダイニングルームで食事をしている間にクレアさんの部屋にドアの隙間から手紙を
入れておきました。内容は『犯人がわかった。相談したい事があるから二十一時三十分に
一階の倉庫に来てくれ。ベルモンド』というものです。
同じような手紙を健屋さんの部屋にも忍ばせました。ただし時刻を二十二時に、
差出人をクレアさんに変えたものです。
目的は健屋さんに疑いの目を向けることで、仲間割れを期待して出したものです。
それから、時間通りに来たクレアさんを後ろから襲い、腕に毒物を注射しました。
動かなくなったら10号室に一旦運び、皆が寝静まった頃に1号室へ死体を運びました。
六人目は健屋さんでした。
二日目の二十二時頃でした。物音がしたので10号室から外を覗くと、
リラクゼーションルームに入っていく加賀美さんと健屋さんが見えました。
部屋の前まで行って聞き耳を立ててみると、どうやら二人は言い争いをしていた様でした。
お互いがお互いを犯人だと思っているようでした。
しばらくすると、加賀美さんだけが部屋から出てきました。
加賀美さんが二階に戻ったのを確認してから、リラクゼーションルームを覗いてみると、
そこにはまだ健屋さんがいました。
中は暗くてはっきりとは見えませんが、どうやらソファに座りながら泣いているようでした。
私はチャンスだと思い、部屋に用意していた金属バットを片手に彼女の背後に
ゆっくりと近づいていきました。すぐ後ろに着いても彼女は気づかず泣いたままでした。
私は静かに、それでいて大きく振り上げたバットを彼女の頭を目掛けて振り下ろしました。
鈍い音と共に彼女はそのまま前に倒れこみました。
彼女はまだ生きていました。微かに息をしているようでした。
私は彼女を背負い、そのまま船着場まで向かうと、
船着場近くにあった波打ち際で彼女を溺死させました。
死体は波にさらわれない位置まで移動させてからホテルに戻りました。
ホテルに戻った私は部屋に戻り準備をしてから、七人目の加賀美さんの元へ向かいました。
加賀美さんの部屋からは光が漏れていたので、まだ起きていると思い部屋をノックしました。
ノックの後にドアの隙間から手紙を投げ込みました。
『健屋さんが犯人である証拠を見つけました。相談したいので十分後にダイニングルームまで
一人で来てほしいです。リゼ』という内容だったと思います。
加賀美さんが本当に来てくれるかどうかは確信がありませんでした。
でも、私の期待通りに加賀美さんはダイニングルームへ姿を見せました
ドアの影に隠れていた私は加賀美さんが見えたのと同時に金属バットで殴り倒しました。
床に倒れた加賀美さんを椅子に座らせると、至近距離から左胸に二発の銃弾を撃ち込みました。
残りの三人が慌ててダイニングルームに入ったのを見届けた私は二階へ上がりました。
ベルモンドさんの客室である7号室に向かうと思った通り、部屋は無施錠でした。
銃声に慌てて部屋を出たため、鍵を閉めていなかったのです。
私はその隙にベルモンドさんの部屋に忍び込み、彼が戻ってくるまで待ちました。
しばらくして、一人で戻ってきた彼をバットで複数回殴りました。
そのまま西側の窓から死体を(まだ生きてたかもしれませんが)地面に落としました。
残りの二人に関しては、私は装置として動くだけでした。
ベルモンドさんを殺した後、リゼさんの部屋の前に行きました。
加賀美さんを殺した時に使った銃を彼女の部屋のドアの前に置いて、何回かノックをしました。
少しして彼女はドアを開け銃を見つけると、銃を持ったまま部屋に戻りました。
それを見届けた私は10号室に戻って朝を待ちました。
翌日のお昼頃、バタバタと慌ただしい音がホテル内に響いていました。
どうやら二人がベルモンドさんを発見したようです。
身を隠しながら様子を見ていると、二人は船着場の方へと走っていきました。
私はゆっくりと二人を追いかけました。
私は迎えの船が来ないことを知っていたから。最初からそんなもの用意してなかったから。
船着場に着くと二人が向き合ってました。どうやら健屋さんの死体を見つけたようです。
最後に残った人間は必ず船着場に来ると思っていました、
だから、健屋さんの死体を船着場に放置したのです。
目の前で行われている最後の生き残りをかけた、二人の必死の戦い。
リゼさんの怯えるように叫ぶ声、一発の銃声、揉み合う二人、そして二発目の銃。
結局、最後まで立っていたのは美兎さんでした。
信じていた者同士で死に抗う二人を見ていた私は、黛さんが葛葉さんを殺した時に
感じた興奮にも似た不思議な高揚感に見舞われていました。
なんて美しい光景なんでしょう。二人の女性がとても美しく、儚く可憐に見えました。
寂しいからじゃない。悲しいからじゃない。感動で私は涙を流していました。
美兎さんは何もせず、海の方を眺めていました。私もしばしの間、彼女をみつめていました。
放心状態で動く気配のない美兎さんを置いて、先にホテルへ戻って仕上げに取り掛かりました。
私が使っていた10号室と美兎さんの使っていた8号室に同じ仕掛けをしました。
部屋の真ん中に椅子を置き、その真上の天井から首吊り用のロープを吊るしました。
もし、美兎さんが戻ってきたら、どちらかの部屋には現れると思ったからです。
日が沈みかけた頃に美兎さんが走ってホテルに戻ってきました。
やはり、地頭がいい方でした。ホテルに戻った彼女は10号室のドアを壊し始めました。
我武者羅に斧で壊すと部屋の中に入っていきました。
彼女が見たのは
彼女はゆっくりと椅子に上がりロープを首にかけました。
部屋の外でそれを見ていた私は、椅子に近付き蹴飛ばしました。
目の前ではバタバタともがきながら彼女は揺れていました。
気のせいかもしれませんが、窓ガラス越しに彼女と目が合った気がしました。
窓ガラスに映る私は笑っていました。
私は黛さんの愛を守り切ることができました。
これでこの島で起こった事は誰も知らない。私がついた嘘がばれることも無い。
永遠に私はアイドルとして存在し続けることが出来る。
黛さんが愛してくれたアイドルとして。
最後に弔いの意味を兼ねて、皆の死体を綺麗にベッドへ寝かせました。
最後まで残ったリゼさんと美兎さんは隣同士にしてあげたかったから、
リラクゼーションルームへ並んで眠らせてあげました。
私の分も含めて、残っていた皆の荷物や私物は全て海に捨てました。
隠し持っていたスマホで樋口さんと夢追さんにメールを送り、口座振込も済ませました。
二人には観客として、私の愛の作品を見届けて貰うつもりだ。
後は私が毒を飲んで本当に死ねば終幕。
でも、その前に一つ賭けをすることにしてみました。
このままではアンフェアだと思い、この告発文を書きました。
この告発文とスマホを空気で膨らませたジップロックに入れました。
スマホには動画で私が死体を運んでる現場や、告発文を書いている様子を撮影しました。
それと私たちの愛の作品のタイトルを考えて入れておきます。
この後、この膨らませた袋をゴムボールのように海へと投げます。
もし、神様がいるなら、罪に対して罰が与えられるというなら、
この手紙を誰かが拾ってくれるはず。
頑張ってね。神様。私は結構強いですよ。
もし、私が勝てたなら二人で、黛さんと二人でどこまでも行けるはず。
そう。虹の向こうにさえも
相羽 ういは
「虹の向こうに」
以上をもって完結となります。
最終章が長くなってしまい、二回に分けて投稿しようと思いましたが、
長くなっても一回にしたかったので、他よりかなり長くなってしまいました。
読みづらくなってしまったことをお詫びいたします。
ここまで読んで頂いて、本当にありがとうございました。
二次創作作品は初めてでしたので、至らぬ点が多々あったと思います。
また登場したライバーのファンの方やにじさんじ好きな方に
失礼の無いように注意を払ったつもりでしたが、口調や仕草で不満を
感じる方もいたと思います。申し訳ございませんでした。
もし許されるなら『にじさんじ』✕『ミステリー』を投稿したいと思っています。
次回作品も現在、下書きを始めました。
拙い文章、表現なのですが、精進してまいりますので、
今後も見かけたらご一読いただければ幸いです。