虹の向こうに   作:夏野 雪

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月ノ美兎 手記より

4月4日 23時
船の旅なんて初めてだ。不安だったけど、乗ってしまえば
何てことはなかったな。
それにしても、こんなに大人数のメンバーで食事をするのは久し振りだな。
新企画の発表ということらしいけど、こんな大掛かりな案件は
ツアー以来かもしれないな。
この十人が選ばれて丸一日かけて、名前も聞いた事のない無人島に
向かうことになるなんて夢にも思わなかった。
夕食も賑やかで楽しかったし、貴重な自由時間も頂けたわけですし、
明日に備えて体を休めよう。
企画では先輩として、しっかり頑張らなくちゃ。


4月5日 6時50分
自然と目が覚めてしまった。
朝日でも拝見しようとデッキに出てみよた。
雲一つない青い空に清々しい潮風が、とても気持ち良かった。
水平線に登ってきたばかりの太陽が遮ることのない海を照らし、
海面はキラキラと輝いていた。
気がつかなかったのけど、リゼさんもデッキに出ていた。
わたくしと同じく海の輝きに見惚れているように見えました。
驚かそうと、こっそりと背後に忍び寄り「ワッ」と叫んでみた。
リゼさんは、わたくしが想像していたより大きな悲鳴を
あげながら飛び上がった。
悲鳴があまりにも大きく、ベルモンドさんが慌てた様子で
デッキに現れた。
わたくしとリゼさんは二人して、その姿を見て笑ってしまいました。
二人で謝罪をすると、折角だからと三人で海を眺めながら話を
することになった。新人ライバーや、海での思い出など
他愛もないのだけれども、とても充実した時間でした。



4月5日⑴

4月5日 13時 有丸島船着場

漸く、船は目的の島に到着した。バーチャル東京の港を出発してから

二十四時間以上が経過していた。

八人は忘れかけていた揺れない地面の感触を思い出すかのように、

しっかりと踏み締めていた。

「いやー!疲れたー!」

葛葉が思いっきり背伸びをしていた。心地よい春の日差しと

爽やかな潮風が八人を歓迎しているようだった。

「良い天気でよかったですね。」

「ですよねー。ほんっと気持ち良いですね。」

クレアと健屋が仲睦ましげに話をしていた。

少し離れた場所でリゼと美兎が重そうな荷物を船から降ろしていた。

「変わるよ。俺たちがやるから。」

ベルモンドがリゼの手から荷物を受け取った。

「委員長。こちらは私がやります。」

美兎の方の荷物を加賀美が受け取った。

「俺らがホテルまで運ぶから、二人は手ぶらで向かって大丈夫だよ。」

ベルモンドと加賀美は笑顔で二人の荷物を軽々と持ち上げていた。

「ベルさん、社長。本当に大丈夫ですか?」

リゼが二人に間であたふたとしていた。

「ここはお言葉に甘えさせてもらいましょう。本当に助かります。」

美兎は丁寧にお辞儀をすると、それに合わせリゼもお辞儀をすると

ホテルに向かい二人で歩き始めた。

「不破くんと葛葉くんも二人の荷物を持ってあげな。」

ベルモンドは近くにいた不破にも声を掛け、健屋とクレアの

荷物を持つようにと促した。

「あ。はい。了解っす。」

不破が二人の元に向かい、荷物の件を伝えると二人は

リゼと美兎のようにお辞儀をした後、手ぶらでホテルの方へ歩き出した。

ただ一点、不破にとって誤算があった。

誰よりも早く自分の荷物を持って葛葉がホテルへと向かっていたのだった。

「マジか。」

「ハハハ!私たちも手伝いますから頑張りましょう。」

絶望の表情を浮かべる不破の肩をポンポンと笑いながら加賀美が叩いていた。

ベルモンドも笑みを浮かべながら、不破の足元に置かれていた荷物の

一部を請け負うとホテルへ向かって歩き始めた。

 

 

4月5日 13時10分 ONMホテル前

コの字型の白亜の建造物の前に七人は到着していた。

葛葉は建物の周辺には見当たらなかったので、恐らく先に入っているのだろう。

美兎が玄関と思われるドアを開けた。

「すいません。」

外装同様に内装も白を基調とした美しい造りになっていた。

白の壁には所々に照明用のランプ、天井には洒落たシャンデリアが

吊るされていた。

フローリングの床にはワックスもかけられ、清潔に保たれていた。

ドアや階段は木製でノブや金属パーツは金色に統一されていた。

「どーも。遅かったですね。」

「わー!みんなー待ってたんだよー!」

玄関の正面にある二階へと続いている大きな階段を登りきったところには

見慣れた二人が立っていた。

黛とういはだ。事前に聞かされていたが、二人は今回の新企画の司会進行を

担う予定となっており、一日早く島に入って準備をしていたようだ。

「うーちゃんに黛さんじゃんー!」

健屋が二人に向かって笑顔で手を振っていた。

ういはは嬉しそうにピョンピョンと階段をかけ降りてきた。

黛はその後ろをゆっくりとマイペースに下ってきていた。

「お二人ともお久し振りですね。葛葉さんは来ましたか?」

クレアが少し不安そうに二人に尋ねた。

「ええ。疲れたから先に部屋で休むと言って、もう部屋に居ますよ。

皆さんの部屋も二階にありますよ。」

黛が答えるとクレアもそれを聞き、安心したのか何時ものような

微笑みを浮かべていた。

一方、その後ろでういははリゼや健屋とじゃれあっていた。

 

男性陣は黛が、女性陣はういはが二階にある客室を

案内することになった。

階段を登って左手、建物の西側は階段から近い順に『1号室』、

『3号室』、『5号室』、『7号室』と奇数部屋となっており、

『1号室』から葛葉、不破、加賀美、ベルモンドが入室することになった。

部屋の大きさは同じだが角部屋になっている『1号室』と『7号室』だけ

窓が一か所多くなっていた。

反対側の階段を登り右手、建物の東側は階段から近い順に『2号室』、

『4号室』、『6号室』、『8号室』と偶数部屋となっており、

『2号室』からクレア、リゼ、健屋、美兎が入室することになった。

黛とういはは一階にある『9号室』と『10号室』に入室していた。

『9号室』と『10号室』は一階の西側にあり、リラクゼーションルームの

正面にあった。部屋の大きさは二階の客室と同じものだった。

それぞれに部屋にはベッドとクローゼット、トイレと小さいながらも

バスルームも備わっていた。

皆が部屋に荷物を運び終わると時刻は14時近くになっていた。

企画発表のある夕食までは自由時間となった。

 




健屋花那 手記より
4月5日 14:05
目的にホテルに到着した。思っていたより綺麗な建物で驚いた。
天気が良くて気持ち良かったけど、慣れない船旅も含めて
結構疲れたな。
一階のキッチンにはお酒もあるようだから、あとで誰かを
誘って飲みに行こうかなー。
それにしても、こんなところで何の企画をするんだろうか?
先に来ていた二人は何か知ってるのかな?

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