虹の向こうに   作:夏野 雪

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4月5日⑶

4月5日 20時30分 ONMホテル一階 ダイニングルーム

リラクゼーションルームと同じ大きさの部屋の中央には縦長の

大きな木製のダイニングテーブルが置かれていた。

両サイドには五席づつ椅子がセットされていた。

椅子とセットになりテーブルには、ネームプレートが置かれており、

各人の席が指定されていた。

部屋の南側は一面ガラス張りとなっており、どこまでも続く青い海を

眺めることが出来た。今は月夜に照らされる海が広がっていた。

その海が見えるようにセットされた五席には女性陣の名前があり、

その対面の窓ガラスが背面になっている五席には男性陣の名前があった。

それぞれ、部屋の北西にある入り口側から近い順番に

クレア、健屋、リゼ、美兎と葛葉、加賀美、不破、ベルモンドと

それぞれ並んでいた。

 

六人で準備しただけあり、十人分の食事は滞りなく配膳することが出来た。

豪華絢爛とはいかなかったものの、サラダ、

チキンステーキにビーフステーキ、スープにマッシュポテト、パンにライスと

それなりの夕食を作ることができていた。

「いやー!めっちゃ美味かったな。」

皿に残っていた最後のステーキを平らげると満足気に葛葉が笑っていた。

「本当に美味しかったな。言ってくれれば手伝ったのに。」

ベルモンドは酒の入ったグラスを置くと、女性陣に労いの言葉を送った。

「気にしないで下さい。それより美味しいって言っていただけて嬉しいです。」

そう返すとリゼは謙遜しながらも嬉しそうに笑っていた。

「皿洗いを私たちがやりますから。ゆっくり休んでて下さい。」

加賀美も美味しい料理と酒に満足そうな表情を浮かべていた。

加賀美の提案に「そうですね。」と不破も頷いていた。

「手作りデザートもありますからねー。」

満面の笑みを浮かべたういはが黛と一緒に入ってきた。

二人はシフォンケーキが乗せられた皿を何枚か持っていた。

二人は順番に皿を皆の前に置いていった。

「へー。これも手作りなの?」

葛葉が皿を持ち上げ、まじまじとケーキを観察していた。

「うふふ。美味しーですよー。」

ういははウインクしながら自信満々に答えていた。

全員の皿が行き渡り、各々がケーキを食べ始めた。

「うん!美味しいですね!」

美兎の感想を皮切りに他のメンバーも称賛の声を口にした。

「ぐっ...。」

突然、葛葉が苦しそうに喉を押さえながら立ち上がった。

そして、そのまま顔を歪めながら後ろに倒れこんでしまった。

「葛葉さん!?」

隣に座っていた加賀美がすぐに駆け寄り。葛葉の体を揺すった。

「ちょっと変わって!」

対面から飛んできた健屋が加賀美と場所を変わり、脈を確認したり、

口の周辺を調べ始めた。

葛葉の周りには心配そうに、ほとんどのメンバーが集まっていた。

「大丈夫なのか?」

ベルモンドが心配そうに覗き込んできた。

「どうして...。」

健屋が葛葉を見つめながら呟いた。

「ぷっ...。」

どこからともなく、空気が漏れるような音が聞こえた。

「どうして、こんなことしたんですか。」

健屋は床で倒れたままの葛葉の肩を軽く叩いた。

「ハハハ!無理だって!こんなの我慢できないって!」

皆が唖然としてる中、葛葉は笑いながら起き上がった。

「どういうつもりですか!葛葉さん。」

やや強めの口調で美兎が詰め寄った。

「いや、違うんすよ。こんなものが部屋のあって。」

慌てて葛葉はポケットから一枚の紙を取り出した。

 

『夕食にデザートが出ます。そのタイミングで死んだふりをして下さい。』

 

葛葉がテーブルに広げられた紙を皆が見つめていた。

「てっきり俺は新企画の一環かと思ってさ。」

「そうだとしたら、かなり悪趣味だな。」

ベルモンドも呆れた様子で葛葉を見つめた。

「いやいやいや。俺は指示に従っただけなんすから被害者ですよ。」

葛葉の言うように、単独での悪ふざけではなさそうだ。

立ち上がっていたメンバーが席に戻ろうとした時、

初めてある異変に気がついた。一人だけ席に座ったままの人間がいた。

不破湊だ。

不破は椅子に座ったまま、下を向いて微動だにしていなかった。

「どうしたの?不破っち。」

健屋が不破の肩に手を乗せた。

「えっ...。」

健屋は何かを察して、屈みこんで不破の顔を覗き込んだ。

皆が不思議そうに二人を見つめる中、先ほどの光景が

デジャヴしているかのように健屋が不破の体を調べ始めた

「嘘でしょ...。死んでるわ。今度は本当に...。」

 

 




健屋花那 手記より
死亡確認,4月5日 20時50分
被害者,不破湊

外傷はなし。事前の健康状態は不明だが、前後の行動や言動から
不審な点もないため、毒物による中毒死の可能性がある。
毒物は食事に混入していた可能性が高い。
その中でも直近で出されたシフォンケーキに混入していた可能性が高い。



ケーキだとしたら、あの時キッチンにいた六人のメンバーが
あや (ペンでグシャグシャと文字が消された跡)

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