虹の向こうに   作:夏野 雪

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4月6日⑵

4月6日 9時5分 ONMホテル一階

朝食の準備が整ったのは九時だった。

簡易的ではあったが、美兎、リゼ、クレア、ベルモンドの四人で

朝食の支度をしていた。

クレアとベルモンドがホテルに戻って来た時に、階段のところで

美兎とリゼに鉢合わせたのだった。

美兎たちの話を聞くと、皆のために朝食の準備を

しようということになったようだ。

二人では大変だろうと、クレアたちも手伝うことになったのだった。

 

朝食を全てダイニングに運び終わると、四人は他のメンバーを

呼びに行くことにした。

クレアとベルモンドは二階へ、美兎とリゼは一階から声を掛け始めた。

リゼが10号室のドアをノックした。ういはが使用している部屋だった。

ドアが開かれて中から顔を出したのは黛だった。

黛の後ろに見えたベッドの上でういはが寝ているのが見えた。

「ういはちゃんは大丈夫そう?」

「ああ。まだ寝てるよ。」

リゼの問いに対して、いつも通りに返答しているように見えた黛の

目の下にはうっすらとクマが出来ていた。

ういはの看病で碌に寝ていないのだろう。

「朝食を作ったんだけど食べない?」

「そうなんだ。ありがとう。ういははまだ無理そうだから、

俺だけいただくよ。」

黛は10号室から出ると、しっかりと部屋に鍵をかけ、

二人とともにダイニングへ向かおうとした時だった。

「リゼ! 委員長! 」

上から二人を呼ぶ声がした。突然のことと大きな声に驚き上を見上げると、

階段を登り切ったところに、少し怖い顔をしたベルモンドが立っていた。

「ベルさん。怖い顔してどうしたんですか? 」

リゼの声は微かに震えていた。その理由はリゼ本人にもわからなかった。

「二人とも、葛葉を見なかったか!? 」

「いいえ。起きてから一度も見てませんね。」

美兎の答えに合わせるように、リゼも首を横に振った。

「ちなみに、俺も見てないですよ。声も聞いてないですね。」

黛の部屋は一階で階段や玄関に近かったが、それらしい音も

聞いていなかった。

「そうか。ありがとう。ちょっと俺と社長は外を見てまわってくるから、

皆は先に飯を食っててくれ。」

そう言うとベルモンドは、二階の西側の廊下の方へと姿を消した。

三人は言われた通りにダイニングルームへと向かい、

他のメンバーを待つことにした。

一、二分すると、クレアと健屋が一緒に入ってきた。

二人も二階でベルモンドと社長に指示されたようだ。

五人は冷めないうちに朝食を食べることにした。

外の穏やかな天気とは違い、何とも重苦しい雰囲気だった。

誰かが進んで話をするわけでも無く、食器の奏でる音と共に

食事は淡々と進んでいった。

 

食事を始めて三十分程が経っただろうか。

全員の食事が終盤に差し掛かった頃だった。

ダイニングルームのドアが開かれた。

五人が一斉にドアの方へ注目した。そこに立っていたのは加賀美であった。

「社長どう...イヤッ! 」

加賀美に掛けた言葉を途中で飲み込んで悲鳴を上げたのは健屋だった。

健屋以外の四人も加賀美の異変に気がついた。

加賀美の真っ白のワイシャツには真っ赤な染みができており、

片手には一体の彫像のようなものが握られていた。

何か古代の女性を象ったような彫像だった。

その彫像の正体を不明瞭なものになっていたのには理由があった。

その彫像にも加賀美のシャツの染みと同じ様な真っ赤な液体が

べっとりと付着していたからであった。

 

 




健屋花那 手記より
死亡確認,4月6日 9時50分
被害者,葛葉

頭部に複数回殴られた形跡あり。頭蓋骨も陥没している。
相当な力で何度も殴られたようだ。
抵抗した形跡が手や腕にないこと、後頭部に打撲痕があることから
後ろから殴られ、倒れたところを追い打ちされたと思われる。

凶器と思われる彫像が傍に落ちていたのを社長が回収している。


あまりにもひどい傷だ。昨日まであんなに元気そうだったのに...。
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