加賀美さんが持っていた血の付いた彫像。
確か、あれはリラクゼーションルームにあったもの
初めて部屋に入った時、目に留まったのを覚えている。
あれは『ネメシス』。
確かに『ネメシス』だったわ。
4月6日 10時10分 ONMホテル一階 リラクゼーションルーム
加賀美とベルモンドは葛葉を1号室へと運び終えると、
皆が集まっているリラクゼーションルームへと戻った。
事の発端はベルモンドが朝食のことを伝えるために、
1号室に着いた時だった。
ノックしても返事が返ってこず、試しにドアノブに手を掛けてみると、
部屋の鍵が掛かっていなかった。
嫌な予感がしたベルモンドは部屋の中を覗いた。
部屋はもぬけの殻になっており、葛葉は居なくなっていた。
直感的に危ないと感じたベルモンドは加賀美を起こし、
二人で外を探すことにした。
二人は今朝ベルモンドたちが葛葉を見かけた砂浜からホテルへと
続く道の捜索から始めることにした。
その道では葛葉は見つからなかった。その道の途中には何本か
脇道が分岐しているところがあった。
二人は順々に脇道を調べ始めた。
それは、砂浜から二本目の脇道を捜索していた時だった。
その道は東部にある小さな森のようなとこに続いていた。
その道に入って間もない所にある木の陰で葛葉はうつ伏せで倒れていた。
頭から血を流して倒れてた葛葉の傍には例の彫像も落ちていた。
すぐに加賀美が体を抱き上げたが、既に息を引き取った状態であった。
二人は急いでホテルに戻り、ダイニングに現れたというわけだった。
それからは健屋を現場に連れていき、正確な死亡確認をしてもらった。
その間、他のメンバーはリラクゼーションルームで待機という流れになったのだ。
ベルモンドが葛葉発見時の状況を説明し終えると、
続けて今朝の行動の話をし始めた。
「俺とクレアさんが砂浜で葛葉を見たのが七時三十分ぐらいだったな。
そこからは、ずっとクレアさんと一緒にいたな。ホテルに戻ってからは
委員長とリゼも一緒だったな。」
「そうですね。それからは四人で朝食を準備してましたね。」
ベルモンドの説明に合わせ、クレアも頷きながら補足説明を加えた。
「わたくしたちがクレアさんたちと会ったのは間違いありませんわ。
起きてから部屋を出たタイミングがリゼさんと一緒になり、
二人で話して朝食を準備しようということになったので、
丁度二人で食堂に向かうところでした。」
美兎の説明にリゼも無言で頷いた。四人の行動に矛盾などはないようだ。
「葛葉さんの発見場所を考慮すると、リゼさんと委員長には無理でしょう。
もちろん、ベルモンドさんとクレアさんも同様でしょう。
そうなると、犯人が居るとすれば残りの私たちの中」
「ういはにも無理だよ。」
加賀美の発言を食い気味に遮ったのは黛だった。
「ういはは、ずっと部屋で寝ていた。ういはが俺のアリバイを証明できないけど、
ういはが部屋にずっといたことを俺は証明できるよ。」
黛の表情は普段通りに見えていたが、いつもより強くはっきりとした
口調になっていたのは確かだった。
「そうですか。どちらにしろ、あの様子では人を殴ったりすることは
難しいでしょう。となれば、この中で犯行が可能だったのは私、黛さん、
健屋さんの三人ってことになりますね。」
加賀美の言葉に部屋の空気が一気に張り詰めた。
まだ犯人が、この中にいるという確信があるわけではない。
でも、その疑念は皆の心の中を気づかぬ内に徐々に大きく広がっていた。
「ういはの様子を見てきます。」
疑念の沈黙を破ったのは黛だった。
誰も引き留める者はいなかった。黛は振り返ることなく部屋を出て行った。
リゼ・ヘルエスタ 手記より
ういはちゃんが死んじゃった。
あんなに元気だったういはちゃんが...。
話し合いが終わって、解散の流れになった時にまゆゆが戻って来た。
まゆゆは泣いていた。
そして、ういはの死を告げたのだった。
もう誰を信じればいいかわかんないよ...。
どうしたらいいの?
助けてよ