デート・ア・ディケイド   作:黒崎士道

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二人のデート

それから士道と士は十香との会話を楽しんでいた。ほとんどは十香が質問して二人がそれに答えていた。ただ、それだけのやりとりで十香は満足そうだった。

 

「……そういえば十香」

 

「なんだ?」

 

「お前って…結局どういう存在なんだ?」

 

「む?」

 

士道の問いに十香は眉をひそめる。

 

「ーー知らん」

 

「し、知らんって…」

 

「事実なのだ。仕方ないだろう。ーーどれくらい前だったか、私は急にそこに芽生えた。それだけだ。記憶は歪で曖昧。自分がどういう存在なのかなど、知りはしない」

 

「成る程……難しいもんだな」

 

「そうなのだ。

突然この世に生まれ、その瞬間にはもう空にメカメカ団が舞っていた」

 

「め、メカメカ団…?」

 

「あのびゅんびゅんうるさい人間たちのことだ」

 

「ああ…」

 

メカメカ団というのはどうやらASTのことらしい。士と士道は思わず苦笑した。

と、次いでインカムからクイズに正解したような軽快な電子音が鳴った。

 

『チャンスよ、士』

 

「チャンス?何が?」

 

『精霊の機嫌メーターが七十を超えたわ。見たところ、士道より士の方が精霊の好感度が高いから一歩踏み込むなら今よ』

 

「了解」

 

「なあ、十香。今度、そのだな…デートしないか?」

 

士は勇気を振り絞って始めて女の子をデートに誘った。

だが、十香の方はキョトンとして顔をした。

 

「デェトとはなんだ?」

 

「えっと…それはだなーーー」

 

『っ⁉︎士道、士!何か来るわよ!』

 

インカムから琴里の声が聞こた刹那、士たちのもとに燃え盛る火炎弾が襲いかかって来た。

 

「な、なんだ⁉︎」

 

直撃は逃れたが、士道と十香はそこにいた異形の存在に戸惑いを隠せず驚き、士はそれを見つけるとディケイドライバーを手に持つ。

 

そこにいたのは、揺らめく炎のような意匠が全身を覆っている『Wの世界』の超人、マグマドーパント。そして、右腕の巨大な爪が特徴的な虎に似た『鎧武の世界』の怪人、ビャッコインベスの二体がいた。

 

「二人とも、下がってろ」

 

「ゴルァァ!」

 

士は飛びかかって来たビャッコインベスに蹴りをくらわせ、ディケイドライバーを装着しライドブッカーからカードを取り出して構える。

 

「変身!」

 

《KAMEN RIDE・DECADE》

 

士はディケイドに変身すると、マグマドーパントがこちらに駆け出す。ディケイドはソードモードのライドブッカーでマグマドーパントを斬る。そしてカードを取り出す。

 

《KAMEN RIDE・AGITO》

 

ディケイドは光に包み込まれると、その姿を変えた。

金色の四肢に赤い複眼。その姿は夕日の光によってより神々しさを際立たせる。

 

力を得たものを説く新たなる戦士、仮面ライダーアギトだ。

 

「また違う姿だぞ!」

 

十香はディケイドの変身に目を輝かせていた。ディケイド・アギトはマグマドーパントとビャッコインベスにパンチとキックを叩き込み、教室の外へと追い出す。

 

「いいか士道、十香から離れるなよ」

 

「分かった。気をつけろよ」

 

「誰にモノを言ってんだよ」

 

ディケイド・アギトは背中越しから士道にそれだけを告げると二体の怪人たちを追いかけて外へと出る。上空では待機していたASTがマグマドーパントとビャッコインベスに応戦を仕掛けているが、二体ともそれを物ともせずマグマドーパントの火炎弾がディケイド・アギトに放たれた。

 

「うおおおお!」

 

だがディケイド・アギトは臆することなく炎上した道を駆け抜け、そのままマグマドーパントに飛び蹴りを放つ。

 

「グロオオ⁉︎」

 

《FAINAL ATACK RIDE・a、a、a、AGITO》

 

ファイナルアタックライドのカードをバックルに挿入したディケイド・アギトの額のホーンが展開され、姿勢を低く構える。ディケイド・アギトの足元に光り輝くアギトの紋章が展開され両脚に収束されていく。ディケイド・アギトは高く飛びライダーキックをマグマドーパントに撃ち込み、それをくらったマグマドーパントは衝撃で吹き飛ばされて爆発とともに消滅する。

 

アギトの姿から元のディケイドの姿に戻ると、ビャッコインベスが鋭い爪でディケイドに襲いかかって来る。ディケイドはそれをかわすと、ビャッコインベスから距離を取る。

 

「新しい力を試してみるか」

 

そう言ってディケイドが取り出したのはテイラーから貰った新しいカードだ。少し不安もあるが、多分大丈夫だろう。

 

「変身!」

 

《KAMEN RIDE・GAIMU》

 

『オレンジ アームズ 花道・オン・ステージ♪』

 

突然ディケイドを光の粒子が包み込むと、ディケイドは青いアンダースーツ・ライドウェアが装着される。そして突然、ディケイドの頭上に巨大なオレンジが出現したと思うと、それはディケイドの頭部に被さると各部が展開し、鎧の姿へと変わった。

 

力を自分のためではなく誰かのために使い、世界を変えるために闘う戦士、仮面ライダー鎧武だ。

 

「お、オレンジ?」

 

「おお!美味そうだぞ!」

 

それを見た士道は首を傾げるが、十香の方はなぜかオレンジを見て涎を垂らしながら目をキラキラさせて喜んでいた。食べられないのだが。

 

「さあ、ここからは俺のステージだ!ってな」

 

ディケイド・鎧武は専用武器の無双セイバーと大橙丸を手に持ちビャッコインベスに斬りかかる。

 

「はあっ!」

 

「ゴァァァ!」

 

ビャッコインベスは反撃だと言わんばかりに爪による連撃を繰り出すがディケイド・鎧武はそれを無双セイバーと大橙丸を使って受け止めたり、カウンターを入れながらどんどんビャッコインベスを追い込んでいく。

 

「これで決める!」

 

《FAINAL ATTACK RIDE・ga、ga、ga、GAIMU》

 

ディケイド・鎧武は大橙丸と無双セイバーをつなぎ合わせることでナギナタモードに変える。ナギナタモードとなった無双セイバーの刀身からエネルギー斬をビャッコインベスに放ち、それが命中するとビャッコインベスをオレンジ型のエネルギー空間で拘束する。

 

「はああああああああああああ‼︎」

 

ディケイド・鎧武はナギナタモードの無双セイバーを握りしめてビャッコインベスに駆け出すと、大橙丸の刀身で一閃する。

 

「ウゴオァァァァァ!」

 

ビャッコインベスは断末魔を上げながらその場に倒れ込むと、そのまま爆発を上げて消滅した。

 

「《鏖殺公》!」

 

十香のその声が聞こえたと思うと、校舎ではいつの間にか突貫して来た折紙と十香が交戦していた。その側では士道が何かの衝撃で気絶したのか、倒れていた。

 

「「はあああああああああああああああああああああ‼︎」」

 

十香と折紙は互いの命を刈り取るべく全力で剣を振り下ろす。だが、士道が近くにいるというのにそれを士は黙って見ているわけではなかった。

 

《ATTACK RIDE・ILLUSION》

 

「「ッ⁉︎」」

 

十香と折紙は互いに驚愕した。二人の目の前にはそれぞれの剣をライドブッカーで受け止めている二人のディケイドがいたからだ。

 

「ぐうっ……結構キツイな、これ」

 

分身が消滅したディケイドは二人が互いの剣を降ろすのを確認すると、取り敢えず琴里の指示で気絶した士道をフラクシナスへ回収するために担ぎ、カードを取り出す。

 

「悪いな、十香。また会おうな」

 

「ああ、ツカサもな」

 

十香は笑顔でそう答える。名残惜しいが、あまり時間をかけられないのでカードをバックルに挿入した。

 

《ATACK RIDE・INVISIBLE》

 

ディケイドと士道の姿はその場から虚空に消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、次の日……

 

 

「まぁ、考えてみたら普通に休校だよな」

 

士はそう呟きながら半壊した高校の前で、オリジナルのディケイドである門矢士が使用していたマゼンタカラーの二眼レフのトイカメラのフィルムを巻いてファインダーを覗き込んで、その背景をレンズに切りとった。

 

カシャリ、と小さな音をしてシャッターを切る。

 

今日は士道と共に一応登校したのだが、やはりあんな事が起きた後では休校となっていた。士道の方は買い物をしていくと言って、一度家に戻るために帰路に着いていた。その一方で、士の方は暇潰しのために街を彷徨っている。

今日は確か大樹と一緒に常連の喫茶店の店長からの依頼で店の手伝いをする予定だったので、そちらの方に行こうと商店街へと続く道に足を向けた。

だがーー数分と待たず、士は再び足を止めることとなった。道に立ち入り禁止を示す看板が立てられていたのである。その向こうに広がっている景色はさながら紛争地域のようだった。

アスファルトの地面は滅茶苦茶に掘り返され、ブロック塀は崩れ、雑居ビルまで崩壊している。

 

「行き止まりか…」

 

士はもう一度ファインダーを覗き込んでシャッターを切る。

 

「ーーーああ、そういえばここだったっけな……」

 

この場所には見覚えがあった。ここは士と士道が初めて十香と出会い、士がディケイドに変身して戦闘を行った空間震現場の一角だ。

この有り様を見る限り、まだ復興部隊が処理をしきれていないようだ。

 

「……これからどうなるんだろう」

 

士は目の前の光景を見るとそう呟いた。初めてディケイドに変身した時といい、昨日のことといい、パラドクスは十香が現れる度に襲って来ている気がする。

神様が言ったとおりこれからは色んなことが起きるし、イレギュラーによって別の物語も生まれるかもしれない。

 

「………サ」

 

あの時、士を襲って来た謎の漆黒のライダーもそうだ。戦国ドライバーはともかく、士はあんな仮面ライダーは知らない。もしあのライダーがパラドクスのメンバーならこれからの闘いで他のライダーも現れるかもしれない。

そうなるといくら仮面ライダーの力を持っているとはいえ士と大樹だけでは厳しい。

 

「……い、………サ」

 

それに、士はディケイドになって闘っている限り周囲を巻き込む可能性が高い。これからもパラドクスと闘えば士道や琴里たち、十香を傷つけてしまうかもしれない。

 

「おい、ツカサ!無視をするな!」

 

「ん?」

 

そこで士はやっと自分の名を呼ぶ声に意識を向けた。

視界の奥ーーー通行止めのエリアの向こう側から声が聞こえて来る。

その方向へ視線を集中させると、瓦礫の山の上に、街中に似つかないドレスを纏った少女が、ちょこんと屈み込んでいた。

 

「と、十香⁉︎」

 

「ようやく気付いたか、バーカバーカ」

 

背筋が凍るほどに美しい貌を不満げな色に染めた少女ーー十香は、とん、と瓦礫の山を蹴ると、かろうじて原型を残しているアスファルトの上を辿って士の方へ進んで来た。

 

「とう」

 

通行の邪魔だったのだろう、十香は目の前に立っていた立ち入り禁止の看板を蹴り倒して士の前に到着した。

 

「な、なんでここにいるんだ⁉︎てゆーか、空間震警報鳴ってないぞ⁉︎」

 

そう。精霊が現れる際には空間震が発生するのを知らせるための空間震警報が鳴るはずなのだが、周囲はとても静かだ。

 

「なんでって、お前から誘ったのではないか、デェトとやらに」

 

「あ……」

 

「さあツカサ、早くデェトに行くぞ。デェトデェトデェトデェトデェト!」

 

「分かった!分かったから!取り敢えずはそのワードを連呼するのをやめてくれ!」

 

「ぬ、何故だ?……はっ、まさかツカサ、私が意味を知らないのをいいことに、口にするだけでもおぞましい卑猥な言葉を教え込んだのか?」

 

十香が頬を赤く染め、眉をひそめる。

 

「そうじゃないって!取り敢えずは、話を聞いてほしいだけだ」

 

「ぬ、そうか……なら良い」

 

十香はそう言うと腕を胸の下で組んだ。だがデートをする前に、士は致命的なことに気がついた。

 

「その前に、その服装をなんとかしてくれないか?流石にその格好だと目立つし、ASTに…えっと、メカメカ団に見つかるのも面倒だしな」

 

「ふむ…ではどのような服が良いのだ?」

 

「そうだな……まあこんな服なら良いんじゃないか?」

 

そう言って士が取り出したのは、昨日士道から無理やり押し付けられた折紙の制服姿の写真だった。なんでこんなものを持っていたのか訳を聞いても士道は答えてくれなかったが。

 

「………む…」

 

十香は小さく嘆息すると、その写真を取り細々にちぎり棄てた。

そして指をパチンと鳴らすと、その身に纏っていたドレスは溶けるように消え、それと入れ替わるようにして来禅高校の制服を纏っていた。

 

「これで良いのか?」

 

「あ、ああ…」

 

士は目の前の光景に驚きを隠せなかったが、十香はふふんと腕組みをしている。

 

 

「では、行くぞ。デェトに!」

 

 

 

士たちの戦争(デート)は、まだ始まったばかりだ。

 

 

 

 

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