デート・ア・ディケイド   作:黒崎士道

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お久しぶりです!
更新が遅れてすみません。最近、リアルの方が忙し過ぎてかける時間があまりありませんでした。

皆さんに楽しんでもらえるようにもっと頑張ります!


デート開始

「さあツカサ、早くデェトだ!」

 

「分かったから、落ち着けよ」

 

士は十香に左手を差し出す。十香はそれを不思議そうに見つめるので士は微笑みながら口を開く。

 

「ほら、手を繋ごうぜ」

 

「なんだ、そういうものなのか?」

 

「ああ、今回は俺がエスコート役だからな。このくらいはしないと」

 

「ふむ……」

 

十香は考え込むようにしたが、しばらくして士の手を握った。

 

「…ん、悪くないな、これも」

 

そう言って十香が笑い、きゅっと手を握る力を少しだけ強くしてきた。小さくて柔らかい、女の子の感触が伝わってくる。士は自分でも顔が赤くなっているのが分かる。

 

「それじゃあ、行くか」

 

士は十香の手を引いて歩き出す。そこで、歩きながら十香が聞いてくる。

 

「ところでツカサ、デェトとは一体なんなのだ?」

 

「えーと……男女が一緒にでかけたり、遊んだりすること……かな?」

 

実際、士も男女交際なんてしたことがないため、勿論デートなんてしたことがない。よく大樹と士道、楓とともに出かけるくらいのことはしていたが、ほとんど女子と二人で出かけるなんてことはなかった。

 

「……つまりなんだ、昨日ツカサは私と二人で遊びたいと言ったのか?」

 

「あ、ああ…」

 

「そうか」

 

士は恥ずかしさでますます顔が赤くなる。その一方で十香は明るい表情をしてうなずくと、士の手を握る手を強くして大股で歩き出す。

 

「では早くデェトに行くぞ!」

 

士も十香に引かれて歩き出す。幸い、今日も制服のポケットにディケイドライバーをちゃんと隠し持っているから万が一のことがあっても対処はできるはずだ。

というか、そんなに毎日怪人が現れたらキリがない。

そんなことを考えながら路地を抜け、様々な店が軒を構える大通りに出た。

 

「……っ、な、なんだこの人間の数は。総力戦か⁉︎」

 

十香が先ほどとは桁違いの人の軍に驚いたらしい。その手には何やら悪い意味で見覚えのある光球を出現させていた。

 

「いや、違うって!誰も十香の命なんて狙ってないから!」

 

「……本当か?」

 

「本当だよ」

 

「…ツカサが言うなら信じてやろう」

 

その言葉に士はホッとする。ーー不意に、十香の顔から力が抜け、少し頬が緩んでいた。

 

「……おいツカサ、この香りは何だ?」

 

「香り?……ああ、あれか」

 

士はその香ばしい香りが漂っているパン屋を指差す。

 

「ほほう」

 

十香は十香は短くそう言うと、ジッとそこを見つめた。そして、絶妙なタイミングでぐーきゅるる、と十香のお腹が鳴る。士はそれに苦笑を浮かべる。

 

「……行くか?」

 

「うむ!そうしよう!」

 

十香はやたら元気良くそう言うと、大手を振ってパン屋の扉を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは、天宮大通りにある喫茶店『ル・クール』。

落ち着いた雰囲気の店内では、女性客が多い中である一人の少年が忙しそうに営業スマイルでオーダーを受け取っていた。

 

「ご注文はお決まりでしょうか?」

 

その少年とは仮面ライダーディエンドである海東大樹だった。

大樹は今日、士と通い続けているこの喫茶店で店長から客が多すぎて人手が足りないということで現在、エプロン姿で絶賛バイト中というわけだ。

 

「蓮さん、オーダー入ります」

 

客からオーダーを受け取った大樹は店内の奥にあるカウンターにいる人物に呼びかける。

 

「悪いな、大樹。忙しい時間帯に手伝わせて」

 

カウンターから現れたのは、日本人とは思えない癖毛のある銀髪でこげ茶色のエプロンを着た男性だった。

この男性が喫茶店『ル・クール』のマスターの檜山蓮である。

 

「いえ、僕も士もお世話になってますから。このくらいは当然ですよ」

 

「そう言ってくれると助かるよ」

 

蓮はコーヒーを淹れながらそう言う。その時、カランカラン、とベルの音が鳴ると、大樹の耳に聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「ねえ、令音。ここのスイーツっておいしいんだよ。結構人気でいつも満席なんだけど……」

 

大樹はその方向を見ると、中学校の制服姿の琴里が令音を引き連れてやって来た。琴里を見つけた蓮はそちらへ向かう。

 

「いらっしゃい。よく来たな、琴里ちゃん」

 

「おお!蓮さん、こんにちわなのだ!」

 

蓮を見て琴里は嬉しそうに挨拶を交わす。琴里もよく士や士道達と共にこの店にくるので、蓮からして見ればもはや琴里も常連さんだ。

 

「大樹、君は学生だろう。こんな時間からバイトとは感心しないね」

 

大樹を見つけた令音は痛いところを聞いてきた。そこでフォローを入れてくれたのは蓮だった。

 

「すみません、実はこいつとははちょっとした付き合いで手伝ってもらっているんです。今回は見逃してやってはくれませんか?」

 

「まあ、教育者ならここで見逃すわけにはいかないが、寄り道をしている琴里を私は了承してしまっている。今回は目をつぶりましょう」

 

「ありがとうございます。では、こちらへどうぞ」

 

蓮のお陰で大樹は令音からの許しをもらえることができた。蓮は二人を店内の一番奥の席に案内する。その際に、女性客の多くは蓮に注目していた。

この店は元々メニューにある料理がどれも絶品であることで有名なのだが、この店のマスターのルックスの良さで女性客にも大変人気なのだ。たまに手伝いに来る来禅高校イケメンランキング屈指の順位の大樹と士も例外ではなかった。

 

そしてそれから一時間後……。また、カランカラン、とベルの音が鳴る。

 

「ぶふぅぅぅぅぅぅッ⁉︎」

 

突然、琴里があるものを発見して、口に含んでいたジュースを勢いよく吹き出した。そのお陰で目の前にいた令音はジュースをモロに被り、びしょ濡れとなっていた。

 

「令音さん⁉︎」

 

大樹は急いで令音にタオルを手渡す。令音は手渡されたタオルで顔を拭った。

 

「どうしたんだい、琴里ちゃん」

 

「だ、だってあれ…」

 

「「……?」」

 

大樹と令音は琴里が指差す方向を見るとーーぴたりと動きを止めた。

大樹はそのまま固まりお盆を落とし、令音は口に含んだ紅茶をぶー、と琴里に吹き出す。

 

「……なまらびっくり」

 

……何故北海道方言?と、大樹は心の中でツッコミを入れた。

 

「えええ……なにこれぇ」

 

琴里は令音からのジュース攻撃を受けて身体中がベトベトして軽く涙目になっていた。大樹は琴里にもタオルを手渡す。大樹たちの視線の先にあったのはーー

 

「ほう、この本の中から食べたいものを選べばいいのだな?」

 

「そういうこと。好きなの選んでいいぜ」

 

「きなこパンはないのか?」

 

「いや、流石にきなこパンはないって。てか、さっきのパン屋で食いまくってたじゃねえか」

 

「また食べたくなったのだ。一体なんだあの粉は……あの強烈な習慣性……あれが無闇に放たれれば大変なことになるぞ……人々は禁断症状に震え、きなこを求めて戦が起きるに違いない」

 

「それはねえって」

 

そう、店内に入店したのは来禅高校の制服を着た二人の男女。一人は大樹の親友であり、仮面ライダーディケイドである士。

もう一人は精霊、十香だったのだ。

 

琴里はいつの間にか、白いリボンから黒いリボンに取り替える。そして携帯を開くとラタトスクの回線に繋いで、何か連絡を取る。

 

「さて、大樹にも働いてもらうわよ」

 

ジュースまみれの司令官様に言われても反応しづらいのだが、そこは黙っておくことにする。

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりでしょうか?」

 

「えーと……って、大樹⁉︎」

 

「む、誰なのだ?ツカサ」

 

今日は大樹とバイトだったことを完全に忘れていた士は声を上げ、大樹を知らない十香は首を傾げる。

 

「やあ、十香ちゃんだね。僕の名は海東大樹、士の友達だ。よろしく」

 

大樹はそう言って指鉄砲を作って十香に狙いを定めて向ける。

 

「大丈夫だって、大樹は俺の仲間だから」

 

「むぅ……まあツカサが言うならそういうことにしておいてやる」

 

十香は少し大樹を怪しんでいたが、士の言葉で少しは信じてもらえたようだ。それから十香はメニューに載っていた料理の半分を注文し、全て平らげた。確かに「好きなの選んでいいぜ」とは言ったがここまでだとは思いもしなかった。

 

30分後…士は会計を行っていた。レジを担当しているのは大樹だ。

 

「お会計、6万8千円となります」

 

「……」

 

士の財布から全ての重みが消え去った。士は十香に気づかれないように静かに涙を流していた。大樹はそんな士に苦笑しながらレシートとともに琴里から託されたものを渡す。

 

「…福引券?」

 

福引券を受け取った士は疑問の声を上げるが、大樹がこっそりとデートの作戦だと耳打ちをした。士はそれを聞いてしぶしぶ了承し、十香を連れて喫茶店から出て行った。

 

「ツカサ、なんだそれは」

 

十香は士が手に持っていた福引券を興味深そうに見詰めてきた。

 

「行ってみるか?」

 

「ツカサは行きたいのか?」

 

「……行きたい、ちょー行きたい」

 

「では行くか!」

 

十香は大股で元気良く士の手を引いて進んでいく。

それから少しすると、赤いクロスを敷いた長机の上に大きな抽選器(ガラポン)が置かれたスペースが見えてきた。ハッピを羽織った男性が抽選器のところに一人、賞品渡し口のところに一人おり、その背後には景品と思われる自動車やら米やらが置かれていた。既に数人が列に並んでおり、十香はそれを見て士が渡した福引券を握りしめ目を輝かせた。

 

「とりあえず、並ぶか」

 

「ん」

 

十香が頷き、二人は列の最後尾に並ぶ。

十香は前に並んだ客が抽選器を回すのを見ながら、首と目をぐるぐる動かしている。

天然なのだろうか、その時の十香が凄く可愛く見えた。

 

そしてすぐに十香の番が来る。十香は前の客に倣って福引券を係員に渡して抽選器に手をかける。

よく見ると、係員の一人は確か、《早過ぎた倦怠期》川村……だった気がする。本人には悪いがよく覚えてない。

 

「これを回せばいいのだな?」

 

十香はそう言って、ぐるぐると抽選器を回す。数秒後、抽選器から赤いハズレ玉が飛び出した。

 

「……っと、残念だったな。赤はポケットティーー」

 

士の言葉は、川村(?)が手に持っていた鐘がガランガランと高らかに鳴ったため、遮られてしまった。

 

「大当たり!」

 

「おお!」

 

士は眉を潜めたが、別の係員が賞品ボード『1位』と書いてある金色の玉を赤いマジックペンで塗りつぶしていたのを目撃した。

 

「もうなんでもありだなこれ⁉︎」

 

何故か士はツッコミを入れずにはいられなかった。

 

「おめでとうございます!1位はなんと、ドリームランド完全無料ペアチケット!」

 

「おお、なんだこれはツカサ!」

 

「テーマパークなのか…?聞いたことない名前だけど……」

 

興奮した様子でチケットを受け取る十香に士は訝しげな調子で返す。すると、川村(?)がずずいっと顔を寄せて来る。

 

「裏に地図が書いてありますので、是非!これからすぐにでも!」

 

言われた通りにチケットの裏を見ると、地図が書いてあった。というか、ものすごく近かった。

 

「……行ってみるか?十香」

 

「うむ!」

 

本人も乗り気なようなので、とりあえず足を運ぶことにした。

場所は本当に近かった。この福引き所から路地に入って数百メートル。まだ両側には雑居ビルが並んでおり、テーマパークがあるとは思えない。

だがーー

 

「おお!ツカサ‼︎城があるぞ‼︎あそこに行くのか⁉︎」

 

十香が今までになく興奮しながら、前方を指差す。

そんな馬鹿なと思いつつチケットの裏側から視線を前方に向ける。

 

そこには確かに小さいながらも、西洋風のお城がある。看板にも、『ドリームランド』と書いてある。

 

……ついでにその下に『ご休憩・二時間四○○○円〜 ご宿泊・八○○○円〜』という文字まで書いてあった。

まあつまりは、大人しか入ってはいけない愛のホテルである。

簡単に言うと『ラブホテル』だった。

 

「……戻るぞ十香。別のところに行こう」

 

「ぬ?あそこではないのか?」

 

「いや、確かに場所はあってるけどあそこに行くのはやめておこう」

 

「しかし、あそこにも行ってみたいぞツカサ」

 

「……いや、今はまだ流石にまずいからな…。いつかまた来ような」

 

「むぅ…そうか」

 

どうにか十香を説得することは出来たが、流石に初デートでここは無理がある。士は十香の手を引きながら一刻も早くその場から離れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、街中に建っているあるビルの屋上でフードを被った男が立っていた。

 

「ククク……まさか、あの仮面ライダーディケイドが精霊とデートしてるなんてなぁ…」

 

男はそう言いながら手に持ったある物を眺める。

 

「おもしれえ、こいつを使ってみるか……」

 

男の手には片方にのみスロットが取り付けられた赤いドライバーと、『D』の文字が刻まれたUSBメモリーのような物があった。

 

「せいぜい楽しませてもらうぜ……」

 

男は口元を歪めながらそう呟く。

 

 

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