今回は、四糸乃が現れるまでの一ヶ月の出来事を書きます!
遂に『或守インストール』が発売しました!早速プレイしてこの話も小説に投稿しようと思います!そのためにも、早くそこまで話を進めないといけませんね笑
新たな日常と指輪の魔法使い
「…………あー」
「大丈夫か士?」
十香の力を封印してから、十日間が過ぎた。
復興部隊の手によって完璧に修復された校舎には、たくさんの生徒たちが集まっている。そんな中、士は気の抜けた息を吐き、だるそうに机に突っ伏していた。
「なんかなぁ…夢みたいな話だよな」
士はこの一ヶ月の間に起きた全ての出来事を思い浮かべる。精霊の少女ーー十香と出会い、ディケイドに変身し謎の組織パラドクスとの戦いが始まったことなど、こうしてみると色んなことがあった。
そう考えていると、士道は暗い表情をする。
「羨ましいよ……士が」
「士道…?」
不意に士道が小さく呟き、士は士道の方を振り返る。
「俺にも…士みたいに力があったら……」
士道はそう言って俯く。士道の気持ちが分からないことはない。あの時、パラドクスの奇襲があった時、士道はただ見ていることしか出来なかったのだ。それがどれだけ自分に無力感を与えるか。
だが士は士道にそんな顔をしてほしくない。
「……そんな風に自分を悲観するなよ、士道」
「え?」
士の言葉に士道は顔を上げる。士はそれを確認すると、言葉を続ける。
「俺は、守りたいものがあるから戦ってるんだ。士道だって…五年前に俺を助けてくれただろ?」
「五年前って……?」
「覚えてないならいいや」
「な、なんだよそれ」
士の曖昧な言葉に士道は質問をするが、士は質問に答えず再び机に突っ伏した。これ以上聞いても何も答えないと分かった士道はため息をつく。
その時、教室に入ってきた人物が二人に近づく。
「やあ士、士道、おはよう」
「おはよう大樹」
「あー、おはよー」
教室に入って来た大樹に士は間の抜けた挨拶をする。それを見た大樹は呆れ顔で士を見る。
「士…いくら十香ちゃんとしばらく会えてないからってダラダラしすぎじゃないかな?」
「そんなんじゃないけどさぁ…なんか最近調子が悪くて」
士が十香の霊力を封印して以来、あれから怪人たちによる被害が少しずつ増えてきた。その度に士と大樹は戦闘に駆り出されているため、『天宮市を守る正義のヒーロー』とディケイドとディエンドの写真が新聞の一面になっていたりする。
「そういえば…」
一瞬、大樹が何かを企んだかのように凄く不気味な笑みを浮かべた気がしたのは、士の気のせいだと信じたい。
「今日の僕の弁当なんだけど、士にも食べてもらいたいだけど…いいかな?」
「は?いや、別にいいけど……」
「そうかそうか」
士の返事を聞いて大樹が何故か喜んでいる気がする。そこで大樹が口を開く。
「ところで士、まだ食べられないのかい?……ナ・マ・コ」
「寧ろあれを食べられる奴の正気を疑うわ‼︎」
咄嗟に士が顔を青ざめ席からばっ、立ち上がり叫ぶ。
余談だが、士は大のナマコ嫌いなのだ。昔一度、琴里、士道、大樹がそれを克服させるために(大樹の場合は面白そうだから)士を椅子に縛り付け、大樹が調理したナマコを無理矢理口にねじ込ませた結果、白目を向き泡を吹きながら倒れた。
その時の大樹の一言が、『やっぱり生に塩をかけただけじゃだめだったのかな……?』だったのだ。
以来、士のナマコに対する拒絶反応がさらに強くなってしまい、逆効果となってしまったのだ。
士と大樹がそんな口喧嘩をしていると、教室が急に騒ついた。そこには鳶一折紙が額やら手足やらを包帯だらけにして、頼りない足取りで士の前まで歩いてきた。
「よう、鳶一。無事でよかっーー」
士がそう言いかけたところで、折紙が深々と頭を下げていた。
「ーーごめんなさい。謝って済む問題ではないけど」
折紙はあの時ーー十香を狙った一撃を誤って士にはなってしまったことを謝罪する。
「いや、いいって。お互いに無事だったんだし」
「でも、私の気が収まらない」
「だから、いいんだって。結局俺は生きてるんだし、鳶一だって生きてたんだ。はい、この話はお終い!」
士の方はすでに折紙を許しているのだが、まだ食い下がろうとする折紙を黙らせるために強制的に会話を終了する。
そのタイミングで、ホームルームの開始を告げるチャイムが鳴り、タマちゃん先生が教室に入る。
「はーい、皆さーん。ホームルームを始めますよぉー」
折紙はそのまま無言で自分の席に戻り、他の生徒たちもそれぞれの席に着く。
とはいえ、折紙の席は士の隣にいる士道のすぐ隣にある席だ。安堵の息も吐けない。
「はい、皆さん席に着きましたね?」
次いで何かを思い出したかのように手を打ち、うんうんと頷いた。
「そうそう、今日は出席を取る前にサプライズがあるの!入って来て!」
その言葉に答えるように二人の少年と、一人の少女が入って来た。
士、士道、折紙の三人はその少女を見て驚いた。
そこにいたのは夜空のような美しい髪と水晶のような瞳をした少女だった。
「今日から厄介になる、夜刀神十香だ。皆よろしく頼む」
高校の制服を着た十香が、ものすごくいい笑顔をしながら入ってきた。そしてチョークを手に取ると、下手くそな字で黒板に『十香』とだけ書いた。
「と、十香……」
「ぬ?」
士が言うと、十香が視線を向けてきた。
「おお、ツカサ!会いたかったぞ!」
十香が大声で士の名を呼び、ぴょんと飛び跳ねて士の席の真横の位置までやって来る。そのせいで士はクラス中から注目を浴びる。
そして十香は隣にいた士道、士の前の席にいる大樹を見つけると再び声を上げる。
「おお、シドーに大樹もいるではないか!」
「やあ十香ちゃん、久しぶり」
「うむ!」
大樹は十香にいつもと変わらない態度で挨拶をする。そこで十香は、冷たい視線を向けてくる折紙の姿を見つける。
「ぬ、何故貴様がこんなところにいる?」
「それは、私の台詞」
二人の視線が混じり合う。この雰囲気はいつでも戦闘を行いそうで士は内心でひやひやしながらその様子を見守る。
「は、はい!おしまい!おしまいにしましょう!まだ自己紹介が終わってませんからー!」
タマちゃん先生がそう言うと、クラスの全員の視線が十香とともに教室に入ってきた二人の男子に集まる。
そのうちの一人が前に出てきて、自己紹介を始める。
「えっと…絶希晴人です。これから一年間、皆さんと学園生活を楽しみたいと思っています。よろしくお願いします」
人懐っこそうな顔、髪は短めの茶髪。その左手にはめた赤い宝石の指輪が輝いていた。
転入生の一人、絶希晴人はにこやかな顔でそう告げて一礼する。
晴人の自己紹介が終わり、もう一人の転入生にクラスの視線が集まる。
闇を思わせる漆黒の黒髪。少し長めのその髪が金色に鈍く輝く瞳を少し隠す。クラスの視線に気がついたのか、少年は面倒くさそうな顔をする。
「…俺は葛場千秋だ。よろしく」
それだけ告げると、もう一人の転入生、葛場千秋は口を閉ざしてしまった。しばしの沈黙、クラスの全員が次の言葉を待つが、それ以上は何も言わなかった。
「あ、あのぉー、以上……ですか?」
「はい、以上です」
タマちゃん先生が千秋に訊くが、返ってきたのは即答だった。タマちゃん先生は何故か泣きそうな顔になる。
「………」
「え……?」
士の気のせいなのか、一瞬千秋が此方を見て少し笑っていた気がした。
そして再び沈黙が走る。まずい空気になってしまったと思いきや。
『キャーーーーーーーーーーッ‼︎』
突然クラスの中に大音響が響いた。それは全てクラスの女子によるものだった。その一方で折紙は興味なしと言うように十香を睨み、十香は何故こんなことになったのか訳が分からず戸惑い、楓は普通にパチパチと拍手をしたりと普通の反応だった。
「かっこいい!しかも二人ともイケメン!」
「五河君と海東とはまた違ったタイプのイケメンよ!」
「五河君の爽やか系、海東君のクール系、絶希君のおとぼけ系、葛場君の俺様系!もうお腹いっぱい‼︎」
「どれもステキ‼︎」
ホームルームの間、クラスの女子はそんな感じに騒いでいた。士は勝手に自分と大樹のキャラが決められていたことに苦笑していた。
結局あの後、十香が士の隣にいた生徒を睨みで退かし、席は十香、士、士道、折紙という順になった。二人の間で十香と折紙が無言で睨み合い、間にいた士と士道は頭を抱えていた。
午前中の授業が終わり昼休み、士道は十香、楓、士と席を合わせ机の上に弁当を置く。だが、士だけがその場にいないことに気がついた十香は疑問を浮かべる。
「む?シドー、ツカサはどこに行ったのだ?」
「ああ……士なら大樹に追い回されてるよ」
士道の言葉に楓も疑問を浮かべる。
「大樹君が士君を?なんで?」
「大樹の奴が乾燥ナマコのパックを買って来たんだよ。で、それ持って士を面白半分で追い回してるってわけ」
「ああ……大樹君ならやりそうだよね…」
楓は苦笑しながら廊下の方に目を向ける。そこには……
「つーかーさー!まだナマコが食べられないのかーい?」
「来るなああああああああああああ‼︎」
大樹がパックに入ったナマコを手にものすごいいい笑顔で、士が涙目でそれから全力逃走しているという、なんともシュールな光景がそこにあった。
「楓、ナマコとはなんだ?うまいのか?」
「えっと……十香ちゃんは知らない方がいいよ、あれって一応食べられるけど…気持ち悪いし……」
「む、そうなのか?一度食べてみたいぞ」
「そ、それより!士君には悪いけど、お腹も空いちゃったし先に食べよう!ね?」
「そうだな!そうしよう!」
「う、うむ」
士道と楓は十香を誤魔化そうと昼食を取ろうと誘い、十香も訳が分からないまま二人と昼食を取る。
その日の昼休みは、士の絶叫が学内に響き渡った。
今日の授業が全て終わり、士は士道、十香とともに帰宅した。士と士道は十香に街を案内していたが、十香が腹が空いたということで、現在三人は休憩も兼ねて喫茶『ル・クール』に来ていた。
「よお士、士道、よく来たな」
「こんにちは、蓮さん」
店内に入ると、客は一人もおらず、蓮が三人を出迎えてくれた。
「…ん?その子はこの間一緒に来ていた子か?」
「ああ、十香っていうんだ」
「うむ。よろしくだ、蓮とやら」
「ああ、よろしくな。三人とも好きな席に座ってな、後でメニューを持って行くから」
蓮はそう言うとカウンターへと姿を消す。士たちもテーブルに着くと、蓮がメニューを持って来て三人がそれぞれ注文をして十数分後には注文した品がテーブルに並べられる。
士はショートケーキと紅茶、士道はホットケーキとコーヒー、そして十香はというと……。
「おおおおおお⁉︎」
十香は目の前に置かれた少し大きめの器を見て、目を輝かせる。器の上にはきなこをかけ、いろんなお菓子でデコレーションされた大きなパフェが置かれている。
十香は見た時点で早速涎を垂らしている。
「れ、蓮!もしやこれはみんなきなこなのか⁉︎」
「ああ、どうだ?新作メニューの『DXきなこパフェ』は」
「早く食べたいぞ!」
「そんなに慌てなくてもパフェは逃げねぇよ」
そんな十香に士道が苦笑しながら言う。三人で早速デザートを食べようとした時……。
「っ⁉︎なんだ⁉︎」
突然近くで爆発音が聞こえ、三人は手を止める。士は席から立ち上がり、士道と十香の手を引く。
「行くぞ、デザートは後だ!蓮さん、行ってくる!」
「ああ、気をつけろよ」
十香が何やら騒いでいたが士はそんなことはお構いなしに二人を引っ張り、『ル・クール』から出て行く。最終的に誰もいなくなった店内で唯一残った蓮は、一人呟いた。
「……さて、今度はどんなライダーが来るんだろうなぁ」
士たちが現場である廃工場に着くと、そこには『ウィザードの世界』の怪人、ファントムとグールがいた。
「あいつらはあの時の!」
「うむ、私を襲って来た奴らと似ているぞ!」
ファントムを見たことのある士道と十香は声を上げる。グールを引き連れてたファントム、ゴブリンが此方に向かってくる。
「つ、ツカサ!」
「わかってる、変身!」
《KAMEN RIDE・DECADE》
「やれ!」
士はディケイドに変身し、ライドブッカーをガンモードにしてゴブリンたちに銃口を向ける。それと同時にゴブリンの指示でグールが駆け出す。
「さて、やりますか……」
《ATTACK RIDE・ILLUSION》
ディケイドはライドブッカーからイリュージョンのカードをバックルに挿入する。すると、ディケイドが三人に分身する。それぞれがガンモードのライドブッカー、ソードモードのライドブッカー、徒手空拳の戦闘スタイルに分割し、グールたちを相手取る。
「数には数だ。と言っても、お前らみたいにただ呻くのとは訳が違うぜ」
ソードモードでグールを斬り倒し、ガンモードで撃ち抜き、格闘で薙ぎ倒す。グールは手に持った槍で応戦するが、全員ディケイドに倒されみるみる数が減っていく。グールは跡形もなく倒された。
「なんだ?なんかあっさりし過ぎな気が……」
「ツカサ!」
十香の声がして後ろを振り返ると、そこには士道と十香の二人を人質に取ったゴブリンがいた。先ほどの戦闘のうちに戦えない二人に近づいたのだろう。
「士道!十香!」
「動くなよディケイド?こいつらがどうなってもいいのか?」
「くっ…お前!」
ディケイドは二人を人質に取られて動けなくなった。士道は一般人で、十香は精霊であっても力を封印された今の状態では普通の人間と何の変わりもない女の子だ。
「くくく…形勢逆転だなぁ?」
ゴブリンは何やら不思議な石を取り出すと、それを地面にばら撒いた。するとその石から、先ほどディケイドが倒したはずのグールたちが姿を現した。
グールは槍を構え、ディケイドに襲いかかるが、士道たちを人質に取られたことで下手に動けないディケイドはその攻撃をただ受けるだけだった。
「ぐ……!」
「士!」
流石にこのままではディケイドも不利になってくる。ディケイドはこの状況をどうにかするためにグールに抵抗しようとした、まさにその瞬間。
『⁉︎』
「ぐうあああ⁉︎」
突然銃声とともにグールたちとゴブリンから火花が散った。拘束が緩んだ隙に、十香と士道はゴブリンから逃れ、ディケイドの元に駆ける。
「ツカサ!」
「悪い、士。俺たちが足を引っ張ったから…」
「いいんだって、二人が無事だったなら」
ディケイドは仮面の内側で二人に微笑む。そしてディケイドは先ほどの奇襲の攻撃の正体を探すために辺りを見回す。
「成る程ね……ファントムか。それにグールを引き連れてるってことは…どうやらお前が主犯ってとこだな」
不意に後ろからそんな声が聞こえたのでディケイドはそちらを振り向く。そこには、右手に奇妙な形の銃をゴブリンたちに向けて構えていた一人の人物がいた。
その人物とは、今日、十香たちとともに士たちのクラスに転入して来た少年ーー絶希晴人だった。
「絶希……何で、お前が…」
「…まあ、細かいことは後でいいだろ?まずはこいつを倒さないと」
晴人はそう言うと、右手に装着してある手のような形の指輪をベルトの手の形になっているバックル部に翳す。
《ドライバーオン・プリーズ♪》
その音声とともにベルトがその姿を変えた。普通のベルトから、まるで仮面ライダーが使用するベルトのように。続けて晴人は、ベルトのバックル部にある左右の両端に設置されているシフトレバーを操作して、右手側に傾いた手形のバックル、ハンドオーサーから音声が鳴り響く。
《シャバドゥビタッチヘンシーン♪シャバドゥビタッチヘンシーン♪》
ドライバーが軽快な音声を響かせる中、晴人は左手に装着した赤い宝石の指輪『フレイムウィザードリング』にあるバイザーを下ろし、ハンドオーサーに左手を翳す。
「変身」
《フレイム・プリーズ♪》
《ヒー♪ヒー♪ヒーヒーヒー♪》
そこに出現した赤い魔法陣が歌のような音声コールと共に魔法陣が晴人の身体を通過する。魔法陣が通過し終えると、晴人の姿が変化していた。
特徴的な赤い宝石を模した円型の仮面が日の光を反射し、全身に纏う黒いロングコートがはためく。左手の中指には仮面と同じ赤い宝石の指輪が耀き、腰には手のような形のドライバーが装着されている。
その姿こそ、絶望を希望に変える希望の魔法使い。
「ウィザード…」
「さあ、ショータイムだ」
この精霊の世界に、指輪の魔法使いが参戦する。