「…………」
士たちは現在、フラクシナスの艦内にいた。そしてその視線の先には艦長席に座る琴里の前で士道が正座をしているという光景がある。
「さて…さっきのはどういうことかしら、士道?」
琴里は言っているのは士道が鎧武に変身した件についてだろう。それはそうだ。士道が変身したことは士たちにとっても衝撃的だったのだ。
「えっと……見てたのか?さっきの」
「ええ、そうよ。あなたが突然ベルトと錠前を使って変身したところから最後までね」
琴里がそう言ってモニターを指差すと、そこには先ほど戦極ドライバーとロックシードを使い鎧武に変身しディケイドたちと共に戦闘を繰り広げていた士道の姿が映し出されていた。
「ですよねー」
士道は完全に言い逃れが出来ない状況にいた。
「それじゃあ質問するけど士道、あなたはこのベルトと錠前を何処で手に入れたの?」
「……言わなきゃダメか?」
「当たり前よ。あんなもの見せられたんだから」
琴里に観念した士道は戦極ドライバーとオレンジロックシードを取り出し、口を開く。
「この戦極ドライバーは……貰ったんだよ」
「貰った?誰に…?」
「蓮さんだよ。昨日電話で『渡したいプレゼントがある』って言われて店に行ったらこのドライバーを貰ったんだ」
士道がそう言う。そこで士は確かに今日士道は蓮に店に呼び出されたということを思い出した。だが何故蓮が戦極ドライバーを持っていたのかは分かるはずがない。
「……ふーん。蓮さんがねぇ…」
士道の言葉を琴里が興味深そうに聞く。そして艦長席にもたれかかり、ため息をつき口を開く。
「……まあ、何にしてもあなたまで仮面ライダーに変身できるようになったのなら心配事が少しは減るかもね。精霊をデレさせること以外は」
「うぐ……」
一応話はこれで終わったが琴里の言葉に士道がうめく。さっきまでのピリピリした空気がすぐに和らいだ。
「なあ、俺って呼ばれた意味あった?」
そこで晴人が口を開く。晴人の場合は琴里の指示でフラクシナスに同行してもらったのだが、琴里が晴人を連れてこさせた理由がわからない。
「あるわよ、指輪の魔法使いさん。
あなたにもラタトスクに協力してもらいたいの、仮面ライダーが四人も居れば味方として心強いわ。それにパラドクスと戦うのなら私たちだって少しくらいはサポートができると思うのだけどどうかしら?」
琴里からラタトスクに勧誘され、晴人は少しの間、頭を悩ませていた。
「うーん……俺って組織とかは好きじゃないんだけど、士たちも居るしなぁ。あ、でもお試しでっていうならいいけど」
「まぁ……いいわ、それで」
晴人の曖昧な答えに納得いかないような顔をする琴里だが、艦長席から降りて、晴人に手を差し伸べる。晴人も差し伸べられた琴里の手を取り互いに握手を交わす。
「それじゃあ、晴人にはこれからラタトスクの一員となってもらうのだけど」
「はい質問」
「……何かしら?」
出鼻を挫かれた琴里は不機嫌な態度で晴人に聞くと、晴人が口を開く。
「やっぱり仲間になるならアダ名が必要だと思うんだけどさ、『ことりん』か『ことちゃん』どっちがいいかな?」
「知らないわよそんなの!勝手にしなさい!」
「冗談だよ、冗談」
「会ってすぐにアダ名をつけるなんてたまったもんじゃないわよ……」
勝手にアダ名をつけようとするマイペースな晴人に対して、琴里の方は頬を引きつらせていた。こんな晴人だが、戦闘となると頼もしい味方なのだ。そこで気を取り直した晴人が琴里に聞く。
「それで、俺はここでは何をすればいいんだ?」
「そうね…晴人も大樹と同じで士と士道のサポートをしてもらおうかしら。あとは精霊との接触中に現れた怪人やパラドクスとの戦闘にも出動してもらうくらいね」
「もう一つ質問、これって給料出るのかな?」
「出るわけないでしょ、あなた仮面ライダーでも一応学生よ」
「なーんだ」
琴里の答えに晴人がつまらなさそうに言う。というか、給料をもらうつもりだったのだろうか。
「そんじゃあ、俺はこの辺で帰るとするよ。今日は色んな意味で疲れたから……」
「あ、ああ…」
「では、こちらだ」
晴人は疲れた顔で士たちにサムズアップをすると、令音に連れられてフラクシナスから出て行く。士もそれに続くように歩き出す。
「それじゃあ俺も行くよ、夕飯の支度もしなくちゃいけないしな。琴里と士道は何かリクエストとかあるか?」
「俺は特に何もないけど…」
「私もよ。士に任せるわ」
「ああ、わかった」
士はそう言うと、フラクシナスから地上に転送され夕飯の材料を買うために商店街へと向かう。
「おや〜士君じゃないかい!いつもウチの店を贔屓してくれてありがとうねぇ」
「そんなことないですよ。ここの野菜っていい品ばかりだし、それにおばあちゃんとは古い付き合いなんだから」
「あら〜!そりゃ、嬉しいこと言ってくれるじゃないかい!ほれ、カボチャとジャガイモもおまけしとくよ」
「おおお!ありがとう!」
夕飯の食材を買いに来た商店街に来た士はとある店に来ていた。士がよく野菜を買いに来る八百屋の主人であるおばあちゃんは元気に笑い、士が渡したエコバックに野菜を入れていく。
「よし、これで全部かな。じゃあおばあちゃん、また来るよ」
「ああ、またいつでもおいで。琴里ちゃんと士道君にもよろしくね」
「いやぁー、今日は結構買ったなぁ」
士は八百屋を出た後、偶然にもスーパーのタイムセールに遭遇してしまい今の士は両手にパンパンに膨れたエコバックが持たれていた。
「随分のんきなことをしているな…」
背後から声が聞こえたので士は後ろを振り返る。そして、その人物を見る途端に士は身構える。
「っ!お前は、あの時の……!」
「よう…少しは強くなったか?」
その人物とは、黒いコートを纏いフードをかぶった士とおなじくらいの背丈の少年だった。一見それだけでは誰なのかもわからないが、少年のその手に握られた黒いバックルーー戦極ドライバーが目に入り、その少年が何者なのかを悟った。
それは以前、士に襲いかかってきた漆黒のライダーの変身者だった。
「ディケイド…お前がどれほど強くなったか、見せてもらうぞ」
黒いコートの少年は前回戦った時に使用した戦極ドライバーを腰に装着すると、漆黒のロックシードを取り出し、解錠する。
「変身」
《カオス!》
少年がロックシードを解錠すると、頭上に闇の球体が出現する。ロックシードをバックルにセットし、ハンガーを押し再び施錠すると、カッティングブレードをロックシードに振り下ろす。
《ソイヤ!カオス・アームズ!黒騎士・オン・ダークネス♪》
球体が少年の頭部に被さり展開、漆黒のライダーへと変身する。黒いアンダースーツに、黒と赤が基調の禍々しい鎧、紫の複眼を持つ黒騎士のようなライダーを士は知っている。
「ルシファー…」
「さあ、変身しろ。ディケイド」
ルシファーはそう言いながらヴォイドセイバーを士に向けて振り下ろす。士はそれを躱し、ディケイドライバーを取り出す。
「変身!」
《KAMEN RIDE・DECADE》
士はディケイドに変身し、ライドブッカーでヴォイドセイバーを受け止めると、鍔迫り合いをしてから互いに距離を取る。ディケイドが駆け出し、ルシファーにライドブッカーを振り下ろす。ルシファーはそれをヴォイドセイバーで迎え撃ち、火花が散る。
「はあっ!」
「ちっ!」
ディケイドはルシファーに蹴りを入れ、後ろに飛びながらガンモードに変形したライドブッカーで光弾を放つがルシファーはその光弾を回避すると、ヴォイドセイバーで斬りかかってきたのをディケイドはライドブッカーで防いだ。
「やはり、お前は一筋縄では行かないな」
「そりゃ、どうも!」
至近距離でライドブッカーから光弾を発射し、ルシファーを怯ませてから蹴りを入れて距離を取り、カードを取り出しバックルに挿入する。
《KAMEN RIDE・W》
ディケイドを中心に風が吹く。その風と共に左右で色が違う仮面ライダーが姿を現す。右半分は、吹きぬく風を象徴とした緑。左半分は、絶対的な切り札を象徴する黒。
二人で一人の仮面ライダーダブルだ。
「さあ…お前の罪を数えろってな」
ディケイド・ダブルは腕に力を込め、風を纏った格闘術でルシファーを攻撃する。巻き起こっている風が、ルシファーにダメージを与えていく。
「だああ!」
「くっ!」
風を纏った蹴りを入れ、ルシファーは苦悶の声を上げる。ルシファーは背後に飛び、ディケイド・ダブルから距離を取る。
「ふん…やるな。だが、まだまだこれからだ」
ルシファーはそう言うと、龍が描かれたロックシードを取り出し、解錠する。
《ドラゴン!》
瞬間、ルシファーが纏っていたカオスアームズが消失し、ルシファーの頭上に大きな黒い西洋竜の頭部が出現する。ルシファーはカオスロックシードをドライバーから外し、ドラゴンロックシードを装着すると、ブレードを振り下ろす。
《ソイヤ!ドラゴン・アームズ!飛龍・オーバーロード♪》
上空に浮遊していたドラゴンの頭部がルシファーに被さり、展開される。黒く鱗のある鎧、仮面には竜の頭部のような装飾が施され、赤い複眼が鈍く光る。その両手には竜を模した双剣が握られていた。
「姿が変わった……!」
「言っただろ?まだまだこれからだ、ってな」
《ソイヤ!ドラゴン・スパーキング!》
ルシファーはブレードを三回振り下ろし、手に握られた双剣ーーツインドラゴンに赤い光が走り、それをディケイド・ダブルに向けて振るう。
すると、ツインドラゴンから竜の爪痕のような斬撃波が連続で繰り出され、ディケイド・ダブルはライドブッカーで防ごうとしたがライドブッカーに直撃した瞬間、予想以上の衝撃が走り、そのまま吹き飛ばされてしまう。
「ぐあああああ‼︎」
ディケイド・ダブルは大きなダメージでディケイドの姿に戻ってしまう。ディケイドはふらふらと立ち上がり、ライドブッカーを杖に身体を支える。
「くっ……」
「これで、終わりか?」
「まだまだこれからだ……」
ルシファーの言葉にディケイドは言い返す。だが実際、強がりを言っているだけでディケイド自身は少し限界が来ていた。
ディケイドはインビジブルのカードで撤退をしようと思考していた瞬間、
『っ⁉︎』
ディケイドとルシファーの間に突然灰色のオーロラが出現する。そして灰色のオーロラからは『電王の世界』のスコーピオンイマジン、『キバの世界』のシームーンファンガイアが現れた。
「っ⁉︎こいつらは⁉︎」
現れる途端、スコーピオンイマジンは斧を持ちシームーンファンガイアはサイズを構えディケイドに襲いかかる。ディケイドは先ほどのルシファーとの戦闘でのダメージもあり、攻撃を全て喰らってしまう。
「がああああっ…‼︎」
シームーンファンガイアはサイズを振るい、ディケイドを斬りつける。それに追い打ちをかけるようにスコーピオンイマジンが膝をつくディケイドに蹴りを入れる。
「………何の真似だ?」
そこで戦闘の様子を見ていたルシファーが口を開く。その声には闘いに横槍を入れられたためか、怒りが込められていた。そこでルシファーの声に応えたのはスコーピオンイマジンだった。
「ネロ様からの指示でございます……ディケイドを始末しろと」
「ちっ、ネロの奴……舐めた真似を!」
ルシファーは叫ぶも二体の怪人たちはそれに応えずディケイドに武器を振るう。ディケイドは辛うじてライドブッカーで応戦するが、限界も近づいてきた。
「ククク……ディケイドよ、これまで倒されてきた同志の恨みをここで晴らさせてもらうぞ!」
スコーピオンイマジンとシームーンファンガイアは地を這うディケイドに対して斧とサイズを振り上げると、息の根を止めようと振り下ろす。
『なっーー⁉︎』
二体の怪人たちは驚愕した。ディケイドに向けて振り下ろされた武器を、ディケイドは全て素手で受け止めていた。ディケイドは斧とサイズを力強く握り、スコーピオンイマジンとシームーンファンガイアを蹴り飛ばす。
「ふざ……けんな…!」
ディケイドは仮面越しで、二体の怪人たちに睨みつける。
「俺は、まだ、倒れるわけにはいかないんだよ……!」
「ふん、ほざけ!今更何ができる⁉︎」
ディケイドの覇気に気圧されながらも、再度武器を構えディケイドに迫る。
(俺は…こんなところで終われないんだ!俺はまだ何もできてない!)
ディケイドはライドブッカーを握る手に力を込める。
(俺は……まだ死ぬわけにはいかないんだ‼︎)
ディケイドがライドブッカーで怪人たちを迎え撃とうとした瞬間。辺りに強い風が巻き起こりながら目の前が光り輝く。
「くっ……⁉︎」
「なんだ……⁉︎」
『があああああああああああああああああああ⁉︎』
ディケイドとルシファーが突然の光景に驚く中、光から一人の人影が見えた。その人影が消えたと思った途端、二体の怪人たちが真っ二つに斬り裂かれた。