夕焼けの公園で火花が散る。
硬い金属がぶつかり合う音と激しく飛び散る火花が絶えることなく続いている。
互いに激しい剣劇を繰り広げる二つの人影が、公園の中央で激突した。
「うおおおおおおおおお!」
「はぁああああああああ!」
二つの人影が己の武器をぶつけ合い、鍔迫り合いのようにせめぎ合う。
ディケイドはライドブッカーを渾身の力で振るい、ヴァイスはヴァイスサーベルを盾のように構えてディケイドの一撃を防ぐ。
「フフフ……!やはり素晴らしいですね、ディケイド!まさか、他のライダーに変身せずに僕と互角に渡り合えるとは……!」
「その言い方だと、まだ本気じゃないってことか……。そろそろ少しは本気を出したらどうだ」
ディケイドはライドブッカーをヴァイスに突きつけると、ヴァイスはククク、と嗤いながらデッキケースからカードを抜きだす。
「フフ、確かにこのままでは、僕が不利になってきますしね……。では、お言葉に甘えて使わせてもらいますよ」
《STRIKE VENT》
ヴァイスはヴァイスバイザーにカードを装填すると、その音声と共に黒い狼の頭部を模した手甲『ヴァイスクロー』が右腕に装着された。ヴァイスクローの口部分に黒いなにかが集束していく。
「フフフ……狼に命を喰われないようお気をつけてください…さあ、始めましょう。闇の狩りを…!」
その言葉と同時に、ヴァイスクローから黒い閃光が放たれた。
《ATTACK RIDE・SLASH》
黒い閃光がディケイドに迫る中、ディケイドはマゼンタの光を纏ったライドブッカーでそれを斬り裂こうと振り下ろすが、衝撃に耐えきれずそのまま吹き飛ばされてしまう。
「僕が扱う属性は闇…つまり今、日が落ちたこの空間は僕の属性が強化されるということです」
ヴァイスはそう言うと再びヴァイスクローから黒い閃光を放出し、ディケイドはそれをなんとか躱していく。そしてライドブッカーをガンモードに切り替えて、カードをバックルに挿入する。
《ATTACK RIDE・BLAST》
ディケイドはヴァイスに向かって銃身が分身したライドブッカーから光弾を連射していく。
「甘いですよ」
《GUARD VENT》
ヴァイスの前方に黒い壁が出現し、光弾を全て弾き飛ばす。続いてヴァイスはカードをヴァイスバイザーに装填する。
《TRICK VENT》
瞬間、ヴァイスの隣に同じ姿の分身が三体出現した。現れた分身たちはそれぞれヴァイスサーベルを携えている。
「どうです。中々面白いでしょう?」
四体に分身したヴァイスは四方からディケイドに苛烈な剣劇を仕掛ける。ディケイドはライドブッカーで応戦するが隙が出来たところから次々と繰り出される剣に斬り裂かれ、大きく吹き飛んだ。
「ぐっ…⁉︎……ッ、しまっーー」
「これで終わりです、ディケイド!」
《SHOOT VENT》
四体の分身のヴァイスクローの口部分から漆黒の黒炎弾が発射され、ディケイドを取り囲んで炸裂する。そして、ディケイドはそのまま闇の焔に飲み込まれた。
「ツカサーーーッ‼︎」
目の前の惨劇を見て叫ぶ零奈。ヴァイスの方は黒い焔が噴煙を上げ続けているのを失望した様子で眺めていた。
「これで終わりですか…僕程度に殺されるようでは、あの方の障害にすらなりませんね…時間の無駄でしたか……」
ため息をついたヴァイスは未だに激しく燃える黒い焔に背を向けてその場を去ろうとする。
《ATTACK RIDE・BLAST》
「ぐあああ⁉︎」
士を飲み込んだ焔と黒煙の中、ヴァイスに向けられて青い光弾が放たれ、ヴァイスはそれを背後からモロにくらい吹き飛ばされてしまった。
それを見た零奈は黒煙の方を振り向くと、そこからは片手に青い銃器を構えディケイドを守るように立ち塞がる少年ーー海東大樹がいた。
「ぐっ……何者ですか?」
「通りすがりの仮面ライダーさ」
「間に合ったか!」
遠くからレッドガルーダを連れた晴人と士道が公園に向かって走ってくる。三人の姿を確認したディケイドは安堵の声を上げる。
「大樹!晴人!それに士道も!」
「士、僕たちも一緒に戦うよ」
《KAMEN RIDE・DIEND》
大樹はそう言うとディエンドライバーにディエンドのカードを装填し、銃口を天に向けてトリガーを引くとディエンドに変身する。それに遅れて晴人と士道も変身する。
「さてと、始めますか。変身!」
《シャバドゥビタッチヘンシーン♪フレイム・プリーズ♪ヒー♪ヒー♪ヒーヒーヒー♪》
「俺も…!変身!」
《ソイヤ!オレンジ・アームズ!花道・オン・ステージ♪》
晴人はフレイムウィザードリングのバイザーを降ろすと共にバックルに翳し、士道はオレンジロックシードをドライバーに装着してカッティングブレードを振り下ろす。二人はウィザードと鎧武に変身を終えた。
「これは驚きましたよ。まさかこの場に四人の仮面ライダーが集まるとは。フフフ、まだまだ楽しめそうですね」
「悪いけど、さっさと終わらせてもらうよ」
「おやおや、そう言わずにもっと楽しみましょう」
その言葉と共にヴァイスの分身たちがディエンドたちに向かって行く。ディエンドたちはそれぞれ分身を相手に戦闘を行う。
ディエンドは分身の振るう剣を躱しながらディエンドライバーで分身に銃撃を浴びせ、素早い動きで分身を翻弄し接近戦を仕掛ける。
ウィザードはウィザーソードガンで分身を斬り裂き、華麗な足技を繰り出し分身を吹き飛ばす。
鎧武は分身に多少苦戦を強いられているが、ナギナタモードに接合させた無双セイバーと大橙丸を振るい分身に応戦している。
そして本体であるヴァイスはディケイドに向かってヴァイスサーベルを振り下ろそうとした時、何者かがディケイドとヴァイスの間に割り込みヴァイスの剣を受け止めた。ディケイドはその姿を確認すると、青を基調とした青いドレスに白銀の甲冑を着け両手で西洋剣を持つ霊装姿の零奈だった。
「零奈…⁉︎」
「貴方たちだけには戦わせません…私の誇りに従って士、貴方に助力します!」
零奈はそう告げるとヴァイスのサーベルを受け止めていた西洋剣に光が集束されていく。
「【勝利すべき黄金の剣】(カリバーン)!」
零奈は手に持った西洋剣を大きく振るい、ヴァイスを吹き飛ばす。空中に投げ出されたヴァイスの身体に追いついた零奈はさらに剣を振り下ろし追撃をかける。
「くっ……!」
地面に叩きつけられたヴァイスは苦悶の声を上げる。ディケイドは視線を変えると、既に分身たちはディエンドたちの必殺技によって倒された後だった。
分身を倒されたヴァイスはゆらりと立ち上がりくつくつと嗤い始めた。
「クククク……流石だ、面白い!それならこちらも、とっておきを使うしかありませんねぇ…」
ヴァイスはそう言ってデッキからカードを抜き取ると、それをディケイドたちに見せつけるように掲げる。そのカードには黒い狼の絵が描かれていた。ヴァイスはそのカードをヴァイスバイザーに装填する。
《ADVENT》
その音声と共に上空の空間に歪みが現れる。そしてそこから現れたのは、巨大な漆黒の狼だった。その大きさにディケイドたちは言葉を失う。ヴァイスは狼の背に飛び乗るとディケイドたちを見下ろす。
「なっーーー⁉︎」
「これが今の僕のとっておき、契約獣フェンリルです。さあ、君に相応しい舞台が整いましたよ」
『グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼︎』
辺りにフェンリルの咆哮が響き渡る。フェンリルはディケイドたちに向かって駆け出すと、口から黒い焔を吐き出す。
「ぐうああああああ‼︎」
フェンリルの焔を受けたディケイドたちは大きく吹き飛ばされる。ディケイドは零奈を抱き締め焔から守ったが、全員のダメージは大きかった。
「士!あんなでかいのどうやって倒すんだよ!」
鎧武は声を上げる。まさに絶体絶命というタイミングで、ディケイドの腰に提げられたライドブッカーから一枚のカードが飛び出した。そこには巨大な西洋龍とウィザードが描かれていた。このカードを見たディケイドは咄嗟にある方法を思いつき、カードをバックルに挿入する。
《FAINAL FORM RIDE・wi、wi、wi、WIZARD》
「ちょっとくすぐったいぞ!」
「はっ?え、う、うわああああ⁉︎」
「ええええええ⁉︎」
「これは一体⁉︎」
ディケイドは背中を向けていたウィザードに手刀を打ち込む。すると、ウィザードの姿が本来ならばあり得ない変形を遂げその姿を変える。その姿は、ウィザードである晴人がそのうちに宿すファントム、ウィザードラゴンと似た姿ーーウィザードウィザードラゴンとなった。
『こ、これは…!』
ウィザードは自身がドラゴンの姿になったことに戸惑い、空中を浮遊しながらディケイドに近寄る。
「これが…俺とお前の力だ!」
『……ああ!』
ディケイドたちがウィザードウィザードラゴンの背に飛び乗ると、ウィザードウィザードラゴンは空に舞い上がると、フェンリルに向かって口から炎のブレスを放つ。フェンリルはそのブレスを自らのブレスとぶつけ相殺すると、爆発が起こる。
「くっ!力はフェンリルと互角ですか…面白い!」
フェンリルはウィザードウィザードラゴンに向かって爪の斬撃波を放つが、零奈と鎧武がその背から剣とナギナタで斬撃を放ちそれを防いでいく。それに続いてウィザードウィザードラゴンは尻尾でフェンリルを叩きつける。
『グウアアアアアアアアアア⁉︎』
「ちっ!」
《STRIKE VENT》
ヴァイスはヴァイスクローから黒い閃光をウィザードウィザードラゴンに向けて発射する。だが、それを零奈が一筋の光り輝く一閃を放ち斬り裂いた。
「やらせません!」
「フェンリル!」
ヴァイスの言葉を合図にフェンリルが黒い焔のブレスを放つ。それを阻止しようとディエンドがディエンドライバーにカードを装填する。
「くらえ!」
《FAINAL ATTACK RIDE・di、di、di、DIEND》
ディエンドが放つディメンションシュートが焔のブレスにぶつかり、そのままフェンリルへと直撃した。
『ガアアアアアアアア‼︎』
「俺と晴人で決める!」
『ああ‼︎』
地面に墜落していくフェンリルとヴァイス。そしてディケイドはライドブッカーからカードを取り出しバックルに挿入する。
《FAINAL ATTACK RIDE・wi、wi、wi、WIZARD》
「はっ!」
ディケイドはウィザードウィザードラゴンの背から高く飛躍しすると、ウィザードウィザードラゴンはその姿をまたもや変形させる。その姿を巨大な龍の足『ストライクフェーズ』に変形させるとディケイドはそのままウィザードとの合体技『ディケイドストライク』をフェンリルとヴァイスに放つ。
『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼︎』
ディケイドストライクを受けたフェンリルは断末魔を上げながら爆発した。地上に降り立ち、 変身を解いた士と晴人は息を上げながら爆発を見つめる。
爆発からは変身を解除したネロが傷を負いながら姿を現す。
「…なるほど、ここは撤退させていただきます」
「逃げる気か?」
「ええ、僕の任務は既に完了していますので。それでは…いずれまた会いましょう」
ネロはそう言うと手をかざした空間から灰色のオーロラが現れ、そこに沈んでいくように姿を消していった。
ヴァイスとの激戦を乗り越え、大樹たちは士と零奈に気を使ってくれたのか先に帰ってしまい、今公園には士と零奈の二人だけだ。
「あ、あの、ツカサ…」
「ん?」
「その…ありがとうございました。あの時…ツカサが言ってくれたあの言葉、すごく嬉しかったです」
零奈は士に貰ったネックレスを握りしめ顔を赤くしながらそう言った。士はそんな零奈に微笑みその頭を撫でる。
「零奈はもう俺の大切な人だ。これからも俺はお前を守り続けてやるさ」
士の言葉に零奈は喜びで涙を流した。記憶がなかった自分と始めてデートをしてくれ、傷を負っても零奈を守ると誓ってくれた。もはや零奈にとって士はかけがえのない存在となっていた。
だからこそ、零奈は士に告げた。
「ツカサ、私は貴方をーーー愛しています」
零奈が士の首に両手を回し、士は零奈の手に引き寄せられるまま零奈の顔に近づき、二人は互いの唇を重ねた。
そして次の日ーーー
来禅高校、士たちのクラスは朝から男子や女子が騒然としていた。理由は簡単、今日、このクラスに一人の転入生がやってきたからだ。
翠色の美しい瞳に長い金髪が綺麗になびいている美少女だった。そしてその美少女は、チョークを手に取り黒板に綺麗な字で名前を書く。
「本日よりこのクラスでお世話になります、神代零奈です。以後、お見知り置きを」
そう、その美少女とは十香と同じ精霊であった記憶喪失の少女、零奈だった。零奈がクラスの生徒たちの質問に答えていく中、大樹は士にニヤニヤと笑みを浮かべ、晴人と士道は苦笑、十香は零奈と友達になろうと意気込み、士の方は苦労が絶えない自分に深いため息をついていた。
キバット「よお!第二章も終わってこのコーナーも第二回目に突入だ!今日はこの人がゲストに来てくれたぜ!」
零奈「零奈です。本日はよろしくお願いします」
キバット「そういやぁ、零奈ってずっと剣で戦ってたけどあれが零奈の天使なのか?」
零奈「いえ、あれは私のお気に入りというだけで、私の天使は《神滅閃光》という翼です」
キバット「ああ、そういえばそんなのもあったっけ」
零奈「《神滅閃光》とは、翼にある宝石から私のあらゆる武器を呼び出し、使用することができる、要はちょっとした武器庫のようなものですね」
キバット「へぇー、でも俺は見たことないからあんま分からねぇな」
零奈「では試してみますか?」
キバット「は?試すって、ちょ、おい!なんだよその翼!え、何その槍!」
零奈「《神滅閃光》、【神滅槍】!」
キバット「なんでえええええええええええええええええええ⁉︎」
零奈「……では、次回予告です」
次回、デート・ア・ディケイドは、
「ツカサ!クッキィというものを作ったぞ!」
「ツカサ、私もクッキーを焼いてみました」
十香と零奈が転入し、士たちの賑やかな日々が続く。
「いたく、しないで……ください……」
雨が降り注ぐ中、士と士道はコミカルなウサギのパペットをつけた少女、四糸乃と出会う。
「変身」
《HENSHIN》
パラドクスの新たなライダー、ゼフィルスがディケイドに襲いかかる。
「俺、参上!」
ディケイドがクライマックスなライダーへと変身!
「俺が、四糸乃のヒーローになってやる!」
《パイン・アームズ!粉砕・デストロイ♪》
士道は四糸乃のヒーローになるために戦う!
全てを破壊し、全てを繋げ!
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