「ほら、さっさと行くぞ!士!」
「ちょっと待てって、キバット!」
俺が五河家の養子になって、一週間程が経った。最初はキバットの姿を見て琴里と士道や両親たちも驚いていたが、今ではキバットも五河家ともうすっかり家族となった。
琴里は初対面と変わらず活発で、元気いっぱいな世話の焼ける妹だ。
士道の方も最初はあまり上手く馴染めていなかったが、なにかときがあってもうかなりの仲良しだ。士道の場合は家族というより、親友に近い関係かもしれない。
二人は徐々に新しい世界での生活に馴染めていた。
そして現在士はキバットに連れられて、先にこの世界に来た転生者に会いに行くところだった。
家から出て数分、士が連れて来られたのは家のすぐ向かいにある小さな公園だった。そこにあるベンチに一人の少年が座っていた。
サラッとしたショートヘアの黒髪に右目下に泣きぼくろがある少年は士に気づくとベンチから立ち上がる。
「やあ、君が神様が言っていたもう一人の転生者かい?」
「ああ、君は?」
「僕の名前は海東大樹だ。よろしく」
そう言って大樹は指鉄砲で撃つ仕草をした。
そしてその後、互いに挨拶を終えた二人は神様に与えられた自分達の能力について話し合うため、まずは士から自分が神様から授かった能力とライダーであることを話した。士が話を終えると大樹は頭を抱えた。
「……はあ、しかし…精霊の封印能力とお互いに仮面ライダーの力とは…。あいつは僕たちを原作介入させる気満々だね」
「えっ?お互いにって…、大樹も仮面ライダーなのか?」
「ああ、僕は仮面ライダーディエンドさ」
大樹はそう言うと上着から変身銃ディエンドライバーと、ディエンドのライダーカードを見せた。
「君は何のライダーなんだ?」
「俺は仮面ライダーディケイドだよ。で、こいつは相棒のキバットだ」
そう言って士もディケイドライバーとディケイドのライダーカードを取り出した。その隣でキバットも士の横でパタパタと飛び回る。
「俺様がキバットバット三世だ!よろしくな大樹」
「ああ、よろしく。それにしても、ディケイドとディエンドとは、なんだかあいつらに仕組まれている気がしてならないんだが…」
「いや、そんなことはないと思うけど…」
「…まあ、考え過ぎだね」
大樹はまだ納得がいかないような表情をして、場の空気が少し重くなった感じがしたので士はとにかく場を和ませるために話題を出そうと必死に考えていた。
が、先に口を開いたのは大樹の方だった。
「ところで士、この後は暇かい?」
「えっ?いや…特に予定はないけど……」
「ならこの後一緒にどこかに遊びに行かないか?まだ色々と話したいこともあるし」
「じゃあ、まずは適当にゲーセンにでも行くか?」
「そうだね。それじゃあ早速行こうか」
それから数十分後……
ゲーセンで存分に遊んだ俺たちはとりあえず近所のファミレスに足を運んだ。もうそろそろ昼時だし、昼食をとるのにちょうどよかった。
注文を終えて、運ばれた料理を前に互いに席につき向かい合う。
「ほら、フォークとスプーンだよ」
「ありがと」
俺は大樹からフォークとスプーンを受け取って、注文した大盛りパスタを啜る。
「おいおい、ラーメンじゃないんだから……」
「んぐ?」
そうツッコミを入れる大樹も微笑ましげに注文したドリアを口に運ぶ。
「それにしても…なんで神は僕たちに仮面ライダーの変身能力なんて渡したんだろうね?トラブルに巻き込まれることが確定じゃないか」
大樹は不意にそんなことを呟く。俺も口元を拭いて水も一口飲んでから口を開く。
「どうなんだろうな?……まあ、原作に巻き込まれる可能性がないわけじゃないし…神様曰く本来原作にない物語があるって言ってたから、自分の身を守る護身用程度に使えばいいんじゃないか?」
「君は深く考え過ぎじゃないか?」
「ポジティブ思考って言ってほしいな」
そう言って俺はまたパスタを啜り始める。大樹はそんな俺を見てつっこむ気が失せたのか、またドリアを食べだす。
「なんか、今日結構楽しかった気がする……」
「同感だね」
俺と大樹はまた公園に戻ってベンチで寛いでいた。周りはもう太陽の光が沈み始める夕暮れ時だ。
「そういえば、大樹って『デート・ア・ライブ』の原作知識ってあんの?」
「いや、そもそも僕はあまりそういう本を見なかったからね。その名前すら初めて聞いたんだ。まあ簡単に言うと、神が勝手に転生先を決めたってこと」
「へえー、俺もあんまり知らないんだよな」
「ということは、君も転生の理由は大体僕と同じなのかい?」
「ああ。でも俺、この世界に来てまだ一週間くらいだけどさ、転生してひとつだけ分かったことがあるんだ」
「分かったこと?なんだいそれは?」
大樹は頭にハテナマークを浮かべる。士は数秒の沈黙の後、口を開く。
「誰にでも…大切な存在は必要ってことかな…」
士はこの世界で出会えた大切な家族の琴里や両親、士道の笑顔を思い浮かべる。
一方、大樹は感心したように士を見ていた。
「大切な存在…か。いいこと言うじゃないか」
「へへ、まあね」
「つかさおにーちゃん!」
「「ん?」」
二人は声がした方を向くと、そこには琴里の姿があった。琴里はこちらに走ってくると士に抱きついた。
「士。この子は?」
「俺の妹の琴里だよ。ほら琴里、挨拶」
「五河琴里です!よろしくね!」
「ああ、こちらこそ。僕の名前は海東大樹だ。よろしく、琴里ちゃん」
「うん!」
「さて、じゃあ僕はそろそろ帰るとしよう。士、琴里ちゃん、またな」
「またな、大樹」
「またねー!」
大樹は指鉄砲で士と琴里に撃つ仕草をすると二人に背を向け、そのまま夕日の方へと歩いて行った。
「おにーちゃん、だいきおにーちゃんっていい人だね!」
「ああ。そうだな」
俺と琴里は手を繋ぎながら家に向かった。
「ねえねえつかさおにーちゃん。そういえばもうすぐ私の誕生日なんだよ!」
「へえ、じゃあプレゼントは何が欲しいんだ?」
「えっとねー」
そしてこの数日後、天宮市を謎の大火災が襲った。