UC0087.11月末。サイド1宙域。
「久々の宇宙はどうだ、大尉」
「やっぱり、無重力は良いな。安心感がある」
エゥーゴ所属、サラミス改級“セプター”は、単艦で哨戒任務に就いていた。
「しかし、艦はどうにかならなかったのか艦長?軽巡で単艦哨戒なんて、ただの自殺行為だぞ」
「艦載機とパイロットは優秀だ、問題ない」
「そういうことじゃない。せめてマゼランだ、こんな安い棺桶で死にたくはない」
ブリッジ。艦長に向かって、堂々と文句を言うパイロット。普通なら規律違反だが、艦長の方は気にもしない。パイロットの方も同じだ。これも、双方が軍人以前に友人だからだった。
「ウチの組織は万年貧乏だ、分かるだろう」
「山ほどスポンサーが居るのにか」
「強力な戦力――例えば、強力な艦船に一騎当千のモビルスーツ。それらの建造に全力を傾けているのだ。お陰で主力部隊以外には、旧式どころか骨董品しか回ってこない。特に艦船はな」
「・・・つまり、このサラミス改でもラッキーな方、と」
「そういうことだ。下手をすると、同じサラミス改でもモビルスーツデッキの無い防空型や、改良前の型に乗る羽目になる」
「・・・肝に銘じておく」
「それに、今はただでさえ少ない艦を集中運用しているからな」
「どんな」
「あれだ」
ブリッジの向こうに、戦闘の光。
「でかいな。艦隊戦か?」
「いや、要塞戦だ」
「・・・まさか、ソロモンか?!」
「そう、今は『コンペイトウ』だがな。今頃エゥーゴ艦隊の支援を受けて、内部で部隊蜂起が起こっているはずだ。成功すれば、ティターンズの拠点がまた一つ減ることになる」
「・・・おい、まさか今回の任務って」
「そう――撤退するティターンズ艦隊の追撃だ」
「・・・まさか、単艦という訳じゃあ」
「それは無い。もうすぐ味方が来る」
『対象艦船接近!!』
オペレーターの声。両舷からサラミス改級が二隻、近づいてくる。
「艦籍確認!」
『照合中・・・取れました。エゥーゴ艦籍です』
「ようやく揃ったか」
「待て。揃ったって・・・これだけか?!」
「・・・そうだ。話にもならんよ。拠点の制圧ばかりを考えたおかげで、追撃艦隊はあり合わせのこれだけだ。お偉方が戦場の機微を分からんことは知っていたが、まさかここまでとはな」
艦長は深い溜息をついた。
「・・・素人の俺だけれども、だ。今ここで叩けるだけ叩いておかなければ、連中は戦力を再編するのでは?」
「その通りだ。世間の意向はこの間のダカール演説でこちら側に傾きつつあるが・・・兵力は互角か向こうが上、こちらの寡兵は変わらんのだ・・・敵の要塞戦直後――敵兵力が眼前で疲弊しているその隙を突かずして、どうするというのだ!!」
叫ぶ艦長。
「・・・旧公国軍勢力たる“アクシズ”も心配だ。こういう連中は手段を選ばんからな」
「それもだ。だからこそと、上層部に具申をしたのだが・・・」
「・・・無駄だったか」
「『貴様はそんなに戦争がしたいのか?』だと。馬鹿馬鹿しい・・・開戦から半年以上、なのに――相手は講和などの手段が通じん連中だというのを理解もしていない」
「そんなお前がかき集めてこれか」
「実質独断行動だからな。コンペイトウ攻略の支援という形を取りつつ怪しまれん程度の戦力にするには、これが限界だった。だが心配するな。モビルスーツは伝手を使って、上等な物を用意した。付いてこい」
二人は、モビルスーツデッキに降りていく。