ロックマンゼロ -episode leviathan-   作:プレイズ

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Marionette Leviathan

レヴィアタンはいつの間にかマリオネスに死角を取られており、腰をホールドされて抱き上げられてしまった。

振り返ってピエロの姿を認識した彼女は動揺した。

「マ、マリオネス……!?」

「ふフ、久しぶりダネ。麗しの妖将レヴィアタン」

そこにいたのは忘れもしない道化師の顔。

彼女を分身で幻惑して翻弄し、虚構世界へと堕とした張本人。

レヴィアタンにとっては因縁の相手だ。

すぐにでも倒したい所だが、今彼女は彼に抱き上げられてしまっている。

不覚にも不意打ちで先手を取られてしまった。

「また幻想にかけてあげよう」

「ッ!?」

愉しげな笑みを浮かべ、道化師は腕を上方へと伸ばした。

彼女の脳裏に過去の記憶がフラッシュバックする。

マリオネスに頭を撫でられて意識がふらつき、そのまま眠りに落とされてしまった一連の記憶がーー。

(だ、ダメ……!頭をさわられたら、またーー!)

レヴィアタンは頭を触られるのを避けようと咄嗟に頭部を左腕でガードした。

マリオネスに額を触れられると、特殊な技をかけられて"幻想堕ち"させられてしまうからだ。

「ほう、同じ手は喰わないカ。覚えてイルとは流石賢いネ」

ちゃんと対処してくる彼女に、彼は目を細める。

彼女の高い思考力、柔軟な対処力も彼は気に入っていた。

これはレプリロイドとして質の高い能力の資質がある証明でもある。

だからこそ彼女を保有する価値があるというものだ。

「だが頭を庇うばかりでは他のガードがお留守ダヨ」

「はっ…!」

マリオネスの指摘に彼女はしまった、と思った。

その通りで頭を守る事に意識が行き、他の部位への守りは疎かになっていた。

それに気付いた時には、もう身体に強力な力が加えられていてーー。

「オラ!!!」

彼女の身体は固い地面に強烈に叩きつけられていた。

マリオネスが完全にお留守になったレヴィアタンの腰を支点にそのまま下方へと投げ落としたのだ。

彼女は頭を守る事に全力で防御がとれず、投げをもろに喰らってしまった。

【挿絵表示】

【挿絵提供:コタッツマン様】

「ガふ うッ!」

固いコンクリートの床に妖将の身が叩きつけられる。

スローモーションのように彼女の身体が地面から跳ね返った。

同時に彼女の口から生唾が吐き出される。

頭は守ったものの、彼女は代償に身体にダメージを負ってしまった。

 

「…………」

数秒後、彼女は床に倒れ伏して天井を見上げていた。

星のように瞬く電灯の光が彼女の瞳には映っている。

同時に床に打ちつけられた衝撃による星もキラキラと目に広がっていた。

彼女は打撃のショックで半分意識混濁していた。

「ふフ、流石に今のは効いたカイ」

彼女の上方に道化師の顔が現れた。

不気味な微笑みを眼下の彼女に向けてくる。

「く、くぅ………」

意識が軽くスパークしてしまったレヴィアタンはすぐに起き上がる事が出来ない。

クリーンヒットをもらってしまったので結構なダメージを受けていたからだ。

幻想堕ちは避けれてもこれでは本末転倒である。

 

『レヴィアタンに-15のダメージ』

 

周囲にアナウンスが響き、また"画面上に"文章が表示された。

今のダメージでまた彼女はHPが減らされてしまう。

先刻の雑魚だったマネキン達とは違いマリオネスはボスである。

さらに彼女はクリティカルヒットを喰らったため、受けたダメージ量は多い。

既に体力が半分近く減っていた彼女にとっては痛い被ダメだ。

「く、ぐ……!」

何とか起き上がろうとする彼女だが、身体を押さえつけられる。

マリオネスが彼女を上から押さえ込み、自由にさせない組手をとっていた。

彼女は抵抗しようとするが、力勝負では分が悪い。

女性の彼女ではマリオネスの腕力に負けてしまい、なかなか引き剥がせない。

「くう…!」

「ふフ、悪いケド力では男のボクの方が強いヨ」

自分より下回る腕力に彼女の女性味を感じ、道化師は微笑みを浮かべる。

彼は彼女の両手を後ろ手にして拘束し、立ち上がらせた。

「……!」

レヴィアタンの目が見開く。

いつの間にか前方にはもう1人マリオネスがいたのだ。

後ろにいる自分を拘束している道化師と瓜二つの姿の。

「ま、また分身ーー!」

彼女は咄嗟に頭を守ろうとする。

しかし両手は後ろ手に掴まれており、ガードは出来ない。

「ふフ」

「ひっ…!」

不気味に笑ったもう1人のマリオネスに彼女はびくつく。

また額に触られたらおしまいだ。

「安心しなヨ。今回は幻想に堕とす事はしないカラネ」

「えっ…?」

背後のマリオネスが彼女に語りかける。

「ちょっと違うマジナイをかけさせてもらうだけサ」

意味深に彼は笑みを見せる。

すると、次の瞬間彼の姿が揺らいだ。

道化師の形をとっていた物が別の形態へと変容し始める。

それは糸の塊を象った物へと変化した。

まるで蚕のまゆのように糸が編み込まれた塊となった。

「な……!」

後ろ手に固定されていた彼女の腕が、彼の変質と同時に解かれていく。

背後にいたピエロの姿は完全に消え、代わりに糸の集合体である物体に置き換わった。

そしてそれは放射状に細い糸を放った。

放たれた幾つかの糸は、レヴィアタンの身体に付着した。

「こ、これは……!」

「操りの糸ダ」

前方にいるマリオネスが含み顔で言った。

レヴィアタンは慌てて彼に問いただす。

「な、何なのよこれ……!」

「ダカラ操りの糸だヨ。君を操作シテ操縦スルためのネ」

笑って道化師は妖将を見つめる。

彼女はまずい、と焦った。

自分は今、何かの糸を付着させられた。

これからこいつに何かされる可能性がある。

「な、何をする気……!」

「安心しなヨ。別に痛くなるような事はシナイ」

彼はニチャリ、と笑みを浮かべた。

見ると彼の手元には複数の糸が引いている。

それはそのままレヴィアタンの身体に繋がっていた。

「え……、?な、何をーー」

「すぐにわかるヨ」

愉しげに笑んだマリオネスは、彼女へと垂らした糸をゆっくりと動かした。

まるで指揮者が指揮棒でオーケストラを指揮するかのように。

「氷の技を打ってごらん」

「……はい、マスター」

次の瞬間、レヴィアタンの身体が動いた。

片手を前にかざして冷気を送り始める。

「マリンスノー」

彼女の発声と共に手のひらの先から氷の塊が生成される。

そしてそれを続けざまに3つ発現させた。

「うん、綺麗な技ダネ。次はこの氷を壊してミヨウカ。突きで氷を打テ」

「はい、マスター」

また道化師が指示を送ると、彼女は同様に頷きを返す。

そしてスチャリ、とフロストジャベリンを前方へ構えた。

「ヤっ!」

小気味いい発声を発し、彼女から突きが放たれる。

構えたジャベリンの切っ先が鋭く前へと押し出されていた。

それは先程生成した氷の塊を貫いて飛散させる。

『シャリィ!』

氷が綺麗な音を立てて破壊された。

氷の塊の1つが割られて消えていく。

【挿絵表示】

【挿絵提供:和寂@skeb受付中様】

 

「いい動きダ。残りの2つも突キで破壊シタマエ」

「はい、マスター」

またもマリオネスの指示に従順に従うレヴィアタン。

彼女は再びジャベリンをチャキリと構える。

「ヤッ!」

俊敏な突きが氷の塊に向けて繰り出された。

連なって2つ残っていた氷が見事に割られて破壊される。

【挿絵表示】

【※ハイライト無しバージョン。挿絵提供:和寂@skeb受付中様】

『シャリリイ!』

綺麗な破綻音を響かせて氷は粉砕された。

道化師の指示通りにレヴィアタンがジャベリンによる突きで氷を壊したのだ。

 

 

 

「え……?」

数秒後、意図しない攻撃行動を取ってしまったレヴィアタンは我に帰った。

彼女はマリンスノーも槍での突きも全く自分の意思では放っていない。

マリオネスが命じた声に、何故か無意識に応じてその通りに動いてしまったのだ。

「ふフ、いいネ。よい感じダ」

「い、今何をしたの……?」

「君を操ったノサ」

「え?」

不敵に笑む道化師に彼女は不安を濃くする。

さっきの行動は彼の言うように操られたような感じだったからだ。

「さっき君ノ身体には複数の操り糸を挿シタ。この糸を繋げた対象ハ一定時間ボクの意のままに動かす事がデキル」

「な……」

マリオネスの説明にレヴィアタンは困惑した。

さっき付着した幾つかの糸は彼による操作系統の技だったらしい。

今の一連の不可思議な自分の動きはその糸の効果によるものだ。

「な、私を操ったっていうの…?」

「ソウダ。"操りの糸"の名の通り挿した対象を操る技ダカラネ」

「い、糸でそんな事が出来るっていうの……!」

「デキルノサ。ダガこの技は体力が十分ノ相手にはキカナイ。繊細な糸を挿す分、元気な相手には通らナイカラね。ダガHPが多く減った者にはキキヤスイ。例え君のヨウナ格上であってモ」

「く…!よくもやってくれたわね」

幸い、既に操りの糸は彼女の身体から抜けており、マリオネスによる支配は解除されていた。

どうやら糸による操作は時間制限があるらしく、永続ではないようだ。

 

(厄介な技を使ってこられたわ。あの糸を挿されると奴に身体のコントロールを支配されてしまうみたい。でもずっとじゃなくてだいたい10秒前後って所かしら)

今の技を喰らった事で、彼女は操りの糸の分析を始める。

ただ技を受けただけでは終わらず、すぐに熟慮して対処法を模索する所が彼女の優秀なところだ。

「今ノでこの技がキミにもちゃんと効く事がワカッタ。また支配してあげルヨ」

「させない…!」

マリオネスの笑みと共にレヴィアタンの背後の床にある蚕のまゆに似た束が再び蠢く。

予感を感じた彼女は咄嗟に飛びすさった。

直後、まゆから多数の糸が放射状に放たれた。

回避行動をとっていたレヴィアタンはその隙間をすり抜けるように退避する。

「はあっ!」

フロストジャベリンを回転させて彼女は迫り来る糸の針を凪払った。

糸は繊細なため、一定の打撃を加えれば勢いを失って下へと落ちていく。

「同じ手は喰わないわよ!」

「ちイ、流石にソウ続けて上手くはイカナイカ」

操りの糸を挿す事に失敗し、マリオネスが舌打ちした。

妖将の彼女を相手に同じ手は簡単には通じない。

「今度はこっちがお返しさせてもらうわ」

レヴィアタンはジャベリンを回転させたまま、冷気を込める。

すると回転する槍の起動に沿って氷の塊が発現した。彼女の得意技、氷の輪である。

「はっ!」

発声と共に、氷の輪が一斉に放たれた。

複数個が輪になって連なり、マリオネスへと飛んでいく。

だが彼女は予想していた。

この技が道化師に当たる事はないと。

先の戦闘でやられたように、おそらく奴は分身を使って回避するはずだ。

そしてこちらが動揺した隙に背後から"本物"が仕留めにくる。

そう予測した彼女は、予め後ろに神経を集中していた。

「ふフ、キカナイヨ」

案の定、前方にいたマリオネスが笑い身体の一部が透き通る。

そしてその半透明になった部位を氷の機雷が通過した。彼は分身である。

そして背後からもう1人のマリオネスが妖将に忍寄り……。

「無駄よ!」

「ナニッ!?」

素早い反応で彼女は反転した。

腕を逆腕で薙ぎ、フロストジャベリンを背後のマリオネスにヒットさせる。

虚を突かれた道化師はモロにジャベリンの打撃を首元に喰らった。

「グアッ!!?」

攻撃がクリーンヒットし、彼はたまらずのけ反る。

レヴィアタンは苦悶の顔をする道化師に微笑んだ。

「フフ、まずは一撃。いい気味だわ」

マリオネスの分身攻撃に対応し、彼女は少し胸がすく。

分身が織り混ぜられている事がわかっていれば、戸惑わずに対処する事は難しくない。

 

 

だが、彼女はまだ理解が不十分だった。

分身だからといってそれは無視出来る存在ではないのだ。

普通の分身ならば分身が何をしようが対象に影響を与える事はない。

だがことマリオネスの分身は物が違った。

分身でも実体を伴った影響を対象に与えられるのだ。

背後の本物のマリオネスに反転して攻撃をヒットさせて、レヴィアタンは気をよくしている。

だがその反転した彼女の背後にいる分身はまだ消えていなかった。

その口元は不気味に笑っていたーー。

『プツ、プツ、プツン』

「え……?」

淡い感触がして、レヴィアタンは一瞬動きを止めた。

背中に僅かな感覚だが何かを感じたのだ。

彼女が後方を見ると、細い糸が複数見えた。

いつの間にか背中に糸を挿されていたのだ。

「な……い、糸、、、?」

全く気付かない内に背中に糸を挿され、彼女はフリーズする。

動きが止まった事で、背後の分身マリオネスは笑みを深めた。

追撃にさらに複数の糸を手の先から放出する。

『プツ、プツ、プツン』

「あ゛、、、!」

頭上から糸が降り注ぎ、彼女の頭や腕、足にも糸が挿し込まれた。

背中に糸を挿されて動きが鈍った事で、彼女は回避行動をとる事が出来なかった。

 

「ふフ、今度は上手く挿せタ」

前方にいる本物のマリオネスが三日月に笑う。

今前にいる彼は特に糸のような物は使っていなかった。

だが事実としてレヴィアタンの身体には全身に操りの糸が挿し込まれている。

「あ、、、う、、、」

糸を挿された事で、彼女は動きが鈍る。

まるで身体の動きを他人にコントロールされているような不気味な感覚を彼女は感じた。

【挿絵表示】

【挿絵提供:福之内様】

「ふフ、さあこれでまたキミはボクのマリオネットダ」

愉しげにマリオネスが呟く。背後にいる分身の彼は糸を引く手の先を怪しげに構えた。

「、、くっ…!ならこんな糸断ち切ってーー」

「サセナイヨ。"待テ"」

道化師の声で静止の指示がかかる。

すると槍で自分に挿さった糸を切ろうとしたレヴィアタンの動きが止まった。

彼女の意思による動きがキャンセルされ、脳からのシナプス信号が書き変わる。

マリオネスの意図する命令が彼女を統括しているためだ。

「勝手に糸をキルなんてダメサ。君はボクのマリオネットなんダカラ」

「……はい、マスター」

主(マスター)である彼に再び従う返答を返すレヴィアタン。

今の彼女は操り糸によって身体の動きを、引いては脳への神経を道化師によって支配されている。

彼による操り糸を喰らった者は、しばらくの間自由を奪われてマリオネットとされてしまうのだ。

「サ、しばらくボクの可愛い操り人形にナッテモラウヨ。妖将レヴィアタン」

背後から糸を引きながらマリオネスが愉しげに語りかける。

彼女の全身から伸びた操り糸はそのままマリオネスの手先へと繋がっていた。

今の彼はまさにレヴィアタンに対しての指揮者のようなものなのだ。

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