ロックマンゼロ -episode leviathan-   作:プレイズ

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ラ・グラス・クレイドル

前回の話を投稿後、その話で矛盾点があったのでそこを一部修正しました。

そして、ラストのあと2週くらいで完結ですという文章を削除しました。2話で終わらすのは難しいと判断したためです。すみません。では以下から本編です。

 

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「サア、残りは6分ダヨ」

「くっ!」

巨大な時計針が指し示す数字を見やりながらピエロが言った。

針は現在、ローマ数字の【Ⅵ】を指している。

最初は【Ⅻ】の位置にあったのだから、あっという間に半分も経ってしまった。

それもそのはず、この時計は普通の時計のように60分で1周する仕様ではない。

僅か12分で一回りする仕組みなのだ。

なのでたった6分経過しただけでもう残りリミットは半分になっていた。

この針があと半周すれば時間一杯になり、レヴィアタンはタイムオーバーでペナルティとなってしまう。すなわちこの鏡セカイに永久幽閉だ。

「キミがボクのモノにナルマデノカウントダウンサア」

「くっ…!図に乗るんじゃないわ!」

体勢を整え直したレヴィアタンは小刻みなステップで前に前進する。

もちろん後ろから遠隔攻撃が来ないか細心の注意を払いながらだ。

目の前のマリオネスは姿は消えているが、気配はちゃんとある。

そこへ向かって彼女は間を詰めていく。

 

(クク、馬鹿メ。その突きは当たらナイヨ)

だがマリオネスは姿を消した状態で斜め上に飛んだ。

それもかなり高く。

遠めに飛んで、レヴィアタンよりかなり頭上を飛び越していく。

「くっ、気配がーー!」

レヴィアタンはピエロの気配が急に旋回して頭上を通り越したのを察知した。

だが、狭い針の上で素早く方向と高さを変えられたため、すぐには反応が出来ない。

彼女は突きを軽く放ちかけた所で、そのモーションをやめてピボットターンした。

そして反対方向に向き直る。

だが敵は既に遠めの奥側に行ってしまった。

マリオネスの気配は長針の先端に移っている。

 

(く……上手くかわされたわね)

姿が見えない利点を活かして位置を変えられた事で、妖将の突きは不発に。

今の攻防でレヴィアタンの方は時計の短針側に乗る形になった。

針の上の立ち位置が逆転した格好だ。

その間に長針の方はまた1つ数字間が移動し【Ⅵ】から【Ⅶ】に進んでいる。

「あらいいのかしら?あなたがそっちに行ったら私への呪いが無効になっちゃうんじゃないの?」

「イイヤ?キミが短針の側に行コウト同じ事ダヨ」

ククク、とまた道化師の顔が不気味に揺らめく。

「外カラ鏡セカイに来た者ガこの時計盤に乗ッタ時点で時限タイマーの対象ハその者に掛けラレルのさ。ボクは元からココノ世界に住まう者ダ。ダカラぼくハ時計の呪いの対象ニハナラナイ。短針の側に行こうガ、長針の針ノ位置が時限なんダヨ。妖将レヴィアタン、きみに対シテのネ」

「ッ……!そ、そうなの」

短針の側に移ってもレヴィアタンへの時限の呪いは変わらない。

あくまで掛けられている呪いの対象は外から来たレヴィアタンのみなのだ。

よって長針の位置に移ったマリオネスにはペナルティは無い。

そして長針の位置がレヴィアタンに対する時限の刻限なのだ。

その針は今【Ⅶ】を指している。つまり残り時間はあと5分しかない。

 

「くっ……!」

「ふふふ、もはや余裕モ技も尽きたトイッタところダネエ」

マリオネスが可笑しげに妖将に言う。

あと5分でこの自分を倒すのはいくら四天王の彼女といえど不可能だろう。そう彼は確信していた。

「………仕方ないわね。あんましやりたくない手だったけれど」

レヴィアタンはすうっと落ち着いて息を吸い込んだ。

そして深呼吸した。

自らを落ち着けるために。

「見せてあげるわ。私の秘策を」

「ナニ……?」

彼女の言葉にマリオネスが訝しむ。

彼女の技はほぼ把握している。

もちろんEX技もだ。

その中でトルネードスピアはここでは使用不可な技である。

精神世界では、AIマニピュレートの助力により空気中に固体と液体の中間の因子が流れ込んだ。

それにより、陸上とはいえ空気の状態は水に近いものになり、それ故に彼女はトルネードスピアが使えた。

だがここ現実世界ではそれは不可能である。

精神世界とは違うため前述のような空気状態にはなり得ないからだ。

ここにはAIマニピュレートも、彼女を利する水分もない。

レヴィアタン対策として水は予め全て除去してある。

水のない環境では彼女は泳げない人魚と同じだ。

道化師は内心でそう思っておりそのため余裕があった。

「行くわよ!」

レヴィアタンから強気な声が放たれる。

水色のオーラが立ち昇り、彼女のアイスエレメントが活性化した。

だがマリオネスはわかっていた。

これはトルネードスピアの妖気ではないと。

もう1つのEX技の方だ。

(なるホド、スピリット・オブ・ジ・オーシャンかナ)

彼は妖将が出そうとしている技を頭の中で言い当てる。

その数秒後、その通りに氷のドラゴンが姿を表した。

何もない虚空から氷の塊が生まれ、龍の姿を形作る。

「ふふ、ワルいけど予想済みダヨ。キミのドラゴンはボクを倒せナイ。ダッテ頭が弱点ダッテわかっテルからネ」

「……やっぱり、私の技を分析済みなのね」

マリオネスは彼女の氷龍を見ても動じず。

さらにはその弱点まで言い当ててみせた。

だが、レヴィアタンの方もそれは"わかっていた"。

彼によって自分の技の数々が情報を取られてしまっている事を。

「でも、あなたはこれは知らないはずよ」

彼女はくすりと笑う。

指先を伸ばして軽く回して振ってみせる。

すると、異変が起きた。

彼女の周囲を氷の機雷が舞い始めたのだ。

「な、ナンダ……?」

氷の機雷が突如妖将の周りに複数出現する。

そしてその周りを周回するように回りだした。

彼女は氷の龍を出している状態で、別の氷の技を出し始めたのだ。

「そ、ソレハ何ダ……!」

「フフ、やっぱりこれは知らないみたいね」

情報にない技に動揺する道化師。

その様子にレヴィアタンはほくそ笑みを浮かべる。

「これは私のアレンジ。新技と言ってもいいわ」

「ナニ……!?」

「そしてこれを私のスペシャルスキルであるスピリット・オブ・ジ・オーシャンと掛け合わせる」

彼女は活力を目に宿して指先を振るう。

彼女のタクトと共に、氷の龍に氷の機雷が舞うようにシンクロしていく。

それは恐ろしい氷の龍をさらに危険なものに昇華した。

氷の相乗効果で攻撃力、耐久力が共にアップしたのだ。

「ぐ……!ムダサ!頭を攻撃スレバこんなモノ」

マリオネスは腕を前に伸ばす。

そして掌から自身の魔力をオーラとして放った。

紫の光が蛇行して氷龍の頭に向けて伸びていく。

そしてその紫光はそのままドラゴンの頭部に命中した。

 

パ キ ン

 

「!?」

だが、その紫光は弾き返される。

まるで鏡に光が反射させられたかのように。

実際には反射されたのではなく、単に弾かれただけだ。

弱点のはずのドラゴンの頭部は、しかし道化師の魔力攻撃を受け付けずに弾いていた。

「ば、バカナ……!?」

マニュアル通りの攻略法が通じず、マリオネスは破顔する。

本来なら頭を攻撃すれば簡単に破壊出切るはずだった。

だが何故か龍は壊れず、生きたままだ。

「フフ、私のデータを得たからといってそれで勝てた気でいたの?」

可笑しげに笑って妖将が指先をまた振るう。

さらに氷の機雷がドラゴンの周囲を舞った。

その舞う度合いが増すごとにドラゴンの強度も上がっていく。

(この技は2つの技のダブル同時使用なの。スピリット・オブ・ジ・オーシャンと、そして新技のラ・グラス・クレイドル)

彼女はマリオネスにデータを抜かれた後で、新たに技を編み出していた。

それは氷の機雷をドラゴンの周囲に舞わせる事で、氷龍の強度・攻撃力をアップさせる効果を持つ。

彼女のEX技であるスピリット・オブ・ジ・オーシャンは強力だが、しかし明確な弱点がある。

頭部を狙われると簡単に破壊されてしまうのだ。

それが彼女としてはかねてから気に入らない点だった。

折角のEX技なのに、弱点を突かれればあっさり霧散してしまう。

それは気にくわないので、彼女はかねてからそれをカバーする手法を考えていた。

そして、それを今回マリオネスからデータを抜かれた後で実用化してみたのだ。

なのでもちろん実戦ではこれが初披露である。

(フフ、上手くいくか少し不安だったけど。ちゃんと上手くいったわ)

理想とした効果が得られ、彼女は微笑む。

これならば道化師に頭を狙われようと簡単には壊される事はない。

「クソ……この小娘ガァ!」

「フフ、じゃあそろそろ行くわよ」

くるんとレヴィアタンの掌が返される。

それと共に指先もタクトを振るう。

決めの指示を声と共に伝えて。

「ゆけえっ!」

威勢のいい掛け声が放たれた。

氷の龍の周りを氷機雷が円舞していく。

そして、ドラゴンにエンジンがかかる。

一気に道化師の方へ向けて龍が推進を開始する。

「チイ…!破壊シテヤル!」

マリオネスはまたも龍の頭部へ向けて掌から魔力を放った。

紫の怪しい光が氷龍の頭目掛けて飛んでいく。【挿絵提供:真宮七海@絵アカ(Skeb Open)様】

【挿絵表示】

 

氷機雷が舞う中、氷龍は止まらない。

強度も攻撃力もアップしているそれは、道化師の持っているデータのそれとは違っていた。

頭部へ魔力のビームをヒットさせても簡単には崩れない。

勢いが止まらず、前方へと推進してくる。

「な、ナニィーーー!!?」

マリオネスは再度破顔した。

氷の龍を止める事が出来ない。

狭い時計針の上なため、龍との距離はほぼないに等しい。

すぐに破壊出来なければ、被弾は避けられない。

先程のように斜め上にジャンプして逃げようにも、既にドラゴンが間近にまで迫っている。

それに、ドラゴンの周りを氷の機雷が展開して舞っているためどうしても当たってしまう。当たれば至近にいる龍にも巻き込まれるのは確実だ。

「チ、チクショーーーー!!!」

断末魔の叫びが辺りに響き渡った。

氷の加護を受けた龍はそのまま止まらず道化師に衝突した。

轟音が轟き、ピエロの身体を破壊していく。

バキバキグシャ!!!

恐ろしい破滅音を裂いて彼の身体は壊れた。

いや、喰われたと言ってもいい。

マリオネスはスピリット・オブ・ジ・オーシャンの激突と噛みつきを受けてなす術なく崩壊した。

体力ゲージは0を計時し、あえなくやられたのである。

 

 

 

「はぁ、はぁ……!」

道化師がかき消えたのを確認したレヴィアタンは、その場にしゃがみこむ。

2つの大技の同時使用のため、かなり無茶をしていた。

大技はそれだけ体力も削られるのだ。

「はぁ、はぁ……!」

初の実戦使用だったため、上手く決まるかは未知数だった。

だが何とか上手く技を組み合わせる事が出来、敵を倒す事が出来た。

新技とのダブル使用のため、データを取っていたさしものマリオネスも把握し切れていなかったのだ。

「じ、時間は……?」

はっとしてレヴィアタンは制限時間を思い出す。

もしや間に合わなかったのではないかと不安になったのだ。

奥の長針の位置を確認する。

時刻は【Ⅹ】のローマ数字を指していた。

刻限の2分前にどうにか倒せたようだ。

「よ、よかったぁ~~~」

ほっとして彼女は地面に両手と膝ををついて脱力した。

張っていた気が抜けてしゃがみこむ形になったのだ。

同時に、辺りの景色が変わっていく。

星空が広がる宇宙空間のような場所から、元の紫鉱石の場所へ辺りが変化した。

どうやらマリオネスを倒した事で、元の場所へと戻ってきたらしい。

「や、やったわ………」

息を乱しつつ、彼女は勝利を噛み締める。

ついに、厄介な道化師を倒す事を果たせたのだ。

奴にはこのセカイに来て上手く嵌められて、精神世界へ堕とされ、そこで長きに渡り翻弄された。

不可思議な世界で苦しめられ、その中で何とか奴を倒した。

しかしそれはあくまで精神世界の話であり、リアル世界ではまだ道化師は生きていた。

そしてデータを持ち去られそうになり、こうして追いかけてきて再び再戦。

またしても何度か上手く嵌められてしまったが、それでも今度は初戦の時とは違い、やりくるめられずに倒し切った。

ついに道化師との長きに渡る戦いは終わったのだ。

「フフ……見たかしら、私の強さを。マリオネス、あなたなんかより私の方がずっと強いのよ」

しゃがみこみつつも彼女は笑顔になる。

データを取られようと、彼女は新たに技を工夫して敵を撃破してみせた。

伊達ではない四天王の実力がそこにはあった。

彼女はこうして道化師マリオネスを"ひとまず"倒したのであった。

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