ロックマンゼロ -episode leviathan- 作:プレイズ
「あんッ!」
レヴィアタンの身体がコンクリートに叩きつけられた。
お尻から落ちる形になり、彼女は尻餅をつく形になった。
彼女は突如現れた白い大男によって大鏡の中に取り込まれてしまった。
そしてここ鏡の世界へと移されたのである。
【挿絵提供:沖黒様より】
鏡の“出口”となる光る鏡が天井付近に現われ、そこから振ってくる形でレヴィアタンは落下した。そしてそのまま地面へと打ち付けられたのだ。
彼女はその際に全身を強く打ったため、痛みに顔をゆがめている。
彼女は痛みに耐えつつなんとか立ち上がっていた。
「く……酷い目に合ったわ」
敵に不意を突かれてどこかのテリトリーへと取り込まれてしまった。
不覚を取った彼女は悔しげに唇を噛む。
これは以前にもデジャヴであった。
数ヶ月前にミラージュ5の連中に嵌められて鏡世界に取り込まれた時の事を彼女は思い出す。
(この状況、あの時と同じだわ。くっ、また格下の敵に罠に嵌められるなんて。恥もいい所ね)
妖将たる自分がいいように敵の策に嵌まってしまい、彼女は内心で恥じる。
彼らはどうやらギラテアイトを奪って帰られないよう彼女を幽閉したようだ。しかし、もうこれ以上は敵の好きにはさせない。
調度いいチャンスだと彼女はこの場で奴らを全員片付ける気でいた。
「ふふ、どこに隠れているのか知らないけど、早く出てらっしゃいよ。いるんでしょ?」
挑発するように彼女は闇の奥に問いかける。
周囲は薄暗くもやがかかったようになっていた。
しかし、視界が完全に見えないわけではない。
この空間にはちゃんと視認出来るくらいには光が入っているようだ。
だが、辺りには一際暗い闇の霧が漂っており、その辺りは視界が見渡せない。
おそらく敵はそこに隠れているのだろう。
「………!」
レヴィアタンの肩がピクリと反応した。
闇の霧の奥から気配がしたからだ。
(何か来るわね)
明らかにあちらから何者かがやって来る予感がする。
間違いなく敵だ。
レヴィアタンは察知してその方向を見る。
「……ゴーレム…!」
そこには一体のゴーレムがいた。
しかも肩口には一匹の猫が乗っている。
「くく、鏡に捕らえてやったにゃん、小娘」
「あら、早速敵さんのお出ましってわけね」
彼女は現われた敵にも慌てることなく語りかける。
敵のテリトリーの中という危険な環境だが、敵が目の前に現われるであろう事を彼女は予め予測していた。
「よくもやってくれたわね。私をはめてこんな荒事をするなんて」
「お前を倒すには普通にやるのでは難しいからにゃ。僕らの戦いやすいテリトリーでやるのが最善にゃんよ。だから容姿端麗なお前が鏡を見て自分にのろけるであろう隙を狙ったのにゃん」
「…くっ、ウザい猫だわ」
敵の策略にまんまとかかってしまい、妖将の顔が悔しげに歪む。
以前の時と同様、敵は彼女が容姿に自信を持っている事、そしてその容姿に陶酔する癖がある事を巧妙に利用してきたのだ。
「さっきはよくもボスを痛めつけてくれたにゃん。そのお返しはたっぷりとさせてもらうにゃんよ」
「ふふふ、それは楽しみね」
手をクルンと返して彼女は言う。
「この私が誰だかわかっていっているのかしら?」
「妖将レヴィアタンにゃん。もちろん知っているにゃ」
にゃにゃにゃ、と自信気に笑って猫レプリは言う。
「確かに天下のネオアルカディア四天王の1人、妖将を相手にするには骨が折れるにゃ。でもそれは1人で相手をした場合にゃん」
「どういう意味?」
「僕たちはまだまだ人数がいるってことにゃ!」
猫の合図と共に、彼女の周囲を加工用にして複数のゴーレムが現われた。
その全ての肩口に同じように猫レプリロイドが乗っている。
「ふぅん……ゴーレムと猫ちゃん達が一杯なのね」
「にゃひひ、さあて、これでお前は袋のネズミにゃん」
数で大きく上回り、リーダー格であろう猫、ロッテが不敵に笑みを浮かべる。
だが勝ち誇る敵に対してレヴィアタンは余裕を持っていた。
「数で上回ったからと言って勝った気でいるのかしら?笑っちゃうわ」
「にゃに?」
「あなた達程度の雑魚、例え100匹集まろうと私の敵じゃないわよ」
クス、と妖将が鼻で笑う。
それを見たロッテは眉根を潜めた。
「強がりもたいがいにするにゃん。いくら四天王といえど小娘1人が我ら精鋭クールキャット部隊を束にして敵うわけがないにゃん」
「さあ?それはどうかしら。確かめてみる?」
妖将の挑発に苛立ったロッテが号令をかけた。
「お前達、行くにゃん!この小娘を袋にしてリンチしてやれにゃ!」
一体のゴーレムが一気に彼女に迫る。
ダッシュして接近し、レヴィアタンに向けて腕を伸ばした。
掴んで拘束する気だ。
「!?」
だが豪腕の薙ぎは空を切る。
まるで蝶が舞うように、飛び上がった妖将が攻撃をかわしていたからだ。
ゴーレムの薙ぐ腕を流麗にかわし、ゴーレムの肩へ降り立つレヴィアタン。
「にゃに!?」
「まずは1匹」
ザシュリ!
弱点の頭部に彼女のフロストジャベリンが突き刺さった。
呻き声を上げてゴーレムが爆発する。
「ちい!ならば僕が殺ってやるにゃん」
肩口に乗っていた猫レプリがレヴィアタン目がけて飛んだ。
手の鋭い爪を伸ばして彼女に刃を振るう。
パキイン
「にゃっ!?」
だがその手が凍り付いた。
いつの間にか猫レプリの腕には氷が張っており、満足に動かせなくなっていた。
ゴーレムの腕を飛んでかわした時点で、レヴィアタンが第2手として猫に向けて氷の冷気を飛ばしていたのだ。
手だけではなく足にまで氷が回り、猫レプリは完全に動きを封じられる。
「にゃぁああ!?凍ってるにゃん…!?」
「気付かなかった?ふふ、残念だったわね」
小悪魔のような笑みを送り、彼女はフロストジャベリンを振るった。
ザシュリ!と貫く音が響き、猫レプリが串刺しにされる。
数秒の内に彼女は1体のゴーレム&猫コンビを葬ってみせた。
「ちい!いい気になるなにゃん!お前らどんどん行けにゃん!」
顔を顰めたロッテのさらなる号令を受けて、次のゴーレムが彼女に襲いかかる。
しかし、彼女は全く慌てた様子はない。
今度はフロストジャベリンを高速で回転させ、氷の輪を作る。
「な、何にゃ、それは……」
「はぁっ!」
疑問を浮かべている間に技は放たれていた。
円の放物線を描いた氷の機雷群が広がって辺りに拡散していく。
そしてそれはゴーレムの頭部に命中した。
1体だけにではない。
2体3体4体と、次々に弱点にヒットしていったのだ。
「グオオオオ!?」
ゴーレムは弱点を突かれて為す術無く瞬殺されていく。
本来ならある程度耐久力のあるはずのゴーレムなのだが、弱点を的確に突かれた事と、そしてレヴィアタンの攻撃力が以前に比べてパワーアップしているのもあって、数撃で倒されていってしまう。
「ば、馬鹿な……我らの精鋭ゴーレム達がこんなにあっさりと……!」
レヴィアタン1人を相手に次々とゴーレムが倒され、ロッテは焦りを募らせる。
いくら四天王とはいえ、この数でこんな小娘相手にやられるわけがないと彼は高をくくっていたのだ。
しかし予想に反して戦況はレヴィアタン優勢となる。
ゴーレムがやられた事で、肩口に乗っている猫レプリ達は動転してしまい、的確な判断・攻撃が出来なくなっていた。
機能不全に陥った所で、妖将の流麗な槍乱舞が炸裂する。
瞬く間に猫たちは首や頭部を貫かれ切り裂かれ、爆散していった。
「ぐああああにゃん!」
「ぎいいいいにゃあ!」
「があああにゃああああ!」
次々と部隊の猫兵達が殺されていく。
数で優位に立っていたはずが、どんどん劣勢になっていく。
流石のロッテも慌て始めた。
「く、くそお!よくも僕らの部隊を滅茶苦茶にしてくれたにゃん!」
憤ったロッテはついに自らが攻め入る。
兵士に槍を振るっている妖将の背後からゴーレムに乗って接近した。
死角となる真後ろを突く狙いだ。
しかし、彼女には通じなかった。
伸ばしたゴーレムの腕が逆反転したフロストジャベリンに切られたのだ。
いや、切られてはいない。
ゴーレムの腕は頑丈な合金で出来ており、いくら鋭利な刃物で切られても切断される事はないからだ。
しかし、レヴィアタンの狙いは腕を切り落とす事ではなかった。
ゴーレムの腕にジャベリンを当て、そこを足場にしてジャンプする事だった。
まるで蝶のように優雅に舞い、彼女はゴーレムの頭上を飛び越える。
そして反対側の肩口に着地した。
ロッテの頭を踏んづける形で。
「ぐニャア!?」
「ふふ、あらごめんなさい。猫踏んじゃったわ」
悪びれずに妖将が微笑む。
ロッテは憤慨して爪で切り裂こうとするが、両の手が彼女のヒールに苛烈に踏みつけられ、動かす事ができない。
「い、痛い痛いにゃあーーー!?」
ロッテが悶えている間に、彼女はフロストジャベリンをくるんと返した。
そしてゼロ距離のゴーレムの目を目がけて貫く。
グシャアアア!!
「ゴアアアアッ!」
アイセンサーが潰れる音がして、ゴーレムが呻き声を上げた。
いくら屈強なゴーレムといえど、眼球をやられてしまえばもろい。
瞬く間にゴーレムの巨体がかしずき、爆発した。
その寸前に、彼女は飛び上がって退避する。
上手い具合に爆風から逃れた彼女は安全圏へと距離を取った。
しかし、踏みつけられて悶えていたロッテはそうはいかなかった。
ヒールがどかされ、何とか頭を上げた時にはもうゴーレムの頭部が内部から光っていた。
その1秒後、炎と共にゴーレムの巨体が爆発を起こした。
間近にいたロッテは当然巻き添えを食らってしまう。
「にゃあああアアアアーーー!!!??」
わけもわからず高圧の衝撃を浴び、彼の身体は消し炭となって吹き飛んだのであった――。
「ふう、これであらかた片付いたかしら」
ストっと華麗に着地を決めたレヴィアタンが炎が上がった後方を振り返る。
今の爆発で猫部隊の参謀リーダー格ロッテは死んだ。
まだ部隊の残党は何体か残っているものの、頭を失っては統制も取りようがない。
レヴィアタンの前でたじろいで右往左往している。
そんな彼らに向けて彼女は言い放った。
「指揮役の猫も死んだ事だしもうあなた達に勝ち目はないわよ。悪い事は言わないからさっさと降参する事ね」
フロストジャベリンを高速回転させて、彼女はドン!と地面に突き立てる。
「もしそれでもまだ戦いたいって言うならどうぞいらっしゃい。今のリーダー猫のように残虐に殺してあげる」
妖将の宣言を聞き、残党達は動揺した。
既に部隊の大半が倒され、リーダーのロッテまでもが彼女に殺られてしまったのだ。
今更残った自分達でかかってもとても相手にならない。
そう思った彼らは、次々に観念して逃げ帰っていく。
「ひ、ひいいい!助けてにゃーーん!!」
恥もへったくれもなく彼らは敗走して逃げていく。
数で大きく上回っていたはずなのに、もはや完全に形成は逆転していた。
「まったく、呆気ないこと」
退散していく猫レプリ達を見てレヴィアタンは呆れたようにため息をついた。
まさかこの程度の兵力でネオアルカディアに侵攻する気でいたとは拍子抜けもいい所である。
「身の程知らずもいいところね。首を洗って出直してきなさい」
明らかに力不足の敵達へ向けて彼女は言った。
ネオアルカディアに攻め入るというから一刻も早く撲滅しなければとそれなりに緊張感を持っていたのだが、これならそこまで神経を尖らせる事もなかった気がする。
「ッ!?」
その時、不意に下方から圧力がかかった。
突然脚が持ち上がったのだ。
「…な!?」
全く気配を感じなかった彼女は意表を突かれる。
下を見ると何者かの腕が彼女の脚を掴んでいた。
そのまま彼女を姫抱っこする形でホールドする。
【挿絵提供Ling☆Mu(リンムー)様より】
「なぁ…!?」
気付けば彼女の真下から敵が姿を現していた。
まるでピエロのような外見をした者が。
レヴィアタンは驚きに少々動転する。
何せ全く気配を感じられなかったのだ。
「ふふふ、お初にお前にかかル。妖将レヴィアタン」
ピエロが言葉を発した。
「君ヲ倒させてもらおウ。ギラテアイトは渡さなイ」
「な……!」
倒す、という言葉に彼女は明確に敵だと認識した。
このピエロ男もギラテアイトを守るための輩だ。