ロックマンゼロ -episode leviathan- 作:プレイズ
「きゃァ!」
おもむろに背後からレヴィアタンの身体が持ち上げられた。
両脇から腕が差し込まれて強い力が加えられたのだ。
分身に気を取られて後ろへの注意が散漫になっていた彼女は対処出来ず”組まれて”しまった。
足が持ち上げられて慌てて彼女が暴れる。
だが差し込まれた腕を回し込まれてキメられ、完全に両腕は折り畳まれてロックされていた。
これでは上半身の自由が効かない。
「く、くぅ…!放しなさい!」
両足をジタバタさせて彼女は抵抗するが、背後のピエロには何ら影響を与えられない。
両腕をキメられているせいで後ろに上手く力を伝えられないのだ。
「クク、これで君は捕まえた」
マリオネスが不敵に笑みを浮かべる。
妖将の自由を奪い、ご満悦の様子だ。
「ボクの分身は精巧でネ。見間違うのも無理はなイ」
「く……!よ、よくも」
背後を睨めつけるレヴィアタン。
キメられているが彼女はピエロの本体に対して威勢を強める。
だが今度は前方から気配がした。
「はっ!」
不意に気配を感じて彼女はばっと振り返る。
するとそこにもピエロがいた。
マリオネスそっくりの道化師が。
「ッ……!ぶ、分身!」
「やあ」
視認した直後、分身のピエロは彼女に手を伸ばした。
そして額に手を当てる。
「ヒ!」
回避が追いつかず、レヴィアタンの肩が跳ねた。
だが幸い打撃が加えられる事はない。
「安心しなヨ。キミを痛めつけるつもりはなイ」
「……………」
額に手を据えられ、レヴィアタンはうろたえる。
しかし攻撃が飛んでは来なかったため、少々安堵した。
「…ど、どういうつもり?」
「しばし休戦といこうカ」
分身ピエロが言う。
「休戦……?」
「連戦で疲れているだろウ?少し休むといイ」
次の瞬間、妖将の視界が揺らぐ。
ぐらり、と強烈なめまいが彼女を襲った。
「あア……!」
しまった!
ピエロに額に当てられた手から何かをされた……!
そう彼女が思った時にはもう手遅れだった。
麻酔のような効果がピエロを通じて妖将の額へと注ぎ込まれていた。
頭から直に効果を受ける形になり、レヴィアタンの身体が揺らつく。
「は、はぅ、、、」
ふらりと足元がおぼつき、彼女は視界が暗転する。
後ろへ倒れ込みそうになるが、彼女が転倒する事はなかった。
後ろで本体のマリオネスがきちんと捕まえていたからだ。
「……………」
完全に意識が混濁し、レヴィアタンの身体がマリオネスに持たれかかる形で寄りかかる。
彼女の瞳はハイライトが霞んだようにくすんでいた。
「フフ、これでボクの幻惑夢にかかったネ」
本体のマリオネスが不敵に言った。
「疲れただろうから、アルカディアな夢を見るといイ」
分身のマリオネスが前方から不気味に言った。
ピエロは妖将の額を撫でつけ、さらに麻酔効果を付与する。
彼の能力は分身だけではなかった。
道化師の名の通り、相手にイリュージョンを見せる事が出来るのだーー。
ーーーーーーー
。。。。
。。。。。
。。。。。。
「おい、起きろレヴィアタン」
「……ぇ、、、」
朦朧とする意識の中、不意に彼女は誰かに起こされた。
聞き覚えのある声が耳に届く。
「あ、ゼロ……」
「ようやく目が覚めたか、レヴィアタン」
目を開けるとそこには見知った顔のゼロがいた。
「…何で貴方がここに……?」
「? 何を言っている。一緒に住んでいるんだから当たり前だろう」
「え……?」
当たり前の事を訊くな、という顔をゼロにされる。
レヴィアタンはしばしキョトンとした。
「ここは……」
辺りを見回すと、どうやら自分はソファーの上で眠っていたようだ。
ここはどこかの部屋のようである。
「忘れたのか?昨日この部屋でお前と話していたら、お前はそのままソファーで眠ってしまってな。ベッドまで運ぼうと思ったが、起こしても悪いからそのままソファーで眠らせておいた」
「ぇ、そ、そうだったかしら、、、?」
昨日の事をゼロに言われ、彼女は記憶をたぐる。
あまり思い出せないが、確かに何か夜までゼロと談笑していたような気がする。
「と、ところでゼロ。今”一緒に住んでいる”って言ってたけど、どういう意味?」
「何を言っている。俺とお前は同棲しているだろう」
「え……?」
彼女はゼロの言っている事が一瞬理解出来なかった。
同棲とはどういう意味だったかしら?
彼女の頭脳メモリーが単語の意味を検索する。
本来ならそんな事をするまでもなく意味などわかっているのだが、普通ならあり得ない事なので彼女はわざわざメモリー検索の手間をとった。
検索結果はこうである。
『同棲:一緒に住む事。特に好きな相手と正式に結婚しないまま一緒の家に暮らす事』
「な……」
「俺とお前はもうずっと同棲しているんだぞ。今更何を言っているんだお前は」
気付けばゼロがソファーの隣に腰掛けていた。
手慣れた様子で彼はレヴィアタンの方を見る。
「あ、ゼ、ゼロ……」
「久しぶりに朝にやるか?」
何の気なしにゼロが言った。
いつの間にか彼はレヴィアタンの足を持って自分の膝の上に乗せ上げている。
まるで彼女を彼女として扱うように。
「あ………」
【挿絵提供:もめおセカンド様】
レヴィアタンは、咄嗟に対処が出来ない。
ゼロに何かをされそうになっているのは理解しているが、拒絶する事はなく心臓の鼓動が高まる。
彼女の精神は好きな対象に対して少々気を許していた。
「さあレヴィアタン、俺はもう準備は出来ているぞ?」
ゼロは既に狼の雰囲気を纏っていた。