ロックマンゼロ -episode leviathan- 作:プレイズ
鏡世界、そのテリトリーの中枢に位置する魔封宮殿。
ここは鏡を操る者達が集い様々な案件を処理する場所。
レヴィアタンが幻術世界で虚構のゼロと葛藤している最中、"現実の鏡世界"ではある重要な商談が開かれていた。
「さて、ベルチェ様。はるばるよくお越しくださいました」
今しがた鏡ゲートを通ってやってきた1人の来訪者へ、翁がうやうやしく会釈した。
「ここは相変わらず仄暗くて不気味な場所だな」
「ええ、この鏡世界は表世界とは対極にあります故。ある意味闇深い場所と言えましょう」
客人の感想に翁が頷いて苦笑する。
ここの住人である彼からしても否定する気にはならないようだ。
「さて、早速だが取り引きに入らせてもらおうか」
「心得ました。ではこちらの品はどうでしょう」
客人は着いて早々に目ぼしい商品がないか翁に商談を持ちかける。
今彼らはこの場所で闇取引を始めていた。
表世界では取り引きを禁じられている貴重な品々の売買を彼らはしている。
この鏡世界でならば、ネオアルカディアの監査の目にもかからないというわけだ。
「こちらはレプリロイド用の希少麻薬、マジェスティラックでございます」
「ほう、かなりの量があるな。いくらだ?」
「500000ゼトスではいかがでしょう?」
「少し高いかな。もう少し安く出来ないか?」
「そうですな……では485000ゼトスでは?」
「いいだろう。その値で売ってくれ」
客人は翁からいわくつきの品を高額で売り買いしていく。
彼は闇商人であり、この鏡世界ではお得意様であった。
「お買い上げ頂きありがとうございます。ベルチェ様にはいつも良い取り引きをしてもらって有難いですな」
「ここの品揃えは指折りだからな。闇ブローカーとしてお前ほど優秀な者はなかなかいない」
「お褒めに預かり光栄でございます」
「そこでどうだ、"ゾルベームグ"よ。何か特上の上物はないか」
客人は翁に笑みを向けて持ちかける。
彼を持ち上げたのは、見返りを求めるためでもあったようだ。
「ほっほっ、ベルチェ様は抜け目ないですな。感がお鋭い」
「という事は、何か良い品が入ったのか?」
「こちらのモニター画面でご覧に入れましょう」
翁は傍にあったモニター画面を立ち上げる。
どうやら現物はここにはないようだ。
「物は別の場所にあるのだな」
「ええ、何せとても貴重な個体が手に入りましてな。厳重に管理しております故」
彼は手慣れた様子で手元のリモコンを操作する。
数秒して、モニター画面に映像が映し出された。
「おお、これは……」
ベルチェは意表を突かれたように目を見開く。
そこには大きなクリスタル結晶が映っていた。
その中に1人の少女を収める形で。
「何と美しい」
画面に映し出された少女を見て彼は感嘆の声を漏らす。
クリスタルに入っているのはとても可愛らしい青の美少女であった。
「素晴らしい。美しい容姿も可憐なスタイルも」
「ええ、まさしく特上級でございますのう」
結晶の周りにはLEDライトが取り付けられており、クリスタルを色鮮やかに照らし出している。
「光輝いていて凄く綺麗だなこれは」
「展示コレクション用にライトアップしております」
「なあ、まさかと思うがこの少女はーーあの妖将か……?」
「ご明察。かのネオアルカディア四天王、妖将レヴィアタンにございます」
【挿絵提供:識 skeb様】
そこに収められていたのは界隈で知らぬ者はいない将の1人。
翁の答えにベルチェは驚きを隠せない。
「何と、あのレヴィアタンとは……!一体どうやって捕らえたのだ」
「それは少しばかり謀り事をしましてな」
「彼女はかなりの実力者。そう簡単には捕まえられないだろう」
「いや、意外に難しくはなかったですぞ。彼女はその美しい容姿故に陶酔癖がありましてな」
翁は鏡を利用してレヴィアタンを鏡世界に引き込んだ事をかいつまんで話した。
にわかには信じられない客人だったが、翁はその一部始終を映像に残しているらしい。
彼はそれをお見せしましょうとその時の映像を再生した。
するとモニター画面とは別に、部屋の奥に大きなスクリーンが降りてくる。
そこにプロジェクターから投影する形でその際の録画映像が映し出された。
『ひゃん!//』
室内に少女の惑った声が響く。
部屋の周囲に設置された立体音響スピーカーから出た音声だ。
これは前述の場面を撮影した監視カメラによって記録されたもの。
同時にその時の映像もカメラで録画されている。
今、彼らの前にあるスクリーンに撮影された映像が写し出されていた。
『キャ、キャア!//』
妖将が思わず悲鳴を上げる。
彼女は白い大柄な男に担ぎ上げられていた。
しかもその状態でお尻を舌で舐め回されている。
「これはまあ、大胆ですな」
「調度あちらが鏡の前でのろけて隙を見せた所だったですのでな。そこを強襲したわけです」
「しかし、彼女のお尻をあんなふうに触るとは。これも策かい?」
「ええ、まず妖将の動揺を誘うためが一つ。いきなりこれをされればさしもの四天王といえど平常心ではいられないでしょう」
「確かに。かなり当惑しているな」
「女性の妖将が不気味な大男に舌で尻をペロペロされてはそれは乱れるでしょう」
「当然のリアクションではある。ふふ、しかし可愛い事だ」
スクリーンに映るレヴィアタンは四天王の威厳などどこかへ行ってしまい、敵のハレンチな蛮行にただただ混乱し惑っている。
【挿絵提供:自作】
「もう一つの肝は"マーキング"ですな」
「マーキングだと?」
「この白い大男には特別な能力が備わっていましての。あれをする事で対象の特殊能力を分析把握出来るのです」
「ほう、それは面白い。尻を舐める事で相手の特殊能力が解析出来るわけか」
「ええ。例えばレヴィアタンの場合は得意としている氷能力の詳細データがわかるわけです。氷を実体として生成する核の電子配置の構成などがね。まあ奴が解析を終えるには15分程度時間が必要ですがな。その間は何とか人海戦術で乗り切りましたですじゃ」
「なるほど。そうして彼女の氷能力を丸裸にして無力化し、催眠にかけたわけだ。流石は老練軍師。抜け目ないのはゾルベームグ、お前の方じゃないか?くく」
「いえいえ、まだ計画はフェーズ3の途中段階。最後まで成功してこそ我々にとって価値があるのです」
スクリーンに映るクリスタルに封じられた妖将の姿を見て、老練ゾルベームグは不敵に笑ってみせた。