一般病弱妹系自意識最低TS哲学兵装雪女の儚い一生 作:雪女って良いよね!
異世界転生。
なんと心躍る言葉だろうか。素晴らしく希望に満ち溢れた概念だ。
斯く言うそんな私も、異世界転生を体験した者の一人だったりする。
幼少期の記憶はかなり曖昧だが、私は
なんとも不思議なことに前世とは性別が違うので、12年を経ても宙ぶらりんの性自認だが、まあなんだかんだで良いと思ってる。
それよりも病弱で虚弱気味なことの方が悩ましく思えているくらいなのでその辺は御察しだ。
ちなみに、転生先であるこの世界だが、この施設の資料室で盗み見た資料から得た断片的な知識でしかないが、ノイズとかいう化け物や厨二病も笑顔な聖遺物、錬金術などなどのファンタジーが存在するらしい。
ただ、ちょっとオーバーテクノロジー感はあるけど、普通の現代っぽいので安心したような、残念なような複雑な気分である。
でもせっかく転生したのだし、いつかは世界中を見て回りたいな、とは思っている。
「っ、く⋯⋯っ」
「セッカ、大丈夫なのか!? ⋯⋯ヤバそうなら、まだ寝てても良いんだゼ?」
四人部屋、割り当てられたベッドから起き上がった私は、体勢を崩してベッドから転げ落ちそうになってしまい、慌てた様子の少女に支えられた。
身体が貧弱すぎるので、ちょっと実験に付き合って、血を抜かれたら丸一日寝込んでしまう。
元より色白の顔は万年真っ白で死人のようだと揶揄されることもしばしば。筋肉もゼロ。
まあ、件の少女含めた同室の他の皆の方がキツい思いをしているだろうから、この程度は苦でもなんでもない。随分前から痛覚も鈍いので、それも幸い。
「⋯⋯大丈夫、です。⋯⋯それより、ミラアルクさん達こそ、大丈夫なのですか」
「ああ、ウチらは大丈夫だゼ。今日は実験も少ない日だしな。ヴァネッサ達もそろそろ帰ってくる頃だろ」
少女の名前はミラアルク。やたらと奇妙な髪型をしているが、活発でとても優しい子だ。
彼女は、完全なる生命?とかなんとかを目指しているらしいカルト集団、パヴァリア光明結社で非合法な人体改造を受けている。同室の他の二人も同様だ。
そんな彼女達は、並々ならぬ絆で結ばれた家族のようにすら見える。
私もここにいる以上は似たような境遇ではあるが、彼女達の方が余っ程苦しいだろう。私は献血して、ここに来る前に与えられた力で実験に協力しているだけだし。
私は、彼女達の絆を蚊帳の外から眺めるだけで良い。むしろそうしたい。私みたいな異物が割って入るなんて言語道断である。
そんな私でも、三人のために何とかしたいとは思うし、頑張れば何とか出来なくも無いとは思うのだが⋯⋯。
「⋯⋯なら、良いのですが」
「セッカは心配し過ぎなんだゼ。ウチらはそんなにヤワじゃないから、心配しなくても良いんだゼ」
何ともないように振舞っているが、彼女達がどれだけ苦しい思いをしているのか、私は知っている。その苦しみの程を想像は出来ないが、壁を幾つも越えて悲鳴が届くのだから相当だ。
許すまじ、パヴァリア光明結社。こんな美少女になんてことを。
私がパヴァリア光明結社に憤っていると、唐突に扉が開いた。
留守にしていた二人が帰ってきたのか、そう思って扉の方を向いて、私は硬直した。
「あぐっ!」
「ヴァネッサ、しっかりするであります」
「ヴァネッサ!? その怪我、どうしたんだゼ!?」
「⋯⋯ヴァネッサ、さん⋯⋯!?」
そこに居たのは、身体中から火花を散らして苦悶に顔を歪ませる褐色の女性と、ピンク髪の少女。
私達の中での最年長者──前世含めたら圧倒的に私が最年長だが──であるヴァネッサと、最年少であるエルザだ。
まだ幼く小柄なエルザに肩を貸してもらわなければ立っているのもやっとな様子のヴァネッサに、私は言葉を失った。
しかし、ヴァネッサは私達に心配をかけさせたくないとでもいうかのように微笑む。
いや、流石にその満身創痍具合では無理がある、なんて言えるはずもない。
「だ、大丈夫よ、ミラアルクちゃん、セッカちゃん。お姉さん、このくらい全然大丈夫だから」
「でもよ! ⋯⋯ッ、クソ! 許せねえゼ!」
「昨日今日とこうも毎日ヴァネッサやセッカに苦しい思いをさせて、わたくしめも許せないであります!」
私は別にそんなに苦しくないが、ヴァネッサをこんな目に遭わせて許せないということはミラアルクとエルザの二人に全面的に同意である。
むしろ、こうなる前にさっさと決断できなかった半端な自分が許せない。
私は、この日決めた。
───ここのヤツら全員氷漬けにして、皆とどっかに逃げよう。
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