一般病弱妹系自意識最低TS哲学兵装雪女の儚い一生 作:雪女って良いよね!
喜びだけで書いた為、ちょっと駆け足気味な感じもしますが。
アタシには一つ下の妹が居た。
妹のくせにアタシよりも頭が良くって、恥ずかしがって歌はあんまり歌わなかったけど、パパとママの音楽はやっぱり好きで。体が弱いのに、アタシの心配ばかり。
幼い時の話で、もう記憶も曖昧だが、それでもアタシにとっては唯一の妹だ。忘れることは無い。出来るはずもない。
そして、その妹を奪った争いへの憎悪もまた、アタシは忘れることは無いだろう。
アタシは雪音クリス。
愛する全てを失った、だからこの世界の下らないモノ全てに復讐をする。
ただ、それだけだ。
□
───思ったよりも私の力が強かった件。
「セッカ、これとかどうでありますか?」
「⋯⋯これなら、ヴァネッサさんも喜ぶ、と思います」
ただ、それ以上に私に返ってくる反動が大き過ぎて一週間も寝込んでしまったので、三人からはあのレベルの能力はもう使うなと何度も念押しされてしまった。
三人が辛い思いをしているのに何も出来なかった私なんて、三人の家族にはなれない。せめて三人のためにこの能力を使いたい的なことを言ったら、ヴァネッサに泣きながら頬を叩かれた上、他の二人にもガチ泣きされたので、やむなく了承。
以降、私要らないのでは? というくらいの獅子奮迅の活躍でヴァネッサとミラアルクが追っ手を蹴散らしてしまっているので、今日も今日とてエルザとお留守番⋯⋯だった。
「⋯⋯ミラアルクさんには、これが良いでしょうか」
「おお! 良いと思うのであります!」
私とエルザは、日頃頑張るヴァネッサとミラアルクに贈るプレゼントを買う為に街まで来ていた。
全然関係ないけど、ヴァネッサのおっぱいってデカくて良いよね。
元男としては複雑ながら、弱冠十三歳にして私の胸は大きい。それはもう大きい。
だが、女のナリをした偽物である私の偽乳と違って、ヴァネッサの乳は機械の体とはいえ本物の女性の乳、本物乳だ。それであの大きさは夢がいっぱい詰まってる。
などということを私が考えているなんて露知らず、エルザはヴァネッサに贈るスカーフと、ミラアルクに贈るヘアアクセサリーの入った紙袋を大事に抱えながら、嬉しそうにしている。
鼻歌まで歌い出しそうなその様は、しっぽがあればブンブンと振っていること間違い無し。
可愛い。
エルザの可愛さに内心悶えていると、ふとコンビニのガラスに貼られたポスターが目に付いた。
「⋯⋯“つゔぁい、うぃんぐ”?」
「ライブというものでありますね。わたくしめは行ったことが無いのであまり深くは知らないのでありますが⋯⋯あっ、セッカ⋯⋯!?」
申し訳なさそうにするエルザの頭に、いつの間にか手を置いていた自分に驚く。
私達の中では最年少である彼女のことを、私は知らず知らずの内に妹のように思っていたのかもしれない。
⋯⋯そんなこと、私に思う権利は無いのだが。でも、嫌がられないのでちょっとだけ。
ちなみに、この身体は横文字を受け付けない体質らしく、口に出すとあやふやな感じになる。
私の意識では大丈夫なのだが⋯⋯。
しかし、ライブか。ライブ⋯⋯実は前世でもライブに行ったことは無い。少し興味がある。
それに、エルザも惜しそうにしていたし、
「⋯⋯それでは、その“らいぶ”に行きましょう」
「え?」
□
「⋯⋯“つゔぁいうぃんぐ”⋯⋯大盛況ですね」
「本当ねえ。ライブなんて全員初めてだから浮かないかしらって思ったけども、これだけ人が居るならそんなことなさそうね」
見渡す限りの人、人、人。
人しかいないと言っても良い。人酔いしそうだ。
私は、ヴァネッサ達と一緒にツヴァイウィングのライブに訪れていた。特に何の目的もない、ただライブを観るためだけに。
隣を歩くエルザが嬉しそうに、それでいて物珍しそうに辺りを見回す。
実際、本当に嬉しいのだろう。研究所時代はこんなイベントとは縁遠かったから。
これが彼女の本来の一端だとしたら、これから先もこうして彼女に楽しい思いをさせてあげたいと思う。
「まさか、本当に来れるだなんて⋯⋯感激であります!」
「ふふ、喜んでもらえて良かったわ。あのセッカちゃんがライブに行きたいだなんて言うから、いったいどういう風の吹き回しかと思ったけど、こういうことだったのね」
「まあ、たまにはこういうのも良いと思うゼ。こんなモノまで貰っちまったしな」
ミラアルクが喜色に表情を崩した。プレゼントのヘアアクセサリー、喜んでもらえたなら何よりだ。
が、それはそれとしてヴァネッサとミラアルクの温かな視線が気恥しい。
別に、私はそれが良いと思っただけで、それは二人が思うような優しさという程のものではない。
先日のことだ。
二人のために買ったプレゼントを渡したその後、私は二人にライブに行きたいと申し出た。
正直な話、あまりにも奇抜すぎなければ何のライブでも構わなかったのだが、ヴァネッサが取ってきたのはまさかのツヴァイウィングのライブ。
調べたら、倍率もかなり高く、日本で今大人気の二人組歌手グループらしい。
ヴァネッサ曰く、家族のお願いは最大で叶えたい、だとか。よく出来た人だが、私も家族の範囲に入れるのは良心が痛むのでやめて欲しい。その愛はミラアルクとエルザに注いでください。
「そろそろ始まるみたいだゼ。ちょっとウチも楽しみになってきたっ」
「そうね。お姉ちゃんも楽しみだわ」
かれこれ話していると、会場の灯りが消える。
囁きすらも聞こえなくなって、静寂が辺りを満たした。
そして、音楽が、始まった。
ペンライトが一斉に色を放って、会場は一気に大盛り上がりを見せる。
舞台の上の二人の少女が歌を紡げば、まるで世界が二転三転するようであった。
「⋯⋯これが、“つゔぁいうぃんぐ”⋯⋯音楽⋯⋯!」
「凄い! 凄いであります!」
舞台から少し遠いこの位置からでも、主役の二人、ツヴァイウィングの歌声は心を揺さぶってくる。
これは、人々が夢中になるのも頷ける。
エルザも物販で購入したペンライトを、周りの見様見真似で振り回している。可愛い。
「⋯⋯凄かったのであります」
歌が終わる。まるで、神話のような荘厳で美しい時間。
小説家でもないのにそんな難しい表現を考えてしまうほどには、このライブは私を強く惹き付けた。
次の曲が始まるのだろうか。待ち遠しく、私は舞台に目を向ける。
だが、その時である。
───大きな
「な、何でありますか!?」
「これは、爆発か? 穏やかじゃないんだゼ」
「三人とも、私から離れないようにね。⋯⋯荒れるわ」
ヴァネッサの言う通り、会場は瞬く間に荒れた。
悲鳴と怒号、阿鼻叫喚の地獄絵図。幻想の空間は、一瞬にして塗り替えられてしまう。
「⋯⋯これは⋯⋯」
何やら、知らない生き物のようなナニカの大群が会場に現れる。
ソレは逃げ惑う観客に接触すると、観客諸共灰となって崩れ去った。
資料でしか見た事のない存在だが、明らか異質な見た目と、目の前で起きた惨劇を鑑みれば、容易に見当がつく。
「見捨てるようで残念だけど⋯⋯三人とも、逃げるわよ」
「応とも⋯⋯ッ」
「⋯⋯ガンス」
例え常人とは違う私達であっても、生身の私達はノイズを相手にするには分が悪い。
ヴァネッサの提案には全面的に賛成だ。
だけど、ここで三人に見殺しにさせてしまうのは、何かが違う気がした。それは、間接的にも手を汚すことと変わらないのではないか。
手を汚すなら、私だけで良い。傷付くのも、人生二週目な半端者の私が適任だろう。
三人には、憂いの無い光の道を歩いていて欲しい。
年長者のささやかなお節介だ。
「きゃぁあっ!?」
「⋯⋯ッ」
───【
ノイズに今まさに殺されようとしていた女性の悲鳴。
ほぼ無意識に、私は力を行使していた。
私の全身を媒介として放たれた吹雪、その中に混じるいくつもの氷片がノイズを襲い、その身を穴だらけにする。
灰と消えたノイズを一瞥することなく、私は女性に振り向く。
「⋯⋯早く、行ってください⋯⋯!」
「は、はひっ!?」
幸いなことに腰を抜かすことは無かったようだ。転けながらも逃げ出した女性を見て安堵する。
恐らく、私の格好にビックリしただけだろう。
私は力を行使すると、どんな格好をしていても水縹色の着物姿になってしまうのだ。
力を使ったら衣装が変わるなんて何処の変身ヒロインだ、という話だが、まあもう気にしないことにしている。
「セッカちゃん!?」
「⋯⋯三人は、逃げてください⋯⋯! 避難が終わったら、私も逃げますから⋯⋯!」
自分でも後先考えてないことだって分かってるけど、もう飛び出してしまったものは仕方がない。
せめて、三人には迷惑をかけたくない。
振り向くことなくそう言うと、ミラアルクとエルザが私の隣に立つ。
「ったく、家族を置いて逃げるわけがないに決まってるんだゼ」
「そうであります!」
「⋯⋯仕方ないわね。ちょっとだけ、本当にちょっとだけよ?」
「⋯⋯ありがとう、ございます⋯⋯わっ」
そうは言っても、ヴァネッサも何処か嬉しそうだ。
戦闘態勢の三人に礼を言うと、唐突にヴァネッサとミラアルクに頭を撫でられる。
いきなりのことで唖然としてしまうが、そんな私を他所に二人は微笑むと駆け出した。
「お姉ちゃんがさっさと終わらせちゃうから、二人は見てても良いわよ?」
「ウチら二人で十分なんだゼ!」
そう言って戦火の中に飛び込んだ二人は、ノイズ相手に無双の如く立ち回り始める。
⋯⋯マジで、私要らない子なんだけど。
立ち尽くしていると、エルザが私の手を取って走り出す。
その顔は、とても清々しいものだった。
「わたくしめらも行くであります!」
「⋯⋯はい⋯⋯っ!」
私は今、どんな顔をしているだろうか。
立ち塞がるノイズを吹雪で消し飛ばしながら、私はそんなことを考えていた。
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