「トリオンって不思議の塊ですよね。調べれば調べるほど謎が生まれてくる」
「利用するという点においては、一旦『そういうもの』として受け入れることだね。こちらは技術が遅れ過ぎてる。解明はもちろんだけど、まずは土俵作り。鬼怒田さんもそう言ってたんじゃないのか?」
「そうは言いますけどね冬島さん。理屈は分かりますけど、やっぱ気になるものは気になるじゃないですか。てかその土俵はできてるわけですし」
「まぁな。で、今お前は何を知りたいわけ?」
「トリオン体の時の女子の下着」
「よくエンジニアに採用されたな」
それはもちろんこの頭脳と試験運用できる身体能力だからだな。レイガストを作るためにエンジニアになった雷蔵さんみたいなもん。あの人太ったけど。あと、俺は第1志望エンジニアだったし。自分でトリガー作りたいじゃん。男のロマンじゃん。っていう気持ちが採用の理由らしい。
「冬島さんは気になりません? それでも男ですか?」
「男の判定酷いな」
「もしかして25ともなれば枯れるものなんですか? いやだなぁ、年取りたくねぇなぁ」
「ちょっと訓練室いかないか? 試したいトラップ祭りがあるんだ」
「嫌だ。痛くなくても絵面ひどいやつでしょ! 5回やれば十分ですよ!」
「律儀にフィードバックしてくれるのありがたいんだよなアレ」
「そこはエンジニアなので」
「変なとこで真面目だな」
冬島さんのトラップ祭りは酷い。ピタゴラスイッチみたいに次から次へとトラップが発動するんだ。ちなみにボール役は俺。これまでに5回やっていて、当然ながら5回目が一番酷かった。視界がなんかよくわからんくなった。
「あれなぜか
「いやそれは俺じゃねぇな」
「じゃあ誰だ? ……見当つかないからいいや」
「仁礼ちゃんが見てたとか?」
「いやいや、あのコタツ星人が見てるわけないでしょ」
「妙に説得力あるな」
仁礼は影浦隊のオペレーターで、作戦室にコタツを置いている。基本的にそこでダラダラするようなやつだから、直接見られるわけがない。
「んで話を戻しますけど」
「どの話に?」
「パンツの話です」
「普通のパンツだろ」
「興味なさげに結論づけないでくださいよ! そりゃ冬島さんの年齢からすればボーダーの女の子ほっとんど年が離れてますけども! 一回り離れてるような子とかたくさんでしょうけど! こちとら年齢近い人たちばっかり!」
「言いたいことは分かるけどな? 俺を巻き込むんじゃない。お前ならまだ『バカやってんな』で済むけど、俺の場合犯罪になるんだわ!」
「マジレスは求めてないんで」
冬島さん大抵のことはノリがいいけど、流石にこの手のことは突き放されちゃうな。言い分は分かるし、こっちの気持ちも分かってくれてるっぽいからそれで納得しよう。
「てかお前、男しかいないラボにずっといるから頭おかしくなって……最初からか」
「常人には天才がおかしな人に見えるものらしいですね。でも冬島さんの意見も一理あります。今日はここで終了して散策してきますよ」
「即決できるのとその行動力は長所だよなほんと」
腰やら首やらの関節を鳴らしてたら冬島さんの声を聞き逃してた。何を言っていたのだろう。
「そうそう。冬島さんに持ちかけられてたトラップのやつ、試作はできましたよ。そこのトリガーにセットしてあるんでご自由に試してみてください」
冬島さんはボーダーで希少なトラッパー。そのトリガーはスイッチボックスと呼ばれるもので、いろんなトラップをそれ1つで仕掛けられる。用意しておいたトリガーには、既存のものに加えて、冬島さんに提案された試作トラップを入れたスイッチボックスがセットされてる。
「相変わらず仕事早いな」
「天才ですから」
「バカ丸出しだぞ」
おかしいな。事実を言っただけなのに。
「そういや、ここ来る前にうちの作戦室に
「なんで? 先にこっち探しに来てそうなものを」
「ここに来たらしいけど、見当たらなかったんだと」
「トイレ行ったときか。すれ違いですね」
「コントか」
「なら、ひとまず結束探しますかね」
てか、携帯電話の方に連絡したらいいのにな。なんで連絡してこないんだろ。電源が切れてるわけでもなく、マナーモードにしてるわけでもないのに。連絡来たらすぐに気づけるようにしてるのに。
「課題の提出がどうこうって言ってたな」
「よーし今日はもう帰ろうかな。弟が腹を空かせて待ってる気がする」
「弟いないだろ」
「今生まれた気がします!」
「どこでだ!」
世界は広いからな。探しに行かないとな。
「課題くらい適当にやって出せばいいんじゃないのか? 成績も悪くないんだろ?」
「だからこそ課題出すのが面倒なんですよ。作業感半端ない」
「ほんと、よくエンジニアになれたな」
こっちは楽しいから作業感皆無。あっちは面白くないから作業半端ない。この差が大きいのだ。
同じゲームというジャンルでも、素材集めが必要なゲームとパーティゲームじゃ全然違うでしょ。それと同じ。
「とりあえず、結束が来る前に俺は撤退しますよ。辻捕まえてガード役してもらおうかな」
「やめてやれ」
克服したいなら、むしろ程々に女子と接触するべきな気もするんだよな。学校でも結局ガード固くしてるしさ。辻にチョコを渡したいって子から相談受ける身にもなってほしい。
「そういや二宮隊ってなんでスーツなんすかね。言われるがままに作りましたけど、なんでスーツなんすかね」
「二宮に直接聞いたらどうだ?」
「問題あるかって逆に聞かれたので話を無かったことにしました」
「まじで聞いてたのか」
加古さんにその話をしてみたらめっちゃ笑ってた。話のネタを提供したからか感謝されたし、炒飯も奢ってもらえた。葡萄ジャムは合わないと思います。はい。
「てか冬島さん、何気に俺を足止めしようとしてません? この間に結束が来るとかそういう算段でしょ」
「そうだぞ」
「認めんのかい! こうしちゃいられねぇ! 俺は帰る!」
「ひゃっ!?」
「ん?」
自動扉を開くために手を伸ばしたら違うものに当たりました。固くないです。柔らかいです。これはCカップ。
「遥がここに来るなんて珍しい。どうしたの?」
「まずはこの手を退けてくれないかな?」
「それはそうだ」
言われた通りに手を離す。女子の胸って柔らかいものだなぁと思いながら、ふと1つ疑問が生まれる。
「木虎ちゃんが伸び悩んでるから、何かアドバイスしてくれないかなって思ってきたんだけど。でも錬くんえっちみたいだし……」
「今のは事故だが? あと中学生は守備範囲外です」
「ちなみに木虎が高校生になったら?」
「性格がちょっと。友達くらいがいい」
「もう冬島さん」
「ごめんごめん」
おっと冬島さんで思い出した。
おっぱい柔らかかった。じゃなくて!
ここに居続けてると結束に捕まるんだった。
「木虎の件は本人次第でしょ。遥のことだから、先にこっちで了承取っとこうって考えでしょ?」
「うん。ということは、OKでいいのかな?」
「遥の頼みなら。嵐山さんにも世話になってるし」
「よかった~。ありがとう錬くん!」
眩しい笑顔だなほんと。学校でもボーダーでも人気があるのが納得だ。
「流川くん見つけた!」
「やっべ」
駆け出そうとした手を遥に掴まれる。今の流れだけで察して止める側に回るなんて頭の回転滑らか過ぎでは? というか、今あなた俺に借りができたばかりですよね! 早速仇で返さないでほしい!
「錬くんのフォローをした回数の方が多いよ?」
「さらっと人の心を読むな……!」
「流川くん! 課題を! 今週中に出して! じゃないとなんでか私が先生に言われるんだから!」
「可哀想にな。どうしてそうなったんだろ」
「流川くんのせいだよ!? あ、冬島さん足止めありがとうございました」
「これくらいどうってことないさ。トラップも発動せずに済んでよかった」
廊下に仕掛けるな危ないから!
「錬くん課題出してなかったの? 何か気になることでもできたの?」
「よく分かったな。あ、今ちょうどオペレーター2人いるか」
「結束ちゃん。これ協力した方が早いかもよ?」
「……すぐに終わるものなら」
すぐに終わるとも。トリオン体になってもらえればそれでいいんだから。
そこを説明すると2人ともトリオン体になってくれた。オペレーターのトリオン体はめっちゃOLっぽいんだよね。女性用スーツってやつ。
「詐欺を目の当たりにしてる気分だ」
「とんだ虚言だよ冬島さん。俺はただ知的好奇心が刺激されてるだけなんだから」
「下心はないもんなぁ」
性よりも知的好奇心が勝る。そんな男です。
隊の戦闘服作る時とかまじガワだけを気にしてたからなぁ。要望通りにしないとって意識が働くし。女子チームのはそれぞれが勝手にやってたし。
「下心って……不信感しかないんだけど」
「ないって話しただろ今! 俺はただトリオン体の時のパンツが見たいだけなんだ!」
「「……」」
トリオン体の胸も検証してみたいけど、さすがにこれはアウトだよな。
「頼むよ結束。これが気になって課題のやる気が出ないんだっは!」
「はぁぁ、なんで私こんな人のお守役をやらされてるんだろ……」
「ごめんね結束ちゃん。私がクラス違うから」
トリオン体女子2人にボディブローをくらい、片手ずつ掴まれて連行されました。おかげで課題は出したよ。