「流川~。光さんが来てやったぞー!」
「こたつから出るなんて珍しい」
「カタツムリじゃねーんだから」
「もしくはタコか」
「アタシはヤドカリ派だな」
「最初にカタツムリ出したくせに!?」
「塩巻いたら消えんじゃん。除霊だな!」
「虐待だー」
何しに来たんだろ。邪魔をしに来たのだろうか。今は新作の試作トリガー開発に忙しいというのに。これ俺以外に試してくれる人いるのかな。いてくれる方がありがたいんだけどな。
「おー? なんか難しそうなことしてんなー」
「新作トリガーいじり。いろいろと調整が難しいのなんの」
「へ~。こーいうのって1人でやんのな。てっきり大人数でやると思ってた」
「1人ではやらんよ。人手は足りてないから大人数でもできん。数人のチーム組んでやる感じ。その時々で手が空いてる人がいたら人数変わる」
「けど流川1人じゃん」
「それはあれ、トリガーってちっこいから」
「あ~、そーいう」
宿題を持ち帰ってやるってイメージかな。一個のトリガーにみんなで群がってそれぞれ担当の箇所を調整していくってパターンもあるけど、手探りな状態だとそれは逆に効率が悪い。
まず企画案が出されて、チームができる。企画者から完成イメージを聞いて、チームの人がそれぞれ自己流で調整。期日に持ち合わせて報告。イメージに一番近くて実用的なのが出てきたら、それをみんなで細かく調整。エンジニアもそれぞれ得意分野あるからね。基本的にどのトリガーも合作になる。
「それに既存トリガーの改善作業もあるからな。シールドの強度とか」
「そういや、孤月とかレイガストって軽量化しねーの?」
「孤月は今のが丁度いいんだよ。強度と重さは比例するから」
「ヒレーか」
「わかってないな?」
「いやいやこれは分かるぞ! 重いのは硬いってことだろ!」
「まぁだいたい合ってる。んで、レイガストの方は知らん。俺担当じゃねぇし」
「なるほどなー。ま、アタシの隊はレイガスト使いいねぇから何でもいいけど!」
雷蔵さんが聞いたら渋い顔するだろうな。たぶん自虐的に捻くれたこと言うよ。
「それで仁礼は何しに来たわけ?」
「どうせ適当な飯食ってんだろうなって思って、光さんが弁当を用意してやったぞ! 喜べ!」
「まじか、ありがとう。でも今ちょっと手を離せない状況」
「だろうなー。だから食わしてやるよ。食いながら手を動かすぐらいできんだろ」
「それくらいならな」
ここの調整が難しいな。Aを弄るとBに影響が出る。バランスを整えた上でこれを性能を伸ばしていくってのが難しい。
「ほら、口開けろ」
でも今回のコンセプトを考えると、ここが踏ん張りどころなんだよな。
卵焼きが美味しい。
「味わって食えよ~。光さんお手製弁当なんて他に作らねぇから貴重だぞ」
全員で仕上げる時用に回してもいいんだけど、この箇所だけ投げやりにするのはプライドが許さない。
米はこれふりかけ乗ってるな。のりたまだ。
「ちゃんと噛め。弁当は逃げねぇよ」
どう調整したものか。こういう時は一旦頭を休ませるのも大事だよな。ちょうど昼なんだし、昼休憩に入るか。
「……仁礼に餌付けされてる?」
「今さら何言ってんだ」
「仁礼パイセン。自分で食えるっす」
「恥ずかしがるなよ~。アタシと流川の仲だろ?」
「どんな仲のつもりで言ってる!?」
「友達じゃねぇか」
「友達に餌付けってやっぱ嫌じゃね!?」
「気にすんなって!」
楽しんでやがる……! ならばこっちだって同じことしてやんよ! 仁礼に弁当を食わさせてやんよ!
「あ? 食わさしてくれんの? んじゃあーん」
「なんで躊躇ないんだ……」
「意識する方が負けだなー」
あらやだイケメン。仁礼絶対モテるだろ。友達として。
「どうした? 難しい顔して」
「いや、仁礼の手製料理を最初に食べてしまって、未来の彼氏に申し訳ないなと」
「安心しろ。練習段階でゾエに食わせた」
「ならよかった」
いろんな意味で!
「んで?」
「ん? ……あぁ、美味しい仁礼。作ってくれてありがとう」
「ん。流川はアタシが食わせねぇと食事偏るからな!」
簡単に済ませようとしてな。
実際、仁礼が用意してくれた弁当は栄養を気にしたやつになってる。学校の勉強なんてろくにしないのに。
「これからどんどん腕上げてやるからな! 楽しみにしてろ!」
「そのうち凝りだして料理に時間かけ……ないな。仁礼だし」
「食わせてもらってるくせになにおう!」
これは失敬。仁礼の弁当、味付けも結構凝ってるし食えなくなるのはちょいと寂しい。是非とも今後も作ってほしいな。
「あ、そうだ。トリオン体ってリアル体からずらすのもできたよな? 小南とかそうだし」
「できるな。喜多川とか特にそれやってるし。仁礼も変えたいの?」
胸か。
「んや。ユズルって女装似合いそうだって話にこの前なったからさ」
「なにそれ面白そう絶対やる!」
「そうこなくっちゃな!」
この後に仁礼と2人で絵馬を追っかけたら、俺だけカゲにスコピで切られた。解せぬ。
昼食がカロリーメイトから弁当にランクアップ(時々)。