ボーダー探究部   作:粗茶Returnees

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 公式資料集を手元に置きながらにらめっこ。


辻新之助①

「なぁ辻合コンやってみね?」

 

「やらない」

 

「安心しろ。女子は呼ぶから」

 

「それのどこに安心する要素があるの?」

 

 男だけの寂しい合コンにはならねぇよ。最終手段として遥に来てもらうから。そもそも合コンって何するのか具体的なことは知らんけど。

 

「流川なりに俺のことを考えてくれてるのはわかるけど、手段がいつもハードル高過ぎるんだよね」

 

「荒療治ってのもいいかなと。オペレーターのひゃみとは上手くやれてんだろ?」

 

「なんとかね」

 

「じゃあひゃみを呼ぶとして」

 

「変に気まずくなるからやめて。というか合コンをやる方向で話進めないでよ」

 

 そんなに嫌か。嫌なら仕方ない。やめておこう。

 

「どうせ合コンのことも思いつきでしょ?」

 

「もちろん」

 

 女子呼んでワイワイするのも悪くはないけど、どちらかと言えばトリガー弄ったりしてるほうが楽しい。トリオンの研究は楽しいのだ。

 

「あ、そうだ。ひゃみに頼みたいことあったんだった」

 

「ひゃみさんに? 人に頼みごとなんて珍しいね」

 

「こればっかりは自力ではどうしようもないから」

 

「いつも天才だーって言うのに」

 

「天才でも性転換はできん」

 

「性……なんて?」

 

 辻くんには刺激が強かったかな。女子受けがいいわけだ。小南とか宇佐美にもよく弄られるよな。古寺が泣くぞ。

 

「トリオン体の時のひゃみのパンツが見たい」

 

「ぱっ!? な、何言ってるの!?」

 

「辻は気にならんのか?」

 

「そんなこと考えたこともなかったよ!」

 

 自分の隊のオペレーターに下心満載な奴はいないか。そもそもそういう奴はボーダーから弾かれるし。

 

「いったい何をどうしたらそんな話になるのさ……」

 

「トリオン体になると当然ながら服はあるじゃん? 辻ならスーツだし」

 

「そうだね」

 

「生身と感覚が多少違うとはいえ、ノーパンの奴はいないはずなんだよ」

 

「そう、だね」

 

 ノーパンって言っただけで顔を赤くしやがった。話の流れ的にひゃみのノーパンを想像したのだろうか。それとも辻は気になる子ができたのだろうか。ここを突いてやりたいけど、そしたら放課後にボーダーで擦り切られるからやめておこう。

 

「じゃあどんな下着なんだろって話になるだろ?」

 

「ならないよ」

 

「なんでだよ! なるだろ!」

 

「ならないよ! 常人の思考じゃないよそれ!」

 

 これが天才との差ですか。世間一般ってのは分からないものだね。

 

「てかさ、辻お前トリオン体でのパンツってずっと一緒なわけ? それずっと同じパンツってことにならね?」

 

「そこまで気にしたことはなかったけど、言われてみるとなんか嫌だな……」

 

「うん。俺は初めてトリオン体になった時、真っ先にそこを気をつけようってなったんだけどな」

 

「まず最初でそこなんだ。ある意味すごいね」

 

「天才ですから」

 

 戦闘員とは違うからな。エンジニアのトリガーは護身用。即死しないようにトリオン体になるってだけのこと。そうなると武器トリガーとか関係ないし、自分が身に纏ってるものを気にするわけだ。

 

「とりあえず辻はパンツを履き替えないんだな」

 

「語弊しかない結論をつけないでほしいな! 人によったら名誉毀損で訴えるよ!」

 

「辻はそうしないの優しいよな」

 

「……これでも友達と思ってるし」

 

 かわよ。なんだこいつかわよ。

 

「話を戻しますと」

 

「戻さなくていいよ」

 

「ひゃみがパンツ履いてるかという問題があってだな」

 

「ひゃみさんだと容赦なく名誉毀損で訴えてくるよ。他人からの好感度気にして?」

 

 少なくとも嫌われてはないと思う。そういうのははっきり言うタイプだろうし。

 

「俺そういうの気にしないから」

 

「知ってるけど、ハラハラすることもあるから自重してほしい」

 

 辻がそう言うなら気をつけておこう。雷蔵さんにも「苦労する性格だな」って言われてたな。

 正直、ほんと、他人からの評価ってどうでもいいんだけども。我が道を行くってのがモットーだ。

 

「そういえば、今はもう単独でトリガーを改造したりしてるんだっけ?」

 

 辻が露骨に話題を変えてきた。昼休みの賑わう学校だからと言って、会話の内容を聞かれてたら女子にドン引きされるもんな。特に辻はそういうイメージとは程遠いし。いや待て。たぶん聞かれてても、辻は巻き込まれただけって処理されそう。

 仕方ない。謂れのないレッテルはウザったいから辻の話題に乗るとしよう。

 

「鬼怒田さんに許可貰ってるからな。結構楽しいんだよこれが。……話したことあったっけ?」

 

「冬島さんから聞いたよ。若く見られてたって言ってて嬉しそうにしてたよあの人」

 

「25って若いか?」

 

「今年度で28歳になるよあの人」

 

「…………知らなかったし知らなくてもいい情報だな」

 

「相手のことを正しく知るのは、人付き合いで大切だと思うけどね」

 

「それはそう」

 

 辻のこともちゃんと知らなければ、地雷を次々と爆破させてたかもしれない。そういう意味でもコミュニケーションは大事なんだけど、化けの皮を完全に剥がしてる人ってレア中のレアだからな。よっぽど純真無垢な人か、あるいは単純なバカかの2択だと思う。

 

「人間関係って難しいし面倒くさいし面倒だよな」

 

「なんで面倒を2回言うかな」

 

「俺は面倒だと思うんだ。都合の悪いことを忘れる奴とか大ッキライだしさ」

 

「流川なら人一倍そうだろうね」

 

 辻はそういうタイプじゃないから好き。ボーダーの正隊員は基本そういうタイプだから、嫌いな人はいない。苦手な人はいる。

 

「愚痴りだすと止まらなくなるからやめとくけども」

 

「俺はいっそ全部吐き出しちゃえばいいと思うな」

 

「人間関係怖くなるからやめといたほうがいいよ。ボーダーと学校にいたいならなおさら」

 

「どこまで抱えてるんだ……」

 

「辻。世の中には知らない方がいい事って確かに存在するんだよ」

 

 世界で一番何が怖いかって聞かれたら人間って答えるね。世界で一番好きなのはって聞かれたら友達って答えるけど。

 人間そういうもんだよね。矛盾を孕む生き物なんだ。好きと嫌いが共存するんだよ。ストレスマッハだけどな。

 

「っと、話が逸れたな。改造トリガーの話だっけ。辻もやるか? 孤月から女子の声をランダムで流そうか?」

 

「新手のイジメかな? 改造トリガーに興味がないと言うと嘘になるけど、今のところこれと言ったビジョンもないね」

 

「辻はシンプルイズベストって感じで孤月一本だもんな」

 

「うん。そもそも改造トリガー使ってる人全然いないよね?」

 

「条件がA級だからしゃーなし。銃トリガーがある種の改造トリガーみたいなもんだしな。要望に合わせてそれぞれ用意してるといつの間にか種類増えた」

 

「それぞれちゃんと性能違うのも凄いよね」

 

「うちのエンジニアはプロとオタクの集まりだから、細かいところまでガチよ」

 

「犬飼先輩も、期待以上の仕上がりだって言ってたよ」

 

「エンジニア的にはそういう意見を直接言ってほしいね。願わくば使用者からのフィードバックが欲しいのに、全然開発部まで足運ぶ人いないし。ブラック企業並に作業しながら、自分たちで戦闘データ回収して記録取ったりしてんだぞ」

 

「それは……うん、なんかごめん。犬飼先輩とか他の銃手の人にもそれとなく話しとくよ」

 

「ありがとう」

 

 辻のことだから、それとなく話そうとして結局ストレートな言い回しになるんだろうな。目に見えてるよマイフレンド。ひとまず、その成果は座して待つべしってね。

 

「エンジニアの人たちって休みないの?」

 

「あるけど返上してる人が多い。鬼怒田さんは周りにちゃんと休めって言うのに、自分は休まないんだよね。俺は強制的に休みとらされるし、休日出勤したらワープで部屋の外に出される」

 

「さすがに高校生だし、仕方ないんじゃない?」

 

「厚意だってことは理解してるよ。だから今じゃちゃんと休むし。てか今日もやすみなんだよなー」

 

「そうなんだ。俺は今日防衛任務入ってるから予定合わせられないよ」

 

 申し訳なさそうに言うな。いい奴が過ぎるんじゃ。

 

「そりゃ残念。三上ちゃんとのデートに混ぜようかと思ったんだけどな」

 

「待ってなにその情報の大洪水」

 

 

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