ボーダー探究部   作:粗茶Returnees

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 短いけどヨシ! 思いつき!


綾辻遥②

 

 藍ちゃんの成績は伸びた。錬くんと会ったあの日で吹っ切れたのか、元々のポテンシャルを存分に引き出せてる。のびのび動けてるって言うのかな。キレのある動きができる上で、冷静さもある。スパイダーを組み合わせた戦術も巧い。錬くんにとって、藍ちゃんのこれはどこまでが予想の範囲内なんだろ。

 

「藍ちゃんお疲れ様」

 

「綾辻先輩お疲れ様です」

 

「自己鍛錬もいいけど、ちゃんと休みの日も取ってね?」

 

「いえ、私はまだ──」

「ね?」

 

「はい」

 

 少し怯えられた気がした。なんでだろ。

 

「あの、綾辻先輩。……その、流川せん……流川さんが空いてる日っていつですか?」

 

「先輩って呼ばないんだね」

 

「なんか呼びたくないです」

 

「ふふっ、まあ錬くんも気にしないからいいんじゃないかな? それで、錬くんの空いてる日は私も分からないよ」

 

「え!?」

 

「そんな意外そうにされても……」

 

「他の先輩方から、流川さんが下の名前で呼ぶのは綾辻先輩だけだと聞いたので。親しそうでしたし」

 

「正確には私だけじゃないみたいだけどね」

 

 林藤支部長のお子さん。陽太郎くんのことも名前呼び。支部長との呼びわけのためみたい。

 

「私と錬くんの関係が気になるの? 藍ちゃんもそういう年だもんね~」

 

「そ、そういうわけでは! ぷ、プライベートなことですし……」

 

「付き合ってないよ。彼氏彼女ではありません」

 

「そう疑っていたわけでは……」

 

 藍ちゃんも女の子だね。でも私と錬くんはそういう関係じゃない。嵐山隊は広報担当だし、スキャンダル扱いになるから控えるように言われてもいる。藍ちゃんにはまだそういう話がいってないけど。

 

「幼馴染で、家族かな」

 

「ご結婚!?」

 

「それができる歳じゃないからね?」

 

「そ、そうでした」

 

 言い方が悪かったね。はぐらかすような言い方をしたら誤解を招いちゃった。どこまでなら話していいんだろ。勝手に話が広まるのも、錬くん好きじゃないから。当たり障りのない範囲だと……。

 

「家が近かったってわけじゃないんだけど、親同士が元々仲が良くて、それで家族ぐるみの付き合いがあったの。よくある話だね。それで名前で呼び合う関係ってだけ」

 

「なるほど。家族同然というやつですか」

 

「そうそれそれ! 錬くんは昔から優しくってね!」

 

「やさ、しい?」

 

「優しいよ?」

 

「アドバイス貰ってますし、そうだと思うのですが。なにか引っかかるような……」

 

 錬くんは人付き合いが極端だもんね。サバサバしてる感じ。人を選ぶ性格というか、だから藍ちゃんもそこが引っかかるんだよね。間違ってはないよ。錬くんを嫌う人もわりといるし、錬くんも割り切ってるし。

 あとはあれかな。1回アドバイスしただけで、その後何もないからかな。アフターサービス無しってことに。

 

「アフターサービスはしてくれてるんだけどね」

 

「そうですか? 会ってすらいないんですけど。お礼も言えてないし

 

「錬くんはあくまでもエンジニアだから。本来なら戦闘員同士で切磋琢磨しろってスタンスなの。忙しいってのもあるけど」

 

「言い分は分かりますけど……」

 

「だから代役を用意するはずだよ。そういう人だから」

 

「代役、ですか?」

 

 誰に頼んでるのかは知らない。直接聞いてるわけじゃないもん。錬くんならそうするって推測してるだけ。仕事はきっちりこなすから、藍ちゃんと代役の人の相性も考慮して選んでるはず。誰になるかお楽しみだね。

 

「そうだ。錬くんの連絡先教えようか。それなら直接予定を合わせられるでしょ?」

 

「それは結構です」

 

「えぇー」

 

「直接開発部に足を運んだほうが早い気がしてきました」

 

「それもそうだけど、いずれトリガーをカスタマイズしてもらうなら連絡先交換しててもいいと思うよ?」

 

「ですから! それは流川さんには頼みません!」

 

「錬くん泣いちゃうよ?」

 

「それは知らな……え!? 泣くんですか!? 何歳ですかあの人は!」

 

「16歳」

 

「そういう意味ではなくて!」

 

 錬くんはカスタマイズする気満々だからね。それに、トリガーのこと大好きだから、無邪気に喜んで取り掛かると思う。その時の表情は、本当に昔から変わらない。錬くんの変わらない純粋な一部分。

 私はあの時の錬くんが好きだから、ぜひとも藍ちゃんには錬くんに依頼してほしい。私情だね。

 

「錬くんの腕はたしかだよ。鬼怒田開発部長から最短でひとり立ちを認められたエンジニアだし」

 

 最年少であり、最短記録保持者。

 

「そんな凄い人には思えないんですが……。綾辻先輩を疑ってるわけではなくて、信じられないといいますか」

 

「普段があれだもんね~。でも、冬島さんも東さんもトリガーのことを錬くんに話すんだよ? 聞いた話だと、スナイパー用のトリガーも、トラッパー用のトリガーも、そしてスコーピオンの開発も錬くんは関わってるんだって」

 

「え……」

 

 藍ちゃんの目がまん丸になった。それもそうだよね。私も驚いたもん。でも、同時に流石だなぁって思った。錬くんは天才だから。

 

「開発チームの1人だったみたいだよ」

 

「なんか頭が混乱してきました……。あれ? でもその時期って、綾辻先輩入隊してましたっけ?」

 

「ううん。錬くんの入隊は嵐山さんとか東さんたちと同じ。私はその1年後だね。最初知らなかったもん」

 

「知って入ったんですか?」

 

「そうだね。理由の1つはたしかに錬くんだよ」

 

 錬くんの入隊は第一次侵攻の直後だったから。いろんな意味で心配だった。

 

「流川さんがそれらのトリガーの開発に関わっていた、というのはなんとか飲み込めましたけど、スピード出世にも程があるのでは……」

 

 藍ちゃんもスピード出世なんだけどね。仮入隊の期間があったからこその高ポイントスタート。錬くんは初期も初期の入隊。仮入隊も何もない。その秘密が気になるみたい。ちょっとしたライバル意識かな。

 

「サイドエフェクト持ち、とかですか? 村上先輩みたいな」

 

 疑うならそこだよね。良い例がいるからそこを考えやすいか。

 

「これ言っていいのかな……。絶対広めたりしないでね? 尾ヒレついたりして話が独り歩きしだすと、錬くんすっごい怒るから」

 

「普段の言動がアレなのに?」

 

「信用できる相手にしかああいうこと言わないんだよ? 藍ちゃんも、信用されてるってこと」

 

「嬉しくないですが、受け取っておきます」

 

 知ったら怒るのかな。ちょっと嫌だな。……あとでちゃんと話しに行こう。

 

「錬くんも記憶関係でサイドエフェクトがあるの」

 

「やっぱり!」

 

「でも、錬くんが言うには村上先輩みたいな学習能力を伸ばすやつじゃないんだって」

 

「村上先輩のは、強化睡眠記憶でしたよね」

 

「みたいだね。それで、錬くんのは()()()()()()。一度見聞きしたこと、体験したこと全てを記憶する力」

 

 それが、錬くんの天才性を支える力。

 そして、私と錬くんにある溝の原因。

 

 

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