天内さんに拾われました   作:ファンリル821

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 多分四話くらいで完結です。
 良かったら感想評価お願いします。


少女は幸せを知る。

 あの日の事をまた思い出す。

 

 

 私はただ孤独だった。

 身体の至る所には虐待で受けた傷跡があり、それを不思議な力で治していた。それが気味が悪いと言われて殴られて、部屋に閉じ込められたり、ご飯を出してもらえなかったりしていた。

 

 

 記憶が定かではない。 

 ゲラゲラと笑う両親が私には怪物に見えた。

 

 もう限界だと、謝っても殴り続ける両親。

 抑えなきゃいけない。自分が悪いのだからと、心の中で抑え込む少女。

 

 

 だが、そんな心に蓋が出来なかった。

 耐え難い苦痛にいよいよ抑えきれなくなった怒りが、身体から解放された。

 

 

 

 

 

 

 気が付けば、私は両親を殺していた。

 真っ赤に染まった手を見て震えては、鏡の中に映る自分は嗤っている。ただ、殺したという実感に震えながらも、呆気なさとこんなものの為に何で我慢していたのかと言う解放感と、それと同時に殺めてしまった恐怖で頭がぐちゃぐちゃになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 何の為に生きているんだろう。

 そう、ポツリと呟きながらも身体は外へ向かっていた。土砂降りの雨の中、裸足で少女はただ歩く。雨はいい、血で濡れたそれを洗い流してくれるから。

 

 

 少女は死にたいと思った。

 ゴミ捨て場にペタリと座り込む。ボロボロの服は雨でぐちゃぐちゃになった泥を吸って赤と茶色が入り混じり、滲んでいく。

 

 

「………はは」

 

 

 このまま雨に打たれれば、多分死ぬ事が出来るだろう。

 少女は瞳を閉じていく。

 

 

 こんな薄汚れたような、灰色の世界に……

 

 

 

 ★★★

 

 

「………うっ」

「目が覚めたのじゃ!」

 

 

 気が付けば、柔らかいベッドの中にいた。

 隣では三つ編みで中学生くらいの女の人がジーっと少女を眺めて、目を覚ましたと同時に叫んでいた。

 

 

「ここ……は?」

「ここは妾の屋敷じゃ…ってまだ動くでない!」

「わっぷ」

 

 

 額を小突かれて頭が枕に落ちる。

 どうやら、あの雨の日に少女は拾われたらしい。体温計を咥えさせながら、あの日の事を女の人は語った。ゴミ捨て場に居た意識のない少女をこの人が介抱してくれたのだ。

 

 

「7.8℃……まあ下がった方じゃな」

「あなた……は?」

「妾は天内理子。お主は?」

「……なまえ……ない」

 

 

 天内は首を傾げる。

 親から殴られたりしてたから、名前とか分かんなくなっちゃった。と告げた瞬間、天内は目を見開いた。

 

 

「あの惨状、呪霊ではなかったのか」

「じゅれい?」

「親を殺したのは……お主じゃな?」

「……うん」

 

 

 そうか、とポツリと弱々しく呟く。

 親が子を虐待し、子が親を殺す程にズタズタに引き千切られていた家族の絆。虚な目をした少女は何も感じなさそうに呟いた。

 

 

「お主、アテはあるのか?」

「アテ?」

「生きる為のアテじゃ、親も居なくなって生きる術はあるのか?」

「……ない」

「なら……妾の家族にならんか?」

 

 

 天内が少女にそう提案した時、一瞬だけ虚な瞳に光が写ったような気がした。

 

 

「……でも、めいわくなんじゃ……」

「子供がそんな事気にするでない!!妾が、お主と居たいと思ったからじゃ!」

 

 

 初めてだった。

 初めてそんな温かい言葉をかけてくれた。

 その言葉に少女の瞳からポロポロと涙が溢れる。

 

 

「……いい、んですか?」

「うむ」

「ここにいても、いいんですか?」

「妾が許す。だから泣くといい」

 

 

 少女は天内の胸で泣き続けた。

 ただ、母親に泣きつく子供のように……

 

 

 

 ★★★

 

 

 まだ5歳の少女に天内は少女に未来と名付けた。

 神崎未来。神崎は元の家族の名前だ。殺した罪を忘れない為に戒めとして自分で選んだ。

 

 傷を治す力があると天内は聞いた時驚いていた。

 

 女中の黒井に話を聞くと、天内は星漿体という存在らしく、結界を維持する天元と言う人の肉体を書き換え、初期化する為に存在する貴重な存在らしく、呪術師が知れば狙われる事も少なくない。

 

 未来が今まで無意識に使う事の出来ていたものに初めて向き合った。この力があれば、天内さんを守れるかもしれないと、呪術というのを独学で学び始めた。

 

 

「……ひだりまわり」

 

 

 未来の術式は歪みと回転に特化したものだと知った。

 見ているもの、触れているものを回転させる力。それは肉体であろうが、空気だろうが問答無用で回転させる。触れたものを捻じ切る事に関しては正直言って自分でも引いた。

 

 試しに手のひらで円を描くように空気を回転させて、そこにペットボトルの水を垂らすと円から弾かれたように水が飛び散る。

 

 その特訓を見ていた天内がハンドスピナーを持ってきた。未来はそれを掴み、大気の風を回してみた。

 

 

「おおー」

「中々面白い術式ですね」

「くろいさんは……じゅじゅつとかわかりますか?」

「……まあ齧った程度には。私は接近戦の方が強いので」

 

 

 未来のように術式はないらしい。

 ミニ竜巻によって回り続けるハンドスピナー。

 それを見て、未来は考えた。この力を最大で使ったらまさか台風が生み出せるかも?ちょっと怖いので試すのは森に行った時にする事にした。

 

 

「でもこれじゃあ……こうげきとしては」

「回転を反対にすればどうじゃ?」

「ぎゃくかいてん?………やってみます」

 

 

 少女は両親によって何度も死にかけている為、無意識のうちに呪力の核心に迫っていた。今まで死にかけた身体をそれによって回復させていた。マイナスの反対はプラス。負の数を正の数に直し、それを術式に流し込む。

 

 

「みぎまわり」

 

 

 大気の風の回転が右回転に変わった。

 だが、ぶっちゃけるとそれだけだった。右回転と左回転の風をぶつけると霧散してしまい、ちょっと強めの拍手で出てくる風圧程度はあるが、使えない。独楽と同じだ。回転が違えば違う程に打ち消し合う。

 

 風の回転で攻撃を逸らすのに向いてはいる。

 竜巻を指向性を持たせてぶつければ、家を倒壊させるくらいの力はあるだろう。だが明らかに対人向けではない。天内を狙うのは呪詛師と言った人間だ。

 

 

「これ……こうげきにいかせるとおもいます?」

「……あっ、回転したハンドスピナーをぶつけるとか」

「いたいですよね…ぶつけると。でもダメです」

 

 

 確かに物凄い速度のハンドスピナーを指にぶつけると痛いけれども、呪詛師からしたら何してんのコイツと言うだろう。

 

 

「くろいさんは……なにかありますか?」

「……そうですね。回転で速度を上げて何かを投げるとかはどうでしょう?」

「……石とか?」

 

 

 黒井さんの助言と天内の言った通り、石を回転させて投げると言う案を採用する。

 未来は近くにあった石を拾い、右手で普通に左回転させる。石自体を回転させるのではなく、大気の回転に石を持ってくる。外に弾かれないように回転の方向を調節しながら回し、速度を早めていく。

 

 

「木を……ねらいます」

 

 

 回転の方向を解除する方向を設定し、放つ。

 ズガァン!!という轟音と共に、放った石は木を貫いて後ろの塀にめり込んでいた。あまりの事に驚愕し、三人ともめり込んだ塀に近づく。

 

 

「………」

「これは」

「威力半端ないですね。下手したら銃より強いんじゃ」

「なにもいわないでください」

 

 

 未来も現実逃避していた。

 

 

 ★★★★

 

 

 一年が経った。

 天内さんと黒井さんの三人で過ごす日々は楽しかった。当たり前にご飯を囲って食べたり、寝る時に手を握ってくれたり、手を繋いで外の世界へ連れてってくれたり。

 

 幸せだった。

 未来があの場所では永劫手にする事のできなかった居場所がここにある。でも……あと一ヶ月もすると、天内さんは居なくなってしまう。

 

 星漿体の責務を果たさなければならない。

 そうなってしまえば、天内さんにもう会えなくなってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、そんな中………

 

 

 

 

 天内さんが星漿体である事が呪術界に知れ渡った。

 

 




 次回、五条悟と夏油傑の邂逅。
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