天内さんに拾われました   作:ファンリル821

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少女は最強を垣間見る。

 

「高専に居た方が安全だろ」

『天元様の御命令だ。天内の要望には全て応えよ、とな』

「チッ、ゆとり極まれりだな」

 

 

 五条悟は電話を切る。

 五条、夏油、黒井はこの季節に使われないプールサイドに待機している。残り時間は少ない天内の要望に応えろ、襲撃者が来る事が予測出来るのに随分無謀な要望だとため息を吐き出す五条。

 

 そんな中、未来が両腕で何かを抱えながら持ってきたものを夏油に差し出す。

 

 

「はい」

「ん?……いいのかい?貰っても」

「ごじょーさんもどうぞ」

「おっ、気が利くな。ココア貰い」

「じゃあコーンスープを貰おうかな」

「くろいさんも」

「ありがとうございます。ではコーヒーを」

 

 

 自販機から買ってきた飲み物を開け、飲み始める。最近は黒井と交代交代で待機したり、護衛を任されたりしていたのだが、昨日は黒井が『Q』によって引き剥がされた為、天内が危なかった。今回はこれだけいれば安全だろう。

 

 因みに未来はホットレモンを飲んでいる。

 

 

「なあガキ」

「……?」

「オマエは天内が消える事、なんか思わねえのか?」

「悟!」

 

 

 五条の質問に傑が叫ぶ。

 まだ6歳の少女にこんな事を聞くのは酷な話だ。未来は目線を合わさずに淡々と答える。

 

 

「……おじょうがのぞむことなら、わたしはくちをはさむべきじゃないことです」

「んな模範的な感想聞いて––––」

「ただ……わたしこじんのねがいとしては……」

 

 

 唇を噛み締め、僅かな震えた手で答える。

 人形みたいな、似合わない口調から人間らしく悲しみながら、自分の願いを告げた。

 

 

「その……おじょうと、もっといっしょにいたい……そうおもっています」

 

 

 消えてほしくない。

 まだ、子供だ。お互いに子供。

 もし、まだ先があるならば、大人になるまで笑い合って家族として一緒に生きていきたい。そう思ってしまうのは罪なのだろう。

 

 天内は本人が同化を望んでいる。

 止めたくても止められない。止めてはいけないのだ。あの日、未来を救ってくれた人を困らせたくない。

 

 消えてほしくないのに、止める事も出来ない無力な自分を呪いたくなる。唇から血が滲んで、手が震えるくらいに……

 

 

「未来さん……」

「……そうかよ」

 

 

 五条が未来の頭に手を置く。

 悪かったと言いながら頭をわしゃわしゃと撫でる。雑、と言ったらもっと雑に撫でられた。酷い。

 

 

「……!悟、今すぐ理子ちゃんの所へ」

「はっ?」

「巡回していた呪霊二体が祓われた」

「「!」」

 

 

 その言葉を聞いて、四人は天内の元へと駆け出した。

 

 

 

 ★★★★

 

 

「天内!」

「ちょっ!?す、すみませんおじょう」

「な、な、な……!」

 

 

 礼拝堂と扉を開けて叫ぶ五条に、目立つのダメだったから止めるべきだったと後悔しながら天内に謝罪する未来。こんな校舎に見た目は最高にいいイケメンが来れば女子は驚愕と同時に黄色い奇声をあげる。

 

 

「何!理子の彼氏!?と娘!?」

「ち、違う!従兄弟と妹だよ…!」

「お兄さんサングラス取ってよ!」

 

 

 スッと流れるようにサングラスを外すと見た目は爽やかで煌びやかにも見えるイケメンに大絶叫。調子に乗るなと天内は叫ぶが、無駄にルックスが素晴らしい分、自慢していると腹立つ。

 

 

「おじょう、とにかくきてください」

「未来、何があったの?」

「てきのしゅうらいです。まきこみたくないならここからはなれたほうがとくさくだとおもいます」

 

 

 呪詛師ならば、人質にすることもあり得る。

 特に戦いに巻き込みたくないならば、ここから離れたほうが良いだろう。

 

 

「きゃあああ!この子もお人形さんみたいで可愛いいいいい!!」

「えっ、と。すみませんおねえさまがた。しょうしょうおさわがせしてもうしわけありません」

「舌っ足らずなのがまたいい!!」

「えっ、ちょっ」

 

 

 未来の髪は長い黒色、瞳は若干紅色に近い。

 しかも子供な所と舌っ足らずな部分が庇護欲をそそられる。表情が硬い分は仕方ないのだが、それでも可憐な少女に見えるらしい。抱き締められ、もみくちゃにされた。

 

 

「お、おさわがせしました」

「ごめん!用事が出来たので早退します!」

「ごじょーさん。わたしのて、つかんでください」

「はあ?何で」

「いいから、はやく」

「……ほらよ。これでいいのか?」

 

 

 五条が未来の手を掴んだ瞬間、風が下から上へと駆け上がるように宙を舞う。一瞬の出来事に五条は驚愕の声を上げる。天内の場合はスカートが捲れないように細やかな風を送るくらいに精密な呪力操作。五条自身が自分の術式で浮く事はあるが、飛ばされるのは初めてかもしれない。

 

 

「う、おおおおおっ!?スッゲェ!!」

「未来、アレか!あの紙袋!」

「おそらくは。とりあえずはなれましょう。ひとごみのうすいところまで」

 

 

 穴の空いた紙袋っぽいものをかぶったゴツい男が此方を見ている。

 おそらくはアレが呪詛師だろう。今はとにかく逃げるしかない。逃げてる最中に五条の電話が鳴る。着信主は夏油だった。

 

 

「天内の首に3000万の懸賞金?」

『闇サイトで呪詛師御用達、明後日の11時までだそうだ』

「成る程ね」

 

 

 道理で天内を狙うわけだと納得する二人。

 風の着地で屋根の上に立つ三人を取り囲む覆面の男が五人ほどに増えている。

 

 

「ったく、呪術師は年内人手不足だってのに。転職なら歓迎するぜオッサン」

「いやぁ、職安も楽じゃねえだろ。そのガキ譲ってくれればそれでいい」

「ようするに、クソですね」

「今の七海っぽかったなオイ」

 

 

 つかオマエ何教えてんだと五条が天内を睨むが、首を横に振る。黒井が暇な時に見るドラマのせいだろうと天内はため息をつく。

 

 

「こんなガキのどこがいいんだよ」

「っ!」

 

 

 一瞬にして覆面の二人が空中に引き寄せられたかのように互いの体を強打し、消え去る。式神なら即座に消えるが、ぶつかった二人は消えない。いや、消えはするが遅いというべきだろう。

 

 

「式神が消えん!どれが本体じゃ!?」

「いや式神じゃねえ分身だ。全部本体のな」

 

 

 覆面の男が殴りかかってくるが、拳が寸前で止まる。

 何かに阻まれたかのようなその光景に未来も目を見開いている。まるで壁を用意したかのような不自然な光景に驚きを隠せないでいる

 

 

「んだコレ!?」

「無限。アキレスと亀」

「あ"っ!?」

「勉強は大事って話」

 

 

 分身二体を殴り飛ばす。

 吹き飛んだ分身は本体を残して消えていく。

 

 

「本体を含めMAX五体の分身術式。どれが本体かは自分で選択出来んだろ?危うくなったら分身を本体にする。いい術式持ってんじゃん。何でそんな弱いのか意味わからん」

「何故俺の術式を知っている」

「お生憎様。眼がいいんだ」

 

 

 五条の眼は特別。 

 六眼と呼べる呪術界では貴重なものらしく、その眼で見たものはどんな術式も在り方も暴いてしまう。

 

 サングラスを外し、手の上で止める。

 それは堕ちることなく、その場で止まってしまう。

 

 

「俺の術式はさ。収束する無限級数みたいなもんで俺に近づくものは遅くなって結局俺に到達する事はなくなんの」

 

「むげんのくうかんをはさんでるからとどかないってことですか?」

 

「そゆこと。それを強化すると無下限。『負の自然数』かな。『−1個のリンゴ』みたいな虚構が生まれるんだ。そうすると吸い込む力みたいなものを作れたりするんだが、地味に不便なんだよコレが」

 

 

 五条はため息を吐きながら自分の術式の欠点を述べる。術式を話すことで、能力の底上げをしているのだろうが……意味があるのか微妙にわからない。見た感じ、弱そうだし。

 

 

「指向性に気を回すと面倒だし、大きな反応は自分の近くに作れない。呪力操作も複雑になれば成る程呪力食うし、要は超疲れんの。まあこれは全部順転の術式の話」

 

 

 覆面の男が引き寄せられた。

 

 

「んでこっちが無限の発散––––術式反転・赫」

 

 

 五条悟に引き寄せられた覆面の男が両手で防ごうとしたが、何も起きない。僅かな静寂の中、五条はフッと笑いながら失敗!と叫びながら男にアッパーを決めていた。

 

 

「しっぱいですか」

「底上げしたからイケると思ったんだけどなー」

 

 

 反転術式は習得が難しいのだ。

 負と負をかける事で正のエネルギーに変える。人間の負から生まれた力を正に変えられたら、回復など壊す以外の術式として使えるのだが、理屈や感覚でそう簡単に出来るものじゃない。因みに未来は使える、感覚で言うなら利き手の逆で独楽を回す感覚らしい。

 

 

「っ!天内!!」

「えっ……?」

 

 

 天内に無数のナイフが投げられた。

 五条はそれを無下限で逸らしたが、犯人が何処にいるのか確認しようとした次の瞬間には未来を抱えてナイフを突きつける顔の見えない男がいた。

 

 

「クソッ、自分の認識阻害の術式を持ってる呪詛師かよ」

「動くな。貴様の術式は一度見た。僅かに呪力が動いた瞬間、このガキを殺す」

「……チッ」

 

 

 呪詛師でありながら暗殺者。

 術式の相性も相当いい。五条が動いた瞬間に未来は殺されるだろう。最悪、未来の損傷覚悟で蒼で倒そうか考えているが、天内がそれを止める。

 

 

「大丈夫じゃ五条」

「大丈夫?何が?」

「未来、死なすでないぞ」

 

 

 天内の忠告を聞いた未来がはいと返事を返す。

 状況は劣勢にもかかわらず、その忠告に五条も正気か?と天内に返すが、未来が呪詛師の腕に触れた瞬間……

 

 

「ぎっ、ああああああああああああああああああああああああっ!?!?」

 

 

 腕が捩れるように腕の肉がギリギリと締め上げる。雑巾を絞ったかのように表面の肉だけが捩れた状態で、男は倒れ込む。

 

 

「わたしにふれるなんてじさつこういですよ」

「うっわ、えげつなっ」

 

 

 未来は表面の肉だけを回転の要領で回しただけだ。加減しているが、加減を外すと腕が旋回し引き千切られる。未来自身もこの術式には親を殺した術式である為、あんまり使わない事にはしている。

 

 

「しっかし、コレで名家生まれじゃねえの?」

「わかりません。かけいはくわしくないので」

「へぇ、後で調べてみるか」

 

 

 ギリギリと両腕を絞られるような痛みに気を失った暗殺者。それを見た天内はホッと息を吐き、未来の安否を確認する。傷一つないので大丈夫と告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのあと、黒井さんが誘拐され、めちゃくちゃ沖縄に行った。

 

 




友:おい最後、雑くない?
作者:すまん許して♡
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