ホロライブラバーズ トロフィー「夢覚めぬ者」獲得RTA 作:うろ底のトースター
今回はちょっとゴアです
苦手な人は注意してね
振り下ろされる凶爪を、当たると痛そうだなぁとなどと呑気に思いながら、マリンは手に持った曲剣で受け流した。
「さすがにバトロワ上位常連は違いますねぇ、ミオ先輩」
「そう言うなら!そろそろ!当たってくれないかな!?」
そう言いながら、連撃を繰り出す大神ミオの額にはうっすらと汗が滲んでいる。
対するマリンは、いっそ清々しい程の笑顔。それどころか、今いる位置から
「いや、強いですよ?それこそ一撃喰らえばおしまいレベルで」
「それ!当たらなきゃ!意味!ないじゃん!」
1度距離を置いて呼吸を整える。
マリンは動かない。
「攻めて、来ないんだね」
「特に急ぐ理由もありませんし、疲れるも嫌なので」
「いいの?お連れさんが負けたら、2人同時に相手しなきゃいけなくなるよ?」
「そっくりそのままお返ししますよ?」
「フブキが、負けるって言いたいの?」
「玲香なら勝ちますよ。あっと、黒上さんも来ましたか。これはちょっと時間かかりそうかな?と、いうことで、もう少し船長と踊ってから逝きません?」
顔に浮かんだ笑みは、以前崩れないまま。
「・・・逝くのはそっちだよ!」
「それは無理ですねぇ、船長、腐っても狩りのお手伝いさんなので!」
悪夢の中で地獄を見た。正気を失った狩人が徘徊し、獣を狩り、狩り尽くしてはこちらに殺意を向けてくる。
酷く蕩けた瞳と目が合う度、背中を冷たい恐怖が走ったのを覚えている。それでも、戦わないと死ぬからと、戦って殺して、戦って殺して、戦い続けて、殺し続けた。
そしていつしか、生物が持つ恐怖という本能が、宝鐘マリンから消えていた。
あんな地獄を越えたのだ、そんな代償を払ったのだ、今更こんなところで負けてやれるものか。
絶対の自信と覚悟が、マリンの余裕を生み出した。
「よっ」
左手の曲剣を逆手に持ち、横凪に振るわれた爪を
「なッ!?」
それは、地獄で得た、もう1つの[パリィ]。
「船長と対等に戦いたいなら、あと100回は死線を潜り抜けてきてくださいね〜」
ガラ空きになったミオの腹部に、右手の曲剣を突き刺した。
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叶不玲香の狩りは、単純である。
通常の獣であれば内臓を引き抜き、強大な怪異であれば、避け
時に光すら置き去りにするステップが、それを可能にした。
この優位性は、多対一であっても変わらない。
「ちくしょう、こいつ、急に強く・・・!」
「当たらないし当たるし体は重いしあの子は怖いし、もうどうすればいいんですかぁ?」
致命傷はないものの、傷だらけのフブキと黒上。傷口に染みる
「はぁ、たまらない♡」
対して、恍惚とする無傷の玲香。飽くまでマリンに悟られないように、血を愉しんでいる。
このままジリジリと攻め続ければ、この1戦は玲香に軍配が挙がるだろう。
「あぁ、でも、そろそろ物足りなくなってきたわねぇ」
だが、そんな狩りを彼女は好まない。
「それじゃあまずは」
血を纏った刃が引き抜かれる。長いリーチ、速い連撃、そして猛毒。さんざん辛酸を舐めさせられたそれに、黒上の警戒レベルが最大限に引き上げられる。
「あなたからね」
玲香の視線が、黒上を射抜いた。
ゆらりと、その上体が倒れ込み、消え、
「えっ?」
「ふっ」
次の瞬間、
「ざけんじゃねぇ!!??」
最速最高効率の反転、自身の捻り出せる最大の力をもって、玲香の背中を裂かんと爪を突き出した。
───このとき、黒上は気付くべきだった、既に血刃は解かれており、その左手に古式銃が握られていることを。
飛び込む黒上に、一瞥もくれずに銃口が向けられた。
「は?」
パリィ。
「ッ!?」
「かかったわね?」
反転し、[千景]を振りかぶる玲香。
「させないですよ!」
すぐさまフブキが斬りかかり、攻撃を妨害する。が、
「それを待ってたのよ」
血のように紅い瞳と目が合う。
銃口は、既に向いていた。
「───あ」
パリィ。
2対1で、相手の連携のために致命傷を与えられない。ならどうするか。答えは、
「さてと、」
玲香は思考する。
パリィの行動不能は一時的である。故に、どちらかを倒すのに時間をかければ、もう一方が動き出す。悠長に斬りつけている時間はない。
「なら、仕方ないわよね?」
当初の予定通り、黒上に向かい合う。
「いただきます」
「ゴプッ!?」
内臓に腕を突き刺した。
「ゴハッ──ガァッ、クッソがぁ・・・!」
腕が引き抜かれ、血が辺りに撒き散らさせる。既に黒上の身体は、消滅を始めていた。
「なに、して、え、クロちゃん?」
半身に流れる血が、フブキの頬に跳ねた。
「逃げろ白上ィ!!」
なけなしの体力を掛けて、ありったけを叫ぶ。
「コイツはもう、ぶっ壊れてる!!」
それが最期の言葉になった。
対して、天を仰ぐ玲香。
「あぁ、あぁ、あぁ!本っ当に良い血!あの狂った狩人共よりも新鮮で、
あ、ところで、
ねぇ、あなたは、どんな香りの血が通っているの?」
「い、やだ、嫌だ、来ないで!」
「来ないで?先に襲ってきたのはそっちでしょう?なら頑張りなさいよ、最後まで抗ってみなさいよ。つまらない狩りは嫌いなの。ほら、立ちなさい、速く、速く、速く!」
瞳孔が、蕩けていく。端正な顔立ちが狂喜に歪む。
得体の知れない恐怖に囚われたフブキに、もう戦意は残っていなかった。
「降参、します・・・」
小さく、そう呟いて、白上フブキは転送された。
「興覚めね」
そう言って、腕にこびれつく血を払った。
狂った女の子っていい、良くない?