ホロライブラバーズ トロフィー「夢覚めぬ者」獲得RTA 作:うろ底のトースター
当社比いつもの1.5倍くらい血なまぐさいので初投稿です
「彼らは、[古狩人]と呼ばれる者達だ」
あの悪夢の帰り、夢の中の老人──ゲールマンというらしい──に、あそこで見た全てを伝えると、あの狂った狩人について、そう答えた。
「狩りに溺れ、血に酔い、獣性に堕ちきった、人でも獣でもない憐れな狩人の成れの果て、それが彼らだ」
そう言うゲールマンの表情は、憎悪とも悲哀とも呼べない、複雑なものだった。
「彼らの膂力は見ただろう」
「あれこそ、獣性の証」
「獣性は、血によって更なる力が引き出される。だがそれは、人間を逸脱することに同義だ」
「どうか、君はそうならないでくれたまえよ」
この言葉に、私はどう返したのだったか。
「うぅぅぅ、相変わらず攻撃が重い!」
「すごいなノエル、力で余と張り合える人間など今まで見たことなかったぞ!」
あそこで小さなクレーターを作り上げてる2人は、古狩人と呼んでもいいのではないだろうか。いや、それ以上だろうな。
この場でもっとも非力な玲香は、遠い目をしてそう思った。
「う、おりゃぁぁ!!」
「うぉ!?」
ノエルがあやめを吹っ飛ばした。だが、あやめは危なげなく着地した。
「うん、楽しいな!」
「楽しそうで結構ね」
都合3発の水銀弾を撃つ。走り出しを殺す気で撃ったその弾丸が、必要最低限の動きで回避される。
さっきからこの調子だ。さすがに4VS1なので掠りはするが、追撃をさせてくれない。
百鬼あやめは巧い戦いをする、この短時間で、玲香の下した評価である。
このままの調子でいれば、恐らく勝てないこともない。地道に削り、体力を消費させて狩る、要は我慢比べだ。
それは、玲香のもっとも苦手な分野であり、だから、つい攻めすぎる。
「来るか!」
間合いに入らなように細心の注意を払いながら、リーチの差を活かして斬りつける。常人であれば回避不能の攻撃範囲だが、それら全てが躱され、逸らされ、防がれる。
決め手のない現状に苛立っていた。
「玲香たん、そんな焦って戦わなくても大丈夫だよ、堅実にいこう?」
「・・・分かってる、けど」
もっと血が欲しい。狂おしいほどに血を浴びたい。
再度突貫する。
袈裟斬り、後ろに下がって躱される。逆袈裟、真上に向けて逸らされる。踏み込んで一閃、防がれてそのまま鍔迫り合いになり、間もなく、飛ばされる。
ギリッと、奥歯が鳴った。
足りない。
足りない!
足りない!!
苛立ちを込めて、全速力の突きを放つ。
「玲香!攻めすぎ!」
「───あ」
点の攻撃は、避けられやすい。そんなものに全力を尽くしてしまった。
この鬼からすれば、玲香を斬る絶好の機会だ。
「貰ったァ!!」
「ぅ・・・ぁあ・・・!」
双刀が深く、深く胸を穿つ。紛れもない、致命傷である。
「玲香ぁぁぁぁぁ!?」
悲鳴が辺りに木霊した。
「獣は素早いだろう?」
「ええ、正直厄介ね」
そうだ、前にもこんなことがあったか。なかなか斬らせてくれない獣がいたの。狩りはしたけど、時間がかかった。だから助言を求めに行った。
「その左手の銃で動きを止める、というのが最善策だが」
「そんなの分かってるわよそのくらい、それが通じなかったときの話よ」
「ふむ・・・あまり推奨はしないが、ときにはわざと食わせるのも手だ」
「バカにしてるの?」
私は、嘲りを含んだ目でゲールマンを見た。
「バカにはしていない。我々には回復手段がある。傷すら塞ぐ魔法のような手段がね。であれば、己を囮とするのも悪い策では」
「はぁ、話にならないわ」
イラついていたのもあって、話を半ばで切った。
「・・・では、これだけは言っておこう」
「何?」
「狩人は、焦った者から呑まれる。気を付けたまえ」
その言葉を、私は無視した。
さすがは助言者を自称するだけはある、胸に刺さる刀を見てそう思った。ゲールマン、かつては高名な狩人であったと言うがどうやら本当らしい。
確かに玲香は焦り、そして今報いを受けている。
少しばかり後悔がよぎった。だが、すぐに笑いが込み上げてくる。
「えぇ、えぇ、認めるわ。あなたの助言は全て正しかった」
ありがとう。
「おかげで勝てそうよ」
玲香の頬が、三日月のように歪んでいた。
「勝てそう?そんな死に体で一体何を」
その言葉が、最後まで続くことはなかった。
突然玲香に抱き寄せられ───
「ようやっと、捕まえた!」
────[千景]を、腹に突き刺された。
「かはっ!?」
ここに来て、百鬼あやめは初めて血を吐く。久方振りに感じる痛みと、血の抜けていく不快感に顔を顰めた。
「どこに、そんな力が!?」
驚愕に声が震える。ある程度耐久性に秀でた鬼に、死にかけの人間が重傷を負わせるなど、ありえないのだ。
身長の高い玲香を見上げる。
この時、不幸にもあやめは玲香の瞳を覗いてしまった。
「アアアァァァァぁぁぁぁぁぁ、良い・・・」
「ッ!?」
紅い、血のように紅い瞳だ。果たして、この者の瞳はこんなにも紅かったか?
まるで、今しがた、血を浴びて色鮮やかに染まり直したかのような────。
「なん、なんだ、お主は・・・!?」
今相対してるのは本当に人間か?
斬り合いに興じているときは、洗練された狩人のような印象だった。だがこれは、まるで獣、いやむしろ、狂気じみた別世界の存在か。
「いや」
思考を廃棄する。今は何より距離を取ることが先決。
そう切り替えると、あやめは玲香の腕を振り払おうとして、
「なんだと!?」
こんな細腕に似合わない、骨さえ砕かんとするほどの万力のような膂力だ。
「まだ逃げないでもらえる?
「は?」
[千景]を手放す。
「さっき戦った黒い狐の子も良かったけど」
「あなたの血も好きよ、だから」
「ちょうだい?」
血飛沫が、舞った。
戦闘描写が書けないモーーン!!!