ホロライブラバーズ トロフィー「夢覚めぬ者」獲得RTA   作:うろ底のトースター

27 / 31
エルデンリングトロコンしたので初投稿です。


破られる秘匿

手数という観点では、目の前の女が圧倒的に有利である。短刀のリーチの内に入ろうものなら、右の長刀と共に振るわれ、すぐさま斬り刻まれるだろう。辛うじて残った玲香の冷静さがそう断じた。

 

で、あれば、そもそも懐に入らせなければいい。リーチでは血刃を振るうこちらが有利。何よりこちらには[加速]がある。詰められたとて、距離を離す方法はあるのだ。

 

強気に攻め、その血刃を薙ぐ。

 

瞬間、独特のステップによって女の姿が()()()

 

「!?」

 

反射的に逃げを選択。眼前を、長刀が過ぎ通っていった。

 

あの場にいたら、死んでいた。

 

[()()]。玲香が誇る高速移動術にして回避術。それを使えること自体に問題はない。どういう原理かは知らないが、ここまでに狂った狩人が使うことは多々あった。

 

問題なのはその練度。

 

「・・・私より、(うま)い」

 

無駄がない。少ない予備動作、長い移動距離、姿の消える時間。あらゆる面で上を行く。

 

「当たり前だろう」

 

また消えた。

 

「この業は私が産み、普及させた」

 

無理矢理に千景を滑り込ませ長刀を防ぎ、続く短刀を体を逸らして回避する。

 

「そもそも、お前が使えることが異常だ」

 

身体のバランスが崩れたところを、鍔迫り合っていた長刀が千景を弾いた。瞬時に[加速]し、仕切り直しを狙うが、詰められる。

 

圧倒的不利。勝っていたリーチ差も意味がなくなった。

 

後に残るのは、手数の差。

 

首に向けられた長刀を避ければ、腹を狙って短刀が突き出され、退いて躱せばまた長刀が振るわれる。それは、終わらない連撃。何度も薄皮を切り裂かれ、その表情には疲労が滲んでいた。

 

思い出されるはいつか戦った二刀の鬼の少女。目の前の敵は、恐らく少女よりも強く速い。仲間と戦ってようやく勝ったあの少女よりも、だ。

 

苛立たしい、ああ苛立たしい。ただでさえこの女が憎いのに、攻められ続けるのは本当に不愉快だ。こうも連撃を繋げられれば、無理に攻め入る隙さえない。

 

だから、玲香は目を凝らす。耐えて、耐えて、敵の動きをよく観る。

 

その瞳が、開く唇を捉えていた。

 

「私は、血族の一人だった」

 

その語りは憂いを伴って、それでも剣に迷いはない。

 

袈裟斬り、突き、逆袈裟、横薙ぎ。

 

「血族は排斥され、処刑の対象だった」

 

水平切り、[加速]、突き、切り上げ。

 

「私がこの首を斬られなかったのは、人を上位者ヘ至らせる研究を行っていたから」

 

大振りの振り下ろし、逆袈裟、突き、突き。

 

「私の命を留めたそれは、同時に私の罪でもあった」

 

巧く、鋭く、速く、念入りに。

 

「私の犯した全ての罪を、かつての私は秘匿した」

 

しっかりと、殺せるように。

 

「嗚呼、しかし私は一つだけ、罪を()()()()()()──」

 

 

「──お前だよ」

 

攻撃は、更に苛烈に。瞳は、より慈愛に満ちて。まるで一貫性のない矛盾を抱えたこの女は、実際にはある一つの目的のために動いていた。

 

それは、罪の秘匿ではない。もっと倫理的で、人間的な目的。

 

「既に堕とした子のことなど、どうでもいいと思っていた」

 

語りは、独白へ。

 

「それでも、一度腹に宿した子というのは、愛しいものか」

 

二刀の武器は、また両刃剣へ。

 

水平に構え、渾身の突きを放たれる。その威力は凄まじく、人の身体など容易く風穴を空けてしまえそうなほど。

 

故に隙。玲香はその一撃を躱し、懐に入り込む。鞘に収めた血刃で、その首を落とすために。

 

「なあ、可愛い可愛い()()()()

 

憎悪が、鈍った。

 

眼前に、銃口があった。

 

「お前を捨てた身で勝手だが」

 

パリィ。体勢が大きく崩れる。

 

「そんなお前の姿は見たくはなかった」

 

優しく、優しく抱擁され、その右腕が、内臓に突き刺さった。

 

多量の出血とともに引き抜かれ、倒れ伏す。

 

「叶うなら、どこか遠い地で、何もかも忘れて幸せになってほしかったよ」

 

薄れる意識の中、玲香が最後に見たのは女の───母親の涙だった。

 

 


 

 

気が付けばまたベッドにいた、3回目の今日の朝。つまり、一日に二度玲香が殺されたことになる。

 

私はメルゴーを名乗るあの女から、全てを聞いた。狩人の原点、ビルゲンワースの衰退、学派の分離、悪夢の終わり。

 

そして、玲香の秘密。

 

『きっともうすぐ、あの子は殺される。全てを知って上で、ね──どうか、支えてあげて』

 

最後の言葉から滲む罪悪感と愛情は、嘘ではないと思った。まぁ、だからと言って私にできることなんてないのだけれど。

 

思考は深く落ちていく。思い出すのは、メルゴーとの遭遇のその更に前。初めて人を殺めた、あの瞬間。玲香の拒絶は、私の奥深くに巣食い、絶望の根を張り巡らせていた。

 

私が玲香に向けていた感情は、助けになりたいっていう願いは、ある種の依存だったのかな。

 

「・・・あれ?」

 

気付けば、悪夢に繋がるあの廃工場が目の前にあった。どうやら考え込んでいる間に来てしまったらしい。無意識に悪夢に足を向けるあたり、少しずつ狩人に染まっていっているのかもしれない。

 

染まり切れていたら、今も隣りにいれたかな。

 

ああほら、こんなときにもまた玲香だ。自分に対して嘲笑が漏れる。

 

そんな折。

 

「フレちゃん?」

 

幼馴染が、私に手を差し伸べた。

 

 

 

「───つまり、玲香ちゃんに狩りを辞めてもらいたい?」

 

「そう。できるなら、玲香の納得できる方法で」

 

場所は変えて、行きつけの定食屋。ノエちゃんは相変わらず牛丼を注文していたが、私は何も食べる気にはなれなかった。

 

「団長はさ、今3つの案を提示できるよ」

 

1つ目は、理想案。

 

「団長とフレちゃんと、あとはマリンも誘って、みんなで説得する」

 

2つ目は、妥協案にしてノエちゃんの最善案。

 

「玲香ちゃんを、物理的に動けなくする。例えば、騎士団本部(うち)の地下牢に閉じ込めるとか」

 

そして、3つ目は。

 

「フレちゃんが、一人で玲香ちゃんを説得する」

 

きっと今、私が取るべき手段。何となく、そんな気がする。

 

「団長的には、2つ目がオススメ。玲香ちゃんにはちょっとお灸を据えてあげないとだしね」

 

手をかけた丼に罅が入った。過去に数回しか見たことのない怒り方だ。私のために怒ってくれるのは嬉しいけど、でもそれは玲香を壊してしまいそうだから選べない。

 

だからと言って、玲香を説得できるとも思わない。ましてや、私一人なんて。

 

「うーん・・・よし」

 

私が言葉に詰まっている間に、ノエちゃんは答えを出した。

 

「ごめんね。団長、少し強引な手を取るよ」

 

「え?」

 

いつの間にか空になった丼を置いて、立ち上がりながらそう言った。

 

「今から玲香ちゃんを探しに行くよ。で、見つけ次第重要参考人として連行する」

 

「それって」

 

「うん、2つ目を実行するよ」

 

焦燥が背筋を焼いた。あの目は、本当にやるときの目だ。

 

「それは」

 

「それがダメって言うなら!」

 

「!」

 

「フレちゃんが探して、自分で説得して」

 

私は、否応なしに走り出していた。何を話すかも決めていなければどこにいるかも分からないけれど、ぐちゃぐちゃな感情をそのままにただ足を動かしていた。

 

「妬けるなぁ、玲香ちゃん」

 

小さく呟かれた言葉が私の耳に入ることは、なかった。




ところどころで入れてるブラボの説明、どこまで通じてるのか心配になったわ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。