ホロライブラバーズ トロフィー「夢覚めぬ者」獲得RTA   作:うろ底のトースター

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いやーちとリアルで忙しくてねぇすこーしばかり書けませんでしたよゲヘヘヘヘかわいいなぁクルカイちゃん・・・。(ダクソ2トロコンエペランダイヤ2)


その海賊の名は宝鐘マリン

玲香とフレアが大聖堂へ辿り着いたとき、既に獣の拳は振り抜かれ、マリンの身体は宙を舞っていた。

 

そして、明らかに無事ではないその状態を認識した玲香は、冷静に───

 

「フレア、マリンをお願い」

 

───ブチ切れた。

 

千景を鞘に納めて走り出す。と同時に、獣が玲香の存在を認識する。新たな敵を迎撃するために振り向いた獣に対し、玲香はその躯体に瞬時に視線を走らせた。

 

燻る炎、巨大な腕、牡鹿のような角を持つ頭、そして酷く傷ついた腹部。

 

傷口は、鋭利な刃で斬りつけられてできたものだった。

 

「マリン、よく頑張ったわね」

 

その脚はさらに加速する。

 

左腕の攻撃は受けてはならない。懐に入っても右腕で迎撃されそうだ。不用意に近づけば火傷は免れない。獣の射程に入るまでの数秒であらゆる危険を確認した玲香は、()()()()()()()()()()()()()()

 

[加速]。獣の視界から、文字通り玲香が消えた。

 

彼女は、既に腹の前。極限まで全身を捻り、構え、そして刃を振り抜いた。

 

血刃の居合が、獣の躯体を腹から両断する。

 

「──────────」

 

咆哮はなかった。鳴くことさえしなかった。あまりに鮮やかな一閃は、獣に斬られたと認識させることは、なかった。

 

その狩りの一切に目もくれず、フレアがマリンの治療に集中できたのは、2人の間に確かな信頼があったからだろう。

 

「マリンの状態は?」

 

「一命は取り留めた、と思う」

 

持ち合わせの回復薬、焼け石に水の低級回復魔法。それらを最大限投与してようやっと血が止まった。

 

「でも、まだ危ない状態なのは確か」

 

肋骨数本の骨折、全身の打撲、その他多くの外傷に加えて重度の疲労。激しい衝撃によって内臓にも傷害があるかもしれない。

 

フレアは、マリンの容態をそう評価した。

 

「本格的な治療ができる場所に連れていかないと」

 

「・・・一度帰りましょう」

 

少し悲しげに、玲香は言った。

 

 


 

 

気付けば、身体は暗闇に投げ出され、ふわふわと浮いていた。思考にはうっすらとモヤがかかっていて、意識も少し朦朧としている。

 

あれ、何してたんだっけ。

 

ああ、そうだ。あの大きい獣と戦ってたんだ。斬っても斬っても斬れなくて、それで黒い薬を飲んで強くなって・・・。

 

それで、それで、どうしたんだっけ?

 

そっか、負けたんだ、とても強い力で殴られて。うわぁ多分死んでそ〜。

 

てか、なんで戦ってたんだろう。

 

そうだ、強くなりたかったんだ。

 

なんで?

 

玲香たんを助けたいから。

 

どうして?

 

どうしてって、それは・・・。

 

あの子はあなたより強いでしょ?

 

それでもあの子は傷ついてるし、なんなら死んじゃってる。だから強くなって守れるように・・・。

 

じゃあ、なんであの子にこだわるの?

 

・・・え?

 

たった2ヶ月の付き合いだよ?

 

あの子はあなたになにかしてくれた?

 

あの子からなにか貰った?

 

叶不玲香は、あなたにとっての、なに?

 

そ、れは・・・。

 

答えられない?

 

そうだよね。

 

だってあの子は、

 

とっても可愛くて強いだけのただのクラスメイトなんだから。

 

 

 

「う、あぁ、ぁ?」

 

「マリン?マリン!」

 

「目を覚ましたのね、本当に良かった・・・」

 

そう、か。気絶してたんだ。獣は・・・多分2人が狩っちゃったんだろうなぁ。

 

遠いなぁ。悔しいなぁ。

 

「マリン、大丈夫?痛むところはない?」

 

痛いところ?全部だよ。身体も心も。

 

『叶不玲香は、あなたにとっての、なに?』

 

何も答えられなかったなぁ。

 

『とっても可愛くて強いだけのただのクラスメイトなんだから』

 

何も返せなかったなぁ。

 

こんなに良くしてもらってるのに、どうしてだろうなぁ。

 

「やっぱり私も着いてくわ」

 

「でも玲香、お母さんには」

 

「いいの、友達が優先よ」

 

友達、友達だってさ。簡単に言っちゃって。

 

嬉しいなぁ。苦しいなぁ。友達って、船長は言いきれなかったのになぁ。

 

かっこ悪い、なぁ。

 

「マリン、泣いてるの?」

 

「・・・ぇ?」

 

うっそ泣いちゃってるの今。うわぁ余計かっこ悪いじゃんか。

 

「怖かったの?」

 

違うの。

 

「痛いの?」

 

違うよ。

 

「寂しかった?」

 

全然違う。

 

「・・・悔しいの?」

 

ちが、わない。違わない。

 

ほっぺたあっつ。涙がもっと流れてきたみたい。

 

ほんっと、弱いなぁ。

 

「・・・ごめんなさい、今は話を聞いている時間がないの。早く病院へ」

 

「ぉいてぃって、ひとりでぃくから」

 

泣いてるせいなのか痛みのせいなのか、呂律が回らない。でも言わないと。置いていってって、一人で行くって。

 

だってもう、かっこ悪いところを見たくない。迷惑をかけたくない。

 

「マリン」

 

だからせめて、せめて、もう足を引っ張らないように、いっそ死んで───。

 

「おぃてぃって」

 

「マリン、聞いて」

 

「ぇいか、たん・・・?」

 

頬を抑えられ、無理矢理に目を合わせられる。力強い銀色の瞳に、泣いている私が映っていた。

 

「私ね、全部どうでも良かったの。学校も人付き合いも、強い弱いも、私の人生さえも。特に人付き合いなんて、不愉快で鬱陶しいものだってずっと思ってた」

 

それじゃあ、友達なんて、嘘?

 

「でも、フレアとあなたに会った」

 

「ぁたし?」

 

「そう、あなた」

 

頬を抑えていた手が頭の後ろに回され、ゆっくりと持ち上げられる。

 

「邪魔だって思ったことがないわけじゃない。それでも、一緒にいて不愉快じゃない存在は、あなたたちが初めてだった。私に初めてできた、友達と言える人たちだったのよ」

 

そのまま、玲香たんの膝の上に運ばれる。

 

「それを知ったのは、ついさっきだったのだけど・・・私、本当に愚かね」

 

玲香たんが、ぽろぽろと泣き出した。流れた涙が私の頬を濡らす。

 

どうして泣いているの?

 

「私ね、フレアとあなたに泣き虫にされてしまったみたいなの。さっき初めて悲しいって感情を知って、今は怖いって感情を知った」

 

怖いって何が?

 

「私、友達を、あなたを喪うのが怖い、思わず泣いてしまうくらい怖いの」

 

・・・。

 

「ねぇマリン、お願いよ。愚かな私から、数少ない友達を奪わないで───生きて」

 

傷に障らないように、優しく抱きしめられる。背中に回された玲香たんの華奢な腕が、小さく震えていた。

 

怖い・・・そっか、怖い、か。

 

私は、深く、深く息を吸って、ゆっくりと、肺の中身を全て吐き出した。

 

 

 

 

 

全く、()()は一体何をしてたんでしょうか。ボコボコにされて、かっこ悪いところを見せて、挙句こんなかわい子ちゃんを泣かせて。

 

船長に生きてほしくて泣いちゃうような、寂しがり屋の玲香たんのために、死ねないですね!

 

目を閉じて、あの問いを繰り返す。

 

なんであの子にこだわるの?

 

当たり前、可愛いから!何より友達だから!

 

たった2ヶ月の付き合いだよ?

 

人付き合いは長さより質!一緒に戦った時間は今ではかけがいのない思い出なの!あと可愛いし!

 

あの子はあなたになにかしてくれた?

 

たった今してくれた!船長の命を尊んでくれた!

 

あの子からなにか貰った?

 

それは今から貰う予定!

 

叶不玲香は、あなたにとっての、なに?

 

とっても可愛くて強くて、寂しがり屋な私の友達!そして、船長が見つけた宝物!

 

目の前にお宝があるのなら、海賊がすることは一つ、だよね!

 

 


 

 

「Quaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」

 

獣の咆哮が大聖堂に響き渡る。叫んだのは、玲香が胴体から切断した、あの獣だ。もはや獣の持つ本能や意識さえも燃え尽きて、人だった頃に抱いた強い感情のみが、彼の躯体を動かしていた。

 

「どうして死んでないの!?」

 

「チッ」

 

重傷者を抱えた2人に選択の瞬間が迫る。そして誰もいなくなった、玲香の答えは既に決まっていた。

 

「フレア、マリンを連れて逃げて」

 

「玲香は?」

 

「時間を稼ぐ」

 

腹の切断部から、血の代わりに溶岩が溢れ出す。その異様な光景に、いかに玲香と言えども戦慄せずにはいられなかった。

 

それでもやるしかないと腹を括り、千景を構える。

 

(強い・・・)

 

玲香は、目の前の獣が今までに戦ってきたどんな敵よりも強いということを感覚で把握した。獣という異形の威圧感に、そのまま人の執念がそのまま継ぎ足されたような、怪物。

 

(狩るなんて考えない、今は2人を逃がすことに集中しないと。最悪、死ぬことになる)

 

両腕の脅威はそのまま、ただし移動にも腕を使う分攻撃の頻度は少なくなるはず。また腹から下がないから、急に飛び込んでくることはない。しかし、あの溶岩が厄介だ。不用意に近づけば逃げ場がなくなる。

 

(ヒットアンドアウェイが最適解。これなら時間も稼ぎやすいわね)

 

分析が終わり、覚悟が決まる。

 

「はぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・行くわ」

 

「まぁ待ってよ」

 

そんな玲香を止めたのは、マリンだった。

 

「・・・マリン?」

 

泣き腫らした目をそのままに、重傷の身体を引きずって、立って歩き出した。

 

「ずっと間違えてたんだ。玲香たんと一緒に戦うには、強い狩人にならないといけないんだって」

 

「そうよ、あなたは狩人になんてならなくていいの。だから」

 

「だから決めたんだ!私は海賊のまま獣を殺す!」

 

いつの間にか、その手にはサーベルが握られていた。

 

「海賊はね、可愛い子に守られ続けるなんてかっこ悪い真似は恥ずかしくってできないの!」

 

足取りが安定する。サーベルを握る手に力が入る。その目に、獣が映る。

 

「そんな身体で戦えると思ってるの?」

 

「戦える?まさか、()()()!」

 

そして、構える。これまでの自分に決別し、この凶悪な怪物からお宝を守るために。

 

「船長を信じてよ、玲香たん。大丈夫、もう絶対に負けない」

 

「・・・」

 

玲香は何も言わなかった。ただ、千景を鞘に納める音がマリンの耳に届いた。

 

「ありがとう───あ、そうだ。もう一つお願いしてもいい?」

 

「?」

 

マリンが振り向く。玲香と目が合う。

 

「勝ったらキスして?」

 

「マリン!?」

 

「いいわよ」

 

「玲香!?」

 

「ホント!?約束!約束ですよ!後でナシなんて絶対に認めないですから!」

 

「そんなことは絶対にしないわよ。だから、勝ちなさい」

 

「勿論」

 

海賊は、守るものがあるときと奪うものがあるときに一番強くなるのだと、マリンは思っている。そして今、守るものと奪うものが2つとも揃っていた。

 

「守るものは、2人。そして奪うのは、玲香たんのファーストキスとお前の命」

 

海賊なら、不利な今こそ不敵な笑みを。

 

「宝鐘海賊団船長、宝鐘マリン!大切なお宝のために、いざ、出航(ヨーソロー)!!」

 




正直キスのくだりが一番楽しかった。
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