「君がここに新たに来た整備士か。ふむ。いいか、君。ここで起きている事は一切大本営に報告することは許さない。その代わりと言ってはなんだが、ここにある金額を毎月君に支払おう。それと好きな艦娘を好きなだけあてがってやろう。」
この一言で全てを察した。
いや、ここに来る前までで全てわかっていた。
虚ろな目をした艦娘。怪我を負ったまま放置されている艦娘。
それがここはどのような鎮守府なのかを物語っていた。
それを知ってあえて一言。
「ありがとうございます。」
満面の笑みで醜く肥えた、気持ちの悪い提督に返した。
「さて君はどの艦がいい。正規空母や戦艦は1人しかやれんが駆逐艦のクソガキくらいなら何隻でもやろう。」
ネチャネチャという擬音がつきそうな顔と声でそう言った。
ならば…1人でも多く救う。
「ならば…駆逐艦を全員、私にください。私、
満面の笑みで思ってもいない言葉を吐く。
嘘も上手くなったものだなと自己嫌悪の念に駆られたが、ここを摘発するにはまだ無理だ。証拠も無しに一整備士の話だけで大本営は動かない。
「全員?いいだろう。よく躾とくんだな。」
「はい、そうします。ですが…提督殿。これ以降駆逐艦は基本的に私の物です。口出ししないでくださいね。」
「ははははは。上官に口を聞くか!面白い。気に入った。いいだろう。好きにするがいいさ。しかし君はもう共犯者だぞ?裏切ることは許さんからな。」
「どうしてこのような場所を捨てるようなことをしましょうか。そこはお任せ下さい。」
……良くもまぁこんな言葉がスルスルと出てきたものだ。
いずれ証拠と共に全て大本営にぶちまけてやる。
ここの提督から末端の憲兵まで残らず檻にぶち込んでもらうことにしよう。そう心に誓い部屋を後にした。
「君かぁ、駆逐艦全員を所望したロリコン整備士は。」
本来、工廠にいるはずの整備士長は、中庭で憲兵やほかの整備士を連れ、艦娘を横に侍らせ酒を飲んでいた。
もちろん、艦娘の目には生気がない。
「もう噂は広まってますか。いやはや、お耳が早い」
「褒めたところでわしの艦娘は渡さんぞ。ははははは。」
「ははは。あいにく私は駆逐艦にしか興味がありませんので。それで整備士長。工廠を使わないのであれば、私が使ってもよろしいでしょうか?」
「工廠?あぁ、あの薄汚いところか。確か明石とかいう艦娘がいたような気がするが我々整備士も憲兵も近寄らん。好きに使え。せいぜい、楽しみたまえよ。ははははは。」
……気持ち悪い。所属艦娘よりも見る数が少ないのは恐らく……。うぐっ…吐き気が……。しかし工廠が全域使えるのはありがたい。感情を押し殺し、心底幸せそうな笑顔で庭を後にした。
「駆逐艦娘、全員集合させました。」
死んだような目で大淀が報告に来た。
「あぁ済まないが、私はここの寮を使うつもりは無い。工廠を使う。整備士長には許可を頂いた。全員を工廠に移してくれ。」
「工廠?ですか?わかりました。」
工廠に改めて行くと、薄汚れてる所ではなかった。中規模の防衛用鎮守府であることをいいことに改修も建造も全く行っていないのがありありとわかった。
「改めて、駆逐艦娘、全員集合させました。」
見ると身も心もボロボロにされた駆逐艦娘達がいた。
「ん、ありがとう。大淀。戻ったら提督には工廠には近づかないように言っておいてくれ。」
そう言って大淀を帰した。
どうにかこうにか駆逐艦娘の保護に成功した川原。
次回は一回目の接触です。