ブラック鎮守府の整備士日記   作:小椋屋/りょくちゃ

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第十六話

明石が到着すると、パニック状態に陥った睦月、皐月、弥生の3名に手早く鎮静剤を打ち、医務室への運び込む。

「処置完了。朝潮さん、雪風さん、様子を見ててもらうことは出来ますか?」

「はい、明石さん、お任せ下さい。」

「それじゃあ、お任せします。私は川原整備士の所にいるので、目を覚ましたら、すぐ連絡をくださいね。」

「「わかりました!!」」

元気よく返事をした2人にニコリと微笑むと、整備士と合流すべくいつもの部屋へと向かった。

────────────────────────

いつもの面談室にて吹雪と対面する。彼女の顔は恐ろしい程に暗く深く沈んでいた。

「吹雪さん。」

「.........。」

「返事を、してくださいませんか。」

「...はい。」

「綾波さんや、白雪さんは、元気ですか?」

「………はい。」

「皐月さんや、文月さんはいかがですか?」

「一応…元気だと思います…。」

「それなら一先ず安心ですね。」

「あの…なんでこんなこと聞くんですか…。」

「なんで、とは?」

「…早く、早く処分を下してくださいよ!役に立たない兵器など、処分するに限るでしょう!?」

机をバンと叩き立ち上がる。

すかさず隣に立っていた明石が静止させ、席に座らせる。

「兵器…ですか……。艦娘は、兵器などではないですよ。」

「艦娘は、兵器以外の何者でもありません。吹雪型駆逐艦1番艦吹雪などいくらでも換えが効くんじゃないですか。早く解体にせよ、雷撃処分にせよ、奴隷扱いにするにせよ、処分を下してください。」

「換えが効く?何を仰ってるんですか?」

「何をって、当たり前のことじゃないですか。」

「なら私が仮に、建造を行い、新たに吹雪型駆逐艦1番艦が着任して場合、その吹雪さんは、白雪さんや、綾波さん。睦月さん達のことを、あなたほど考えませんよ?」

「それは……」

「どこが、"換えが効く"んですか?」

「っ……………。」

「それにあなたは、処分を受けたがっている。いえ、正確には、"もしも会った時に、彼女に許されてしまうことが恐ろしいから、その機会を永遠に無くそうとしている"といったところでしょうか?」

「そんなこと、あるわけないじゃないですか!どこに根拠があるんですか!?」

「あなたの顔に書いてありますよ。何も処分を望むだけなら、そんな暗い顔をする必要は無い。白雪さん達に手を出されたくないというのなら、私に誓約書を書かせればいいだけの話ですし。」

「そんなこと!そんなこと…………。」

「吹雪さん。あなたが今、自分自身を誰に投影しているか、あえて言うことはありませんが、あなたはそんなのではない。」

「なっ…違わなくなんか……」

「あなたはこうして、反省することも罪悪感を覚えることも出来ている。これでいて、何が違わないでしょう?」

「………………。」

「あなたは兵器などではない。あなたは、誰かを想い、悩み、実行し、また悩んでいる。1人前の艦娘であり、人間ですよ。」

「そん、な……………。」

「それでは最後に、あなたへの処罰を伝えます。」

「必ず、睦月さんに謝り、仲直りすること。2つ目は、毎朝私のところに来ること。この2点です。」

「えっ…………」

「それでは、また明日。明石さん、吹雪さんを頼みました。私は、睦月型の皆さんの方に行ってきます。」

「わかりました。」

 

 

その時の彼女の顔は、先程とは別の意味で、呆然自失としていた。

 

 

 

────────────────────────

この鎮守府に、初期艦として着任した吹雪は、ここの提督の何もかも全てを知っている。

憲兵隊を丸め込み、贈賄と艦娘をあてがうことで鎮守府の全員を丸っと味方につけ、監査時には演技を強要させることによって情報漏洩を阻止することに成功。

そんなクズに刷り込まれた、

 

「艦娘とは兵器だ。人間の言うことにただ従えばいい。」

 

というものが、洗脳のごとく、いや、洗脳としてこびりついていた。

外の世界を知らない彼女は、いとも容易くそれが真実であると、教えこまされ、信じ込んだ。

 

 

そんな彼女からすれば、艦娘を人として扱う、あの男の方が異常であった。

 

 

本能としては、あの男が、彼が正しいと分かりきっていた。しかし、偽りの真実を盲信する理性が、それを全否定する。ありえない、有り得るはずがない。アレが正しいのだ。アレが本来あるべき鎮守府の姿なのだと。

 

しかし彼女は、アレが本来あるべき鎮守府の姿ではないことなど、とうの昔に分かりきっていた。

 

その最後の理性によって、彼女は、毒されていない、吹雪型、睦月型の艦娘を囲い込み、守ろうとした。現に鎮守府には、頑強に立てこもりを続ける艦娘がいるという。彼女の最後の良心が、それを選択させた。

 

「あの男にも、何か邪な考えがあるはずに違いない。」

 

と。




少し短くなってしまいましたが、キリがいいので今回はここまで。


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皆様ほんとにありがとうございます。

本文に関して

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