ブラック鎮守府の整備士日記   作:小椋屋/りょくちゃ

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第十八話

ゆっくりと抱きしめ頭を撫でているうちに、睦月の咽び泣く声は、やがて穏やかな寝息へと変化していった。

 

手近なベットに横たえると、改めて皐月、文月、弥生と向き合う。

 

「えっと……3人は、大丈夫ですか………?」

 

声をかけてみる。途端に弥生が皐月と文月を庇うようにしながら、後ずさりしていく。

 

「唐突なことととはいえ、声を荒らげるような真似をしたり、睦月さんのことを抱きしめるようなことをして、すみませんでした。」

 

ゆっくりとゆっくりと、しっかり頭を下げて謝罪する。

 

「えっと……えっと………謝らなくても…大丈夫です……はい…。」

「と言われても、緊急事態とはいえ僕が変なことをしたのも事実です。ほんとに申し訳ない…。」

「あの………謝らないで、欲しいです……。弥生は、お話したい…ので……。」

「弥生!?」

「弥生ちゃん!?」

「2人は静かにしてて……。弥生なら、まだ大丈夫だから………。」

「えっと、まず、助けてくれて、ありがとうございました…。あのままだったら、帰って……来れなくなってたから………。」

「帰って来れなくなってた?」

「はい……。弥生の勘、ですけど……。」

「今は?」

「なんとも…無いです……。みんなのおかげ………です。」

「……わかりました。ほかの点は、なにかありませんか?」

「………睦月ちゃんが起きたら、美味しいご飯を、みんなと一緒に食べたい……です。吹雪ちゃんとかも、一緒に………。」

「わかりました。準備、しておきますね。」

「それと……色々と、調べてる……んですよね?弥生に、お手伝いできることなら、何でも…します。辛いことだって……お話しします……。」

「弥生……」

「弥生ちゃん………」

「………わかりました。その時は、声をかけさせてもらいますね。」

「はい………。」

「ぼ、ボクも協力するよ…!」

「あたしも……」

「皐月……文月………」

「……………………わかりました。覚えておきます。ほかは、なにか……?」

「…………やっぱり、どうしても怖いので…朝潮ちゃんとかを、挟んでくれると……助かります……はい………。」

「わかりました。………っと。明石さんがこっちに来てくれたようです。私はこの辺で、出ていった方が、良さそうですかね…?」

「あ、えっと………弥生達が出るから、お姉ちゃんと一緒に、いてあげて欲しい………。」

「弥生!?さすがにそれは!」

「…弥生ちゃん……」

「私は……この人を……信じてみる………。この人は………多分、大丈夫だから……………。」

 

3人がそう言って押し黙ったタイミングで、明石が医務室に入室する。

 

「あー、えーと………来ちゃマズイタイミング……でしたかね……?」

「いえ、ナイスタイミングです。3人をすぐに休まさせてあげてください。多分、すごく負荷がかかってるので………」

「わかりました。えっと、弥生ちゃん、皐月ちゃん、文月ちゃん、こっちに、来てくれますか?」

「わかりました……。」

「はい、いい子達ですね。外で雪風さん達も待っていますから、そちらに向かいましょうか。」

 

ガチャンという音と共に、明石が3人を連れて出ていく。自分という存在が、確実に彼女たちにダメージを与えているのは明白だった……。

 

 

 

 

日が沈み、月明かりが優しく照らし始めた頃、睦月さんの目が覚めた。起き上がったかと思うとすぐさま当たりを見渡し、こちらにすごい剣幕で掴みかかってきた。

 

「っ…………!?3人は…?3人は…どこですか……!?」

「大丈夫、大丈夫ですよ。明石さんと雪風さん達に預けてありますから。」

「それなら……良かった…………。」

「疲れは、取れましたか?」

「…………久々に、ゆっくり休めました。」

「それなら良かったです。」

「その………さっきは…………」

「なんですか……?」

「……さっきは、怒鳴ったり、何もわきまえないで発言してしまい、申し訳ありませんでした。」

「なんで、謝罪するんですか?」

「艦娘は物じゃないにしても、人間じゃない。楯突くなんて、最低最悪の行為です。」

「そんなこと、無いですよ。さっきも言いましたけど、あなた達には明確に性格も、思考能力も、人格も備わっている。喧嘩したり、衝突したりして、当たり前じゃないですか。」

「でも…艦娘は……人間に従わなきゃ…いけない………。」

「誰がそんなにことを、決めたんですか?」

「えっとそれは……ここの……司令…………。」

「なら同じ人間である、私が言います。そんなルールは、存在しない。人間の言うことを必ず聞かなくてはいけないという決まりは、存在しない。ここにいるあなたは、本来何にも縛られてはいけない、そんな存在です。本来、こんなことを言わなきゃいけないってことも、間違ってるんですけどね……。」

「………ほんとに……ほんとに……睦月は、ここに居て…いいんですか………?何の役にも立てないし、強くて沢山戦える訳でもないし、やっぱり、私なんか……私なんか…………」

自己嫌悪と存在否定のループに陥る前に、優しく包み込むように抱きしめ、思考の渦から抜け出させる。ゆっくりゆっくり頭を撫でながら、優しく伝える。

「……では1つ、私から、お願い事をします。ここに、この鎮守府に、私がこれから作ろうとする鎮守府に、睦月さん、あなたに居てもらいたい。もちろんあなたの姉妹艦の3人や、友達の皆さんも。」

「……ほんとに、私なんかで……?」

「あなたが居なくなったら、誰があの3人の、お姉ちゃんをするんですか?」

「………わかりました……。睦月は、ここに…居ます………。」

 

 

撫でているうちに、再び眠りに着いた睦月の穏やかな寝顔を見て安堵すると共に、まだまだ重大な問題が残っていることに頭を悩ませることになるのだった…。

 

────────────────────────

誠和3年4月22日

 

燃料:101552

弾薬:124243

鋼材:118771

ボーキサイト:95482

 

睦月型姉妹は睦月を除き、私からの接触は控えるべき。

彼女たちには、その方が都合がいい。明日から来るであろう吹雪には、ゆっくりと向き合わなくてはならないだろう…。

白露型の2人とも、時間を確保して面談を行いたいところではあるし、大潮とも話せるものなら話していきたい。

 

邪魔立てが、入らなければいいのだが…………。




二十話ないしその次の辺りが、ドロドロ回になることが確定したのであった……………。


作者のSAN値は、持つのだろうか………。

本文に関して

  • もっと説明文的な構成。
  • 今よりも説明的な文が欲しい。
  • 今よりもさらに会話文を増やす。
  • 本文構成は全て、作者に委ねる。
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