ブラック鎮守府の整備士日記   作:小椋屋/りょくちゃ

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時間通り予定通り


第九話

「あっ!おはよう!」

─嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

「………あぁ、おはよう。」

「司令官、何かありましたか?」

─怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

「…いえ、何も。」

「なら良かった!」

─来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで

「時津風さん、嫌いなら、わざわざ話しかけないでくださいね。」

─!?

「な、なんで……?顔に…出てた……?」

「いえ、完璧に隠れてましたよ。並の人なら、気づかないでしょうね、笑顔の裏の真意なんて。とにかく、落ち着くまでは、わざわざ話しかけなくてもいいですからね。」

 

なんで、わかったのだろうか。

 

 

────────────────────────

朝食後、朝の会議のために、川原が仮称「執務室」と名付けた部屋に明石と本日秘書艦の満潮を呼んだ。

 

「お二人とも、おはようございます。」

「川原さん、おはようございます。」

「おはよう、川原さん。」

「それでは、朝の会議を始めます。まず、明石さん。時津風さんは最重要警戒観察で、お願いします。」

「了解しました。」

「満潮さん、皆さんの様子はどうですか?」

「陽炎、村雨、不知火の3人は改善傾向。雪風、吹雪、白雪、綾波は食事量等に改善の予兆あり。睦月型は…」

「"命令"じゃないと動きませんか…。」

「……えぇ。」

「次に、備蓄資材について、お願いします。」

「燃料が103754、弾薬が126842、鋼材が118521、ボーキサイトが93785。今朝は不自然な変動は無し。」

「了解しました。…とりあえず、方針通り、本日は時津風さんを除いた陽炎型の3名とカウンセリングを行おうと思います。明石さんは、時津風さんと積極的なコミュニケーションを。満潮さんは、睦月型の皆さんに、会話をするよう"命令"してみてください。それで行動を確認したいです。」

「了解です。」

「わかったわ。」

「お2人は、何かありますか?」

「私は何も無いわ。」

「それじゃあ、私から。提督、時津風さんに何かしましたか?呆然自失としてたんですが。」

「あぁ、嫌なら話しかけなくてもいい、と伝えただけですよ。不自然なほどに、自然な笑顔だったんでね。」

「そうだったんですね。」

「他は……………なさそうですね。それでは本日も、よろしくお願いします。」

 

朝の会議を終え、カウンセリングルームにて準備を行う。30分後に明石と、陽炎、不知火、雪風がやってくる。不足の事態に備え、色々と準備を進めるのだった。

 

準備を終え、自分用の椅子に座ったタイミングを見計らった様に扉がノックされた。

「明石です。陽炎型駆逐艦陽炎、不知火、雪風の3名をお連れしました。」

「入ってください。」

「失礼します。」

 

陽炎は少し怯えながら、不知火は暗い目をしながら、雪風は明石に支えられながら、部屋へと入ってくる。

 

「3人は、前の椅子へ。明石さんは定位置へ、お願いします。さて、問題ないですかね。それではカウンセリングを初めて行きます。私がこれからいくつか質問を行うので、正直に、はい、いいえ、答えたくない、分からないの四択でお答えください。」

 

陽炎が小さく頷くだけで、他に反応はない。

 

「まず1つ目。今、何か不満があれば教えてください。」

「…私は何も、ありません。」

「雪風も……。」

「私はあります。」

「不知火!?」

「不知火お姉ちゃん…!?」

「いいですよ。なんでも仰ってください。」

「お願いですから、これ以上私達駆逐艦娘に関わらないでください。私達艦娘は兵器であって人間ではありません。人間様と同様の生活を送るなどありえない話です。これ以上干渉しないでください。兵器としての生活に戻れなくなります。」

「艦娘は自らの意志を持って戦うことのできる兵士です。」

「いいえ、兵士ではありません。自律思考が可能な戦闘兵器です。」

「戦闘兵器は、感情を解することはありません。戻れなくなる…というのは、曲がりなりにも、今の生活が何倍も楽だということではないんですか。」

「っく………。」

「あなた達は兵器なんかではありません。人間と同じ、自分で理性的に考え行動のできる素晴らしい兵士です。そんなあなた達艦娘を無下に扱うあのゴミクズ共をとっとと追い出すことが、私の目下の目標です。納得頂けましたか?」

「…………………。はい。」

─納得できない…。

「納得いかない、そう思っているでしょう?」

「!?そ、そんなことはありませんっ!」

─なんでバレた!?あれ(司令官)にもバレなかったのに!?

「納得いかない、そう思うことが、あなた達が兵器ではなく人間と同じ、兵士であるという最大の根拠です。」

─!

「ご理解、頂けましたかね。」

「…はい。」

「それでは次にいきましょう。何か欲しい物は、ありますか?」

「私は何もないです。」

「ゆ、雪風は……もっと、皆と、と、時津風ちゃんとも、お話したいです……。もちろん、しれぇも………。」

「いいですよ。いっぱい、お話しましょう。」

「はい…。雪風、頑張ります……。」

「私は何もありません。満足しています。」

 

 

 

 

そんなこんなで、その日の陽炎型の3名とのカウンセリングが終了した。

────────────────────────

誠和12年4月13日

燃料:103754

弾薬:126842

鋼材:118521

ボーキサイト:93785

 

雪風の状況に大きな進展あり。不知火の精神状態に関しては、今後カウンセリングの方を重点的に行おうと思う。時津風、睦月型に関しては満潮達の報告次第とする。




雪風編はまだ続く。
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