よろしければ引き続きよろしくお願いいたします。
風が冷たい。 身体の動きが鈍るから寒いのはあまり好きではない。歩くとコツコツと小気味がいい音が聞こえる。まぁ自分の足音なんだが。そんな呑気なことを考えながら転入先である三門市立第三中学校へと向かう。事務員に挨拶をして職員室へと足を運ぶ。扉を開けて
「失礼します。本日付で転校してきました。岸辺拓真です。 」
と、小さ過ぎず大き過ぎずいい感じに認識して貰える大きさで。 担任を紹介されてそのまま教室に向かう。
「初めまして。 岸辺拓真です。 よろしく 」
つまんないとか思うなよ? 自己紹介なんて無難でいいんだ。
ー昼休みー
まぁそりゃ人集まるわな。 転校生なんて珍しいだろうし。しかもほとんどがソワソワした温度だったし。
集まってきたクラスの人達は次々と質問をしてくる。好きな食べ物って何? や休みの日って何してるの? といろいろ聞いてくるけど「そんないっぺんに話されても気取れないから。」と苦笑していると 1 人が
「ねぇ岸辺君。 近界民って知ってる? 」
と聞いてきた。 「知ってるも何も俺が近界民だから」とは言える訳もなく
「いや、あんまり知らない」
と答えるしかない。
話は続く
「 4 年半に突然三門市にゲートが現れて近界民っていうデカい化け物がなだれ込んだんだ。その時に現れたのがボーダーで近界民を退けたんだけど、それでも 400人以上が行方不明になったんだよ。それをみんな大規模侵攻って呼んでる。 」
こっちの世界の人達はトリオン兵のこと近界民って呼んでるのか。 これって俺が近界民って言っても冗談で流されるんじゃ…いや、危険な賭けはやめておこう。バレたらシャレにならん。
そんな平和な日常を過ごしていたが平和も日常も何の前触れなく突然壊れ、狂うことを俺はよく知っている。その時もあの日聞いた無機質な、それでいて人間味を帯びたアナウンスが耳に入っていてくる。
『緊急警報、緊急警報。 市街地にゲートが発生します。市民の皆様は直ちに避難してください』
そういえば昨日もトリオンh … めんどくさいから近界民でいいや。 近界民が出たんだっけ。 黒トリガーっぽい温度だったけど…モールモッドか。 まあいいや、とりあえず俺も避難しとこ。
(うーむ。 1 歩遅かったなぁ。 既にモールモッドが1匹下から登って来てた。 おかげで屋上に行くはめになっちまった。)なんて考えてると逃げ遅れた奴らが屋上に来た。
「大丈夫か!?」
「ああ、三雲が助けてくれたんだ。あいつボーダー隊員みたいで。 」
三雲? 誰だ? ボーダー隊員なのか。 もしかしたら城戸さんのこと知ってるかも…
ドゴォォォン!!!
大きな音が響いた。わぁびっくりしたー
「壁が壊れたぞ!? 」
「三雲のやつ大丈夫なのか!? 」
どれどれ…ん ? あいつトリオン能力低くね ? あのままだと確実に死ぬだろ。
そんなことを考えてると校舎内へ戻っていくやつを見た。
しばらくするとモールモッドが倒されたようで俺たちは校庭へ降りた。 モールモッドを見やる。ほうほう、見事な切り口だな。 でも多分あの三雲とか言うメガネではないだろうな。とそこへ
「どういうことだ ? もう終わっている。」
声が聞こえた。誰だ ? あいつら。 あ、メガネと話してる。 なんかあいつ偉そうだな。白髪のちっちゃいのはなんか煽ってるように見えるし…あれ ? あいつが指にはめるてるのって黒トリガーか ? あぁなるほど、合点がいった。 モールモッド倒したのも昨日の黒トリガーもあいつか。 しかも俺と同じ近界民だな。 なら納得がいくわ。 あいつの身体体温じゃなくてトリオンの温度しか見えないけど。つーかあのメガネ基地の外だとトリガー使っちゃ行かんのか。 城戸さんと会うのは期待しない方がいいか。
ん ? 複数同時は聞き取れないんじゃなかったのかって
? 2 つまでならなんとかなる。
ー放課後ー
あー疲れた。 と頭の中でぼやきながら家へ帰る。 旧ボーダー基地見に行こうかと思ったけど疲れたからやっぱりやめた。
すると突然ゲートが現れた。バムスターが出てきた。
めんどくさいなと思いつつも黒トリガーを起動し振り下ろした。その瞬間 1 発の雷がバムスターを直撃し…ピクリとも動かなくなった。彼は誰かに見つかる前に足速にその場を離れた。
後に現着した三輪隊は既に倒されたバムスターを見て昨日ように疑問符を浮かべていた。
ー休日ー
休日なので俺は旧ボーダー基地へと向かっていた。
「昔とは所々違うのに意外と道は覚えてるもんだな」
もう少しペース上げようと思ったその時、 ある物が目に入った。 まぁ要は好物だ。 大好物。 到着はもう少し後になるようだ。警報が聞こえたが遠いので気にしないことにした。
「ボロくなってるところ以外は何も変わってないな」
写真と見比べてそうつぶやく。
視界がぼやけた。
自分が泣いているとわかった。
父さんが死んでも泣かなかったのに。
「ああ、そういうことか」涙が出た理由がわかった
零れ落ちた 1 滴の涙がアスファルトを黒く濡らした。
すると
「どうした ? 少年」
という声が聞こえ振り返ると、頭にサングラスを乗せた青年が立っていた。
迅悠一。 彼が探していた内の 1人である。
~side 迅~
「遊真お前、ボーダーに入んない ? 」
「オサムとチカが一緒ならいいよ」
「よし、決まりだ。 それに玉狛に行ったら面白いやつに会えるよ」
そう言って 4人で玉狛支部へ向かう。
到着すると、1 人の少年が立っていた。俺は
「どうした? 少年 」
そう声を掛ける。振り返った彼の目からは涙が零れていた。
~玉狛支部にて~
俺が声を出す前に
「久しぶりだな、拓真」
そう言ったので
「お久しぶりです。迅さん」
そう返す。 憶えていてくれたようだ。
「立ち話もなんだからとりあえず中に入るか。 隊員は留守だけど中に何人かいるっぽい」
扉を開けると…カピバラに乗った子供が居た。
「陽太郎、誰かいる ? 」
「新入りか」
「『新入りか』じゃない」
なんか会話が噛み合ってないし。
「あれ ? 迅さんおかえりー」
そう聞こえ上を向くとメガネをかけているダンボールを抱えた女の人がいた。
「おう宇佐美」
「え ? お客さん ? お菓子あったっけ ? 待って待って」
俺たちに気付くと突如慌ただしくなった。
どら焼きが出てきた。 しかもいいところのやつ。 俺は甘い物好きなのでその辺は把握している。あと余談だが俺は太ったためしがない。 とここでさっき途切れた話を引っ張り出す。
「迅さんよく俺の事覚えてたね ? 」
「憶えてたというか思い出した」
俺はちょっと首を捻るが迅さんの話は続く。
「拓真がこっちに来る未来に紅い羽と鈴が見えた。この時点じゃまだ何となくだったけどさっき写真と見比べながら泣いているところ見て確信した」
…憶えてたわけじゃないのか。 思い出しただけでも嬉しいっちゃ嬉しいが俺の感動返せ。
「ねぇ迅さん。 迅さんが言ってた面白いやつってこいつのこと ? 」(= 3 =)
隣の白髪のチビがそんな事を言った。 何それ ? 俺そんな話知らない…のは当然か。 さっき初めて会ったんだから。
「ああ、拓真の親父さんはボーダー創設初期のメンバーでもあるんだ。 4 年半前の事が起きる前に向こうに帰ったけど」
「ところでこいつ誰 ? 」
「俺は空閑遊真」
「 ! 空閑ってもしかして、有吾さんのむ s「そう息子」…」
なんで言葉を被せて来るんだよ迅さん…。
「まぁお前ら今日は親御さんに連絡してうち泊まってけ」
俺も一応大家さんに連絡入れとこう。なんか 1 人暮しで心配されてたから。
「遊真、修ちょっと来てくれ。 あと拓真も。 ボスがお前たちに会いたいそうだ」
迅さんがそう呼ぶのでついて行く。
部屋に入ると林藤さんが居た。昔に比べで少し老けたところ以外変わってないなと俺は思った。
「お前が有吾さんの息子か。 はじめまして」
「どうも」
こういう時に呑気なのも変わってないっぽい。
「遊真、うちにお前を捕まえる気はないが 1 つ聞かせてくれ。 お前が探している有吾さんの知り合いってのは誰だ ? 」
「父さんが言っていたのはモガミソウイチだよ」
「やっぱり最上さんか。 迅。 」
迅さんは腰に提げていたトリガーを机の上に置く。
「この黒トリガーが最上さんだ。 最上さんが生きていたらきっとお前を本部から庇っただろう。」
少ししんみりした空気になる。すると今度はこっちに顔を向けて
「で、迅から話は聞いたが拓真、大きくなったな」
「林藤さん久しぶり」
「俊典さんはどうした ? 」
その質問をこの空気でするのはやめてほしかったなあと思うが答えない訳にも行かないので
「父さんなら…」
と言って俺は 1 つの黒トリガーを取り出す。迅さんと林藤さんは察したようだ。空気がさらに重くなる。だから "やめて欲しかったのに" と思った。
その夜、俺と遊真と迅さんは話をした。自分の父親の話を。 迅さんは最後に「まだまだ楽しいことはある」と残した。
俺と遊真が階段を降りると修と千佳がいた。 修は俺と遊真にボーダーに入ってくれと頼んできた。
「いいよ。 オサムほっとくと死にそうだし」
と了承した。俺は
「オペレーターならやってやる。安心しろ死なせやしないよ」
自然とそう口にしていた。もしかしたら俺は少し前線から離れたいのかもしれない。
4 人で林藤さんの所へ向かう。部屋に入ると机の上には 4 枚の申請書類があった。 なるほど、全部迅さんの予知どおりって訳か。
こうして俺たちはこの日を境にチーム『玉狛第二』となった。
そしてレアキャラ男子オペレーターの誕生である。
翌日、玉狛のオペレーターである宇佐美先輩からトリガーの説明をしてもらった。してもらっていたんだがどこからか足音が聞こえてくる。勢いよく扉が開くと女子がいた。 多分高校生。 あと "この鳥みたいな頭は" と考えていると
「あたしのどら焼きがなぁーい!!」
と叫んだ。
俺達には目もくれず第一声がそれかよ…。 あとやめてやれ。子供をひっくり返して持ち上げるな。
宇佐美先輩が弁解するが頬を引っ張られる。あとから
2 人入ってくる。 1 人は見覚えがある。
「あたし新人なんて聞いてないわよ」
やっとこっちに興味が向いたか。
「実はこいつら俺の弟と妹なんだ」
いや迅さんさすがにその嘘は…
「嘘 ! そうなの!? とりまる知ってた ? 」
…騙されるのかよ。
「はい。 小南先輩知らなかったんですか ? 」
この人は…違うな。おもろがって便乗してるだけだ。というか気づかないのか。
「レイジ、あんたも知ってた ? 」
「よく知ってるよ。迅が 1 人っ子だってことは」
1 人だけまじめだった。 というかやっぱりこの人レイジさんか。
宇佐美先輩が 1 人ずつ紹介をする。
「このすぐ騙されちゃうのが小南桐絵17歳」
「騙したの!?」
桐ねぇだった。 そしていまだにこんなに騙されやすいのか。 ちょっと呆れた。そしてこの人は 1 言で言うなら
「この(もさもさした男前)が烏丸京介16歳」
「どうも、もさもさした男前です。 」
あ、印象が被った。で、最後に
「この落ち着いた筋肉が木崎レイジ21歳」
「落ち着いた筋肉って、それ人間か ? まぁ拓真、久しぶりだな」
「レイジさん久しぶり」
「え ? 」
レイジさんは憶えてたくれてた。いや桐ねぇ「え ? 」って気づいてなかったのかよ。
「レイジさん、拓真って…」
「なんだ小南、気づいてなかったのか。 お前も昔に会ってるぞ。俊典さん息子の拓真」
「えぇぇ!? 拓真 ? あたしすごくちっちゃかった記憶しかない」
いや桐ねぇ、最後に会った日からどれくらい経ってると思ってるの ? 俺だって成長しないわけじゃないよ ?
「で、次の入隊日までの 3 週間レイジさん達には 4 人の師匠になってもらいたい。」
迅さんが強引に話を切り替える。桐ねぇが遊真、とりまる先輩が修、レイジさんが千佳ということになった。 ちなみに俺は当然宇佐美先輩ということになる。
まぁここからは朝から玉狛に来て訓練。 これ以外に言うことがない。
そして玉狛を監視している目があることを誰も知らない。
~side 米屋&古寺~
玉狛の監視をしていたのは三輪隊の米屋と古寺であった。
「で、それが黒トリガーとどう関係があんの ? 」
買ってきたあんぱんを食べながら米屋は古寺にそう訊く。
「何か食べないと命に関わるとかですかね ? 」
「それは全員同じだろ。ずっと換装体でいる訳でもあるまいし」
「ですよね」
2 人揃って正解を引き当てておきながら自らで否定していく。勿体ないな。
一方本部では遠征部隊が帰還し、すぐさま城戸司令は玉狛にある黒トリガーの奪取を命じるのであった。
次話はいかにも迅さんたちと太刀川さんたちの戦闘っぽいですけど戦闘シーンは描きません。苦手なので。あらすじには "戦う" と書いてしまったのですがそれでもよろしければお付き合いください。
拓真の鞄の中身
・授業道具一式
・昼食
・貴重品(財布やアパートの鍵)
・黒トリガー×3
・耳飾り
・父親のトリガー
・父親の隊服
・写真