アザルトリリィ Mechanized Heart 作:渚のグレイズ
夢結様が・・・みんなが、戦っている。なのに私は、遠くから見ているだけ・・・・
「ふーん、レストアね」
「最近は出現率が上がっていると聞くのぅ」
「ふぁ!?百由様!と、ミリアムさん?どうしてここに・・・」
いつの間にか、隣に百由様とミリアムさんがいた。
「工廠科とはいえ、私達もリリィなの。これでも結構戦えるのよー?」
「今日は当番と違うがの」
そういえば、二水ちゃんがそんな事言ってたっけ・・・戦うアーセナルがどうたらこうたら。
「で、損傷を受けながらも生き延びたヒュージが、ネストに戻って修復された個体。私達はそれをレストアード──レストアと呼んでいるのよ。何度かの戦闘を生き抜いているから手強いの」
「はぁ・・・」
話している間にも戦闘は続いている。
夢結様がレストアヒュージの爆弾攻撃を掻い潜り、甲羅のトゲに一撃を加えようとしている。
「すごい・・・・」
「じゃが、ちょっと危なっかしぃのう」
「なまじテクニックが抜群だから、突っ込み過ぎるのよね」
けれど夢結様の一撃は、ヒュージの装甲を砕くことはできなかった。
一度は引いた夢結様だったけど、再び突撃。ヒュージがばら蒔いた爆弾を用いて、今度こそ、甲羅を破砕してみせたのだった。
やっぱり、すごい・・・!
と、爆煙の向こうから光が見えた。それも一つじゃない、幾つもの光が。
あれって・・・・CHARM?でもなんで・・・・
「マジか・・・」
「え・・・あの・・・どういうことですか?」
「──────CHARMはリリィにとって身体の一部。それを手放すとしたら・・・・」
「っ!?」
百由様の言わんとしている事に気付いて、背筋が凍った。つまり、あのヒュージは、あれだけの数のリリィを─────
瞬間、夢結様の様子が一変した。
艶やかな黒髪も、真っ白に染まって・・・・戦っている、というよりも、暴れている、というような感じで・・・・
「夢結様・・・!?」
「ルナティックトランサーじゃ・・・!」
「それって確か・・・・夢結様のレアスキル」
「ルナティックトランサーは、マギの力を暴走させ、ヒュージに近しいエネルギーを人の身に宿す、正に狂気と紙一重のレアスキルよ」
「じゃが、何故今発動したのじゃ?夢結様はアレを封印しておったと聞くが・・・」
「主を失ったCHARMの群れが、夢結に思い起こさせたのよ・・・・」
「それって・・・・」
「百由様丁度良いところに!お話中のところ、すみませんわ!」
「わっ!?楓さん─────って、紋瑪ちゃん!?」
そこに、顔色が真っ青になった紋瑪ちゃんを背負った楓さんが跳んできた。いったい何が・・・
「うわっちゃー。こっちも
「言うとる場合じゃないぞ百由様!コアの出力が低下し始めておる・・・・このままじゃと不味いぞ!!」
「わかってるわよ!あー、こんな事ならちゃんとした工具持ってくれば良かった!!!」
紋瑪ちゃん・・・・
百由様とミリアムさんが紋瑪ちゃんの処置を行っている。
「・・・・アは、梨璃・・・ちゃん・・・・ひどい・・・顔・・・してます・・・よ・・・・?」
「顔色悪いのは貴女の方でしてよ!」
「大人しくしておれ!」
「紋瑪ちゃん・・・・!」
私には、何もできない。だから、せめて・・・・手を握っててあげようと思う。少しでも、安心させてあげたいから。
「────────────ふう」
「・・・・ん?なんじゃ?コアが安定し始めておる」
「─────────────────これって」
「・・・・んー。なんか、わからない、です・・・けど。身体、楽に、なりましたねー・・・」
「紋瑪ちゃん、大丈夫なの?」
「はい・・・・んー、たぶん、大丈夫、です」
「はぁ、まったく・・・・人騒がせも大概にしていただきたいですわね」
「いやー・・・ごめんなさい、です」
えっと、とりあえずなんとかなった・・・・のかな?
「のう、百由様・・・・これはいったい」
「・・・・なんだか、面白そうな事が起きたわね。とりあえず、あやっちはもう平気よ。あとは・・・・」
百由様の視線の先、そこでは、未だ夢結様が暴れ回っている。
「さっきの話の続きだけど・・・・夢結は、中等部時代に自分のシュッツエンゲルを亡くしているの」
「あ・・・・」
「・・・・・川添美鈴様、ですね」
「紋瑪ちゃん知ってるの?」
「先日、調べさせていただきましたので・・・・」
そうだったんだ・・・・
「やっぱりあのハッキングはあやっちの仕業ね!!あの後、色々大変だったのよー!!」
「はっはっはー」
「笑い事ではないわい!」
えぇ・・・・
「んで、その時、夢結様はルナティックトランサーを発動させていたそうで・・・・それが理由で、美鈴様殺害の容疑がかけられていたそうです」
「そんな!?」
「・・・・実際、美鈴様の遺体には夢結のCHARMによるものと思われる刀傷がついていたらしいわ。結局、証拠不十分で疑いは晴れたけど、夢結自身、記憶が曖昧な状態で・・・・・それからずっと自分を苛み続けているのよ」
「──────感じ過ぎて、降りきれてしまった。とは、そういうことでしたか」
・・・・・そんな事が、あったなんて。
なら、今の私にできることは・・・・
「私、行ってきます!」
「梨璃ちゃん!?」
「ダメよ!今の夢結は危険すぎる!!」
紋瑪ちゃんと百由様が私を止める。けど、私は行かなくちゃいけない。
私は、夢結様のシルトなんだから・・・!
「百由様、ありがとうございます。私、夢結様のこと・・・少しだけですけど、わかってきた気がします!」
百由様にお礼を告げて、私は夢結様のもとへと向かう。
ルナティックトランサー
夢結のルナティックトランサーは通常と違い、発動すると完全暴走状態に陥る。(昔はそうはならなかったとか・・・媒体によって詳細は異なる)
この状態になると、マギの力が完全に暴走し“神宿り”と呼ばれる現象に似た状態になる。(髪の色が変わるのはこれのせい)
つまり、ルナトラ持ちが全員、髪の毛が白くなるワケではない。