アザルトリリィ Mechanized Heart 作:渚のグレイズ
ここは、屋外訓練場。有事の際にはヒュージ迎撃にも使用される場所だ。
私は今、自身のレアスキル“天の秤目”で遠く離れた神琳の指す指先を狙っている。そこは丁度、神琳の眉間に当たる場所。
そこに向かって、私のCHARM“アステリオン”の総弾数10発分を寸分の狂いもなく命中させられたなら、この試練は合格。
「雨嘉ちゃん!あんなスカした女、コテンパンにノしちゃいなさい!!」
「ダメだよ危ないよぉぉ!?!?」
後ろでは、緋坏さんと一柳さんが、正反対のことを言い合っている。
あの二人、本当に仲良いなぁ・・・・
そう思いつつ、ここまでに至った経緯を思い出す。
―――――――――――†――――――――――
「わ・・・・私、は」
正直、嬉しかった。
緋坏さんが、私のことを私個人として、ちゃんと評価してくれていると分かって。
でも、緋坏さんが神琳のことを嫌っているのは・・・・少し、心が痛む。
神琳だってきっと、悪気があって言っているわけではないはず。
だから・・・・
「─────私、やってみる・・・・ううん、やらせて欲しい」
「え?それって・・・・」
「よっしゃ!それじゃあ─────」
「でも、一つだけ」
「ん?」
「神琳とも、仲良くして欲しい」
「はい、それは勿論」
「神琳だって、悪気があって──────え?」
今、緋坏さん、あっさり頷いた?
「同じレギオンの仲間になるんです。仲違いなんかしてたら、居辛いじゃないですかー」
「え・・・えぇ・・・?」
そんな理由で?
「ふふふ・・・♪確かに、大事なことですね。では、証明する方法は私にお任せいただけますか?」
―――――――――――†――――――――――
「私の姉も妹も、今もアイスランドに残ってヒュージと戦っているの。一人だけ故郷を離れるよう言い渡されて・・・・私は必要とされてないんだって思った」
神琳の提案でやって来たのがここ、屋外訓練場。
私と一緒に来たのは一柳さんと緋坏さん。
「ごめんなさい。百合ヶ丘は世界的にもトップクラスのガーデンよ。ただ、故郷を守りたいっていう気持ちは特別、っていうか・・・・」
「うん。それ、分かるよ」
一柳さんが笑顔で答える。と、その時。私の携帯が鳴る。神琳からだ。
神琳はここには居ない。そういえばさっき、一柳さんに何かお願いしてたみたいだけど、何だったのかな・・・・?
『雨嘉さん、こちらがわかる?』
「え・・・・あ、うん」
視界を巡らせ、神琳を探す。
居た。
遠く離れた廃ビルの上から電話をかけている。その隣にも誰かいる。誰だろう?
『そこから私をお撃ちなさい』
「・・・・え」
唐突に、神琳からとんでもない事を言われ、理解するのに少し間が空いた。
『訓練弾なら大丈夫よ』
「そんなわけ・・・」
『総弾数10発、きちんと狙えたら、私からはもう何も申しません』
それだけ告げて、神琳は通話を切ってしまった。
「・・・・どうして」
戸惑う私のところに、一柳さんがやってきて訪ねる。
「雨嘉さん、猫好きなの?」
「え?う・・・うん」
なんで今、そんなことを・・・・?と思っていると、一柳さんは、私の携帯に付いてる猫のストラップを指して言った。
「この子、可愛いね♪」
「!・・・・・うん」
この子に、気付いてくれた・・・!
私は、昔から感情表現が苦手で困るとすぐに黙ってしまう。そのせいか、いつも“怒っている”と勘違いされてきた。
このストラップは、そんな私の、精一杯のアピールだ。私だって、普通にみんなとおしゃべりがしたい。みたいな・・・
一柳さんは、そんな思いの籠ったこの子に、気付いてくれた。
そんな一柳さんとなら・・・ううん。
「これ、持っててくれる?」
「え・・・?うん」
梨璃に携帯を預けて、私は愛機“アステリオン”をシューティングモードに切り替えて構えると、レアスキルを発動させる。
「・・・・なるほどー、『天の秤目』ですか。指定した地点との相対距離をcm単位で把握できるレアスキル。遠く離れた場所のものでも、目測で寸分の狂いもなく把握できるそうです」
「へぇ・・・・!それで、目標は何?」
「神琳」
梨璃からの問いに静かに答え、遠く離れた神琳の指す指先を狙る。そこは丁度、神琳の眉間に当たる場所。
「へっ!?」
「おおっ!遂に反抗期突入だね♪」
「なんでそんな楽しそうなの!?」
「雨嘉ちゃん!あんなスカした女、コテンパンにノしちゃいなさい!!」
「ダメだよ危ないよぉぉ!?!?」
一呼吸、心を落ち着かせ・・・・引き金に、指をかける。
「これは、貴女達がくれたチャンス・・・・・だから私も貴女達を信じてみる・・・・!」
一瞬生じた静寂の瞬間、私は、引き金を引いた。
「・・・・始まりましたわね」
「始まっちゃいましたね・・・・!!どうなるんでしょうか・・・・」
「ま、ここまで来てしまったからには、成るようにしかならないでしょう」
「そうですけどぉぉ・・・・」
「ぜはー・・・ぜはー・・・お・・・お主ら、ここにおったのか・・・!」
「・・・・ミリアムさん?」
「あら、ちびっこ2号。どうかしまして?」
「に・・・2号?」
「私1号!?」
「で、何か御用でして?」
「用事があるから、こうやって走って来たんじゃろがい!」
「はぁ・・・・それはお疲れ様でした・・・・」
「用があるのでしたら、手短にお願いしますわ」
「・・・・・文句しか無いが、まぁ、ええわい。実はの───」