アザルトリリィ Mechanized Heart 作:渚のグレイズ
かえふみは良いぞ!!!
もゆミリも良いぞ!!!
「えっと・・・・落ち着いた?」
「────────────────うん。もう平気、ありがとう」
『嘆きのクラス分け事件』から数分が経過し、現在。
講義自体は明日からなので、私達は楓さんの提案に載っとり足湯場を訪れていた。
窓際から、楓さん、梨璃ちゃん、私、二川さん、の順に並んで足を湯に浸けている。じんわりとした温かさが足からからだ中をめぐって全身にしみわたっていく。
それにしても、めっちゃ落ち着くぅぅ~~・・・・
足湯って私、初めてなのよねぇぇ~~・・・・
「良いのかな・・・?朝からこんな・・・・」
「へいきへいき~~・・・・じゅぎょうはあしたからだし~~・・・・」
「貴女、ちょっと緩み過ぎでは?」
「あはは・・・・紋瑪ちゃんはおいといて、講義って明日からなの?」
「はい、理事長の方針だそうです。『学院はヒュージ迎撃の最前線であるのと引き換えに、リリィにとってのアジールでもあるべきだ』って・・・」
あじーる?・・・・あるぱ・・・・ロリマザコンに父性を求めた女・・・・・ウッアタマガ
「アジール?」
「聖域の事ですわ。何人にも支配されることなく、脅かされることのない常世。ま、いい大人達が私達のような小娘に頼っていることへの贖罪というところでしょう」
贖罪、ね・・・・・百合ヶ丘の理事長でなければ、御大層な
「でも、不思議ですねえ。同じクラスでも、私と梨璃さんみたいなド素人から、ヌーベルさんのように実績のあるリリィまで、経歴も技量もバラバラです」
二川さんが、自身のクラス名簿を書き写したメモを見ながら言った。
「ほほほ、よく調べているわね!私のこと"楓"って呼んでくださって宜しくてよ?」
「わぁ!本当ですか!?凄いです!グランギニョル総帥のご令嬢とお近づきになれるなんて!!」
「なんてことございませんわ~」
「二川さん、楽しそうねぇ」
「そりゃあもう!!『障壁の奇術師』である緋坏さんを始め、綺羅星の如く活躍するリリィの皆さんにこうして直接お会いすることができただけに飽きたらず、学友として共に学んでいけると思ったら、もう!!」
「あーうん。わかったから鼻血拭こうねー」
しかし、"障壁の奇術師"ねぇ。
私、そんな二つ名が付けられてたんだ。初めて知ったわ。
「えっと、ぎにょぎにょ・・・・って、何ですか?」
「「え?」」
突然発せられた梨璃ちゃんの爆弾発言に、楓さんと二川さんが驚愕の表情で梨璃ちゃん(と間にいた私)に詰め寄る。
「まさかご存知ないとか!?」
「昨日ご説明したじゃないですか!」
「まってー私つぶれちゃうー」
「むぎゅぅぅ・・・・」
―――――――――――†――――――――――
「グランギニョルは、フランスに本拠を置くCHARM開発のトップメーカーのひとつで、楓さんはそのメーカーを束ねる総帥のご令嬢なんです!」
二川さんの説明に合わせてジャキン!と音を立て、楓さんがご自慢のCHARMの鋒を梨璃ちゃんに向けつつ、ご高説を垂れ流す。・・・・・・楓さんでなければブン殴ってたところだ。
「いいえ、トップですわ!お父様の作るCHARMは世界一ですもの!!仰ってくだされば、何時でも梨璃さんにはキレッキレにチューニングした、カスタムメイドの最高級CHARMをご用意して差し上げますからお楽しみに♪」
「そういえば、私のシャルちゃんもグランギニョル製でしたわね」
「シャルちゃん?」
「緋坏さんのCHARM"シャルルマーニュ"の事でしょうか?」
「二川さん、良く分かったねー」
・・・・・・そういえば二川さん、私のこと名前で呼んでないなぁ。あ、私もか。
「せっかくだし、私のことも名前で呼んでよ。私も貴女のこと、"二水ちゃん"って呼ぶから、ね?」
「え!?よろしいんですか!?」
「ダメなら言わないわよー?」
「うわぁぁ!!嬉しいです!!!嬉し過ぎて私もうどうにかなっちゃいそうでぶふぅ!」
「うわぁ・・・・・」
興奮し過ぎた二川さん─────二水ちゃんが鼻血を噴射し、気絶した。
とりあえず急いで二水ちゃんを足湯場から連れ出して介抱してあげる事となった。
―――――――――――†――――――――――
復活した二水ちゃんを伴い、私達はラウンジにてお茶を飲んでいる。
「そういえば・・・・梨璃ちゃん、朝はあの後どちらに?」
「えっと、旧館の方まで・・・・」
「旧館というと・・・・もしかして、夢結様ですの?」
「はい・・・・」
なんでも、昨日のお礼を言いたくて夢結様に会いに行ったのだとか。
夢結様には会えたが、全然取り合ってもらえなかったと・・・・それであの時しょんぼりしていたのね。
「私、夢結様とシュッツエンゲルの契りを結んでもらいたくて・・・・」
「あら、ですがそれは普通、上級生からお声がかかって結ぶものですわよ」
「そうですわねー。ちょっとむつかしいかもしれませんわね」
「あれ?でも楓さんも、昨日夢結様に申し込んでいませんでしたっけ?」
「・・・・・ちょっと楓さん?」
「私、過去には囚われませんの」
「楓さんは、自分の行いをもう少し振り返るべきかと」
「お黙りモブ顔!」
カチンときたが、ここは我慢。ラウンジで暴れるのは流石に行儀が悪いどころの話じゃない。
気持ちを切り替える目的も含めて、シュッツエンゲル制度についておさらいしてみようかしら・・・・
ここ、百合ヶ丘に於いて交わされる義姉妹制度。
上級生"シュッツエンゲル"が、下級生たる"シルト"をリリィとしても、人間としても、立派になれるよう教え、導いていく・・・・という、と~~っても尊い伝統だ。
ここだけの話、もし梨璃ちゃんが百合ヶ丘に今年合格してなかったら、来年入学してきた梨璃ちゃんにシュッツエンゲルを申し込む予定でいたりした。
「それが夢結様、目も合わせてくれなくて・・・・」
「え?昨日は良い雰囲気だったって・・・・」
「待ちなさい二水ちゃん、それ何処情報?」
「ひぇ・・・!?紋瑪さん顔が怖いですぅ!?」
さぁ吐け直ぐ吐けソース元を洗いざらいィィ!!!!!!!!!
「・・・・私、嫌われちゃったのかな」
「まぁ、元々気難しいことで有名なお方ですから?」
「い・・・・今の夢結様はシュッツエンゲルの契りどころかどのレギオンにも属さず、常にお一人でヒュージと闘っているそうです」
私の拘束を振り払い二水ちゃんが補足説明を行う。
やるじゃない・・・・
「・・・・・楓さん、私にCHARMの扱い方を教えてください!」
「梨璃さん!?」
「それは構いませんが・・・・」
「私、はやく一人前のリリィになりたいんです!そうすれば夢結様だって・・・・」
梨璃ちゃん・・・・そこまで夢結様のこと・・・・・!
「でも、明日から実習が・・・・」
「おだまりちびっこ!」
「ちびっこ!?」
ちびっこ・・・・確かに二水ちゃん、この中で一番小さいのよね。だからなのか、二水ちゃんはなんだか妹みたいに思う時があるのよねー。私、一人っ子だったけど。
「普通なら焦りは禁物、と申し上げるところですが、ここはヒュージ迎撃の最前線。初心者と経験者をまぜこぜにしているのは、リリィ同士が技を鍛え合う自主性もまた、期待されてのことでしょう。喜んで協力して差し上げますわ!」
「なるほどなるほどー。で?そのこころは?」
「手取り足取り合法的に・・・・ぐへへ♪」
「はいダウトー!」シパーン!!
「ぐほっ!?何をなさるの紋瑪さん!!」
「場所を気にして抑えていたけど、もう限界!梨璃ちゃんには私が教えてあげます!」
「貴女には荷が重いのではなくて?」
「じゃ、どっちが教えるにふさわしいか、勝負しませんか?」
「あ・・・・あのー・・・・」
「よろしくてよ!吠え面かかせてやりますわ!!」
「それはコッチのセリフですわァ!!!!!!」
緋坏紋瑪─その5─
肌が病的なまでに白い以外、特長のない顔立ちをしている。
故に楓から"モブ顔"と呼ばれている。