瓦礫と空家が広がるゴーストタウン、ここはかつて三門市と呼ばれていたが今では警戒区域と呼ばれ、一部の人を除いて入ることも活動をすることはない。
その区域に、屋根の上を飛び越えながらとある場所を目指す二人組がいた。
黒と白のジャージのような制服で揃えた、肩にはエンブレムが有り、それにはボーダーと書いてあった。
ボーダー、それはこの人のいなくなったゴーストタウンで唯一活動を行っている組織である。
その活動は、
「みっちー、この方角で合ってるよな」
二人組の中で先頭を走る男が言った。
《はい、ネイバーの予測出現地点はもうすぐです》
「じゃあ、飛燕。予測地点に十字砲火を作るように動いてくれん」
「おう、即落ちすんなよ銀河。<バッグワーム>」
そういうと。先頭を走っていた男──飛燕はマントを生成し、羽織りながらさっきとは比べ物にならない速さで屋根を飛び越え空中も跳躍しながら離れていった。
《銀河、
「みたいだな」
みっちーの警告を受け銀河は左手には大盾を握り込み、右には大型の突撃銃──バトルライフルを構えた。
その警告と同時にその一角の空中に黒い球体が空間を塗りつぶすように覆う。
みっちーは照合を終え、結果を導き出す。
《照合完了、モールモッドが2体、バンダーが1体! 気をつけてくださいね》
「モールモッド2体とかまじかよ……」
『前みたいにモールモッドにボコボコにされんなよ』
銀河は気が滅入りながらその報告を聞く。
初めての防衛任務でモールモッドに出会ってボコボコにされて以来、銀河にとってあまりいい記憶の相手ではない。
一応、自主訓練でモールモッドの攻撃に1人で耐えれるまでにはなったが未だに接近戦で反撃できたことはない。
空間に色が戻ると、そこには体長が車ぐらいある多節型のバケモノが2体。モールモッドだ。
体長が5m越しそうな四足の中型のバケモノが首をもたげ当たりを見渡す。これはバンダー。
前衛型2体と砲撃型が1体。
変化があった。バンダーが銀河を探知したようだ。
バンダーは銀河に向けて、口の中にある目にエネルギーを集め、銀河に目掛けてビームを放つ。
銀河は慌ても回避もせず、大盾を構え、突き進む。
ビームが直撃するが、爆煙を掻き分け銀河が躍り出て、前に進む。
銀河の脅威度が上がったのか、モールモッドも迎撃するように2体が屋根の上に登る。
まだ距離がある内に銀河はバトルライフルでモールモッドの一体に口の中にある目に照準を合わせて撃つ。
弾は螺旋の尾を引きながらモールモッドに殺到する。モールモッドは口を閉じて守ろうとするが、弾はそんなことお構いなしに貫き通し、目を破壊する。
「一体! 次!」
残った一体は向かってくる銀河に側面の三対の刃を展開し、突き刺し、薙ぎ払いのコンビネーションで攻撃する。
銀河は大盾で弾いたり、受け流し、押さえつけるなどして、少し削られながらも攻撃をいなす。
だが、銀河は反撃に転じられそうにはない。
飛燕から呆れるような声で通信が入る。
『なーにもたついてんだ』
いなされている隙きにモールモッドの横合いから大きな弾丸が叩きつけられ、体勢を崩す。
その一瞬の隙きに銀河は大盾を大剣に変え、
「スラスター、オン!」
加速させた刃を振り下ろし、モールモッドの殻ごと目を切り落とす。
《銀河! バンダーを警戒!》
バンダーの方を見ると、そこには第2射のチャージを終えたバンダーがそこにいた。
銀河は咄嗟に緑のバリアを前面に貼る。
だが、その必要はなかった。
飛燕がバンダーの横合いから奇襲するように刀で斬りつける。
仕留めるまでは至ってないが。突然に奇襲にバンダーは襲撃者に目が釘付けとなる。
その視線の先には飛燕が光の尾を引きながら空中を進んでいた。
バンダーはこの空中にいて回避が不可能な襲撃者に狙いを定めた。
チャージしていたビームを放つ直前。飛燕は射線の先からいなくなっていた。
代わりに光の尾が弾となってバンダーに襲いかかり、バンダーの機能を停止させた。
「飛燕、一瞬ひやりとしたんだが」
『棒立ちしてるのが悪い』
「そこはかっこよく一撃じゃねーの」
『一撃にこだわるほうが無駄だろ』
二人は言い合いをよそに、みっちーから通信が入る。
《ふたりとも、防衛任務はまだ終わってないんだから無駄口叩かないよ》
『うい』
「はい」
それからはゲートの反応もなく、無事に防衛任務は終りを迎えた。
_______
任務を終えた二人はボーダー本部の食堂で昼食を取っていた。
飛燕が持ってきたトレーには唐揚げ定食が。
銀河のトレーにはカツ丼が乗っていた。
「飛燕、また定食? カツ丼もいいぞ?」
「別に、量もおいしさも変わらなくて、値段が安いならこっちがいいだろ」
「まぁ、そうだけどさ」
そういながら飛燕は黙々と唐揚げ定食を食べていた。
「光川、いま席あいてるかい?」
赤い隊服を着た烏のような黒髪の青年がこちらに来た。
銀河は見たことのある姿を見て誰かと思いだそうとするが、思い出せない。
「ん,嵐山か、いいぜ」
嵐山、確実に聞いたことのある名前だ。
なんなら、ボーダーに入隊したときにも見たことがあるはずだ。
顎に手を置き銀河はうーんとうなりながら思い出そうとする。
「おい、銀河。さては嵐山を覚えてないな」
ギクリ、と銀河は飛燕から目をそらす。
「図星か」
呆れるように飛燕は言う。
うーんと。頭を両手で抑えながら記憶をひねり出そうと銀河はがんばる。
そんな銀河をよそに嵐山は飛燕に一つ尋ねる。
「飛燕、この子が君が言ってた一番下の弟かな?」
「ああ、その通りだよ」
「はじめまして、おれは嵐山 准。君のお兄さんと同期の隊員だね」
そこで銀河は思い出す。
見たことがあるのも当然だ、だってC級入隊時に引率してくれた人達の一人なんだから。
そして、ボーダーの広報部隊でありながらも精鋭であるA級隊員兼任している。
安直に言っってしまえば──文句なしの有名人である。
そして、そんな有名人をど忘れしてしまっているのが今のオレである。
こういうときどうすればいいのか銀河は頭の中で口に出す言葉を考える。
だが、軽くパニックになった頭の中では自分が納得できる回答が出ない。
「は、はじめまして。飛燕の弟の光川 銀河です。兄がお世話になってます」
銀河がひねり出した答えは、しっかりと挨拶を返す。ぐらいしかなかった。
「君の噂は聞いているよ、B級の昇格おめでとう!」
「へ、噂?」
「うん噂になってるよ、ギムレットを使う珍しい銃手(ガンナー)だって」
銀河は苦笑いを浮かべる、まさか自分が有名人になっているとは思いもしないからだ。
「それで、嵐山。昼食か?」
「いや、昼食は家で食べてきたよ。今は防衛任務まで待機中さ」
「そうか、そっちはなんか変わったことがあったか?」
「こっちは特に変わったことはないよ。むしろ飛燕のほうが変化が多いんじゃないか?」
「言われてみればそうだな」
飛燕は銀河に目を向けながら言う。
「このアンポンタンのお目付け役をやってるよ」
「だ、誰がアンポンタンだ!」
「そりゃ、有名な先輩の名前を忘れるわ、防衛任務の日にトリガーを家に忘れる奴がアンポンタンじゃなきゃなんだ?」
「ふぐ」
銀河は抗議をあげようとするも、ぐうの音も言えない。
だが、銀河としても引き下がりたくもない。
「ひ、飛燕だってフランスとイギリスがごちゃまぜになってたじゃん」
「いや、別に旅行に行くことはないから別にどうだってよくね?」
そういった感じに銀河の反論はどこ吹く風と堂々と飛燕は反論する。
銀河はぐぬぬと悔しそうにする。
二人のやり取りに嵐山が笑いをこらえながら言う。
「はは、ふたりとも本当に仲がいいんだね」
「まぁ、よく一緒にゲームを遊びますけど」
「仲がいいこといいことだよ。じゃあ、みんなが集まったみたいだから、おれはこれで」
「がんばれよ―」
「じゃあね」
嵐山は手を振りながらその場をあとにした。
二人は見送った後、銀河はあることを飛燕に聞いてみる。
「なぁ、飛燕」
「なんだ?」
「ジャンヌ・ダルクはどこの国の人?」
「イギリスだろ?」
「……シェイクスピアは?」
「フランスだろ?」
銀河は目の前にいる兄が長らく学校で成績優秀者なのが不思議でしょうがなかった。
ここからはあとがきとなりまする
これはもしも自分の考えたキャラがワートリにいたら?を動機に始めた物語です。
自分のできうる限り原作キャラのイメージを壊さないようがんばります。
時期としては空閑と修が出会う数日前といったところです。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
初めての投稿ですが少しでも面白い物語を書けるよう精進してまいります。