それを食べたときのコトブキのメンバーの反応が見たい
と好奇心がわいたキリエとチカは、レオナたちにそれを
提供する。
そして彼女たちが示した反応とは……。
食欲は、人間の最も根源的な欲求の1つである。
人間、生きている以上空腹からは逃れられず、腹を満たすための食事からも逃げられない。
だからこそ、ここにいる女性も、目の前の料理を食すべく向き合っている。
そこにいる女性、短いながらも豊かな黒髪に、赤いコートを着た女性。凄腕飛行隊で知られるコトブキ飛行隊の1人、名をキリエという。
彼女は、その場に胡坐をかいて座り、目の前にある好物であるはずのパンケーキをなぜか睨みつけている。
好物なら、いつも笑みを浮かべながら食べるはずなのに、このとき彼女はなぜか食べるべきか、やめるべきかという選択肢の間で揺れるように難しい顔をしている。
彼女は視線をずらす。
そこには、金属製の水筒が1つ置かれている。
彼女は目の前のパンケーキ6枚と、水筒1つを交互に見比べる。
「……よし」
彼女はパンケーキにフォークを深々と突き刺し、皿から持ち上げる。
「いくぞ!」
意を決し、彼女はパンケーキを口の中に押し込んだ。
どこまでも土色の荒野が広がる世界、イジツ。
人の生存を阻む荒野が広がる中、オアシスのように点在する都市。
その都市の1つであるラハマでは、今日も人々がその日を生きるための営みをしている。
そんな町の中央通りを歩く人影が3つ。
先頭を歩くのは、縛った赤い髪が特徴の、凛々しい顔つきの女性。
ラハマを拠点に活動する運び屋、オウニ商会に雇われている凄腕飛行隊、コトブキ飛行隊の隊長。名をレオナという。
服装から伸びる手足は、周囲の女性に比べ鍛え上げられたたくましい筋肉がみうけられ、日々の鍛錬を欠かしていない様子がうかがえる。
彼女は中央通りを歩きながら、周囲の店に掲げられた看板を目にするたび、何かうんざりしたような表情を浮かべる。
「……ここもか」
「中々見つからないわね~」
レオナは先ほどから、空腹を知らせる腹からなる音をおさえながら、ため息を吐きだす。
そんな彼女を見て苦笑するのは、優美な体つきの、大人の色香をにおわせる女性。
コトブキ飛行隊副隊長、名をザラという。
「最近流行っているみたいですね」
「だからって、な……」
レオナはまたため息を吐きだす。彼女の後ろには、防寒用の茶色い上着に黒色のシャツ、裾の方に青いラインが引かれた白色のスカートを身に着けた、肩の下あたりまで黒髪を伸ばした女性がいる。名をハルカという。
レオナは改めて周囲を見渡す。
そこには、どこもかしくも赤い塗料がふんだんに使われた看板が、あちらこちらにあるのが嫌でも目に入る。
そしていずれの看板にも、黄色い文字でこう書かれている。
「イジツで最も辛い!挑戦者求む!!」
「いくら辛いものが今流行とはいえ、どこもかしくもこれでは、普通に食事をしたい人々の行き先が限られてしまう」
イジツの多くの都市では今、辛いものが流行している。
なんでも、そのきっかけになった出来事は、ある都市でカレーに大量の唐辛子を誤って店員が入れてしまったことがきっかけらしい。
唐辛子を大量に入れてしまい、見た目に赤いカレーを昼の混雑時に調理し直すのを面倒くさがった店員が、そのまま客に提供したらしい。
提供された客はそのことに気づかず食べ、辛いが上手かったという評判が口コミで広がり、挑戦しだすものたちが増加。
その評判を聞いた飲食店は料理の辛さを競い合い、訪れる客は意地なのか怖いものしらずなのか、辛さに対する耐性を競い合い、辛さの向こうにあるものが快感だのいわれ、ときに賞金がでる大会が開かれることもあり、1つのブームを生み出すほどになった。
そのためか、運び屋の間でも唐辛子を運ぶ機会が増えているという。
今では、イジツで一番辛いだの、辛いが旨いだの、挑戦者もとむなど、そんな看板を町の至る所で見かけるようになった。
元々怖いものしらずで、命知らずの飛行機乗りたちが多くを占めるイジツだ。
ある意味、そういうものと相性はいいのかもしれない。
「だからといって、こうも赤い看板ばかり見ていると目が疲れる」
レオナのお腹から、また腹の虫がなった。
「……サルーンにいくか」
彼女たちは、雇い主であるオウニ商会の所有する飛行船、羽衣丸へ向かった。
サルーンというのは、その羽衣丸内部にある食事処兼、酒場である。
ジョニーズ・サルーンといい、名前の通りジョニーという名の船員が店主を務め、謎多きウエイトレスのリリコとともに切り盛りをしており、航海中はそこが唯一の食料の供給源となる。
あそこは船内の食事処なので、ブームとは無縁だろうと思い、彼女たちは船へ向かって歩いていった。
「いらっしゃいませ~」
サルーンへの扉をあけた瞬間、レオナは違和感を抱いた。
カウンターにいるのは、見慣れたウエイトレスの制服を着た人物。
だが、その人物はリリコではない。
短いながらも豊かな黒髪の女性の名を、レオナは口にした。
「……キリエ?」
「いらっしゃい、レオナ~、ザラ~、ハルカ~」
「あら、キリエ?リリコさんは?」
「短期の仕事があるから、今日は私たちが切り盛りしてんだ」
同じくウエイトレスの格好をした女性が1人。
「チカもか」
「いらっしゃい。何食べる?」
2人が着ているのは、いつもリリコが着ている胸元が大きく開けたウエイトレスの服装だ。
だが、この2人が着るとどうも違和感がある。
主に胸元のあたりの格差に。
「そうだな、今日のおすすめを頼む」
カウンターに腰かけたレオナは、ものは試しにと注文を任せた。
「じゃあ、私もオススメをもらおうかしら」
「私も」
ザラもハルカも合わせる。
羽衣丸のジョニーズ・サルーンのメニューはどれもおいしいが、長い飛行船での旅に加えいつ来るともしれない空賊の襲撃の中、唯一の楽しみともいえる食事が代わり映えしないものでは飽きるだろうと、マダムの意向で定期的に一部の入れ替えが行われている。
無論、パンケーキを無くせばキリエから猛抗議がくることが予想されるので、注文頻度が高いものは残される。
とはいえ、飛行機乗りというのは、空戦が日常という非日常的な日常を送っているので、次第に感覚がマヒし、平穏に刺激を求めてくる。
それに応えるべく、ジョニーズ・サルーンには何が出てくるかわからない、オススメというものがある。
無論、リリコやジョニーが調理をするため、味は保証されている。
今回の場合、キリエとチカが担当なので、カレーかパンケーキだろうとレオナはあたりをつけた。
「お待ちどう様、チカ特製カレーと」
「キリエ特製パンケーキのセットだよ~」
出されたのは、予想通りの組み合わせ。別々の皿に盛られたカレーとパンケーキ。
見た目は特に変わりない。
「ありがとう」
レオナとザラはスプーンを手にカレーを。ハルカはフォークを手にパンケーキを口に運ぶ。
そして、口の中にほおばる。
瞬間、キリエとチカの口端がわずかに上がった。
口に含んだものを咀嚼する3人。
舌にカレーのスパイスの程よい刺激やパンケーキに乗せられた生クリームの甘さを感じ、3人はつかの間の至福の時間に浸る。
直後、カレーの辛さやパンケーキの甘さの中に、舌がしびれるような感覚がしたかと思うと、ついで痛みが口の中を攻撃し、それによって一瞬して体が暑さを増し、冷却のために全身の汗腺から汗が吹き出し、その刺激に彼らは……。
「「「むああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」」
喉を押さえながら、炎を噴き出さんばかりの勢いで絶叫したのだった。
「ごほ、ごほ……」
「むううううううう!」
「あああああああああ!」
口の中の痛覚を刺激するあまりの辛さに、レオナはせき込み、ザラは口をおさえたまま体を震わせ、ハルカはスカートがめくれるのも気にせず、口を押えながら床をのたうちまわる。
「な、なんだ!」
「この、辛さ、は……」
「み、み、みず、を……」
ハルカは右手を伸ばし、キリエに水を求める。
「はい、水」
キリエが手にしている樽ジョッキをひったくると、中身も確認せずハルカは口をつけた。
喉を通る液体は、今感じている刺激を洗い流してすっきりさせて、くれるどころかさらに増幅させ……。
「あああああああああああああああああああああ!」
彼女は喉をおさえながらカウンターを飛び越え、食器を洗う水がためてあるシンクに標的目掛けて急降下していく爆撃機のような勢いで首から上を突っ込み、そのまま動かなくなった。
「おお……」
彼女の思い切った行動に、キリエとチカは驚く。
「キリエ、分量間違えたんじゃない?」
「いやあ、ここまでの反応とは……」
チカは、勢いよく顔を突っ込んだことでスカートがめくれあがって見えている、白い下着に包まれたハルカのお尻を指でつつく。
「ハルカ~、お尻とパンツ丸見えだぞ~。……って聞こえてないのかな」
ハルカは水に顔を突っ込んだまま動かない。
「気絶しているみたいだね」
反応のない彼女を観察する2人の背後に人影がたった直後、固い骨と骨がぶつかる鈍い音が2回響き渡ったのは、言うまでもない。
「これは、げほ!一体、げほ!なんの、げほ!つもりだ、げほ!」
抜けきらない辛さにせき込みながら仁王立ちするレオナは、床に正座しているキリエとチカを鋭い視線で見つめる。
ザラは先ほどから辛さを和らげようと、ビールを樽からジョッキですくい上げては飲むのを繰り返し、ハルカは気を失ったままなので椅子を並べた上に寝かせてある。
床に正座するキリエとチカの頭には、大きなたんこぶができている。
キリエは、レオナの顔を見上げられず、床を見ながら話す。
「いや、その……。最近、イジツで辛いものが流行っているじゃん?」
「……そうだな」
「それで、コトブキのみんなは辛いもの平気なのかなって、ふと思っちゃって」
個人の味覚や食事の好みに口出しはしないレオナだが、思い返せばコトブキのメンバーは辛い物を口にする機会が基本的にほとんどない。
あるのは、辛さをおさえたカレーを食べるチカくらいだろう。
「そしたら気になり始めて、どれくらい耐えられるかな、どんな反応しめすか……」
「好奇心、みたいなものがわいちゃってさ」
彼らが食べたのは、普通のカレーやパンケーキではなかった。
キリエとチカお手製の、激辛カレーと激辛パンケーキだった。
パンケーキの断面には唐辛子が整然と並べられており、上に盛られたホイップクリームにも唐辛子の粉がちりばめられている。
カレーの中にも、刻んだ唐辛子が混ざっており、色味もいつもに比べて赤さを増している。
「今、私とチカの隼修理中じゃん?で、ちょうど今日はサルーンの担当だから、気になったら試さずにはいられなくなって……」
瞬間、レオナは目をカッと見開いた。
「試さずにはいられなくなって……、じゃなああああああああああああああああい!」
室内の空気を震わさんばかりの大音量の声に、キリエとチカは両耳をふさいだ。
「だからって加減をしなさすぎだ!私は、今も、くひのなかが、ひいひいしていふし」
レオナはまだ辛さが抜けきらず、呂律が怪しくなっている。
「ザラは、ビールを飲み続けていふし、ハルカは気を失っている!一体何をのませた!」
水だったら、ハルカがあんな叫び声をあげるはずがない。
キリエが渡した樽ジョッキの中身は、一体何だったのだろうか。
「なんでも、……頭をすっきりさせるのにいい特製ジュースって噂で……」
「使ったものは?」
「えっと……、タバスコ1瓶でしょ?胡椒に、七味に一味、マスタード、ピクルスの漬け汁……」
「何が頭がスッキリするだ!明らかに罰ゲームか何かの類じゃないか!」
「アハハ……」
笑う2人を、レオナはにらみつけ無言で圧を加える。
「まったく、個人の食生活や嗜好に口をはさむつもりはないが、人を巻き込むんじゃない。こういう時に、もし仕事が入ったり襲撃にあったら……」
瞬間、羽衣丸に何かが命中した振動が船を揺らし、直後に船内警報がけたたましい音を響かせた。
『え~、こちら副船長のサネアツ。羽衣丸は空賊と思われる集団に襲われている。総員戦闘配置。コトブキ飛行隊は直ちに出撃。ラハマ自警団と協力し、敵の排除を!急いでね!』
「こんなときに!ザラ!いく……」
ザラを振り返ると、彼女は周囲に転がるビールの樽を枕に寝息を立てていた。
「ちょ!ザラ、起きろ!」
頬を軽くパチパチ叩くが、ザラが起きる気配はない。
「ザラ、起きろ!起きるんだザラ!」
レオナの願いもむなしく、ザラが返すのはいびきだけ。
普段、並みはずれた酒の強さを誇るザラが酔いつぶれている。
周囲に転がるビールをはじめとした樽や大量の酒瓶を見て、飲んだ量が尋常でないのは明らかだ。
「ハルカ!ハルカ起きてくれ!」
ザラが無理だと悟ったレオナは、気を失って寝ているハルカの頬をパチパチ叩く。
だが、全く反応がない。
わずかに開かれたまぶたから覗く瞳は、虚構を写しているように虚ろなままだ。
「くそ、こういうときに……。仕方ない!」
こうなれば、今出られる戦力で行くしかない。
もうケイトとエンマは格納庫へ向かっているだろうか。
この2人が使えないのは痛いが、出撃が遅くなればなるほど、戦局は不利になる。
サルーンの出口へ向かい、レオナは走り出そうとした。
直後、胃のあたりに痛みが走った。
「ぐっ!」
増していく痛み、広がっていく範囲に、レオナはその場に膝をついた。
キリエとチカの加減のない辛み成分増し増しの料理を食べたことで、胃腸が悲鳴を上げている。
「ぐっ、こんな時に……」
これでは空戦など無理だ。
まずはトイレに向かわなければ。
「レオナ、隼借りるね!」
「ザラ、隼借りるから!」
キリエとチカがレオナを追い越し走って行く。
「ちょ!お前たち!」
「そんな状態じゃ空戦なんて無理でしょう?」
「誰のせいだと!うぉ!」
レオナは痛みが増すお腹を押さえる。
このままではと危機を感じた彼女は、慎重に歩を進めながら便所に向かうしかなかった。
「班長!」
いつもの服装に着替えたキリエとチカは、格納庫に入った。
「キリエにチカ?お前たちの隼はまだ修理がおわってねえぞ?」
2人の姿を見て、羽衣丸の見た目は幼女、中身はおやじの整備班長、ナツオは怪訝な顔をする。
「うん、だからレオナとザラの隼借りる!」
「2人はどうした?」
「病気で出られないって!」
「なんだと!?って、そういやハルカも来てねえな」
「彼女も病気だって」
「3人がそろいもそろって病気?」
2人はそれぞれレオナとザラの隼の操縦席へ滑り込む。
「班長、お願い!」
「仕方ねえ……」
いつもの手順で始動準備を終えたキリエとチカは、羽衣丸を飛び出していった。
「病気でレオナたちがでられねえって……、どういうことだ?」
いつも飛ぶことを優先して、体調管理には細心の注意を払っている3人だ。
キリエの言う、3人とも病気という状況に、ナツオは違和感を抱く。
ナツオは格納庫内を見渡す。
エンマとケイトの2人はすでに出撃しているし、キリエとチカはレオナ、ザラの隼を借りて出撃。
なので格納庫には、キリエとチカの修理中の隼と、ハルカの零戦が駐機されている。
疑問を感じながら、ナツオは船内へと足を向けた。
羽衣丸をとびたったキリエたちの進路上では、ラハマ自警団の97式戦闘機と雷電が空賊と思われる零戦21型と交戦しているのが見える。
「よっし、零戦なら負けない!」
『じゃあ、私行くからキリエ援護してね』
「はあ!何言ってんの?チカが援護に決まっているじゃん!?」
『何言ってんのはそっち!のろまのキリエが援護に決まってんじゃん!?』
空でも陸でも、彼女たちの言い争いは絶えない。
『やかましいと思ったら、キリエとチカですの?』
機上電話から聞こえたのは、同じくコトブキ飛行隊のエンマの声だった。
『その隼はレオナとザラのもの。なぜ?』
戦闘中でも、変わらぬ口調のケイトの声も聞こえる。
2人の隼は、先に迎撃に出ていた。
「2人が体調不良で出られないっていうから、隼借りたの」
『……あとでどうなっても知りませんわよ?』
「大丈夫、大丈夫。ちょちょっと空賊落として帰れば」
瞬間、機体に衝撃が走った。
右主翼に穴が開き、炎が上がった。
「なに!」
見上げた先には、主翼に4丁の機銃をつけた胴体が少し太めの機体。
「紫電改!この!」
キリエは急いで旋回し背後にまわろうとするが、急降下で速度を増した紫電改が振り切れない。
旋回を終えた瞬間、紫電改の4丁の機銃が一斉に火を吹いた。
「あ~れ~」
キリエの乗ったレオナの隼は、火を吹きながら高度を下げ、地面に胴体着陸した。
「ぷぷ~、キリエ落とされてやんの!さあ、私はキリエみたいには!」
直後、主翼を銃弾が突き抜け、火の手があがった。
「なな、なに!どこ!?」
立て続けに下方からの銃弾を受け、チカの乗ったザラの隼も高度を下げていった。
そんな2人の様子を少し上の高度から眺めていたエンマとケイトは。
『何やっていますの?あの2人……』
『わからない……』
というしかなかった。
地上に胴体着陸したキリエは、風防を開けレオナの隼から下りる。
「ふう……、助かった」
とりあえず自身の無事に安堵すると、レオナの隼に振り返る。
そこには、主翼にいくつもの大穴を開け、地面に不時着して損傷した彼女の隼があった。
瞬間、キリエは冷や汗をかいた。
「ど、どうするのさ、キリエ!」
背後を振り返ると、そこには同じく撃墜されたチカが、借りたザラの隼からはい出てきたところだった。
「なに、チカ。落とされたの?」
「みりゃわかんだろ!?ていうか、今はそのことはいいだろう!」
「息まいて出撃した割に早かったね」
「それはキリエもだろう!?いや、それより、これから私たちどうすんの?」
「どうって?」
「今のままかえってみろ?……どうなる?」
キリエは、レオナから借りた隼を見つめる。
瞬間、再び冷や汗が流れ出る。
激辛料理を提供して辛さや痛み、腹痛を味合わせた上に、一方的に借りた愛機を落としたとなれば、雑巾のごとく絞られることは想像に難くない。
それだけで済めばいいが、格納庫で正座の上に長い長い説教。
最悪、隼の脚に縛られ、地獄の空中散歩の刑になったら……。
キリエは上空を見上げる。
上空では、未だ空戦が繰り広げられている。
ラハマ自警団の九七式戦闘機に、エンマとケイトの隼が空中を舞い、対空機銃が火を吹いている。
空賊の大部分は零戦21型だが、紫電改が2機含まれている。
ラハマ自警団の方が数では有利のようだが、機体性能では不利で、エンマにケイトも必死になって応戦しているが、状況はよくない。
彼女は周囲を見渡す。
その先には、使われていない赤とんぼがあった。
キリエは赤とんぼ目掛けて走り出した。
「ちょ!キリエどこいくのさ!」
チカの疑問をよそに、キリエは赤とんぼの確認を終え、エンジンを始動させる。
「キリエ!」
「逃げるよ!」
「……へ?」
「このまま帰ったら、絶対レオナに絞られる!だから、ほとぼりが冷めるまで隠れるよ!」
「だからって、どこにいくのさ!」
「とりあえずラハマを離れる。あとのことはその後!来るならさっさとのる!」
やむなく、チカは後部席に収まる。
エンジンを始動させてしばらく、2人はラハマを離陸し、東へ遠ざかっていった。
『ふ、2人ともどこ行きますの!?』
「イジツで一番甘いものを探す旅に行ってくる!」
「あとは任せる」
『どうなっても、ケイトは知らない』
上空で戦うエンマやケイトをよそに、2人は遠ざかっていったのだった。
おなじみのギャグ成分増し増しの短編です。
定期的にやってくる激辛ブームですが、イジツで
起こったらどうなるか。そんな妄想から生まれた
話になります。
辛い物は、ほどほどにしましょう。