ポイントをケイトの観察を交えて解説してくれるそうです。
照明の落とされた羽衣丸の船内を、コトブキ飛行隊のキリエ、チカは静かに歩き、目的地である格納庫へと足を踏み入れる。
そのとき、格納庫内の明かりが一斉に点灯し、一角を明るく照らした。
そこにいたのは……。
「おう、てめえら!さぼらずよく来たな!」
この場に2人を呼び出した張本人、ナツオ整備班長はそばに置いた黒板を拳で殴りながら言い放った。
「それじゃあ、ナツオ整備班長の戦闘機解……」
「班長!」
「今回違うって!」
キリエとチカの叫びにナツオは、ハッと気づき、わざとらしく咳払いをする。
「え~っと。では改めて。ナツオ整備班長のストーリー解説講座、開講だああああ!」
ナツオ整備班長のストーリー解説講座。その名の通り、ナツオ整備班長がこれまでの物語の解説をしてくれる講座である。
「というわけで、今回はこれまでのストーリーの要点の簡単なおさらいと解説を行う」
「急にどうしたの、班長?」
「ネタバレをするコーナーはやらないんじゃなかったの?」
「まあそうなんだが、まさかここまでこの話が続くとは作者自身思ってなったみたいでな」
「あ、この話を読んで下さっている皆さま!」
「ありがとうございます!」
「まあそんなわけで、中々話が続いたものの、作者の力量不足で、読者にわかりにくい部分もあったんじゃないかと思い、このようなコーナーを設けたわけだ」
「なるほど」
「とはいえ、あくまでこの先の話のネタバレを含まない程度の内容だけだ」
「まあ……」
「そうだよね」
「ネタバレはだめ。でも、これまでの解説は問題ない」
突如現れた人物に、キリエとチカは首を傾げた。
「あれ、ケイト?」
「なんでここに?」
「ああ、私が呼んだんだ」
「班長が?」
「戦闘機の講座のときは私の役を食っちまうが、ストーリーや人物の解説なら、ケイトがいいと思ってな」
「観察や研究は得意」
「まあ」
「そうだね」
「で、今回扱う内容は、この物語の主人公、ハルカについてだ」
「あのさ、班長」
「何だ?」
「本人いないところで、勝手に彼女のこと解説するって、それいいの?」
「作者がやれっていうんだから、いいんだ」
「これって暴露じゃないの?」
「彼女はお使いで羽衣丸にはいない。問題ない」
「人払いをしっかりしておくとは、流石ケイト」
「後ろめたいんじゃいの?班長~」
ジト目で見つめるキリエを無視し、ナツオ班長は続ける。
「おほん。で、ハルカについてだが、最初の物語、略奪の海鷲では、お前たちと敵対する空賊として登場してきたな」
「まさか主人公が、いきなり悪役で登場してくるとはね……」
「まあ、これについては色々当時作者も悩んだらしい。マダムが雇った短期契約の用心棒とか、囚人飛行隊とか。紆余曲折あって、この設定に落ち着いたらしい」
「そうだったの?すんなり決まったんじゃないの?」
「そうそうすんなりいくか。まあ、最初に登場したときの彼女は、ウミワシ通商っていう空賊に属し、そこで飛行船を襲撃する係をやっていた」
「あのナカイとかいう社長が率いていた空賊?」
「そのとおり。比較的最近の、舞い踊る亡霊にも再登場したな」
「そもそもさ、なんでハルカは空賊に属していたの?」
「理由は単純。母親の入院費用、弟や妹の学費を稼ぐため。彼女は当時、故郷であるナガヤという町で自警団の手伝いや、ナガヤ飛行機製作所という会社の手伝いをして収入を得ていた。だが、それでも生活は苦しかった」
「自分だけじゃなくて、家族を養う必要があったんだね」
「そうだぞ。当時彼女は、腕がいいと評判だったみたいでな、その噂を聞きつけたナカイがナガヤで彼女に声をかけ、スカウトしたわけだ。最も、表向きは運び屋の会社で、彼女が空賊と知ったのは入ってからしばらくしてかららしい」
「質悪いね……」
「まあな」
「彼女でさえ、弱みに付け込まれて引き入れられた。空賊の勧誘には気を付けるべき」
「エンマは大丈夫だよね?」
「彼女は心配ない」
「さて、ただ解説するだけじゃあ面白くない。だから、いくつか裏設定のような問も用意したから、これに順番に応えていくぞ」
「……やっぱ暴露じゃん」
問1)彼女の二つ名の由来は?
「ハルカといえば、彼女の乗る蒼い翼の零戦もそうだが、二つ名があるな」
「電光石火のチカとか」
「疾風迅雷のキリエとか、みたいな」
「ハルカの二つ名は、蒼翼の悪魔」
「他にも、蒼き悪魔とか、単に悪魔、なんて言われることもあるな」
「でもさ、なんか悪趣味な二つ名だね~」
「そりゃあそうだ。なんせ、この二つ名をつけたのは、彼女の襲撃にあった被害者たちだ」
「そうなの?」
「それに、キリエやチカみたいな二つ名は、仲間内で勝手に読んでいる愛称みたいなものだ」
「それに対し、ハルカの場合は明確に被害者たちによるもの。その悪魔的な強さと、蒼く塗られた主翼が印象に残って、いつしかそう呼ばれることになった」
「運び屋の間では、蒼い翼の零戦に出会ったらあきらめろ。そう言われるほどだった」
「でも、なんで名前が入ってないの?」
「それは、パイロットがわからなかったからだ」
「へ?」
「蒼い翼の零戦に出会った用心棒たちは、ほぼ例外なく全員撃ち落されている。飛行船も。しかし彼女は撃墜されておらず、略奪は仲間が行い、上空警戒が終われば離脱していた。だから、どんなパイロットが乗っているかわからなかった」
「そっか。どんな人物かも、性別さえ誰も知らなかったから、機体の印象でつけたんだ」
「だが、本人は悪魔と呼ばれることを嫌っている」
「まあ、悪魔って二つ名聞いたとき、どんな見た目している人物かと思ったけど……」
「実際にはケイトたちと変わらない年だった。それに、少なくとも悪魔という言葉にいい印象はない」
「私も欲しい!電光石火じゃなく、もっと強そうな二つ名欲しい!」
「じゃあ私がつけてあげるよ」
キリエは、意地の悪そうな笑みを浮かべながら言う。
「じゃあさ、猪突猛進のチカってどう?」
「猪突猛進?」
「目標に向かって真っすぐ進んでいく様を表した、ユーハングの言葉」
「電光石火と変わらないじゃん!」
「わき目も振らず、真っすぐに空賊に向かっていくチカにはちょうどいいでしょ?」
「何だと!前しか見えてないような言い方して!?」
「違うの?」
「それはキリエもそうじゃん!むしろ、キリエの方がひどいじゃん!命令違反のキリエ!」
「私がいつ命令違反したっていうのさ!?」
「したじゃん!帰還命令無視して、32型追いかけて何度も!?」
「じゃあ、私がつけてやるよ。整備班殺しのチカとキリエってな」
突如トーンの低くなったナツオの声に、キリエとチカは体を震わせる。
「コトブキの中で、一番機体を傷めつけるわ穴あけるわ、その確率が高いのはお前たちだ!お前たちの荒っぽい機体の扱いのせいで、整備班は頭抱えているし、手間もかかるんだよ!」
「「ごめんなさい!」」
キリエとチカは頭を下げる。
「謝れつってんじゃねえ!改善しろって言ってんだ!直す気がガソリン一滴分でもあるなら、行動で示せ!」
「「はい!!」」
「……次にいこう」
問2)彼女が乗ってきた飛行機は?
「これまで彼女が乗ってきたのは、4機ある。赤とんぼ、97式戦闘機、隼1型、そして今の愛機、零戦52型丙だ」
「結構、乗っているんだね」
「彼女も隼に乗っていたのか」
「まあ、赤とんぼはだれしもが通る道だな」
イジツで飛行機乗りなら、赤とんぼの操縦経験がないものはほぼいないだろう。
「で、家族の生活費を稼ぐために、10歳をすぎたときに戦闘機に乗ることをきめた。最初に乗ったのは、家にあった九七式戦闘機だ」
「随分若い時から乗っているんだね」
キリエも若い時からトンボ便で飛行機に乗っていたが、戦闘機に乗ったのはコトブキのメンバーになってからだ。
「ああ。今も乗っているから、乗り始めから10年近くになるな」
「キャリア自体はレオナと変わらないんだね」
「まあ、実戦経験の多さで言うと、ハルカの方が多いだろうけどな……。故郷のナガヤで自警団の手伝いや輸送機の用心棒。ウミワシ通商の襲撃係など、空戦には事欠かなかっただろうからな……」
「九七式戦闘機の次は、私たちと同じ隼だったんだ」
「ああ、ある輸送任務の帰りに、3機の五式戦闘機を相手にしてな。相手は撃墜したんだが、被弾のダメージが大きくて。着陸時に着陸脚の片方が損傷。燃料に引火して、九七式戦闘機は失われている。それで乗り換えになった」
「……でも返り討ちにしたんだね?」
「ああ。そんで隼1型に乗り換えた。ナガヤ飛行機製作所が融通してくれたんだ」
「いいな~」
「日頃の感謝ってやつだ。だが、五式戦や紫電改などの高級機を使ってくる空賊相手に、これではまだ力不足だった」
「それって、ほんとに空賊?」
「ああ、空賊だ」
「でも、その話では確か執事風の男性が」
「空賊だ」
「あ、……はい」
「まあそんな中、彼女の祖父のタカヒトがイケスカに行くことになった。当時の彼女を心配した彼が、自分の愛機の分身。かつて息子と一緒に作った、零戦52型丙3機のうちの、最後の1機を彼女に託した」
「それが今の愛機なんだね」
「ちなみに、祖父が色々教え込んだようでな。ユーハング製の飛行機であれば、飛龍や銀河、一〇〇式輸送機や疾風等、ほとんどの機体は扱えるらしい」
「ほえ~、多用途だね」
「ねえ、1つ気になったんだけどさ」
「なんだ?」
「……もしもさ、ハルカが疾風や紫電改に乗ったら、どれくらい強いの?」
「……想像に難くないだろ?」
「まあ、零戦であれだけ強いんだからね」
「……手が付けられないレベルの化け物が誕生する可能性はある。見てみたい気もするが」
「ケイトの言う通り、ちょっと興味あるよね」
「だが、愛機がある以上、彼女は乗らねえよ」
「一途だね~」
問3)なぜマダムたちはハルカを共有することにしたのか?
「まあ。これはひとえに、ハルカを縛るためのマダムたちの作戦だな」
「縛るって、マダムたちにそんな趣味が?」
「それは、世間一般からすれば少し外れた少数派の趣味。彼女の雇い主が3人とも、そろいもそろってそのような趣味という可能性は低い。第一、ハルカの肌に縄の跡など見たことがない」
「ケイト、何真剣に解説しているんだ?物理的な意味じゃねえよ。マダムたちはそんな変態じぇねえ」
「でもさ、ユーリア議員は変態だっていうよ?」
「ものの例えだ……」
ナツオはため息を吐きだす。
「要するに、空賊から足を洗った彼女を敵にしなくていいように、3人で雇おうって考えたわけだ」
「ああ、彼女を自分達の手中に収めようって感じ?」
「まあ、そういうことだ」
「というか、彼女一人になんで?」
「それはお前たちがよくわかっているだろう?単機でコトブキの半数を落とすわ、ラハマ自警団も半数近い被害を受けるわ、仲間だったが裏切った空賊を一人で殲滅するわ、こんな奴野放しにできるか?」
「まあ……」
「そうだね」
「他の空賊や、マフィア。まして、自由博愛連合の残党の手にでも渡ったらどうなる?今は味方だからいいが、彼女が敵になったらどれだけ厄介か、わかるだろう?」
「あと、ハルカは賞金首でもあった。一人で荒野に放り出せば、命を狙われ殺されるか、追われ続けるか、刑務所に収監の上処刑の可能性が高い。そうならないために、彼女を賞金首から外すのに、3人の資産で被害都市の自警団を説得した」
「ああ、そのときにかかった費用を、今返済しているわけね」
「そんなお金踏み倒せばいいのに」
「ハルカはチカとは違うんだよ」
「何だと!」
「ようするに、他の勢力に渡すくらいなら、金払って配下に置いておいた方が、自分達にとって利益と判断したというわけだ。現に、ユーリア議員は空賊離脱者支援法の1つの例として彼女を使い。マダムは賠償金の請求、ホナミ議員は……、まあ身内の保護という目的があったわけだ」
「ホナミ議員だけ最近まで思惑がハッキリしなかったよね」
「ああ、理由が理由だからな」
「ハルカを使う順番とかは決まっているの?」
「いや、必要な時に呼ばれる。まあ、彼女を一番占有しているときが多いのは、マダムだがな」
「あれ、ユーリア議員じゃないの?」
「賠償金の請求を目的として、マダムが一番多い。おまけに、依頼が終わってもなにかしら理由をつけて、ラハマに留め置かれて、その後別の依頼をマダムに頼まれたりとか、な。そのせいで、いつ帰ってくるんだ、とハルカにユーリア議員から連絡がきたり、ハルカを早く返せって、マダムによく電話をしてくるんだ」
「ユーリア議員……、寂しいんだね」
「多分な」
「意外だったね、ああ見えて」
「ガドールの高飛車女なんて言われても、人肌が恋しくなるあたり、やっぱ人の子だな」
問4)彼女は空戦での格闘戦が苦手なの?
「お前たちはそう思うのか?」
「うん!」
「だって、ハルカが格闘戦やっているところなんて殆どみないし、零戦乗りなのに」
「確かに、彼女がよく使うのは、一撃離脱や、急降下を利用したダイブ&ズーム」
「まあ、イジツでは格闘戦をやりたがるパイロットが多いからな……。結論からいうと、苦手ってわけじゃない」
「そうなの?」
「なんせ、彼女は九七式戦闘機や隼1型に乗っていた時期があっただろ?苦手ってわけじゃない」
「でも、私たちといるときはやらないよね?」
「それは、52型丙に乗っているという点や、格闘戦挑むよりほかの戦法の方がそのときはよかったっていうのが理由だ」
「どういうこと?」
「52型丙は、軽快な運動性を誇った21型にくらべ、追加装備で重量は増加し、主翼の翼端の短縮で翼面荷重が増えている。エンジンが換装されてはいるが、重量が増加したことで運動性能は悪化し、旋回性能が下がった。その代わり、外板の厚さを見直すなどして、急降下性能は向上している」
「あ、だから格闘戦をあまりやらないんだ」
「そういうこと。重量が軽く身軽な相手に、52型丙が格闘戦挑むのは、少々不利だからな。それより、空賊に多く使われている零戦や隼相手なら、旋回戦をするより、相手がついてこられない速度で降下して引き離した方が、確実に後ろがとれる」
「そういうことか」
「でも、無論格闘戦はできる。相手や状況によって戦い方を変えて対応できるのが、彼女の強みと言えるかもな」
「でも、やっぱ空戦っていったら、くるくる回る旋回戦がいいよね~」
「よね~」
「格闘戦至上主義者がここにもいたか……」
問5)なぜユーリア護衛隊は彼女への制服支給に反対したのか?
「ガドール評議会所属の人って制服着ているよね?」
「そうだな」
「でも、ハルカだけいつもの服装だよね?」
「彼女が制服を着ていないのには理由がある。評議会に制式な隊員と認められていないのもあるが、一番大きな理由は護衛隊のパイロットや整備班の猛反発にあったからだ」
「なんで?」
「それは、彼女が護衛隊唯一の女性パイロットであること。そして、彼女がスタイルや肌が綺麗という点にある」
「どういうこと?」
「言ってしまえば、彼女のスカートから伸びる綺麗な足をじっくり眺めることができるし、あわよくばスカートの中がチラッと見えるかもしれない。彼女が普段着ている服装には、そういう期待感が持てる。これが、男性ばかりのユーリア護衛隊では一種の清涼剤になっているわけだ」
「……欲望に忠実だね」
「血に飢えた猛獣の檻に、小動物を放り込むようなもの……」
「この場合、どちらが猛獣なんだろうね……」
「まあな……。実際、ユーリア議員もそう思ったらしいが、政治家は使えるものは何でも使う。仕事はしっかりこなす、という条件つきで護衛隊の要望を受け入れたらしい」
「受け入れちゃったんだ……」
「で、ユーリア議員も居眠りしているハルカに何度かイタズラしたり、写真とったりしているわけ?」
「ああ。なんでも、格納庫とユーリア議員の部屋には、常にカメラが置かれていて、写真がいつでもとれるようにという備えをしてあるらしい」
「そこ備える必要、ある?」
「彼らにはあるんだろうな。噂では、ハルカに秘密で写真の取引が行われているようで、結構高値がつくらしい」
「ユーリア議員は認めているの?」
「仕事さえ真面目にすれば、黙認しているらしい」
「ハルカ、大丈夫かな」
「大丈夫だろう。直接手をだすわけじゃあるまいし」
「知らぬは本人ばかりなり……」
問6)彼女に友達はいるのか?
「結論からいうと、いない」
「きっぱりいうんだね……」
「事実は事実だ。それに仕方がない面もある。10歳頃から戦闘機に乗って働き始め、その後空賊になるなど、紆余曲折あった彼女に友人がいると思うか?」
「ああ……」
「言われてみれば」
「キリエもチカも、友達ってほとんどいないのではないか?」
「ケイト!?直球すぎ!」
「まあ、ある意味パンケーキ好きの同志っていう意味では、キリエが初めての友達かもな」
「あ、そっか!」
キリエはチカに勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「な、なんだよ!」
「私はコトブキ以外にもこうやって友達いるもんね~」
「ぐぬぬ……」
「でも、この間ハルカはチカとう~みの本の話をしていた」
「ふふ~ん。私もだもんね、キリエ」
「ぐぬぬ……」
「パイロットは明日の身の保障もされないからな。友達が沢山はいないのはある意味仕方がない。まあ、同じ飛行隊の人間を大事にすることが、重要かもな」
問7)意外によくない。実はキリエたちより視力が悪いハルカ
「え!」
「そうだったの!?」
「気づいてなかったのか?」
ケイトは、いまさら、とでもいうように首を傾げる。
「これはハルカの行動を見ればわかる。コトブキのメンバーは、遠くを見るときは裸眼で見るが、彼女は遠くを見るとき腰にぶら下げている双眼鏡を使っていることが多いだろう?」
「ああ……」
「言われてみれば」
「でも、彼女普通に空戦やっているじゃん?」
「空戦に不自由しない程度の視力はあるんだと。それに彼女が言っていたんだ」
「なんて?」
「空戦になれば、嫌でも敵が見えるから問題ない。それに、敵は見るだけでなく感じるもの、だそうだ」
「そうなの?」
「とりあえず、空戦に支障がないなら問題ない。それに、視力が悪いと言っても、それはザラやキリエたちに比べての話」
「飛行眼鏡を空戦でかけているのも、目を大事にしているからかな?」
「そういうことだろうな。ザラは視力がいいことは知っていると思うが、ハルカは逆だったわけだ。まあ、ユーハングには、パイロットとしての視力はいい方ではないが、真っ先に敵を見つけるのが得意だった撃墜王がいるくらいだし、支障がなければいいだろう」
「もし今より悪化しても、イジツには眼鏡をかけているパイロットもいる。問題ない」
問8)実は彼女も悩んでいる。キリエより低い身長。
「なんで比較対象が私!?」
「一番一緒にいる確率が高いからだろう?」
「あと、カロリー摂取の問題もある。ハルカもキリエ同様、パンケーキをよく食べる」
「でも、キリエほどえげつない量たべないよね~」
「えげつないってなんだ!?」
「あんだけパンケーキ食べていて、ハルカは背がキリエより低いんだね?」
「それでもチカよりは高いぞ」
「ぐっ!それじゃあ、食べた栄養はどこに行っているんだろうね?」
「キリエの場合は、最近お尻に行っている」
「ケイト!冷静に言わないで!」
「今更。ハルカの場合は、お尻だけでなく、足や胸にもいっている」
「ああ、それで背が伸びる方にはいっていないってわけか」
「というか、彼女悩んでいたんだね?」
「本人曰く、背が少し低いこと、お尻が大きいこと、足が太いことが気になっているらしい」
「ほほ~。贅沢な悩みを抱くもんだな~」
ナツオが額に青筋を浮かべる。
この話題は、早々に終わらせなければならない。
皆が直感した。
「でもさ、ハルカって結構細身なんだから、気にしなくてもいいのに」
「背が少し低いほうが、空戦における旋回戦に強くなる」
「そういえば、エンマと空戦やった際、旋回戦に持ち込んで、エンマが先に根負けしたよね」
「でも、あれ以外ハルカってあんまり旋回戦しないよね?」
「できないわけではないし、体が空戦に適しているのは好都合」
「まあ、幼い頃から空戦が日常で、体がそれに対応して成長したせいかもしれないな。気にすることないぞって、言ってやってくれ」
問9)意外な特技。地上での格闘戦で意外に強い?
「これ意外だったね」
「しかも、リリコさん倒しちゃうレベルなんて……」
キリエとチカは目を見開く。
「彼女は議員の用心棒。故に、彼女の仕事は、事務と荒事と空戦。できないと困る」
「でもさ、彼女どこで格闘術なんて教わったんだろう」
「彼女にこの手のことを教えたのは、彼女の祖父のタカヒトさんだ」
「ハルカのお爺ちゃん?」
「そうだ。どんな障害があっても、彼女が生きていけるように、と教え込んだものの1つだそうだ」
「色々教えたんだね」
「じゃあさ、もしハルカとレオナが取っ組み合いしたら、どっちが勝つのかな?」
「そうだな……」
「腕っぷしの強さではレオナが有利だが、格闘戦に慣れているという点で考えれば、最終的にはハルカが勝つ可能性が高い」
「そういえば、アレシマで銃口向けられたとき、臆せず相手を無力化したんだっけ?」
「ジョニーもあっという間にのしちゃったしね」
「まあ、ちゃんとした格闘術教わっている上に、場数を踏んでいる人間倒すのは、難しいわな」
「どうすれば勝てるかな?」
「スカートをめくり上げればいい。そうすれば、両手が一時的に使えなくなって隙ができる」
「ケイト、そんな手使ったら彼女余計怒らさない?」
「……わずかでも隙ができるのは、リリコさんとの戦闘で実証済み。それに、スカートで格闘戦する彼女が悪い」
「まあ、有事の際は仕方がないとはいえ、もう少し自分の格好を気にするべきだよな……」
ナツオの言葉に、皆が頷いた。
問10)スカートなのにガードが緩い?よく中を見られがち
「これは……」
「よくあるよね……」
「警戒心が薄い彼女も考えもの」
「言いたいことは同じだな。まあ、ハルカはザラよりスカート丈は長いが、それでもマリアやアンナの服装よりは短い。それで警戒心が薄いから、よく中を見られがちなわけだ。零戦の整備を手伝ってもらうときがあるんだが、まあ他の整備員たちの視線を気にしないもんだ」
「おまけに、それでリリコさんと格闘戦なんてやったりするから、ねえ」
「リリコさんと戦ったとき、その隙をつかれているしね」
「ちなみに、中は白ばかりの様子」
「ケイト、何で知っているの?」
「……観察の結果」
「……いつ観察しているの?」
ケイトはそっぽを向いた。
「でも、羞恥心がないわけじゃない。キリエに指摘されて恥ずかしがっている様子だったしな」
「彼女に羞恥心ってあったんだ」
「にしても、キリエはひどいよね~。いくら病院に行きたくなかったからって、自分を連れて行こうとするハルカを止めるためとはいえ、彼女のスカートをラハマの街中でめくりあげたりする?」
「だ、だって!あの時はああするしかなかったんだもん!病院に行きたくなかったし!」
「だからって、乙女の下着とお尻を衆人環視の中さらすなんて真似させる?ひどいよね~」
「それに、結局縄でぐるぐる巻きにされて、病院まで引きずられていったしな」
「ぐっ!」
「縄で縛られたキリエを見て、病院の看護師は仰天していた」
「うおっ!」
「ははは、縄でぐるぐる巻きにされて引きずられていくキリエ~。面白い写真だったよね~」
「ぐぬぬ、というかケイト!彼女のそんな様子をカメラで撮ったケイトも問題じゃないの?」
「あれはマダムとユーリア議員の依頼でやったこと」
「あの写真どうしたの?」
「マダムがユーリア議員と護衛隊に売った。結構な収入になったみたいで、ケイトにも報酬が来た」
「いくらもらったの?」
「……通常の依頼6つ分の額」
「すご!というか、そんなに儲かるなら、私もやろっかな」
「キリエ、盗撮はダメ」
「え!だって、ケイトだってやっているじゃん!?」
「あれは依頼でやったこと。だから、マダムとユーリア議員が揉み消せるが、個人でやればそうはいかない」
「何か今、聞いちゃいけない単語があったような……」
「……盗撮はいけない」
「ケイト、イジツにまだその概念は」
「……いけない」
「……はい」
妙に圧を込めて言うケイトに、キリエは頷くしかなかった。
「まあ、飛行機の腕は一流で、格闘戦も射撃もでき、知識豊富で一見隙がなさそうに見えるハルカの数少ない隙だよな、ここは……」
「ハルカにはズボンの方がいいんじゃないの?」
「それじゃあ、護衛隊の皆ががっかりしてやる気をなくすからダメだ」
「そんなに……」
「綺麗なものは眺めたいそうだ。ユーリア議員だって、彼女の太ももを枕に借りることが多いわけだし、それにあたって、ズボンよりもスカートの方がいいだろう?」
「そうなのかな……」
「それに、完璧超人よりも、こういう抜けたところがある方がとっつきやすいだろう?」
「ただ作者がそういうシーンを時々書きたいだけなんじゃないの?」
「そうだろうな」
「言っちゃっていいの?」
「今更だ」
問11)彼女はイジツの人間?それともユーハング?
「これ、今回の話で分かったことだよね……」
「ケイトは気づいていたの?」
「可能性として考えていた。ユーリア議員が聞いたという、彼女が話した未知の言語や、まだ知られていない遺産の情報を知っている可能性といえば、それしかない」
「まあ、長らく疑惑だったわけだが、今回のハリマへ行った話でようやく確定したな」
「結局さあ、ハルカはイジツの人間なの?それともユーハング?」
「ユーハングの血を引く、イジツの人間。というのが正確なところだろうな」
「要するに、彼女は立派にイジツの人間。ただし、ユーハングの血が混ざっている、ということ」
「祖父が2人ともユーハングなんだっけ?」
「彼女の祖父、タカヒトさんと、ハリマのカスガ議長は、ユーハングから来た人間だ。ユーハングにいた当時の飛行隊が、海軍第721航空隊。あの桜花の実戦運用部隊だったらしい」
「それで、カスガ議長は桜花のことを忌々しいって言ったんだね」
「そういうこと。そして戦局が悪くなるにつれ、2人とも機体に爆弾を取り付けて体当たりする特攻作戦に送られた。その最中、偶然開いた穴に飛び込み、この世界にやってきたということだ」
「彼女のルーツはユーハングか。ユーハングって聞くと、どこかおとぎ話みたいに思っていたけど……」
「身近に子孫がいるとなると、信じるしかないよね」
「そういうことだ。あと、ユーハングの子孫といえば、カスガ議長の娘さんの1人、ホナミ議員もそうなる」
「ハルカの叔母に当たる人だっけ?」
「ああ。だが、ユーハングの言語や遺産に関する情報を持っているから、ハルカの方が色んなものを受け継いでいるようだが」
「絶対、他の勢力に渡しちゃいけないね」
「そうだね」
「同意」