荒野のコトブキ飛行隊 ~ 蒼翼の軌跡 ~   作:魚鷹0822

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ユーリア議員にオウニ商会のマダム・ルゥルゥへ届け物を頼まれ、
ガドールを飛び立った彼女。
しかし、ラハマが見えてきたと思ったら、空賊が町を襲撃していた。


第3章 元空賊と空賊嫌い
第1話 ラハマへのお使い


 ラハマの飛行場を滑走し、速度を上げて離陸していく1機の蒼い翼の零戦。

 そのパイロットは、滑走路脇に並んで立つコトブキ飛行隊の面々に手を振っている。

 

 赤い髪を縛り、凛々しい顔つきの隊長レオナ。

 母性溢れる、優しい笑みを浮かべる副隊長ザラ。

 赤いコートを羽織る、パンケーキ好きの隊員キリエ。

 アノマロカリスのぬいぐるみ片手に、元気よく手をふるチカ。

 淡々と手を左右に、同じ角度の範囲で動かしているケイト。

 

 皆、それぞれ彼ららしく手を振り返している。

 そんな中、手を振り返していない人物が1人。

「いっちゃったね」

 零戦の姿が見えなくなると、名残惜しそうにキリエは言う。

「ああ。でも、またじきに会えるさ」

 レオナの言葉に、その人物は眉間に皺をよせる。

「マダムとユーリア議員、それとホナミとかいう議員の共有だっけ?」

「3人で1人を雇うなんて、随分引っ張りだこね彼女」

「でも、あれほどの腕前なら、それも納得」

 

 

―――納得できませんわ!

 

「じゃあ、マダムが呼んだら、ハルカ来るわけ?」

「そうだ」

「コトブキ飛行隊に、7人目かしら?」

「いずれはそうなってほしいな~。レオナ、彼女引き抜けないの?」

「無茶いうな。マダムだけならともかく、あと2人は気の強い政治家だ」

「マダムでさえ無理だったんだもの。レオナの交渉力じゃ、ちょっと難しいわよね~」

 レオナは少し残念そうに顔を曇らせる。

 実直な彼女にとって、騙し合いや駆け引きが必要な交渉は、苦手なものの1つだ。

「彼女がいれば、戦闘時に選べる選択肢が増える。こちらとしても、使えるものは使いたい」

 

 

―――不要ですわ!

 

 

「そっか~」

 キリエは少し残念そうにため息をつく。

 そんな彼女の肩に、レオナは腕を回す。

 

「それじゃあ、彼女が来たとき恥をかかなくて済むよう、これから訓練に入ろうか?キリエ」

 

「げっ!藪蛇だった!でも、私これから食べ歩きを~」

「食べ歩き?空戦訓練で腹をすかせてからの方が、パンケーキもおいしいと思うぞ」

「そ、それは……」

「では、皆行こうか?」

 レオナはキリエを引きずっていく。

「いやああ!先にパンケーキを、パンケーキを食べさせて!」

 皆がレオナについて歩いていく中、ハルカが飛び去った方向を見続ける女性が1人。

 親の仇でも見るかのように、憎しみや敵意を込めた視線で、彼女は空をにらみつける。

 

「認めませんわ。コトブキ飛行隊に、空賊を迎え入れるなんて……」

 

 綺麗にセットされた金色の髪に、貴族を思わせる優美な服装。コトブキ飛行隊の1人、エンマは叫んだ。

 

 

「絶対……、認めませんわああああああああああああ!」

 

 

 今となっては、彼女の家は没落貴族。

 ちなみに、家の財産を奪っていった悪党や空賊が、大嫌いである。

 

 

 

 

 

 

「マダムへお届け物?」

 ガドール評議会の議員の1人、ユーリアに呼び出された用心棒の女性、ハルカは要件を聞かされる。

 内容はラハマのオウニ商会、マダム・ルゥルゥへの届け物。

 要するにお使いである。

 イジツには飛行機を使った郵便配達員が存在しているものの、政治家は急用であったり、あるいは機密性の高いものを運ぶ際は身近なパイロットを使う場合が多い。

 ユーリアが彼女に直接頼むというからには、機密性の高いものなのかもしれない。

「わかりました、すぐに向かいます」

「お願いね。あ、念のために3~4日分の着替えを入れて荷造りしなさい」

 彼女は首を傾げた。

「なんで、ですか?」

 ガドールからラハマまで飛行船で片道約2日。戦闘機を飛ばせば1日で往復できる。

 どう考えても、そんなに荷物はいらない。

「念のため、よ。悪天候で飛べなかったり、撃墜された場合でも死なないように、ね」

「は、はあ……。わかりました」

「それと、私に定期的に連絡はすること!」

 最近、彼女はユーリアから直通の無線機を渡され、携帯するよう命じられている。

 少々心配しすぎなのではと思うも、口でユーリアにかなうはずもないし、先日の1時間も約束の時間に遅れたことが尾を引いているのだろう。

 やむなく彼女は黙る。

 ユーリアは事務机の引き出しを開けると、茶色い封筒を1つ取り出した。

「じゃあ、お願いね」

「承知しました」

 封筒を受け取った彼女は、さっそく出発の準備を始めるべく自室へ向かおうとする。

「ちょっと待ちなさい」

 と思ったら、首根っこを掴まれたたらを踏む。

「あの、ユーリア議員?いい加減首根っこをつかむのはやめてもらえませんか?結構首が苦しくて」

 次の瞬間、首の付け根左側に痛みが走った。

「痛っ!」

 首と目を動かせば、ユーリア議員の顔がそこにあった。物語上の存在、ユーハングでいうところの吸血鬼が血を吸うように、首筋を噛まれていた。

「あの、議員?ちょっと、なにを……」

 次第に歯が食い込んで来て……。

 

「みゃあああああああああああああああああああ!」

 

 ユーリアの部屋に、彼女の悲鳴が響き渡った。

 

 

 

「これでよし」

 

「何がよし、ですか……」

 

 乱れたシャツを直しつつ、彼女は恨み言を言う。濡らしたハンカチで口紅は落としたものの、おかげで首筋には歯型がぱっちりとついている。

「それと、コトブキと仕事する際は気を付けなさい」

 ユーリアは鼻先が触れそうなほど顔を近づけてくる。

「ルゥルゥの色に染まる必要はないからね」

「わ、わかりました。気を付けますから……」

 心配性の議員の視線を背中に感じながら、彼女は封筒を手に、半ば荷物置き場と化している自室に向かった。

 

 

 

「班長~」

 準備を終え、護衛隊の隊長と副隊長兄弟にお使いの件を伝えた彼女は、格納庫へやってきた。

「よう、嬢ちゃん!準備できてるぞ!」

 整備班長の張りのある声が、格納庫に木霊する。

「にしても、増槽なんてつけてどこまで行くんだ?」

 彼女の愛機、零戦52型丙の機体下面には、いつもはつけていない増槽が取り付けられている。

「ちょっとラハマまで。議員のお使いです」

 彼女は主翼に上がり、風防をあけると操縦席の後ろに荷物をのせる。

「じゃあ、数日帰らねえのか?寂しくなるねえ……」

 本当に寂しそうに表情を曇らせる整備班長に、ハルカはクスクスと笑う。

「そんなに寂しがらなくても、数日のことですから」

「……嬢ちゃんがいなくなると、またこの格納庫がむさくるしくなっちまう……」

 班長は顔を上げて、主翼の上にいる彼女に視線を向ける。

「大げさですね、班長」

 彼女は操縦席付近の胴体左側にある足掛けを引っ張り出し、足をのせて操縦席左側の壁をまたいで座席へと入った。

 

 そのとき、整備班長は見た。

 

 彼女のスカートの中の、白いものを。

 

 足掛けをひっこめると、彼女は計器を確認する。

「班長、イナーシャお願いできますか?」

 班長は頭を左右に振って邪念を即座に追い出す。

「あ、ああ!まかせろ!」

 いつもの手順でエンジン右側からイナーシャを回し、慣性始動を始める。

「点火!」

 ハルカがエンジンを始動させる。推力式単排気管が排気を順に吹き出し、プロペラが回転速度を増していく。

「おお、今日も快調だな!」

 動翼の作動を確認。エンジンの回転数、プロペラピッチの切り替え、問題なし。

 彼女は手をふって車輪止めを外させる。

 そして整備班の誘導に従い、機体を格納庫の外へ出す。

 滑走路に到着すると機体を加速させ、目的地に向かって飛び立っていった。

 

 

 

「ああ、寂しくなるな……」

 ハルカの零戦が飛び立っていくのを見送った整備班長は、項垂れている。

「しばらくの辛抱ですよ、班長」

 彼の部下が慰めてくれる。

「といっても、無理でしょうが。班長あの子のこと、可愛がってますもんね。孫みたいに」

 からかうように笑う部下を、班長はジト目で見つめ返す。

「なにいってんだ。てめえらこそユーリア議員に掛け合って、嬢ちゃんに護衛隊の制服を支給する話を撤回させたくせに」

 すると部下たちは口角を上げ、笑みを浮かべる。

 

「だって、きれいなものは眺めたいでしょ?」

 

 この整備班、大丈夫だろうか。

「ところで、班長」

 部下の1人が、班長に顔を寄せる。

 

「見たんですよね?」

 

「……何をだ?」

「嬢ちゃんの、ねえ」

 それがなんであるか、皆わかっている。

 始動準備をする前の彼女と班長との位置関係を見れば。

「仮に見ていても、いうものかよ」

 班長はスパナ片手に他の機体の整備に向かう。

「あ、班長!教えてくれてもいいじゃないっすか!」

「独り占めはずるいっす!」

「アレシマのときも見ておいて!」

 部下の整備員たちが口々に言う。

 さきのアレシマの一件で、制圧されていた格納庫から武装集団を排除した際、彼女はスカートを履いていることなどお構いなしに、格納庫の2階、キャットウォークから飛び降りていた。

 緊急時とはいえ、ついつい目が行ってしまうのはやむを得ない。

 だが、当人がいない間にこんな話をしていることが彼女に知られれば、どんな冷たい視線を向けられるか……。

 彼女を可愛がっている整備班長にとっては、それは耐えられない。

「やかましい!さっさと仕事にもどるぞ!」

 知らぬは、本人ばかりなり。

 部下の不平不満を流しつつ、班長は仕事に戻っていった。

 

 

 

 

 

「航路はそのまま、昼過ぎにはつけそうかな」

 操縦桿を太ももに挟み、コンパスを手に地図とにらめっこしながら、ハルカはラハマへ向かう。

 空賊に見つかりにくいよう雲の間を抜けるように飛んでいるが、周囲の風景が確認しにくい。

 もっとも、高度を下げても、見えるのはどこまでも果てしなく続く荒野しかないが。

 保存のきくパイロット用の戦闘糧食をかじりながら、彼女は視界のいい風防から周囲を見渡す。

 そのまま操縦桿を太ももで倒し、機体を180度ロールさせて下方を警戒。機影が見えないことを確認して水平飛行に戻る。

 飛行船と違い、戦闘機にはレーダーがない。信じられるのは、自身の目と危機を察知する感覚だけ。

 緊張の糸を張ったままの飛行というのは結構疲れるもので、彼女は本日何度目か数えきれないあくびをする。

「……さっさと終えて帰ろう」

 そして飛ぶことしばし、荒野の中に建物の集まりが見えてきた。そして町に隣接する、岩塩が採掘される山も。

「ラハマに到着っと……、ん?」

 ラハマの管制塔に連絡しようと思ったとき、その近くでなにか鳥が飛びまわっているのが目に入る。

 彼女は双眼鏡を取り出し、風防から身を少し乗り出してみる。

「……あれは!?」

 ラハマ自警団の九七式戦闘機。それが戦っているのは、派手な塗装の雷電2機と零戦21型4機。

「空賊……。こんなところにまで」

 九七式が1機、また1機落ちていく。21型はまだしも、速度で上回る雷電を九七戦で相手にするのは難しい。

 彼女は双眼鏡をしまうと座席に座り、ベルトをして風防を閉める。

「増槽投棄!」

 レバーを操作し、増槽を切り離す。

「エンジン出力増、プロペラピッチ低に固定……。戦闘速度!」

 彼女は空戦地帯へと、速度を上げ突き進んでいった。

 

 

「くそっ!」

 ラハマ自警団長は背後を振り返る。

 背後には、赤く塗られた雷電がずっとくっついたままだ。

「対空機銃、支援を!」

 地上から機銃弾が飛来する。だが、雷電は高度をあげて回避してしまう。

 さっきからこの繰り返し。速度で追いつけない以上接近してきたときに格闘戦に持ち込むしかないが、相手はそれをわかっているのか、少し銃撃したら高度を上げて離脱していってしまう。

 高度を上げられては、対空機銃も届かない。

「このままでは……」

 じわり、じわりと味方が落とされていく。

 また雷電が高度を下げ、自警団長の機体の背後を目指してくる。

 そのとき、雷電の背後から飛来した機銃弾があたり、火を噴きながら落ちていく。

 そして自警団長の九七戦の真横を、青色と灰色で塗られた飛行機が高速で駆け抜けていった。

「……あれは」

 

 奇襲で雷電を1機撃墜。降下の速度を殺さず、赤く塗られた零戦21型の背後につき、13.2mm機銃を発砲。主翼付け根に命中して出火。撃墜。

 背後についた21型3機が、一斉に機銃を放ってくる。機首を下げて急降下。

 背後の21型が機首を上げた瞬間上昇に転じ、背後から銃撃を浴びせ撃墜。

 下方から、雷電1機が上昇してくる。彼女もスロットルレバーを開き、高度を上げる。

 そしてタイミングを見計らい、フットペダルを蹴りこんで失速。

 雷電に追い越させ、後方から3丁の機銃を一斉に放ち、2機目を撃墜。

 空賊の機体は、荒野へと落ちていった。

 

 

 

「いや~助かった。ありがとう」

 地面に降りたハルカは、先に着陸していた自警団長に手をしっかりつかまれ、握手をされていた。

「先日の、罪滅ぼしみたいなものです」

「……あのとき、君はラハマを守ってくれた。それでチャラだ。もう気にする必要はないんだぞ」

「……はい」

 自警団長の優しい言葉が心にしみる。

 でも、それに甘えていてはいけない。自身の犯した罪を、少しでも清算しなければ。

「ところで、今日はラハマへ何の用で来たんだ?」

 彼女は当初の目的を言う。

「マダム・ルゥルゥに、お届け物を持って来たんです」

「マダムへ?」

 自警団長は口に手をあて、何か考えるしぐさをする。

 そして、驚きの言葉を言い放った。

 

「マダムなら今朝、羽衣丸に乗ってラハマを出発してしまったぞ?」

 

 数秒ほど、彼女は沈黙した。

「……へ?」

 

 

 ラハマのオウニ商会の事務所に言ったが、鍵がかかっていて人がいる気配がない。

 ご丁寧に貼り紙までしてあり、マダム・ルゥルゥは不在だという旨が記されていた。

 

「そんな~」

 

 思わぬ事態に、彼女は頭を抱える。ガドールからやってきたというのに、無駄足だったとでもいうのか。

 ここにユーリア議員がいたら、間違いなく詰め寄っていたことだろう。

 でもユーリア議員からの届け物。それも郵便の飛行隊を使わず、自身が雇ったパイロットに頼んだのだから大事なものに違いない。

 こうなったら、空賊時代に磨いた勘を頼りに羽衣丸を見つけるしかない。

「自警団長、マダム・ルゥルゥがどこにむかったか、ご存知ありませんか?」

「ちょっと待っていてくれ」

 通常、輸送船は行き先と積み荷を所属する町に必ず伝えていく。

 もっとも、空賊に狙われる危険性や情報保護の観点から、あくまで最低限のことしかわからない。

「行き先はショウト。積み荷は、医薬品。悪い、これ以上のことは教えられないんだ」

「分かりました。ありがとうございます」

 彼女は自警団長一礼すると愛機に向かった。

 自警団長の厚意で燃料を分けてもらい、さらに弾薬と増槽を調達した彼女は、手慣れた手つきで補給と点検を終えると、地図を広げた。

「目的地はショウト、物資は医薬品……」

 その2つの言葉をヒントに、彼女はルートを推察する。

 まず、目的地がショウトであるというだけでは、航路はいくらでもある。

 だが、2つめの言葉である程度絞ることができる。

「医薬品が調達できる町は……」

 ラハマには、医薬品の製造を行っている会社はない。ならば、ラハマを出航した時点では積み荷はないはず。恐らくどこかで積み込みを行い、その上でショウトへ向かうのだろう。

 通常、輸送船は出発時に荷物を積んでいくのが普通だが、オウニ商会のようにご指名での依頼は積み荷を途中で積むことも珍しくない。

 空賊時代、彼女は何隻もの輸送船を襲撃しては積み荷を奪う手伝いをしていた。

 その際、場所は慎重に選び、必ず積み荷を積載しているに違いない場所で待ち構えていた。

「となると……、ここを経由するはず」

 彼女は、ショウトとラハマを結ぶ線より、少し外れた場所にある町をさした。

 町の名は、ヤクシ。

 イジツで屈指の、医薬品の生産拠点になっている町で、輸送船の行き来が活発な場所だ。

 だが、医薬品を奪いに空賊がくることも多く、周辺には根城がいくつもある。

「その中でラハマと最短距離で結びつつも、比較的安全な航路は……」

 最短ルートには空賊の根城がいくつかある。だがオウニ商会には、イケスカ動乱で名をはせた凄腕飛行隊、コトブキ飛行隊がいる。

 ならば、大回りする安全なルートよりも、多少危険でも距離が近い航路を選ぶはず。

「大体検討はついたかな」

 彼女は地図に捜索ルートを書き込むと、愛機の最終点検を急いですませ、ラハマを飛び立った。

 

 

 

「リリコさーん!パンケーキおかわり!」

 元気な声で本日何度目かのパンケーキのおかわりを要求するのは、赤いコートを着た女性。コトブキ飛行隊の疾風迅雷こと、キリエである。

彼女は大好物のパンケーキが乗っていた皿を、ウエイトレスのリリコへとテーブルの上を滑らせて渡す。

彼女たちがいるのは、羽衣丸内にある酒場兼食事処、ジョニーズ・サルーン。

戦闘の緊張から解放され、好きなものを食べることで幸福な時を過ごせる憩いの場。

「毎日そんなに食べて、よく飽きませんことね」

 キリエの食欲に驚き半分、あきれ半分の反応を示すのは、貴族風の格好をしたお嬢様風の女性。コトブキ飛行隊のエンマ。

「だって、ヤクシの町まで積み荷ないんでしょ?だったら空賊に狙われる心配ないんだし、今のうちに食べておくのが一番だって!」

「空賊は、そんなことお構いなしにやってくるんだぞ」

「まあ、社会のダニどもは見境のないこと」

「パンケーキでございます」

「リリコさん、パンケーキ焼くのはやーい!」

 謎の多いウエイトレス、リリコによって運ばれてきたパンケーキに、キリエは素早くナイフとフォークを入れる。

「うんまーい!」

 パンケーキでこの上なく幸福な顔をするキリエを、コトブキのメンバーはあきれ顔で見つめる。

「よくそれだけパンケーキを食べられるものね」

「全くだ」

 驚きの表情を浮かべる副隊長のザラ、同意を示す赤髪の女性、隊長のレオナ。

「キリエはパンケーキばかり、カロリー摂取量が多すぎる。野菜を間に挟むべき」

 冷静に助言をくれるのは、同じくメンバーのケイト。

「キリエ~、太るぞ~」

 冷やかすのは、最年少のチカである。

 

 

「うっさいバカチ!好きなものを、好きな時に、好きなだけ食べられることこそが、一番幸せな時なんだよ!」

 

 

「そうやって欲望のままパンケーキばっかり食べているから、最近お尻が大きくなってきているんじゃないの?」

 

 

 キリエは、思わずお尻を両手で押さえた。

「な、なんでそのことを……」

「そんな高カロリーなパンケーキ食べていれば当然だって」

「ぐぬぬ……。カロリーを気にして、パンケーキが食べられるか!」

「あ、キリエってば開き直った!」

 チカと言い合いをしながら、ふとキリエは思う。パンケーキ好きの同志の彼女なら、きっと理解してくれるのではないか、と。

 そのときだった。

 ジョニーズ・サルーンに、襲撃を知らせる警報が鳴り響き、彼らの憩いの時間の終わりを知らせた。

 

 

 




不定期更新になりますが、第3章始まります。

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