荒野のコトブキ飛行隊 ~ 蒼翼の軌跡 ~   作:魚鷹0822

63 / 116
空賊らしき襲撃者をなんとか撃退できたユーリア護衛隊。
ユーリアは護衛隊とカナリア自警団を連れ、敵の新兵器と
思われるものの調査を行う。
その物体を見た彼女は、記憶の奥底から忘れていた、
祖父の言葉を思い出す。



第4話 存在してはいけなかったもの

「ハルカ君!」

 隊長は叫んでいた。

 白い物体の破壊には成功したものの、大きな爆発が起こり、煙が彼女の機体を包み込んだ。

 今すぐにでも彼女の安否を確認したいところだが、彼女が無事に出てきた直後に衝突しかねないため、距離を保ったまま状況を見る。

『お兄ちゃん、空賊が引いていく』

 弟の言う通り風防から見渡すと、空賊と思われる護衛機が撤退していくのが目に入る。

 直後、煙から彼女の零戦が姿を表した。

 隊長はすぐさま彼女の零戦に自身の鍾馗を近づける。

 彼女は耳を指さして、両腕を交差させてバツ印を作っている。無線が故障して聞こえないのだろう。

 隊長は手招きする仕草をして、滑走路を指さし、ついてくるよう指示する。

 彼女は了承したのか、翼を上下に振って合図をした。

 そして、彼らは滑走路へと進路を向けた。

 

 

 

 

 滑走路に無事降り立つと、ハルカは風防を開け大きく息を吐き出した。

「嬢ちゃん!」

 顔を跳ね上げると、操縦席を覗き込む整備班長の姿があった。

 額に汗が滲み、焦った顔をしている。

「あ、班長。レイのチェックを」

「嬢ちゃんは無事なのか!?」

「ええ……、無事ですけど」

 彼女は淡々と、それがどうかしたの、みたいな口調で言い放った。

「本当なのか!?」

「心配しすぎですよ、班長。それより」

「てめえら!機体の整備は任せる!嬢ちゃんは飛行船にいる医者のところへいくぞ!」

 いうなり、班長は彼女の手を引っ張ってひきずっていこうとする。

「ちょ、心配しすぎですよ!班長!」

 いっても班長は聞いてくれない。

 議員の乗る飛行船には、体調を崩したときや護衛隊員が負傷した場合を考えて医者が乗っている。

「私は大丈夫ですから、そんな大げさに考えなくても」

「嬢ちゃんの大丈夫は信用ならねえ!ナガヤの件で、わしらがどれだけ心配したと思っている!」

 ナガヤで1人無茶な戦いをして不時着。殺されそうになった件は、コトブキ飛行隊だけでなく、ユーリア議員、護衛隊、整備員にまである種のトラウマを植え付けることになってしまった。

 その影響か、彼女が大丈夫と必死に主張してもまず聞き入れてもらえない。

 自業自得なのであるが。

 その後、業を煮やした班長はハルカを米俵を担ぐように肩に抱え上げ、飛行船に向かって全力疾走していったのだった。

 

 

 

 

「班長、心配していたのだな」

「そりゃあそうっすよ。班長、あの子のこと可愛がってますから」

 そんな様子を見送る護衛隊と整備員たち。

「そんじゃ、機体の整備を始めるぞ!」

 整備員たちは工具片手に零戦や鍾馗の整備に取り掛かっていく。

「みんな、お疲れ様」

 護衛隊員たちは声に振り返った。

 声の方向には、アコとシノに護衛されたユーリア議員が立っていた。

「ユーリア議員、ご無事でしたか」

「あの程度でくたばってなるものですか」

 平常運転のユーリア議員に皆は苦笑すると同時にほっとする。

 彼女はふと周囲を見渡した。

「ハルカの姿が見えないけど?」

「あ~。彼女は爆発に巻き込まれたので、念のためと整備班長に飛行船の医務室に連れていかれました」

「そう……」

 すると、護衛隊員たちは背筋を震わせた。

 ユーリア議員の背後から、何か禍々しい殺意のオーラのようなものを感じたからだ。

「あの子、また1人危険なことに足を突っ込んで……」

 額に青筋が立っているユーリア議員を見て、その場の誰もが悟った。

 間違いなく議員は怒っている、と。

「まあそのことはあとでいいわ。それより……」

 表情を引き締めたユーリアは隊長に問いかけた。

「隊長、何やら今回の相手は見たことないものを使ってきたみたいだけど?」

「はい。白い爆弾のようなものを、一式陸攻が抱えていたのを全員が見ています。陸攻から切り離されたそれは、自身で飛行しイヅルマの建物にぶつかり爆発したんです」

「爆弾が自分で飛行を?確かなの?」

「間違いありません」

 ユーリアは顎に手をあて、何やら考え事をしている。

「アコ団長」

「はい、なんでしょう!?」

「……車を用意できる?現場を見てみたいわ」

 全員が目を見開いた。

「で、ですが議員。もし議員の身に何かあったら……」

「あなたたちも同行して頂戴。それとも、この状況を放置するつもり?」

 本来なら、危険な現場に議員を連れていくなど論外だが、この人は一度行ったら引かない。

「……わかりました」

 アコは無線で要件を伝える。

「よろしいのですか?」

「この状況は放っておけないわ。もし連中がただの空賊じゃないなら、もし自由博愛連合の残党というなら、早く手を撃たないと大変なことになる。今は少しでも多くの情報がいる。安全な場所で待っている場合じゃないわ」

「……わかりました」

 その後、アコの手配したトラックなどに乗り、ユーリアは隊長と副隊長を連れ、陸攻の墜落地点や被害にあった場所へと向かった。

 

 

 

 

「よかったな、何もなくて」

「だから、大丈夫って」

 飛行船のタラップから下りつつ、整備班長はハルカの頭をわしゃわしゃと撫でる。

 飛行船に同乗してきた医師に診てもらった結果、ハルカは外傷はないと診断された。

「何言ってやがる。ナガヤの件で嬢ちゃんが殺されそうになったとき、目を覚ますまでの間、みんながどれだけ心配したと思ってやがんだ」

「……ごめんなさい」

  あの一件は、本当に周囲を心配させたのだと、彼女は痛感する。

「そう思うなら、わが身を省みない行動は慎むことだ。誰もそんなこと望んでねえんだから」

「……はい」

 心当たりが多いだけに、彼女は言い返せない。

「嬢ちゃんが眠っていた間、護衛隊の空間がどれだけ息苦しくてぎすぎすしていたか、わかるか?」

「そんな大げさな……」

「大げさなんかじゃねえ。中には一日中項垂れていたやつもいるくらいだ。嬢ちゃんが俺たちにとってどれだけ大事か、わかるか?」

 人によっては、大事な清涼剤、という文言が入りそうだが。

「申し訳、ありませんでした」

「じゃあ、もう少し周りを頼るこったな」

「ひゃっ!」

 ふと、班長の右手が、ハルカのお尻をポンと軽くたたいた。不意を突かれた彼女は小さな悲鳴をあげる。

「今回の陸攻は全て嬢ちゃんが落としたみたいだが、護衛隊の奴らが良くぼやいているぞ。嬢ちゃんが自分達をたよってくれないって」

 それは悪い癖だとユーリア議員からも散々言われているのだが、なかなか長年空賊生活で染みついた癖は抜けるものではなかった。

「嬢ちゃんに助けられてばかりじゃ、俺たちも納得がいかない。ちょっとしたことでもいい。少しは甘えたらどうだ?」

「甘えるって……」

 こういう遠慮のない接し方は、オウニ商会のナツオ班長と同じく、ハルカにはありがたかったが、彼女には甘え方がわからなかった。

「そうだな、たとえば……」

 瞬間、班長はその場から飛びのいた。

 目を丸くするハルカの前、さきほど班長がいた場所に大きめのスパナが飛んできて、地面のコンクリートをえぐった。

「……は?」

 班長は工具の飛んできた方向に視線を向ける。

「申し訳ありません、班長。手が滑ってしまいまして~」

「おう、そうかそうか。手が滑ったか~」

 明らかに棒読みでいうのは、ユーリア護衛隊の整備員たちだった。

 全員が、明らかに口元は笑っていても、視線だけは殺気を班長に送っていた。

「手が滑ったんじゃ、しゃ~ね~な~」

 首を傾げるハルカをよそに、班長は悟っていた。さっき嬢ちゃんもとい、ハルカのデリケートな部分を触った瞬間を目撃されたのであろうことを。

 その報復でスパナを投げつけてきたのであろうと。

「あ、班長。ユーリア議員から伝言です!」

 班長の部下が、小さな紙切れを渡してきた。

「ユーリア議員が嬢ちゃんをつれて、急いで爆発のあった場所に来て欲しい、と」

「わかった。嬢ちゃん、いくぞ」

 そばにあった車のエンジンをかけ、助手席に彼女を乗せ、2人は目的地に急いだ。

 

 

 

 

 

「何かしら、これ」

 イヅルマで被害を受けた場所を含め、ユーリアたちは一式陸攻が落ちた場所を順番に回っていた。

 目的はイヅルマに被害を与えた、敵の新兵器と思われるあの白色の物体。

 だが、無事な現物は見つからなかった。

 イヅルマに向かって放たれた1個は、原型をとどめることなくバラバラになってしまった。なので、他の一式陸攻が吊り下げていたものが無事じゃないかと皆は考えた。

 だがその結果も芳しくなかった。

その白い物体は、一式陸攻の胴体下に吊り下げられていた。

 その陸攻をハルカが攻撃した際、その白い物体ごと機体を貫通したものや、切り離した後に彼女が破壊したものは原型をとどめていない。

 そんな中で幸い、比較的破損が少ないものが1個だけあった。

 その1個をユーリアと護衛隊、カナリア自警団の面々が眺めている。

 イヅルマの一角に大きな爆発を起こした件から、無論先端の炸薬と思われる部分は外してある。

 だが、その特異な姿に皆が首を傾げている。

「見たことない飛行機ですね」

「これ、飛行機なんでしょうか?」

「初めて見る形ね」

 彼らの前にあるのは、飛行機のような細長い胴体、人が1人入れるかどうかの狭い座席、そして飛行機というにはいささか短い主翼に、双垂直尾翼。

 何より、その飛行機にはプロペラがなく、機首は爆弾のように丸い形状をしている。

「どうやって飛んでいたのかしら?」

「確か、後部から何か炎のようなものを噴射していましたので、ロケットエンジンかもしれません」

 イジツで使われている飛行機は、殆どがプロペラがある。

 かつてイケスカ動乱で目撃された、イサオが乗っていた震電にもプロペラがなかったとされているが、あの震電のエンジンについては動乱後におこなわれた調査でも結局わからず、それを除けばほとんどない。

 護衛隊隊長のいうように、レシプロエンジン以外にロケットエンジンもないわけではないが、燃焼時間が短いゆえに長い距離を飛ぶには不向きで、都市間の移動が不可能とされているため、かつて富嶽迎撃戦においてコトブキ飛行隊が使用した、又は穴に羽衣丸を突っ込ませたときのように短時間の加速に用いられるのが精々だ。

 なので、ロケットエンジンのみを搭載した飛行機など、都市間の距離が長いイジツではそもそも存在する意味がない。

 それに、この機体の操縦席より前は殆どが炸薬で占められていた。

 これでは、飛行機というより爆弾だ。

 だが、爆弾なら目標上空で投下するはず。何より、座席のある飛行機自体を爆弾にするとは、パイロットはどうなる。

 どうも要領を得ない物体に彼らは頭を悩ませている。

 ふと、現場に1台の車が到着した。

 

 

 

 

 班長がブレーキを踏み、目的の場所へ到着するとエンジンを切り、車から降りた。

 それに続いて、ハルカも車から下りる。

 イヅルマから離れた荒野で撃墜した一式陸攻の残骸が転がる中、ユーリア議員たちが注目しているのは、陸攻が抱えていた謎の白い物体。

 間近で見ると、それは飛行機というにはあまりに小さな胴体に翼。

「班長、これが何かわかるかしら?」

 班長は、首をひねって唸る。

「さあな……。わしも見るのは初めてだ」

「長生きの班長でもしらないとは……」

「なら、相手の新兵器かしら?」

「相手?」

「……イサオのお友達の生き残りよ。ただの空賊が、こんなものや陸攻を持っているわけないでしょう?」

 ユーリア議員のいうことは、恐らく当たっている。

 ただの空賊が陸攻など保有することはできないし、ましてこんな見たことないものを持っているはずもない。

 空賊の目的は、あくまで略奪。

 そう考えれば、飛行船産業という空賊にとってはうまみが少ない町を襲う理由など、普通の空賊にはない。

 だが、自由博愛連合にもうまみは少ない。戦闘機技術ならまだしも、飛行船は彼らにもうまみは少ないように見える。

 そう考えると、これが新兵器だというならば彼らがこのイヅルマを襲った理由はなにか。

 ユーリア議員の抹殺が目的なのか。

 どこから議員の所在についての情報が漏れたのかは気になるが。

 だが、本当にそれだけだろうか?

 ユーリア議員1人を殺すのに、陸攻を6機、それも新兵器まで投入となると、ちょっと過剰にも思える。

 それとも、彼らが欲する何かがこのイヅルマにある、ということだろうか。

「ハ~ルカ~」

 ふと意識が現実に引き戻され、彼女は顔を上げる。

「何しているの?あなたも来なさい」

「……はい!」

 ハルカは呼ばれ、議員のもとへと歩き出す。

 そして、あの白い物体の残骸が視界に入った。

 

 

 白く塗られ飛行機にしては細い胴体、短い主翼に双垂直尾翼、機首内部に詰め込まれた大量の炸薬、狭い操縦席。

 そして、それに推力を与えるロケットエンジン。

 

 

 そのときだった。

 

 

 その物体の詳細が良く見えて、少し心臓の鼓動が激しさを増す。

 さっき撃墜したときは無我夢中で気づかなかった。

 彼女は胸のあたりを押さえた。

思い出した。

 これが何であるか、何の目的で作られたのかを。

 脳の奥底から、昔の記憶が浮上してくる。

 

 

 

 

『お爺ちゃん』

 あれは、祖父のタカヒトお爺ちゃんの部屋で、本を読んでいたときのこと。

 本棚の一角に、古びた紙の束を見つけた。

好奇心で中を覗いて、彼女は首をひねった。

『どうした?』

『この飛行機、プロペラがないよ?』

 そこには細い胴体に、小さな翼が取り付けられた飛行機のようなものが描かれていた。

 だが違和感を抱いたのは、飛行機ならあるはずのプロペラがなかったからだ。

 それを見た祖父は、表情を曇らせた。

『それはな、飛行機じゃないんだ』

『え、でも翼があるよ?』

『それは、飛ぶための翼じゃないんだ』

 どうも要領を得ず、ハルカは首をひねる。

『じゃあ、これはなんなの?』

 すると、祖父は悲しそうな顔で言った。

 

 

 

『これはな、存在してはいけなかったもの(・・・・・・・・・・・・・)なんだ』

 

 

 

 彼女は再び紙に視線を落とす。設計図のようなものには、沢山の線が引かれている。

 他の紙を見ると、文字が一杯書かれている。

 イジツで使われているものとは、少し違う文字。

 でも、彼女はその文字を読むことができた。

 その場でそのページに書かれていた文字を解読し、内容を知った。

 そして、彼女は戦慄した。

 この紙に描かれていたものの、その悪魔的ともいえる使用方法に。

 祖父が、存在してはいけないものだったといった、その意味を。

『ハルカ』

 顔を上げると、そこには悲しさをにじませた祖父の顔があった。

『これのことは忘れなさい。それより、もっと面白い本があるぞ』

 祖父がすすめてくれる他の本に、彼女は夢中になった。

 でも、先ほど見たあれが頭のどこかに引っかかったまま、彼女から離れなかった。

 

 

 

 

「……ちゃん、嬢ちゃん!」

「……へ?」

 ふと意識が現実に戻されると、目の前には心配そうな顔をしたユーリア議員や隊長たちがいた。

「大丈夫か?」

「あれ……」

 見下ろせば、彼女は膝をおっていて、班長に後ろから支えられる形で立っていた。

「すいません……。急にめまいがし」

 体が宙に浮きあがるのを感じた。

 いつの間にか、整備班長が彼女の太ももの裏と背中に腕を回して抱え上げた。

 さすが整備班長。長年重い部品を扱い続けた腕っぷしは伊達じゃない、などと感心している場合ではない。

「ちょ、ちょっと!」

「議員、悪いが嬢ちゃんは飛行船につれてかえるぞ~」

「……そうね。次に備えて休んでいなさい」

「隊長、カメラおいていくから写真頼む。あとで見るわ」

「頼まれました、班長」

 彼女の意向を無視して流れ作業のように決まると、班長は車の助手席に彼女を押し込み、運転席に座り車を発進させ、飛行船へと急ぎむかった。

 

 

 

 

 

「大丈夫でしょうか、彼女……」

 去り行く車を見ながら、隊長はつぶやく。

「さっきあれだけの空戦のあとだから、仕方がないよ、お兄ちゃん」

 その背後で、ユーリアは鋭い視線を車へ向けていた。

 正確には、その車に乗る彼女に……。

 この残骸を見てもらおうと彼女を呼んで間もなく、彼女は残骸を見ると目を見開き、呼吸が少し荒くなり、胸のあたりをつかんだのをユーリアは見た。

 思えば、先ほどの空戦であの白い物体の威力を見て皆が呆然とする中、彼女は即座に行動を起こし、そして陸攻の撃墜に動いた。

 素早く行動に移せたことや、この白い物体の破壊ではなく、陸攻への攻撃を優先して行ったこと。

 もしかしたら、彼女はこれがどういうものか知っているのではないか。

 そうユーリアは考えた。

 だとすると気になる点がある。

 長生きしている整備班長さえ見たことがない代物であり、相手の新兵器の可能性があるものの情報を、彼女がどこで手に入れたか。 

 だが、先ほどの様子を見ると、無理に問いただすことはためらわれる。

 まずは、彼女が落ち着くのを待つことにしよう。

「あの、ユーリア議員」

 カナリア自警団団長のアコが無線機片手に近づいてくる。

 その表情は気のせいか、少し曇っている。

「連絡です。市長が来て欲しい、と」

「……わかったわ」

 ユーリアは隊長たちを連れ、アコたちに誘導されイヅルマ市街へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「そんじゃ嬢ちゃん、ちゃんと休んでいるんだぞ」

「はい、班長」

 ベッドに半ば強引に連れられてきたハルカは、班長に寝るよう言われる。

 そして、頭をわしゃわしゃと撫でられる。

 傍目に孫を可愛がる祖父、そんな感じに見えることだろう。

「でも、班長。今ユーリア議員は……」

「隊長たちがついている。それにまた空賊が来たとき、嬢ちゃんが飛べないほうが問題だ」

 班長はドアを開ける。

「嬢ちゃんの相棒は、しっかりみておく。嬢ちゃんも休んでおくんだぞ」

「……はい」

 班長は笑みを浮かべ、格納庫へと向かっていった。

 ハルカは、少し申し訳なく思った。

 あの時気を失いかけたのは、疲労のせいじゃない。とは言い切れないが、主な原因は別にある。

 

 かつて祖父から聞かされた、あの兵器のことを思い出した。

 

 もう忘れていたのに。

 

 それが形を得て、このイヅルマに現れた。

 

「誰が、あれを……」

 

 あの白い物体が何であるのか、彼女は知っていた。

 

 それを思い出したとき、彼女は行動が乱れた。

 ユーリア議員は、もしかしたら感づいているかもしれない。

 あとで問い詰められるかもしれない。

「まあ、そのときは……」

 突如、部屋のドアがノックされる。

「ハルカ君、いるか?」

「隊長?」

 ドアを開けて入ってきたのは、護衛隊の隊長だった。

「休んでいるところすまない。緊急事態だ、来て欲しい」

 穏やかじゃないことを悟った彼女は上着をつかんで、隊長のあとを追った。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。